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0092:旅は道連れ


『折角、ドワーフの店に来たんだからドワーフ料理を味わって行きな』


このオッサンは突然何を言っているのか。

俺が何を食べようが自由だろうに。


『オヤジ! 俺の奢りだ、こいつらにドワーフ料理を食わせてやってくれ!』


このオッサンはあくまでも辛い料理を俺達に食わそうというのか。

わざわざ奢ってくれる必要も無いのに。


『おいおい、良いのか? ヒューマンにドワーフ料理は厳しいんじゃないのか?』


『がははは、金を払うのは俺だ! だから大丈夫だ!』


いやいや、その理屈はサッパリと分からないぞ。


『まぁ誰でもいいが金を払ってくれるなら文句は無いがな』


ちょっと待て。

俺は文句があるぞ。

何で無理して辛い料理を食べないといけないんだ?


『だろ? なら問題は無いはずだ』


『あぁ、全く問題は無いな。よし、1品目が出来たぞ。どんどん作るからな』


会話が進んでいくうちに料理が出来てしまった。

1品目からかなり辛そうな匂いがしてくる。


『よっしゃ、どんどん辛くなっていくからな』


オヤジと呼ばれたオッサンが気合いを入れて辛い料理を作っていく。


ふと1品目の皿を見ると空になっていた。

アイラ達が食べきっていた。


「お、お前達・・・大丈夫なのか? かなり辛そうな匂いがしていたけど?」


『そんなに辛くなかったですよ、ご主人様』

『言うほど辛くないよね?』

『そうなのじゃ。次に期待なのじゃ』

『程々の辛さだったよね』

『そうね、程々よね』


えっと、マジか。

実は匂いほど辛くはないのかな?


一皿目に残っていた欠片を口に入れてみた。


か、か、辛い・・・

辛口が苦手な俺には絶対に食べられない。


「み、水をくれ・・・」


『なんだぁ、だらしねぇな。ほらよ、水だ』


「す、すまない」


テーブルの上に水が置かれた。

あまりの辛さに出された水をイッキ飲みした。


「ぶっほぉっ、なんだ? これって酒じゃないのか?」


『何を言っているんだ? こんなのは酒のうちに入らねぇぞ。普通の水だ』


マジか、ドワーフの味覚は特殊なのか?

あ、ヤバい・・・目が回ってきた・・・


俺の記憶はここで完全に途絶えた。


◇◆◇◆


「うん? ここは俺達の馬車の中か?」


なんで馬車の中で寝ているんだ?

両腕、両足に柔らかい感触がある。

そして股間に重さを感じるな。


どうやらアイラ達のようだ。

俺の股間を枕にしているのはサーシャだった。


『あ、旦那様。おはようー、体調は大丈夫?』


「え、何のことだ? というか、俺達は何で馬車で寝てるんだ?」


『え? まさか昨日のことを覚えていないの?』


そう言われて昨日のことを思い出そうとしたが何も思い出せなかった。

ただ、口の中が少しヒリヒリするくらいだ。


『ご主人様、とりあえず朝食にしましょうか』


朝食を食べながらアイラから昨日の出来事を聞かされてようやく思い出すことが出来た。

俺が酒に酔って倒れたからハウステントが出せずに馬車で寝ることになったらしい。


「酷い目にあったな・・・これからはドワーフ料理には気を付けないとな」


『そんなに言うほど辛くなかったよね?』

『マスターは弱すぎなのじゃ』

『レックスの味覚はお子様なのよね』


「いやいや、皆の味覚がおかしいんだって。舌が痺れるほど辛かったはずだって・・・」


『まぁまぁ、レックス殿。そんなことよりもドワーフ国にはいつ出発しますか?』


俺の主張は完全に流されつつあった。

あまり主張しても子供扱いされるだけだよな。

ここは俺から折れておいてやろう。


「どのみち途中で野営するならいつ出発しても同じだよな。なら朝食後に出発するか」


ということで朝食後にドワーフ国に向けて出発することにした。


とはいっても食材の調達は必要だ。

ドワーフ国内で調達するのはかなりリスクが高いので避けたい。


結構な量の食材を購入してから出発した。

結局、出発は昼前になってしまった。


「結構、馬車が多いな」


昼前に出発したので他の馬車はいないと思っていたがそうでは無かった。

向かう先はドワーフ国なのだろう。


よく見ると馬車の集団の中に冒険者らしき集団もいた。


『あの馬車の持ち主達に雇われているようですね、ご主人様』


馬車の持ち主達がそれぞれ金を出し合って冒険者を護衛として雇ったのか。


「揉め事になっても困るからさっさと追い越すか」


『それがいいです。では少しスピードを上げますね』


御者席にいたアイラが馬車のスピードを上げて馬車を集団を追い抜いた直後に後方から悲鳴が聞こえてきた。


『マスター、あれはグリーンウルフなのじゃ』


どうやら街道沿いの草むらに潜んでいたグリーンウルフの群れに襲われているようだ。

グリーンウルフは名前の通り全身が緑の毛に覆われていた。


ぱっと見たところ、グリーンウルフは10匹くらいの群れだった。


『ご主人様、どうしますか?』


どうしますか? と聞かれても見捨てるわけにはいかないのは分かっているだろうに。


「仕方が無いよな。助けに行くか」


馬車を停止させてグリーンウルフを蹴散らしに向かった。


「おい! 助けが必要か?」


一応、護衛の冒険者がいるので助けが必要か確認する。

護衛の冒険者は4人だけだった。



『あ、あぁ、もちろんだ! 手助けを頼む!!』


グリーンウルフはランクDモンスターだが動きが少し素早かった。


・・・いや、かなり素早い。

サーシャの魔弓が全く当たらない。


「なんでこれでランクDなんだ?」


最初はランクの付け方がおかしいのでは? と思ったがグリーンウルフには欠点があった。

襲い掛かってくる際に飛び跳ねて噛み付こうとしてくる。


しかし飛び跳ねて来るときには折角のスピードが活かされない。

空中では方向転換が出来ないからだ。

つまりは空中に飛び跳ねている時が狙い時だった。


サーシャとナギサが次々とグリーンウルフを倒していった。

グリーンウルフ達は半数ほど倒されたところで逃げ出した。


グリーンウルフの魔石とドロップアイテムを回収していると護衛と思われる冒険者達が近寄って来た。


『ありがとうございます。おかげで助かりました!』


よく見ると俺よりも若そうな男4人組だった。

見るからに駆け出しの冒険者といった感じだ。


「まぁ気にしないでくれ。それよりも俺達が倒したグリーンウルフの魔石とドロップアイテムはもらうぞ?」


『それはもちろんですよ。あなた達が倒したんですから』


素直な若者だな。

とりあえず揉め事にはならなそうで何よりだ。


『あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。僕達は【草原の虎】というパーティーです』


草原の虎が草原の狼に負けそうになっちゃ駄目だろうに。


「俺の名前はレックス。俺達はまだパーティー名が無いんだ」


そう言ってお互いに自己紹介した。

すると馬車の集団のほうから1人の太った年配のおっさんがやって来て話し始めた。


『皆さんがグリーンウルフ達から助けてくれた冒険者さん達ですか。危ないところを助けてくれてありがとうございました。ところで我々はドワーフ国に向かっている商人なんですがあなた方もドワーフ国に向かわれているのでは?』


「まぁ、一応そうですが・・・」


なんか嫌な予感がする・・・


『もしよろしければドワーフ国まで御一緒しませんか?』


やっぱりだ・・・

ここは断ろう。どう考えても邪魔だしな。


「申し訳無いですが俺達は急いでいるので・・・」


断ろうとしたら馬車のほうから小さな女の子がやって来た。

小さな女の子はおっさんの足にしがみついて俺達のほうを見ている。


見た感じ5~6歳くらいだろうか。

中々可愛いらしい女の子だ。


『じぃじ、まだ行かないのー?』


「ひょっとして、この子はお孫さんですか?」


『そうなんですよ。儂の自慢の可愛い孫娘なんですよ』


何でかは分からないが孫娘と一緒なのか。

男だけなら自己責任で頑張れと突き放すところなんだがな。


アイラ達のほうを見るとアイラ達も仕方が無いという顔をしていた。


『分かりました。御一緒しましょうか』


『本当ですか? いやぁ、ありがたいです』


『じぃじ、このお兄ちゃんとお姉ちゃん達も一緒に行くのー?』


『あぁ、そうだよ。マリア、ちゃんと挨拶をしなさい』


『は~い、あたし、マリア。よろしくね。カッコいいお兄ちゃんと綺麗なお姉ちゃん達!』


さすが商人の孫娘だ。

持ち上げるのが上手だな。


『旦那様。この子可愛いですよね』


『はっはっは、そうだろう。なんと言っても儂の自慢の孫娘だからな』


放っておくとおっさんの孫娘の自慢の話が始まりそうだ。


「とりあえず、先を急ぎましょうか?」


『おぉ、そうですな。マリア、馬車に戻りなさい』


『じぃじ、あたし、お姉ちゃん達の馬車に乗ってもいい?』


へ? 俺達の馬車に乗るのか?


『いいわよ、マリアちゃん。ねぇ、旦那様?』


相変わらずサーシャは勝手に話を進めていく。

まぁ駄目という訳じゃないが。


「まぁ、いいんじゃないのか」


『わ~い、ありがとう! カッコいいお兄ちゃん!』


俺は決してロリコンでは無いが可愛い女の子にカッコいいと言われると嬉しいものがあるな。


ということで、マリアは俺達の馬車に乗ることになった。

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