0090:ドワーフの国へ
休暇にした翌日の朝、ギルドに向かった。
ダンジョン調査依頼の報酬を受け取りに行くためだ。
ギルドに到着して中に入ると素敵な笑顔をした受付嬢達が近寄って来た。
『レックスさん、お待ちしていましたよ』
『ささ、こちらにどうぞ』
な、なんだ? こんな待遇は初めてだぞ。
一体、何があったんだ?
受付嬢達に両腕を引っ張られて何故かギルド2階へ連れていかれた。
2階にある部屋に半ば強引に案内されると部屋の中にはガボットがいた。
『良く来てくれたな、レックス。まぁそこに座ってくれ』
ガボットに言われるままに部屋にあったソファに座った。
『この部屋に来てもらったのは1つは報酬を手渡すためだ』
ガボットがそう言うとソファの前にあるテーブルに布袋を置いた。
その際に布袋から聞こえた音からすると結構な枚数の硬貨の音がした。
『全部で白金貨3枚、大金貨8枚、金貨7枚、大銀貨5枚が入っているから確認してくれ。レックスパーティーの全員分だ』
布袋を受け取り中身を確認したがちゃんとあった。
「確かに受け取りました。しかし白金貨が3枚とは結構な額ですね」
せいぜい白金貨1枚も貰えれば御の字だと思っていた。
それでも十分な金額ではあるが。
『いや、そうでも無いさ。オークキングを倒して宝箱までドロップしているからな』
そういえば宝箱が出たんだよな。
すっかり忘れていたが。
「そういえば、宝箱の中からアイテムは出たんですか?」
『あぁ、出ることは出たが多分、レックス達は興味無いと思うぞ』
ガボットから教えてもらった宝箱から出たアイテムは本当にゴミのようなアイテムだった。
欲しがるのは無駄なものを集めている貴族くらいだろうな。
「俺達をこの部屋に招いた理由はまだあるんですよね?」
『そうだな。むしろこっちが本題になるな』
ガボットは少し勿体つけて話をしてくるな。
さっさと用件を話して欲しい。
『お前達、ドワーフの国に行きたいらしいな?』
誰からその話を聞いたんだろうな。
まぁ隠しているつもりは無いし、個人情報が駄々漏れの世界なのであまり気にしていない。
「・・・あぁ、そろそろドワーフの国を目指して出発するつもりだよ」
『そうか。なら丁度良いな。お前達に依頼したい事があるんだ。しかも出来る限り急ぎでだ』
「俺達に依頼? それって指名依頼だと思っていいのか?」
『あぁ、もちろんだ』
「それで、その指名依頼ってどんな内容なんだ?」
『ドワーフの国にポーションを運んで欲しいんだ。それも急ぎでな』
「ポーションを運ぶ? それなら俺達じゃなくても良いんじゃないのか?」
『いや、出来ればレックス達に頼みたいんだ。最近、街道沿いに盗賊が蔓延っているからな。出来る限り、腕の立つ冒険者に依頼したいところなんだよ』
腕が立つと言われると悪い気がしないな。
それにドワーフの国には行くつもりだ。
なので、ついでに依頼をこなすのは吝かでは無い。
「しかし、何だって街道沿いに盗賊が蔓延っているんだ?」
ガボットが言うにはドワーフの国の鉱山でモンスターが大量に発生したらしい。
そして怪我人が多く出たためポーション等の物資が大量に運び込まれている。
なので当然、盗賊がそこに目を付けたということらしい。
当たり前といえば当たり前の話だ。
ドワーフの国で生産される武器、防具、アイテムの品質は優れているため、ドワーフの国からの輸入が減ると色々と困るとのことだった。
「ちなみにドワーフの国の鉱山にモンスターが大量発生しているのは今の続いているのか?」
『あぁ、鉱山のモンスターを鎮圧出来たという話は聞いていないな』
という事は危険はそれなりにあるということか。
「あと、ドワーフの国までどれくらい掛かるんだ?」
『そうだなぁ、検問所までは馬車で4~5日くらいで検問所からは3日くらいのはずだ』
意外とまだ遠いな。
それでも元々ドワーフの国には行くつもりだったから問題は無い。
「分かりました。その依頼を受けます」
『すまないな。明日、出発出来るか?』
「問題無いです」
『では、明日の朝にギルドに来てくれ。運んでもらいたい物資は準備しておく』
運ぶ物資の具体的な量を確認してギルドをあとにした。
「今日中に世話になった人達に挨拶をしないとな」
そう言っても、挨拶をしないといけない人はそれほど多くない。
受付嬢、ダンテ達、そしてセシリアくらいだ。
順番に挨拶をしていくことにした。
受付嬢やダンテ達は俺達が旅の冒険者であることをしっているのでサバサバしたもんだった。
しかしセシリアは半べそになっていた。
最後は、また遊び来るからということで何とか納得してくれた。
◇◆◇◆
無事に挨拶回りも終わりドワーフの国への出発の日が来た。
馬車でギルドの入口まで来た。
するとギルドの中から受付嬢が出てきた。
『おはようございます、レックスさん。運んで頂く物資の準備は出来ていますよ』
そう言われてギルドの中に入ってみると物資の木箱が山積みされていた。
事前には物資の量を聞かされていたが改めて目の前に積まれた物資の山はかなりの量だった。
嘘発見器があるため猫ババは出来ない。
しかも盗賊に奪われたりしたら罰金になるがかなりの金額になりそうだ。
とりあえず、目の前に山積みされた物資の箱を片っ端からマジックバッグにしまった。
「おぉ、意外と入るもんだな」
全員のマジックバッグを駆使して何とか収まった。
「それじゃあ、行ってくるね」
『はい、レックスさん。お気を付けて!』
大量の食材も購入しており準備万端だ。
町の門を出てドワーフの国へ向けて馬車を走らせた。
ちなみにオーヴゴット家からボルボルの実を貰っていたためゴブリンやコボルトは近寄って来なくなった。
「ボルボルの実は便利だよな」
小遣い稼ぎは出来ないが馬車の移動のスムーズになった。
『あいつらって本当に邪魔でしたからね。良かったですよね、旦那様』
町を出て数時間が経過した。
ゴブリンやコボルト等の低ランクモンスターは全く現れなくなったが今度は何も無さすぎて暇になってしまった。
御者がサーシャからアイラに交代したくらいだ。
『それにしても、アカとクロのスピードは素晴らしいですよ、ご主人様』
アカとクロはゴーレム馬の名前だ。
「本当に凄いよな。しかも、まだまだスピードが出せるしな」
町を出発した直後に一度スピードを上げてみたが馬車のほうが持たないと判断したのだ。
なのでドワーフの国で試したいことの1つに馬車の強化も加わっている。
『そろそろ夕方になりますね。野営の準備にしますか?』
ギルドで聞いた話によると最近盗賊が増えているんだよな?
だとするとハウステントを出すのはやめておいたほうがいいよな。
「このまま馬車で野営にするぞ」
『『了解しました』』
街道沿いにはいくつもの野営ポイントがある。
商人や旅人が使用した簡単な竈が残っているので焚き火の準備は楽だった。
夕食は焚き火で肉を焼くだけの簡単なものにした。
幸いにもオーク肉が大量にある。
先のダンジョンで大量発生したオーク討伐で大量に入手した。
オーク肉に塩を振りかけて炙るだけではあるが非常に旨い。
『やっぱりオーク肉は旨いですよね、旦那様』
サーシャだけでなくアイラ達も美味しそうにオーク肉にかぶり付いていた。
ただ、肉だけじゃなく野菜も欲しいよな。
夕食も終わり見張りの順番を決めた。
シェリー、ジーナ、俺、アイラ、ナギサ、サーシャの順とした。
見張りの順番を決めたので馬車の中で休もうとしたところアイラが街道沿いの草むらを見て言った。
『ご主人様、こちらを見ている気配がありますね』
早速、盗賊が現れたようだ。
アイラが気配を察知した場所はここから5~600mは離れている。
こちらから攻め込むにはちょっと距離が離れているな。
「さてと、どうするかな?」




