第三話 聞きたくなかった言葉
白雪の奴を黙らせて、蓮ぴょんを助けたところで、俺が話をしようとした。
しかし、やっぱり馬鹿なこいつには敵わなかった。
俺が蓮ぴょんって呼んでいるのを聞いて、自己紹介を始めやがった。
蓮ぴょんは 童話の世界には関係ないのに。
これ以上俺たちの世界に、関係させたら蓮ぴょんが危険になる。
「君が、蓮くんって言うの?」
「あっはい。蓮って言います。よろしくお願いします」
さっきよりトーンを抑えた白雪の声に、蓮ぴょんが真面目に返す。
白雪はどうしてか律儀に椅子の上で、落ち着いて座っている。
蓮ぴょんの真似なんかしなくていいのに。
「こちらこそ、よろしくね。あたしの名前は、ヴァイス。確かね、白っていう意味なんだ」
「そうなんですか。でも、ありすさんは白雪って・・・・・・?」
「そこまでにしろ、白雪。俺に話があるんだろ?」
蓮ぴょんが、俺たちの世界に関係しないために、会話を区切った。
さすがにそこまで、知ってしまうと戻れなくなる。
「うんそうだよ、アリスちゃんにね用事があるんだ。
魔女さんと、後誰だっけ?誰かに頼まれてきたんだ」
相変わらず俺の会話を止めた意味を知らずに、白雪は話す。
知らなくて良いんだ、蓮ぴょんには。
俺のやったこととか、 童話の世界のことなんて。
「確かね、アリスちゃんに戻ってきてほしいって言ってたんだよ」
やっぱり。
てゆうか言うと思っていた。
じゃないと、ここには来ないだろう。
わざわざ面倒臭がりな、白雪が。
それに魔女も魔法なんか使わないだろう。
変なことのために。
「・・・・・・どこに、戻るんですか?」
思考は遮られた。
蓮ぴょんの何も知らないような、問いによって。
「んとね、ここは人間界っていう世界でしょ?で、この人間界の隣にも世界があるの」
「・・・・・・そうなんですか」
「うん、それでね。その世界にも名前があって」
分かってないらしい。
蓮ぴょんはどこの童話の登場人物でもない。
ただの、人間だ。
「白雪」
「何かあった?で、戻る気になった?あんまり長居はするなって言われているの」
「・・・・・・それは」
長居は確かにしない方が良い。
俺は別に大丈夫だが、白雪にはこの世界は慣れない。
・・・・・・戻れない。
戻りたくない。
それは、俺の単なるわがままだとも分かってる。
だけど・・・・・・。
答えを濁らせた俺を見ると、白雪は蓮ぴょんの方に向いた。
「でしょ?だからね、蓮くんに説明だけしておこうと思って」
「は?こいつは、ただの・・・・・・」
「違うよ。アリスちゃんが、知らないだけ。魔女さんが言ってたよ?」
いつもみたいな馬鹿な白雪とは違う。
まるでもう一人の白雪のように、まっすぐな目線が俺を貫く。
まさか、蓮ぴょんが童話に関係するのか?
「嘘だろ、そんなわけがない」
「ううん、それはアリスちゃんの偏った考えだよ」
蓮くんは・・・完璧童話の登場人物だよ。
白雪は最後に、そう締めくくった。
聞きたくなかった言葉
どうして、この世界は俺に恨みでもあるのか。
巻き込みたくない蓮ぴょんを救うことすら、俺には出来ないのか。