第四話 覚悟
「嘘じゃないのか、それは」
「ううん、アリスちゃんは本当にあの人が好きなんだね。蓮くんはとても似てるんだよ。
アリスちゃんも分かってたんでしょ?蓮くんは・・・・・・」
「黙れ、白雪」
止まらなかった。
気付けば、白雪を大声で怒鳴っていた。
聞きたくない。
蓮ぴょんがあの人に似てる、だなんて。
そんなのきっと、気のせいだ。
別に蓮ぴょんがあの人に似てるから、蓮ぴょんと仲良くなったわけじゃない。
蓮ぴょんに何かを感じたんだ。
惹かれる何かが。
(それは、言い訳じゃないのか)
誰かが耳元で囁いた。
「ありすさん・・・」
不安そうに蓮ぴょんが声を出した。
顔を見れば、俺の顔色を窺うように見られた。
当たり前だ。
大声を出して、怒鳴ってしまったのだから。
きっと俺が怖いのだろう。
(アリス、そういうときは深呼吸をしてください。落ち着きますよ)
いつかのあの人が、言ってくれた言葉が頭の中で甦った。
とても懐かしくて温かくて・・・・・・。
「悪い、感情的になった。白雪、言いすぎた。ごめん」
白雪の目を見て、正直に言う。
なぜだか、あの人の言葉を思い出したおかげで落ち着けた。
「うん、大丈夫だよ。ちょっと怖かったけど、アリスちゃんが謝ってるんだったら、良いよ」
「さすがに言いすぎた。思い出したくない、思い出について言われて、それに」
今ばっかりは、白雪の馬鹿さと優しさに泣きたくなった。
どんなに俺が悪くても、白雪は気にしないでいてくれる。
それはまるで・・・あの人のような。
「でも良かった。もう少しで、シュヴァルツを出そうかなとか思っちゃったもん」
ね、蓮くん?と明るい笑顔で言う白雪につられたのか、蓮ぴょんもようやく笑顔になった。
「で・・・あの、シュヴァルツって誰なんですか?」
蓮ぴょんがまた、静かに聞いた。
本当は関わらせたくないけど、しょうがない。
白雪が言うのならば、俺は覚悟を決める。
「とりあえず、最初から説明しなきゃね」
「あぁ、そうだな。蓮ぴょんには、全部説明してやるよ」
「・・・だけどっ・・・・・・あぁ、もう時間みたい。疲れちゃった、あとはシュヴァルツに任せるね」
白雪がずっと表でいたからか、疲れたような表情をしている。
きっと姉が疲れたから、妹が代わってあげたんだろう。
本当に姉思いの妹だな。
さすが、シスコンのシュヴァルツだ。
「・・・・・・貴方が蓮ね。よろしく、私がシュヴァルツ」
声のトーンが変わった。
高く明るい声から、低めで暗い声に。
「え、あの・・・貴方は?」
「あぁ俺が説明してやる。少し長くなるけど、良いよな?」
そう言うと、蓮ぴょんは真面目な顔をして頷く。
こういう空気が読めるところは良いと思う。
覚悟
俺は変わってやるよ。
蓮ぴょんを守る、騎士になってやる。
俺が関わらせてしまったようなもんだから。