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パンドラボックス  作者: 早坂兎武
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パンドラボックス プロローグ 終わりの始まり

パンドラボックス~アートリオン編~

作者:早坂兎武


―利用規約―


・ツイキャス、ニコニコなどで上演する際は、作者に断わりの必要はございませんが、連絡やツイッタ―通知を出していただけますと、録画や上演枠に顔を出させて頂きます。


・上演する際はこの台本のタイトルとURL、作者、配役表をコメント欄にのせていただきますようお願いいたします。また、mojibanなど補助ツールの使用は可能としますが、台本のURLの代わりにするのはやめてください。


・過度のアドリブ(世界観の改変)、性転換は一切しないようにお願いします。また、適度なアドリブや読みにくい個所の語尾改変は、世界観の変わらない程度ならOKといたします。


・無断転載はしないでください。もし、発見や連絡があった場合、作者が確認したのち法的処置を行いますのでよろしくお願いします。



≪登場人物≫

ラーク・ウィッシャー:15歳。第一次グランハルト帝国戦争を戦い抜いたクラッチ・ウィッシャーの息子。職業は魔法剣士。剣の技術に秀でているが、魔法に関してはてんでダメ。下級魔法でも最弱の威力しか出せない。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っているが、うまく自分の力を理解していない。熱い性格で常にポジティブな考えを持っている。


ミカエル:15歳(人間年齢)。ラークの夢の中に現れた天使。容姿はかなりの美女。彼女の歌う歌には癒しの効果があり、支援要因として主人公パーティーを支える。なにかわけがありそうだが……


クラッチ・ウィッシャー:35歳。第一次グランハルト帝国戦争を戦い抜いた英雄でラークの父親。騎士団での階位はグランハルト帝国騎士団統括騎士隊長。第一次グランハルト帝国戦争時の年齢は25歳。職業はラークの魔法剣士よりランクが上の魔法騎士。彼の功績により、敵国を蹴散らした。「表面は熱く、中身は冷静」をモットーにしているが、周りからはそう見えない言動が多い。帝国騎士統括騎士隊長の称号を持つグランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っている。


ティア・ウィッシャー:35歳。第一次グランハルト帝国戦争を戦い抜いた英雄でラークの母親。騎士団での階位はグランハルト帝国騎士団統括衛生兵長。第一次グランハルト帝国戦争時の年齢は25歳。職業は聖母。支援戦闘に長けており、最大10人を一気に支援することもできる。支援魔法のすべての詠唱を覚えており、宣戦を離れた今でも、街の医療機関の院長として活躍している。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っている。


ジョージ・ブライアン:性別おかま。40歳。クラッチとともに第一次グランハルト帝国戦争で戦った英雄。第一次グランハルト帝国戦争時の年齢は30歳。職業クラスはハンドガンがメインウェポンのガンナー。スナイパーライフルも巧みにこなすことから、グランハルト帝国戦争時は王城からクラッチたちの通信を頼りにガベルと戦った。現在では『なんでも屋じょーじ』を経営している。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っている。


業魔神ガベル:長年生き続けている業魔神。その性格は残忍。第一次グランハルト帝国戦争のときに乱入してきたが、クラッチ、ティアを合わせた四人の英雄「グランハルトブレイバー」に封印されていた。しかし、この度、誰かが封印を解き、復活してしまった。


帝国兵A:ただの帝国兵です


帝国兵B:ただの帝国兵以下略


騎士隊長:クラッチやティアの上司。第一次グランハルト帝国戦争以降は隠居し、クラッチに騎士隊長の権限を渡した。


少女:可愛いです。


魔物:街中に来た魔物。



≪メイン≫

ラーク(不問):

ミカエル♀:

クラッチ♂:

ティア♀:

ジョージ♂:

業魔神ガベル♂:


≪サブ≫

帝国兵A:

帝国兵B:

騎士隊長:

少女:

魔物:



~本編~


ミカエルM「第一次グランハルト帝国戦争。広大な領地を持っていたグランハルト帝国に、隣国4か国が同盟を組んで攻めてきた戦いがありました。その戦争の名は第一次グランハルト帝国戦争。この戦で帝国に戦いを挑んだ同盟国4か国にはそれぞれ特徴がありました。最新鋭の武器や防具を取り揃えた商業の街アートリオン、その武器や防具を作る工業の街グラサージュ、周りを楽しませる娯楽に長けた芸能の街アクトリー、そして兵糧ひょうろうをたくさん持っている農業の街ファームリット。それぞれ強大な国が集まった連合軍の戦い方は、じわりじわりと帝国の資源や兵隊をすり減らし自らの豊富な物資で一気に攻め込む作戦を取りました。一方帝国は、10以上もの騎士団を用い、すさまじい陣形戦を展開しようとしていました。」


帝国兵A「いよいよ始まるな」


帝国兵B「あぁ。まさか、力のない4か国の連合軍に本気の戦いを展開するなんて騎士隊長様も何を考えているのか。」


帝国兵A「おい、聞こえるぞ。」


騎士隊長「聴け!!騎士たちよ!」


帝国兵A・B「!?」


ティア「いよいよね。」


クラッチ「あぁ。」


騎士隊長「今から始まる戦は我が帝国にとって最悪の危機だ。今まで我らに力を貸してくれた隣国4か国が総力をもって我らを倒しに来る。だが、我らは負けるわけにはいかない!!帝国は隣国に絶対に負けるわけにはいかないのだ!いいか!全員で生きて幸せな世の中をつかみ取るぞ!!」


ミカエルM「騎士隊長の号令が帝国軍の陣地に響く。帝国兵の士気が高まり、まもなく開戦というとき、いきなり空が黒く染まり、いかずちが両陣営の間に落ちたのです。」


帝国兵A「な……なんだ!?」


帝国兵B「おい、見ろ!!」


ミカエルM「グランハルト帝国と連合軍の兵隊たちは、天から降りてくる黒い羽根のついた業魔ごうまおびえていました。逃げ去るもの、腰を抜かすもの、泣き叫ぶもの。各々、恐怖の味を噛みしめながら、天空から降りて来る業魔を眺めていました。」


ガベル「…………」


帝国兵A「誰だお前は!」


ガベル「…………」


帝国兵B「誰だと言っている———」


ガベル「シャドウ・ファイヤー」


帝国兵A・帝国兵B「ぐぁぁぁ」


ガベル「あぁ……弱い、弱すぎる!!余が本気を出さずとも、ひねりつぶせるほど人の子は弱いのか。信じられぬ……」


ミカエルM「人間の弱さを知ったガベル。天を仰ぎながら一呼吸置くと、魔術で作られた炎が、ガベルの頬をかすめました。彼は炎が飛んでくる方向を見やると、二人の人物が戦闘態勢になって立っていました。その二人は怒りをあらわにして、ガベルに言いました。二人の名は、クラッチ・ウィッシャーとティア・ウィッシャー……後に英雄と謳われる2人でした。」


クラッチ「おい!これは貴様がやったのか!!」


ガベル「目の前のことを言うのであればそうだな。」


クラッチ「貴様は誰だ!!何をしに来た!貴様が隣国4か国をこのようにした元凶か!」


ガベル「元凶?違うな……余はすべてを統べる唯一神。業魔神ごうましんガベル。貴様らゴミ共を潰しに来た。」


ティア「唯一神という事は神様ね。その神様が人間の世界に何の要なの!」


ガベル「先ほども言ったではないか。貴様らゴミ共を潰しに来たと。」


クラッチ「なぜ、こいつらの命を奪う必要があった!」


ガベル「勘違いするでない。余は好き勝手に命を奪ったわけではない。」


クラッチ「ならこの惨状はなんだ!なぜこのような事をした!!」


ガベル「……彼奴きゃつらは余に名を聞いた」


クラッチ「……は?」


ガベル「余の高貴な名を腐った口をもって聞き出した。それだけだ」


クラッチ「なん……だと」


ティア「それだけ……たったそれだけのために彼らの命を奪ったというの?」


ガベル「何がおかしい?余は世界を統べる唯一神ぞ?自らの名は自らで名乗りを上げるわ。」


クラッチ「きさまぁ!!そのような理由でこいつらの命を奪ったのか!絶対に許さないぞ!!地獄の業火をまとい、出でよ!!神殺しの魔剣、ウロボロス!!」


ティア「少しお灸を据える必要がありそうね。私たちに神のご加護を……古からの魔典、アポカリプス!」


ガベル「ほう……神に逆らうか……あぁ、愚かなりや愚かなりや……人間相手にこのような力を使う事になろうとはな。悠久の時を超えしつるぎよ!ここに集え、デュランダル!」


ティア「あれが噂の聖剣・デュランダルね……」


クラッチ「だが、負けるわけにはいかない!いくぞ!!」


ガベル「静寂の深淵、我が呼び声に応え、彼の者を滅せよ……ダーク・シャドー」


ティア「クラッチ!気を付けて!!高威力な範囲魔法よ!!」


クラッチ「効くかよ!打ち消せ!無砲炎むほうえん!!」


ガベル「ッ!ほう?我の魔法を打ち消すことのできるだけの人間がいたか。」


クラッチ「どうだ?ただの人間よりかやるだろ?」


ガベル「フッ……久々に楽しめそうだよ。人間。エグゼキューション!!」


クラッチ「そうか。それはありがとうよ!打ち消せ!無砲炎むほうえん!!今度はこっちから行くぜ!ハァァァァァァ……吠えろ!煉獄の咆哮ほうこう!!爆炎・鬼滅斬きめつざん!!」


ガベル「ぐぬぅぅ……なめるな!人間風情が!!」


クラッチ「大きい攻撃が来る!ティア!!防御壁を頼む!」


ティア「まかせて。彼の者に鋼の鎧を……ディフェンド!」


ガベル「防御壁など我の魔法には関係のないこと……我が呼び声に集いし悪しき魂の饗宴きょうえん!ダークネス・ウインド!」


クラッチ「ぐっ……ぐぁぁぁぁぁ!」


ティア「クラッチ!?」


クラッチ「俺は大丈夫だ!それより出来たんだろ?業魔封印の一手いって!!」


ティア「えぇ」


ガベル「フハハハハ!なにが出来たというんだ?細腕の女魔導士に何ができる」


ティア「……聖なる母神ぼしんよ、神をつかさどる聖域よ。悪の扉をひらきしものに正義の鉄槌を。そして我ら人間には、神々による祝福を与えたまえ。その祝福をもって、我ら人間は、悪しき心に堕ちた神を封印する。……ピース・オブ・ハート!!」


ガベル「ぐ……なんだ、この頭の痛みは!?……か……体も重く……何をした!?女ぁ!!ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



―間―



クラッチ「終わったな。」


ティア「えぇ。」


クラッチ「4か国連合軍よ!グランハルト帝国騎士団総隊長のクラッチ・ウィッシャーだ!この業魔の襲来によりお互い、戦力の低下は著しいはずだ。そこで、お互いが手を取り合い、ともに帝国の繁栄と諸国の繁栄、同時に叶えようではないか。」


ミカエルM「ティアの封印術は見事成功し、無事ガベルを祠に封印することができました。また、このクラッチの号令により、第一次グランハルト帝国戦争が終焉へと向かいました。それから10年もの間、ずっと平和は続き、グランハルト帝国とその隣国4か国は発展しました。これから先もこの平和が続いていければ……と国民は思っていました。」


―間―



ラーク「パンドラボックス」



ー間ー



ラーク「……ん……んん……」


ティア「あら、起きたのね。おはよう。」


ラーク「……おはよう……母さん」


ティア「あら、お寝坊さんね。パパが待ってるわよ」


ラーク「パパ?え~と……あ、今日は訓練だ!!」


ティア「んふふ。早くいってきなさい」


ラーク「わかった!!」



―間―



ラーク「ごめん、遅くなりました!!」


クラッチ「あぁ。相変わらずの寝坊だな。」


ラーク「す……すみません。」


クラッチ「別に怒ってはいないさ。さて、今日の訓練だが……の前に話しておきたいことがある。」


ラーク「話しておきたい事?」


クラッチ「まぁ、とりあえずそこの切り株に座れ」


ラーク「え?訓練は?」


クラッチ「後だ。それよりも大事なことだからな。」


ラーク「う……うん、わかった」


クラッチ「ラーク……第一次グランハルト帝国戦争のことを話したのは覚えているか?」


ラーク「あぁ、隣国4か国が同盟を結んでグランハルト帝国に攻めてきた戦いだろ?」


クラッチ「あぁ……この話はお前には話していなかったのだが…その戦いでいきなり現れた業魔がいるんだ」


ラーク「業魔?」


クラッチ「奴の名はガベル。かなりの強さだった。俺たちも体がボロボロだったが、母さんが最後の力を振り絞り、ガベルを祠に封じることができた。」


ラーク「そうなんだ。」


クラッチ「あぁ。だが、最近ガベルを封印していた祠の封印が解かれた可能性があると騎士団から報告が入った。」


ラーク「え!?それって!?」


クラッチ「そう……だからラーク……」


ティア「あなた!!」


クラッチ「ん?どうした?ティア……今日は衛生兵の集会のはずだろう?」


ティア「それどころじゃないのよ!東の空から魔族の軍勢が攻めてきているの!!」


クラッチ「なんだって!?それはすぐにいかなければ……ティア!今すぐグランハルトの鐘を鳴らせ!!」


ティア「えぇ。わかったわ!」


ラーク「父さん、俺も行く!!」


クラッチ「だめだ!!」


ラーク「どうして!?」


クラッチ「わかっているのか!?今までの修行ではない!実戦だ!!しかも、相手は父さんたちを苦しめた業魔ガベル。ケガもすれば死ぬかもしれない。もしものことがあったらどうするんだ!」


ラーク「確かにそうかもしれない……俺は魔法はまだ使えないし、戦闘力も低いのはわかっている。だけど、父さんたちの戦いを近くでみたいんだ!グランハルトの大英雄、クラッチ・ウィッシャーの戦いを近くで見て学びたいんだ!!」


クラッチ「ラーク……」


ティア「あなた!早く!」


クラッチ「あぁ……わかった。ついてこい!ラーク!!」


ラーク「ありがとう!」



―間―



クラッチ「全軍に告ぐ!いま魔族がこのグランハルト帝国に攻めてきている。先の第一次グランハルト帝国戦争で我が帝国は、業魔ガベルの封印に成功した。しかし、その封印が解かれ、業魔の軍勢がこの帝国に向かっている。いま我が帝国最大の危機が訪れようとしているのだ。よいか……全力を持って戦え!すべての力を振り絞れ!!国の存亡をかけた戦だ!全軍!身を引き締めろ!!」



―間―



ティア「クラッチ隊長」


クラッチ「ティア衛生兵長。どうした」


ティア「まさか、業魔ガベルの仕業ですか?」


クラッチ「わからない……確かめないと何とも言えないな」


ティア「そう。帝国の存続をかけた戦……というわけね。」


クラッチ「あぁ……」


ティア「……私たちも『グラン』を開放する時が来るのかしら」


クラッチ「ただの魔族なら大丈夫だろうが、ガベル相手なら開放するときも来るだろうな」


ティア「そうですね……わかりました。『グラン』を使うための準備してまいります」


クラッチ「……ティア」


ティア「?どうしたの?」


クラッチ「俺がどうなろうとも……お前は絶対に死ぬな」


ティア「クラッチ……それって」


クラッチ「(遮るように)時間だ!行くぞ」


ティア「クラッチ!!……いっちゃった……まさか死ぬ気じゃ……そんなことないわよね」



―間―



ラーク「父さん……母さん……」


ミカエルの声「選ばれし子よ」


ラーク「だれ!?」


ミカエルの声「私とともに神に打ち勝つ覚悟はある?」


ラーク「誰だ!!出てこい!!グランハルト帝国騎士団、ラーク・ウィッシャーが相手だ!!」


ミカエル「……」


ラークM「女?羽が生えて……」


ミカエル「それで?」


ラーク「は?」


ミカエル「あなたにその覚悟はあるの?開けてはいけないパンドラの箱を開ける覚悟は」


ラーク「なに……いってんだ?わけわかんねぇよ……」


(SE:爆発音)


ラーク「な……なんだ!?」


ミカエル「時は移ろう……あなたとともに……」


ラーク「まて!!くそ!……なんなんだあいつは!こうしちゃいられない!父さん!母さん!」



―間―



クラッチ「やはり、貴様の仕業か……ガベル!!」


ガベル「いかにも……貴様ら人間が斯様かように煩わしいことをしてくれたでなぁ」


ティア「煩わしいこと?私たちが一体何をしたっていうのよ!!」


ガベル「貴様ら人間は、飢饉ききん厄災やくさいまつりごとでの危機。お前たちは国の存亡をかけたときにも祈りを捧げず、どうでもいい起床就寝の時だけに祈りをささげる連中もいる。それが煩わしいことのなにものでもないと思うが?」


クラッチ「そんなの人間だって毎日必要な時に神に祈りを捧げているんだ!俺らの民族以外にも多種多様の民族が業魔神に祈りをささげているが、それぞれ周期や回数も違う……」


ガベル「それを言っているのだよ人間。人それぞれが違う考えだから、争いごとや何から何まで起こるのではないか?人の考え、行動などのすべてを時にて縛れば、より一層人がまとまり、より良い集団になる。……そうは思わんかね?そうだな。羽虫もあつまれば強大な力になるというやつだ」


クラッチ「羽虫……だと……?」


ガベル「羽虫だろう?細かいことでピーピー泣き叫ぶ、何か事が起こると群がって一人の相手を襲う。そういう行動をする人間風情が、なぜ羽虫に該当しない?余は羽虫でも良い名を与えたのではないかと自負しているのだぞ?」


クラッチ「貴様、黙って聞いていれば!!」


ティア「待ってクラッチ」


クラッチ「離せ!!ティア!!俺が守らなきゃ誰がやるってんだ!!」


ティア「だまって!向こうに戦意はないわ!!」


クラッチ「なに!?」


ガベル「そう……余に戦意はない……」


クラッチ「ならば貴様は何をしに来た!!それに、この惨状はなんだ!」


ガベル「余が話をしに来ただけだというのに、彼奴きゃつ等が攻撃を加えてきたのでな……」


クラッチ「だからといってこのようなことをしていいわけがないだろう!」


ガベル「それは人間界の常識だろう?人間界の世界で正当防衛という言葉があろう。これはそれに値すると思うのだが、違うかね?神の世界では……あぁ、人間界でわかりやすいように言うとこうか?『やられたらやり返せ』と」


クラッチ「なん……だと……」


ティア「そんなことで……」


ガベル「そうだ……そんなことだ……それでは本題に入らせてもらおう」


クラッチ「……本題?」


ガベル「うむ。余は貴様らに……」


ミカエル「待ちなさい!」


ガベル「誰だ?……ほう……貴様は『出来損ないの天使』ではないか」


ミカエル「!?」


ラークM「出来損ない?なんのことだ?」


ミカエル「ここは退きなさいガベル……」


ガベル「ほう……『出来損ないの天使』が余に指図するか!!……フハハハハ!それもまた一興!!まぁ、もとよりそのつもりさ……人間よ!貴様らの世界は崩壊を迎える!!」


クラッチ「なんだと!?」


ガベル「時は六月むつき後ご。楽しみにしておれ」


ラーク「ま……まて!!」


ガベル「……ほう……羽虫の中でも期待できる羽虫がいたか……貴様、名は何という?」


ラーク「……ラーク・ウィッシャー」


ガベル「憶えておくとしよう……その名をな……」


ミカエルM「不穏な空気を残して去っていった魔族に、歴戦の英雄であるクラッチやティアは震えていた。ラークは初めて出会った業魔ガベルに驚きと恐怖を隠せずにいた。このガベルが国に来たことが、グランハルト帝国の悪夢の始まりであった。」


ティア「六月むつきと言っていたわね?」


クラッチ「そうだな……」


ラーク「父さん、今のがガベル?」


クラッチ「あぁ……しかし、まさか、こんなに早く封印がかれるとは……」


ラーク「封印って、母さんがしたんだよね?」


ティア「ちょっと!私を疑ってるの?」


クラッチ「おちつけ!ティア!いいか、ラーク。ティアが使ったのは、封印術の最高峰『ピース・オブ・ハート』だ。しかも術式的に一つでも間違えたら、絶対に成立しない。」


ティア「そう……だけど、それを解とくってことは……」


ジョージ「あら?ラークとティアじゃなぁい!」


クラッチ「ん?この独特な喋り口調は……」


ティア「ジョージ!久しぶりね!!」


ジョージ「あら、ティア!ひっさしぶり~!!ほんとかわいいわねぇ!あぁ、その瑞々(みずみず)しい柔肌やわはだ……うらやましいわぁ……もう、スリスリしちゃう!!」


ティア「ちょ……ちょっと!触るのはやめなさい!」


クラッチ「こら、ジョージ!何しに来た?」


ジョージ「何しに来た?じゃないわよ……店の商品を仕入れに向かっていったら、禍々(まがまが)しい妖気がこのあたりで漂っているじゃない?もしかして、何かあったのかと思って来てみれば……」


クラッチ「(被せるように)ガベルがいたということだな?」


ジョージ「そうだけど……んもう、最後まで言わせなさいよ!馬鹿クラッチ!!」


ラーク「あのぅ……父さん?」


クラッチ「あぁ、こいつは……」


ジョージ「あらぁん、なぁに?このかわい子ちゃん!もしかして、お姉さんの魅力に惚ほれちゃった?」


ラーク「あ……あの、その……」


ラークM「どこが、お姉さんだよ!筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)のゴリラ男じゃねぇか!?」


クラッチ「ラーク、前に会ったことがあるだろう?ほら、港のほうでガラクタばかり売っている、『なんでも屋じょーじ』の店主ジョージだ」


ジョージ「ガラクタとは失礼しちゃうわね。私の道具は役に立つんだから。ということで、ジョージ・ブライアンよ!クラッチの部隊ではガンナーをしていたわ」


ラーク「ガンナー!?」


ラークM「みえねぇ!?ぜってぇファイターだろ!?どう考えてもファイターだろ!?」


ティア「ジョージは主に、サブマシンガン二丁持ちで戦うのだけれど、ハンドガンからスナイパーライフルまで、どの銃でも簡単に使いこなすのよ。」


ラーク「そ……そうなんだ……」


ジョージ「てことでよろしくね!坊や」


ラーク「よ……よろしく」


クラッチ「ところでラーク」


ラーク「はい!」


クラッチ「お前の近くにいる少女は誰だ?」


ラーク「え?」


ミカエル「……」


ラーク「うわぁ!?君いつからいたの!?」


ミカエル「さっきからいましたけど」


ラーク「さっきっていつ!?」


ミカエル「あなたたちが、ラークのお父様とお母様?」


ラーク「無視!?」


クラッチ「そうだ」


ティア「そう……」


ジョージ「(遮るように)そうよ」


ラーク「え!?」


ジョージ「私がラークのお母さんよ。」


ラーク「え、ちょ!?」


ミカエル「そうでしたか。あなたがお母様……」


ラーク「いや、違うから!!絶対違うから!!」


クラッチ「ジョージ……黙っていてくれないか」


ジョージ「なによ……つまらないわね」


ティア「わ……私がラークの母親です」


ミカエル「そう……まぁ、どちらでもいいですが……」


ラーク「よくないよ!!全然よくない!」


ミカエル「……私の名前は天使ミカエル」


クラッチ「な!?」


ティア「天使ミカエルですって!?」


ジョージ「……!?」


ラーク「てん……し?」


ミカエル「そう……正式な名前はアブドリアル・アシュティア」


ラーク「ん?どこにもミカエルなんてないじゃないか」


ミカエル「……ミカエルは先代である母、アルクトゥス・ヴァン・ミカエルからとったものです。」


ティア「その名前なら私も聞いたことがあるわ」


クラッチ「本当か?」


ティア「えぇ……私の魔法はミカエルを基にした詠唱が多いのよ」


ミカエル「そのはずです。支援魔法の詠唱はすべてそれを基にしていますから。……母、ミカエルは3000年前、私を産んだ時に業魔戦争でガベルに殺されました。」


ラーク「え!?てことは、君って3000歳!?」


ミカエル「そうよ」


ラーク「すんごいおばあちゃん……」


ミカエル「(遮るように)天使の鉄槌を……アイアン・ハンマー」


ラーク「ギィャア!」


ミカエル「……続けていいですか?」


ジョージ「……い……いいわよ」


ジョージM「この子……意外に怖いわね……」


ミカエル「母は業魔ガベルとの戦いで命を落とす前、私に力をすべて託してくれました。ただ、私には足りない力があるのです」


ラーク「た……足りない力?」


ミカエル「えぇ……それは『人を信じる力』です」


ジョージ「だから、出来損ないの天使ってわけね」


ミカエル「はい。母は常に人間を信じていました。人は私たち天使や神を信じてくれるから、信仰をしてくれるのだと……しかし、ガベルと母の考えは逆でした」


クラッチ「確か、俺たちと対峙たいじしたときにそのようなことを言っていたな」


ミカエル「えぇ……そして、母とガベルの間にあった亀裂は、次第に広がり、しまいには、天界を巻き込んだ大きな戦争へと変わっていきました。この戦争を業魔戦争と呼びます」


ジョージ「なるほどね……それで?あなたは何をしに来たの?」


ミカエル「私は探しています。『人を信じる力』とは何か。ただそれがわからない。」


ラーク「ふーん……あ、あのさ、俺に言った『開けてはいけないパンドラの箱』って何?」


ミカエル「…………」


ジョージ「言えないのね」


クラッチ「……ジョージ」


ジョージ「なによ?」


クラッチ「お前、そのような情報は入っていないのか?」


ジョージ「どの情報よ。パンドラの箱?それともガベルのこと?」


クラッチ「どちらもだ」


ジョージ「……まず、パンドラの箱のことに関してだけど。それらしい情報は私のほうには入ってないわ。ただし、それらしい文献が、商業の街アートリオンにはあると聞いたことはある」


ラーク「なら……」


ジョージ「(遮るように)アートリオンにある4万冊の古文書こもんじょを、調べなければいけないのだけれど、それがあなたにできるかしら?」


ラーク「う……」


ジョージ「ガベルのことに関しては、一切の情報はないわ。ま、どちらにせよ、アートリオンに行かないといけないわね」


クラッチ「……頼めるか?」


ジョージ「もとよりそのつもりで言ったんでしょ?いくわよ」


ティア「ごめんなさいね……ゆっくりしたかったでしょ?」


ジョージ「大丈夫よ。そのかわり、帰ってきたらあなた特製のマーボーチキン、食べさせてよね」


ティア「えぇ」


ジョージ「それと……ミカエルちゃんだったかしら?あなたも一緒に来てちょうだい」


ミカエル「わかりました」


ラーク「おれも……」


ジョージ「だめよ」


ラーク「どうして!?」


ジョージ「クラッチから聞かなかったの?これは遊びじゃないの。世界の存亡そんぼうをかけた戦いなのよ。あなたにそれを戦い抜く覚悟はあるの?」


ラーク「覚悟……」


ジョージ「ある意味、これも『開けてはいけないパンドラの箱』なのかもしれないわね。戦争なんてしたら、あなたは元の生活に戻れなくなっちゃうわよ?それでもいいの?」


ラーク「…………」


クラッチ「お前が決めろ。お前の人生だ。その答えに反対はしない」


ラーク「…………」


ジョージ「もし、ミカエルちゃんの可愛いお尻を追いかけるために、この旅についていくと言うのなら、私はあなたの眉間みけんをぶち抜くわよ」


ティア「ちょっとジョージ!!」


クラッチ「やめろ、ティア」


ティア「だって……」


クラッチ「気持ちはわかるが、これはラークが決めることだ」


ラーク「……父さん……いや、騎士隊長……」


クラッチ「なんだ?」


ラーク「わたくし、グランハルト帝国騎士団、ラーク・ウィッシャー。この旅についていきたいと思います。」


クラッチ「……本気なのだな」


ラーク「はい」


クラッチ「……わかった。もとより決めていたことをお前に命ずる。……いいか、ティア?」


ティア「はい」


クラッチ「(大きく息を吸って)ラーク・ウィッシャー!!」


ラーク「!?はい!!」


クラッチ「グランハルト帝国騎士団統括騎士隊長、クラッチ・ウィッシャーが命じる!ラーク・ウィッシャー……お前をグランハルト帝国騎士団第十四番隊隊長としてこの帝国を導いてもらう!」


ラーク「!?待ってください、騎士隊長!!第十四番隊なんてこの騎士団にはありません!」


クラッチ「あぁ、騎士隊長の権限で今つくった。とにかく、ラーク。お前と戦うパーティーを見つけてこい。それがグランハルト帝国騎士団第十四番隊だ。」


ラーク「え?それじゃぁ、数が少ないのでは?」


ティア「心配しなくてもいいわよ。私たちのパーティーもクラッチ、ジョージ、今はここにはいないけどアンディというファイターの4人だけなの」


クラッチ「あぁ。だから大丈夫だ。お前の一番戦いやすいパーティーを見つけて、業魔ガベルを倒すんだ」


ラーク「……わかりました!」


ジョージ「話は済んだかしら?」


クラッチ「あぁ……ジョージはしばらく第十四番隊に所属してくれ」


ジョージ「教育係ね。わかったわ。あぁん、楽しみ!若い男の子とあんなことやこんなこと」


クラッチ「死んどくか?貴様……」


少女「イヤァァァァァァァ!!」


クラッチ「なんだ!?今の声は!」


ラーク「公園のほうだ……あれは?見たことない……」


ジョージ「(遮るように)見てる場合じゃないでしょ!!行くわよ!!」



―間―



少女「私は何もしていないのに……どうして……」


魔物「グゥルルルルル……」


少女「もう……やだ……イヤァァァァァァァ!!」


魔物「ギィルァァァァァァァァ!!」



SE:銃声



魔物「ギィヤン!?」


少女「ふぇ?な……なに?銃声が……」


ジョージ「GACHAガッチャ!お嬢ちゃん、大丈夫?」


少女「あ、ジョージオネェさん!大丈夫!」


ジョージ「いい子……すぐにここから離れなさい。また私のお店にお菓子を食べにおいで」


少女「うん、ありがとう」


ラーク「す……すげぇ……ハンドガンで魔物の眉間に一撃……」


クラッチ「あいつのすごいところは、どの銃でもどこを狙っても百発百中のところだな」


ラーク「え?外さないの?」


ティア「そうね……と話したいところだけど」


ジョージ「話はあとよ!私の弾丸から逃げきれるかしら?全弾ぶち込む!クラッシュ・バレット!!」



SE:銃声



ラーク「どこに撃ってるの?」


クラッチ「いや……これでいい」


魔物「ギィヤァァァァァア!!」


ラーク「あ、動きが止まった」


ジョージ「とどめは任せたわよ!みんな!!」


クラッチ「あぁ!!灼熱の豪剣!燃やしつくせ!!ハァァァァァァ!!爆炎乱舞ダンシング・エクスプロージョン!!」


魔物「ギィィルァァ!!」


ラーク「俺だって負けてられない!炎をまとう剣戟けんげき!炎陣・爆炎 剣舞ろんど!!」


魔物「ギィヤァァァァ!!」


ティア「……この饗宴きょうえんに呼ばれし精霊たちよ。地水火風ちすいかふう、結束しその力を我に示せ。パーティー・オブ・ネイチャー!」


魔物「グルァァァァァ!!」


クラッチ「ふん、雑魚が」


ティア「手応えないわね」


ジョージ「久しぶりでも体がよく動くわね」


ラーク「(息を荒げながら)す……すげぇ……」


ミカエル「回復しますね。神の癒しを……ヒール・ジ・アース」


ジョージ「あら……グランソウルまで回復してくれるのね」


ラーク「グラン……ソウル?」


ジョージ「え!?あなた、まさか知らないの?」


ラーク「う……うん」


ジョージ「(溜め息)グランソウルというのは私たちが今使ったような技をつかうために必要な力よ。ってそんなことぐらい教えておきなさいよ!クラッチ!ティア!!」


クラッチ「ハハハ!そういやぁ、教えてなかったな」


ティア「フフ……そうね」


ジョージ「まったく……それよりも、ミカエルちゃん、そしてラーク……行きましょうか」


ミカエル「はい」


ラーク「うん!」


クラッチ「気をつけろよ……ラーク」


ティア「何かあったら手紙で教えてね。」


ラーク「うん、わかった!!行ってきます!」



―間―



ジョージ「さぁ、私のお店についたわ。ゆっくりみていってちょうだい!」


ラーク「すげぇぇ!店も広いし、本当に何でもあるぞ!!」


ミカエル「銃に、剣に杖、魔典や防具まで何でもありますね」


ラーク「おぉ!これって父さんが使っていた剣のモデルじゃん!!俺はこれに……」


ジョージ「待ちなさい。それはあなたには使えないわ」


ラーク「え?なんで?」


ジョージ「あなたの職業クラスじゃ扱えない剣なのよ。それにレプリカよりも、オリジナルのほうがいい時もあるの。だから、これを使いなさい」


ラーク「これは……軽い……」


ジョージ「斬れ味はそこそこ、魔法攻撃の威力は少し強めぐらいなの。この刀は使い方によっては最強の武器になるわ。」


ラーク「で……ても……」


ジョージ「それに、貴方の持っている刀を使っているとクラッチと同じ職業クラスにはなれないのよ。」


ラーク「え!?父さんと同じ職業クラスにはなれないって……」


ジョージ「改めて言うわね?あなたにはクラッチと同じ職業クラスに就くのは無理よ」


ラーク「!?」


ミカエル「どういうことです?」


ジョージ「クラッチは、魔法晶術を魔術師並みに使えるから、あの職業クラスになれたの。あなたみたいなポンコツ魔法じゃ、クラッチと同じ職業クラスにはなる条件が満たされないのよ。」


ラーク「ポンコツって……まだ魔法を見せていないじゃないか!」


ジョージ「そんなの魔法以外の動きでわかるわよ。あなたがさっき、街中での戦いで放った攻撃、どう見ても力業ちからわざよ。剣にまとっている炎が弱弱しい。そんなのじゃ魔法攻撃なんてできないでしょう?」


ラーク「ぐ……」


ジョージ「だから、足りない分の力を補填ほてんできるように、その剣の束の部分には、グランソウルを増幅させる、『グランハルト結晶』を埋め込んでいるわ。だからさっきより威力は強いはずよ」


ラーク「そうか……ちょっと試してみるか……はぁぁぁ……」


ジョージ「ちょっと!!店を燃やすつもり!?はぁぁ……あ、ミカエルのほうは準備が終わったのね」


ミカエル「はい。おかげさまで装備は揃いました」


ジョージ「うん、完璧よ。それじゃぁ、これも渡しておこうかしら」


ミカエル「これは?」


ジョージ「地図よ。この地図に行きたい場所を念じると、そこまでナビゲートしてくれるの」


ミカエル「……すごいですね」


ジョージ「そうよ~!……っと、さて、そろそろ行きましょうか」


ミカエル「はい」


ラーク「うん、わかった!」


ラークM「こうして、グランハルト帝国を救うため、開けてはいけないパンドラの箱を探すための旅が始まった。」


ミカエルM「パンドラボックス プロローグ 終わりの始まり」


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