0098:鉱石の最奥
ガーランの店に行った翌日だ。
馬車の改造が完了するまで10日間ある。
それまでの間、鉱山で金を稼ぐことにした。
「これならドワーフ国の人達の役に立つし、俺達の稼ぎにもなるしな」
『それは良いんですけど、ご主人様の体調はまだ万全じゃないんですから無理はしちゃ駄目ですよ』
そうは言っても、昨日の夜、アイラ達を抱こうとしたら『まだ駄目です』と言われて欲求不満気味なのだ。
この欲求不満は鉱山のモンスターにぶつけるしか無いわけだし。
という事で俺達は鉱山の中にいた。
鉱山の入口付近は冒険者が多くいたので少しだけ奥に向かった。
鉱山の入口付近にいるモンスターは回避しているのでどんなモンスターが出てくるのか知らないが奥になるとレッサーミノタウロスが多く出てくる。
さすがにミノタウロスやキラーマンティスは滅多に遭遇するようなモンスターじゃないらしく、あれ以来遭遇していない。
代わりに出てくるようになったのがトロールだった。
トロールはオークよりも一回り大きい身体をしておりオークの上位版という感じだった。
「しかし、モンスターを倒しても倒しても湧いてくるよな。本当にキリがないな。まるでダンジョンのようだな」
『ひょっとしたら鉱山の中にダンジョンコアがあったりしますかね? ねぇ、旦那様』
もしかするとサーシャの言う通りかも知れないな。
であれば、この状況も納得出来る。
「もし鉱山の奥にダンジョンコアがあった場合は破壊しても良いんだよな?」
『ご主人様、それは事前にギルドに聞いておいたほうが良いかと』
やっぱり勝手に破壊しては駄目らしいな。
それなら魔石とドロップアイテムを買い取りしてもらう時に確認しておくか。
それにしてもモンスターがよく出てくるな。
湧き出てくるという表現がぴったりだった。
朝から鉱山の中でモンスター狩りをしていたが昼過ぎ頃には戻ってきた。
アイラ達から
『まだ無理をしちゃ駄目です』
と言われたからだ。
「それじゃあ、今日はギルドに寄ってから帰るとするか」
ギルドに寄って買い取りをお願いするときに先程のダンジョンコアがある可能性に関して受付嬢に聞いてみた。
『鉱山の奥にダンジョンコアがある可能性ですか? そうですねぇ、可能性はありますね。こんなにモンスターが湧き出てくるくらいですからね。仮にダンジョンコアを見つけた場合は破壊してください』
「本当に破壊しても良いんですか?」
『はい、大丈夫です。放置するほうが危険ですからね』
意外とあっさり破壊了承が得られた。
しかもダンジョンコアの欠片を回収したら高値で買い取るとのことだ。
『良かったですね、旦那様』
これでもし本当にダンジョンコアを見つけたら心置き無く破壊出来るな。
とはいえ、今日はここまでだ。
ゆっくり休んで明日に備えることにした。
「・・・えっと、今日も駄目かな?」
『ご主人様、もう2、3日はゆっくりして下さいね』
という事で今日も抱けないらしい・・・
◇◆◇◆
今日も朝から鉱山に来ている。
ただし俺はひたすら支援スキルを使うだけだ。
「そろそろ大丈夫だと思うんだけどな・・・」
『『まだ駄目です!』』
アイラ達から戦闘をするなと言われていた。
俺の身体を心配しての言葉だろう。
・・・それは分かっているのだが、元気になったことを証明しないと夜の生活が正常に戻らない。
口だけでは説得力が無いからな。
だからモンスターとの戦闘で復活したことを示すのが一番なんだが、そもそも戦闘させてくれない。
「本当にもう大丈夫だからさぁ・・・」
『『しつこい! もう少し待ちなさい!』』
「あ、は、はい・・・」
だ、駄目だ。
取り付く島も無い・・・
しかし、俺抜きでもサクサクと鉱山の奥に進んで行った。
もちろん、後方から支援スキルを使っているんだが。
「傍から見ると俺ってヒモに見えるかな?」
今の状態を見るとアイラ達に戦闘させて俺は後方でただ見ているだけのように見えるよな。
『う~ん、どうだろうね? ひょっとして気になるの? レックス』
そりゃあ、気になるだろう。
ヒモだよ? ヒモなんて男して恥ずかしいよ?
『皆、気を付けて! モンスターが来る!』
先頭を歩いていたアイラがモンスターの気配を察知したようだ。
『ロックタランチュラなのじゃ!』
ジーナが素早く分析をしてモンスターの名前を告げた。
確か、ランクDの毒持ちモンスターだったよな。
「気を付けろ! 毒持ちのはずだ!」
『『了解です!』』
サーシャとシェリーが魔弓と火魔法で先制攻撃をし、ジーナを先頭にアイラとナギサが左右に分かれてロックタランチュラに向かって行った。
サーシャとシェリーの先制攻撃で既に虫の息になっていたロックタランチュラではアイラ達の敵では無かった。
『レックス殿、魔石とドロップアイテムです』
ナギサが持ってきたドロップアイテムは鉱石だった。
よく見ると鉱石の中に白い蜘蛛糸のような筋がたくさんあった。
『蜘蛛鋼糸石という名前のようじゃな』
ジーナが鉱石の名前を分析してくれたが名前しか分からない。
まぁ俺達は鍛冶士じゃないしな。
とりあえず魔石とドロップアイテムをマジックバッグにしまって先に進んだ。
その後もロックキャタピラ、ロックモス等、名前にロックが含まれるモンスターが現れた。
「虫系モンスターが多いな」
『でも火魔法が効きやすいから楽よね』
確かにシェリーの火魔法が大活躍している。
もちろん、俺の魔力支援が必須なんだが。
そしてロック系モンスターのドロップアイテムは鉱石ばかりだった。
もし売れなかったら処分に困りそうだ。
もちろん、報酬も減ってしまうよな。
そろそろ戻ろうかと思ったがアイラが新しいモンスターを探知したようだ。
『ご主人様、向こうにかなり強い気配を感じます』
「ひょっとしたらダンジョンコアか?」
そう思ったがそんなに甘くはなかった。
アイラが指示する方向に向かうと巨大な空洞にたどり着いた。
どうやら鉱石の最奥のようだった。
その空洞の中央には巨大なモンスターがいた。
その巨大なモンスターは前世の図鑑で見たことがある姿をしていた。
その図鑑の名前は恐竜図鑑だ。
まるでステゴザウルスにそっくりだった。
『マスター、あれは岩石竜らしいのじゃ』
ジーナの分析スキルで名前は分かった。
モンスター図鑑によるとランクBモンスターらしい。
"竜"種は亜龍種とも呼ばれており、本物のドラゴンとは違うらしい。
そしてモンスター図鑑によると岩石竜は亜龍種と呼ばれる種族の中では最弱種である、と記載されていた。
最弱種である理由は魔法攻撃をしてこないことだけらしい。
「最弱種でもランクBモンスターなのか」
『ご主人様、どうしますか? ここは一度撤退しても良いかと思いますが・・・』
どうやら岩石竜は寝ているようだ。
いまなら気付かれずに撤退することも出来る。
「そうだな・・・無理して竜と戦う必要は無いよな。無理をしないで撤退するか」
岩石竜が寝ているうちに撤退をしようとした時だ。
サーシャが何かを見つけたようだ。
『旦那様、向こうを見て。冒険者がいるようだよ』
サーシャが指を指した方向を見ると、確かに冒険者パーティーがいた。
俺達と同じように撤退するかと思ったら岩石竜に近付いてる。
「まさか、寝込みを不意討ちするつもりなのかな?」
『そう見えるよね』
マジか・・・
馬鹿なのか、それとも竜に勝てるほどの実力があるパーティーなのか。
その答えはあっという間に出た。
答えは馬鹿だった。
『ぐおぉぉぉ・・・』
『ぐはぁぁぁ・・・』
岩石竜に襲い掛かった冒険者達は岩石竜と尻尾になぎ倒されてしまった。
まだ全員生きているようだが放っておくと岩石竜に殺されてしまうな。
馬鹿を助ける義理は無いんだけどな。
『レックス殿! 彼らを助けましょう!』
ナギサがそう言うとアイラ達も助ける気満々のようだった。
こうなると反対しずらいな。
「仕方が無いぁ、助けに行くか」




