0096:将来に備えるか?
キラーマンティスは威嚇ポーズを取っているが攻めてくる様子が無い。
「あれって近付くと、あの鋭いカマで一気にやられるんだよな?」
『ねぇ、旦那様。もう一度魔弓を放ってみる?』
「そうだな。迂闊には近づけそうに無いしな」
サーシャとシェリーが魔弓と魔法の準備をしているがキラーマンティスは静止したままだ。
なんか不気味だな。
一度は魔弓と魔法を喰らってダメージを負っているはずなのに。
そう思った瞬間だった。
魔弓と魔法が放たれたと同時にキラーマンティスが羽を広げて飛んだ。
ヤ、ヤバい!
奴はこの瞬間を狙っていたのだ。
サーシャとシェリーが攻撃をする瞬間をだ。
キラーマンティスは俺を飛び越してサーシャとシェリーを狙っていた。
「く、くそっ! させるかぁー!」
俺は村正をその場に捨て、急いで後ろを振り向き、サーシャとシェリーがいるところに向かって走り出した。
サーシャはシェリーは後衛だ。
キラーマンティスのカマで斬り掛かれたら一溜まりもない。
俺はサーシャとシェリーに向かって飛び込んだ。
幸いなことにキラーマンティスの飛行速度はそれほど速く無かったため、俺の方が少しだけ速かった。
飛び込んだと同時に二人を押し飛ばした。
その際に二人の胸を思い切り掴んだのは愛嬌だ。
しかし、キラーマンティスのカマが俺の背中から襲い掛かってきた。
キラーマンティスのカマが俺の両肩に突き刺さった。
「ぐおぉぉぉ・・・」
い、痛い・・・
キラーマンティスのカマは俺の両肩からすぐに抜かれたようだが痛みで気を失いそうだ。
後ろのほうからアイラ達の声が聞こえてきた。
『ご主人様から離れろ!』
『マスターの敵討ちなのじゃ!』
『レックス殿に何しやがる!』
1人、勝手に俺が死んだことにしている奴がいるようだが、俺はまだ死んでいないぞ・・・
しかし、ここで気を失ったら本当に出血多量で死んでしまうかも知れない。
気を失う前に回復支援で傷口を何とかしないと。
「回復支援、回復支援、回復支援、・・・」
回復支援を次々と発動させた。
これでもかってくらい回復支援を発動させた。
すると徐々に痛みが和らいできた。
それでも回復支援を続いて発動させている。
回復支援を何回発動させたか分からないほど回復支援を発動させた。
しかし、そのおかげでキラーマンティスのカマにやられた傷口は完全に回復した。
俺が回復したのと同時にアイラ達がキラーマンティスを討伐したようだ。
「あー、討伐しちゃっ・・・」
俺が言い終わる前にアイラ達が俺に抱きついて来た。
『ご、ご主人様ぁ・・・大丈夫ですか?』
『ぐすっ、旦那様ぁ・・・』
『マスターよ、ちゃんと生きているのか?』
『レックスぅ、平気なのぉ?』
『レックス殿・・・痛くない?』
皆、半泣きになっていた。
「心配かけてすまなかったな。ちゃんと回復したよ」
そう言って立ち上がろうとしたが上手く立てなかった。
膝がガクガクして尻餅をついてしまった。
どうやら血を流し過ぎてしまったようだ。
「はははは、ちょっと足に力が入らないようだな」
すると何故かアイラ達が突然ジャンケンを始めた。
何のためにジャンケンをしてるんだ?
『よし、私の勝ちですよ。さぁ、レックス殿。私の背中に乗ってください』
え? 俺がナギサの背中に乗るの?
どうやら誰が俺を背負うのかをジャンケンで決めていたらしい。
確かに足がガクガクしているから仕方が無い。
ちょっと恥ずかしいけどナギサの背中に乗ることにした。
それにしてもナギサの髪から良い匂いがするよな。
ナギサに背負われたまま、いつの間にか眠ってしまった。
◇◆◇◆
「う~ん、なんだ? お、重いぞ? それに此処はどこだ?」
よく見ると俺達の馬車の中だった。
鉱山の奥に行ったはずなんだが・・・
「・・・そうか、キラーマンティスにやられたんだっけ」
鉱山の奥であった出来事を思い出した。
そして身体が重い理由も分かった。
アイラ達が俺の身体にしがみ付いていたからだった。
俺が起きようとしたために寝ていたアイラ達を起こしてしまった。
『ご主人様、身体のほうはもう大丈夫なのですか?』
『旦那様、もう平気なの?』
『マスターよ、まだ寝ていたほうが良いのじゃ』
『レックス、無理しちゃ駄目よ』
『レックス殿、痛いところは無い?』
「あぁ、もう大丈夫だよ。それよりも腹が減ったよ」
大量に血を失ったからか肉が食べたいな。
『うん、分かった。すぐに食事の用意をするよ。旦那様、オークの最上級霜降り肉を出してくれる?』
マジックバッグからオークの最上級霜降り肉を取り出すとサーシャは素早く一口サイズに切り取って刻んだ。
馬車の外ではアイラ達が火の準備を完了させていた。
最上級霜降り肉に塩をかけて、軽く火で炙って一口。
「う、旨いな。まるで口の中で肉が溶けるようだな」
『『うま~い! 噛まなくていいね!』』
塩をかけただけで十分な味付けになった。
さすがオークキングがドロップした肉なだけはあるな。
「さてと、とりあえず今日はギルドに行って魔石とドロップアイテムの買い取りをしてもらった後は散策するか」
元々、ドワーフ国に来た理由はマジックアイテムの購入と馬車のパワーアップのためだ。
『あ、そうだ。レックス、忘れてたけどキラーマンティスが宝箱をドロップしていたわよ』
そう言ってシェリーが宝箱を渡してきた。
銅色の宝箱だった。
「ランクBモンスターなのに銅色の宝箱かぁ」
『何を言っているのよ、普通は宝箱をドロップすること自体がラッキーなのよ』
シェリーの言う通りだよな。
頻繁に宝箱を獲得していたからラッキーなのを忘れていた。
「そういえば、キラーマンティスをどうやって倒したんだ?」
すっかりと忘れていた。
キラーマンティスのカマにやられた後はひたすら回復していたからキラーマンティスを倒したところを俺は見ていなかった。
『あぁ、それですか。それなら逆上したアイラが1人でなます斬りしちゃいましたよ、旦那様』
「・・・え? 1人でなます斬り? というか1人でキラーマンティスを倒したのか?」
アイラの顔を見ると顔を真っ赤にしていた。
ちょっと照れくさそうにしていた。
『旦那様、アイラを怒らせると旦那様もキラーマンティスのようになます斬りにされちゃいますよ?』
いやいや、それって洒落にならないよ?
『あ、そうだ。そんなことよりも私達のレベルが上がっていたからレックスのレベルも上がっているんじゃないの?』
そんなことって・・・凄く大事なことだよ。
なます斬りにされたら死んじゃうんだよ?
・・・ってレベルが上がっているのか?
とりあえずステータスを確認しないとな。
「ステータスオープン・・・どれどれ・・・」
確かにレベルアップしていた。
レベルアップと同時にジョブスキルの選択リストに新しいスキルが追加されていた。
「確かにレベルアップしてるな。しかも新しいスキルが2つもリストに追加されているな」
『レックス殿、本当ですか? どんなスキルなんですか?』
「ちょっと待って。確認するから」
新しくリストに追加されたスキルを説明した。
説明が終わった後、アイラ達がもの凄く微妙な表情をしていた。
新しくリストに追加されたスキルは
【経験支援Ⅱ】
経験値獲得時に術士のレベルx10ポイントの経験値を自分を含むパーティーに自動支援する。
【性欲支援Ⅱ】
性欲が2割アップする。
であった。
【経験支援】は明らかに有効な支援だ。
しかも自動発動するらしい。
これは獲得で決定だ。
しかし【性欲支援】は不要だよな。
少なくとも現時点では必要無いな。
俺は不能者じゃないし。
しかも性欲が2割アップってどんくらいだよ?
・・・でも、将来は必要になるのかな?
だとしたら持っていても損は無いのかな?
そんなことを考えていたがシェリーから釘を刺された。
『レックス、まさかそんな恥ずかしいスキルは取らないわよね?』
「あ、当たり前じゃないか」
という事で、【性欲支援】は保留とした。
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名前:レックス
種族:ヒューマン
年齢:17
レベル:12
ランク:C
ジョブ:支援術士
ジョブスキル:
【攻撃支援Ⅱ】【防御支援Ⅱ】【回復支援Ⅱ】
【回避支援Ⅱ】【強化支援Ⅱ】【魔力支援Ⅱ】
【魔法支援Ⅱ】【隠密支援Ⅱ】【隷属支援Ⅱ】
【経験支援Ⅱ】
加護:
【経験値2倍】【無詠唱】
【ジョブスキル全体化】【無限魔力】
【回復魔法】【刀剣術】【マッピング】
名前:アイラ (主人:レックス)
種族:狐人族
年齢:20
レベル:11
ランク:C
ジョブ:軽戦士
ジョブスキル:
【双剣Ⅱ】【速度強化Ⅱ】【腕力強化Ⅱ】
【剣撃強化Ⅱ】【連撃強化Ⅱ】
加護:
【状態異常攻撃】【生活魔法(火)】
名前:サーシャ (主人:レックス)
種族:エルフ
年齢:18
レベル:10
ランク:C
ジョブ:魔弓士
ジョブスキル:
【魔弓】【命中率補正】【誘導矢】
【弓強化】
加護:
【付与魔法】【風魔法】【異常回復】
名前:ジーナ (所有者:レックス)
種族:ヒューマン (人工生命体)
年齢:19
レベル:12
ランク:C
ジョブ:重騎士
ジョブスキル:
【盾術Ⅱ】【大剣術Ⅱ】【挑発Ⅱ】
【シールドアタックⅡ】【速度補正Ⅱ】
加護:
【解析】【罠探知】【生活魔法(光)】
名前:シェリー
種族:ヒューマン
年齢:19
レベル:11
ランク:C
ジョブ:魔法使い
ジョブスキル:
【火魔法Ⅱ】【詠唱短縮Ⅱ】【範囲魔法Ⅱ】
【魔力制御Ⅱ】【水魔法Ⅱ】【精神強化Ⅱ】
加護:
【杖術】
名前:ナギサ
種族:ヒューマン
年齢:18
レベル:9
ランク:E
ジョブ:薙刀使い
ジョブスキル:
【薙刀術】【腕力強化】【刀撃強化】
【体術】
加護:
【回復魔法】