0087:オークとの決戦
そろそろダンテ達の体力が厳しいというところで笛の音がなり響いた。
『はぁはぁ、今度は何かしらね?』
ダンテは肩で息をしながら笛の音が聞こえてきた方向を見ている。
なんで笛が鳴ったのか分からないが笛が鳴った以上は集合しないといけないはずだ。
笛の音がした場所に向かうと既に数チームは集まっていたが怪我人が数人いた。
『お前達の中に回復魔法が使える冒険者はいないか?』
ガボットが俺達の姿を確認するや否や回復魔法の使い手がいるか確認してきた。
「俺ともう1人が回復魔法を使えるぞ」
ナギサと一緒に手を上げた。
『すまないがあっちの怪我人を回復してやってくれ』
ポーションは持っているだろうが出来れば戦闘中に使いたいというところか。
怪我人がいるところに行くと怪我人は3人いた。
『レックス殿、私の回復は2回しか使えないけど大丈夫なの?』
小声でナギサに伝えた。
「大丈夫だよ。俺が魔力支援するから」
俺が2人の怪我人に回復をしながらナギサに魔力支援をすることで怪我を治した。
『すまねぇな。しかし、あんた凄いな。2人同時に回復させるなんてな』
『ひょっとしたら、回復士なのか?』
「いや、違うよ」
『そうか。でもまぁ助かったよ、ありがとうな!』
相手のジョブやスキルに関しては追及しないのが冒険者のルールなのでそれ以上は追及されなかった。
怪我人を回復させたところで全チームが集合したようだ。
ガボットが何故集合をかけたのか説明をした。
『この先に3階層への階段があるのだが、その階段からオーク共が上がってくるのを確認した』
『マジか? モンスターって階層を移動しないんじゃないのか?』
『いや、稀に階層を超えてくるって話は聞いたことがあるぞ』
冒険者達が口々に話し合っている。
ダンジョンのモンスターは階層を超えることは滅多に無いというのは俺も聞いたことがあった。
あくまでも滅多に無いというだけで絶対に無いという訳では無いのだが、その滅多に無いことが今、発生しているということだ。
ガボットが話を続けた。
『ダンジョンのモンスターが階層を超えるというのは絶対に無いということでない。ただ何かが発生している可能性があるということだ。』
冒険者達は頷いている。
『現状を考えると2階層でオークを掃討するよりも3階層に進んで何が発生しているのか、そちらを確認することを優先したいと思う』
確かに3階層からオークが次々と上がってくるなら早く原因は確認したほうが良いよな。
『2時間ほど休憩したら3階層に進むからな』
ガボットから今後の方針を伝えられた。
そして2時間が経過し3階層に向かった。
「そう言えば3階層に来るのは初めてだな」
そもそもこのダンジョンには学院生徒の護衛でしか入っていないからな。
3階層に到着した。
巨大な木があちこちに生えている空間だった。
巨木だけでなく巨大な岩もゴロゴロしていた。
『よし、チーム5、6、7はゆっくり前進してくれ! チーム3と4は左右を警戒するだ!』
ガボットの指示で俺達は前進することにした。
結構扱いが酷い気がするな・・・
「また俺達が先頭なのか・・・」
『そりゃあ仕方が無いわよ。チーム5、6、7が一番戦力があるんだしね』
「え、そうなのか?」
『そうよ、他はランクDパーティーが混じっているわよ。そもそもランクBパーティーは2つしかいないしね』
そういうことなら文句は言えない・・・のか?
それよりもダンテは周囲を見ていた。
『ちょっとやりにくい場所よねぇ』
ダンテがため息をつきながら言った。
確かに巨大な木や巨大な岩はモンスター達が姿を隠すには最適だ。
「まぁ、俺達にはアイラがいるから大丈夫だけどな」
気配が完全にモンスターがいれば別の話になるが今のところはそのようなモンスターとは出会ったことは無いしな。
『ご主人様、右側の岩影にオークが2匹潜んでいます』
「サーシャ、誘導矢で岩を回避して魔弓を当てられるか?」
『ちょっと自信が無いけどやってみるよ』
そう言ってサーシャが魔弓を放った。
サーシャは自信無さそうであったが魔弓は見事に岩を回避したがオークには当たらなかった。
しかしオークを誘い出すことには成功した。
岩影から出てきたオークをシェリーのファイアボールが襲い掛かった。
『プギィィッ!』
『ブヒィィッ!』
炎に包まれたオークをアイラとナギサが素早く斬り倒した。
オークを倒した後、サーシャは何度か誘導矢の確認をしていた。
命中しなかったことが残念で仕方ないらしい。
『う~ん、やっぱり難しいなぁ・・・』
相手からすれば想定していない方向から矢が飛んで来るわけだしな。
命中しなくても牽制する上では有効な手段になる。
ダンテ達はサーシャの誘導矢に驚いていた。
『凄いわね、矢があんなに曲がるなんて驚きだわ』
確かに初めて見ると驚くよな。
とりあえず、ビックリしているダンテ達を放置して先に進むことにした。
オーク達は決して馬鹿では無いようで巨木の影や巨大な岩の影を利用していた。
索敵能力が無いと3階層はかなり苦労しそうな地形だ。
オーク達を倒しながら進んでいくと小高い丘に小さな砦みたいなものが見えた。
「なぁ、あれって以前からあったのか?」
『・・・いえ、少なくても私達は見たことも聞いたことも無いわね』
良く見ると砦には門があり、門の前には見張りと思われるオークが4匹いた。
「一度、本体に合流したほうが良いよな?」
『・・・そうね、それがいいわ』
オーク達に見つからないようにその場を離れて本体に合流した。
そしてガボットに砦のことを報告した。
「この先の丘に砦らしきものがあった。しかも門には見張りと思われるオークもいた」
『な、なんだと! オークが砦を建てたのか? ひょっとするとオーク共を纏めている存在がいるのかも知れないな・・・』
ガボットはチーム1、2に対して指示を出していた。
『至急、各チームに戻ってくるように伝えるんだ! 大至急だぞ! それと砦の確認もだ!』
指示を受けたチーム1、2は急いで伝達と砦の確認に向かった。
そして指示を終えたガボットは俺達に対して少し休憩しておくようにと言った。
暫くすると各チームが続々と戻ってきた。
『おいおい、マジで砦があるのか? オークだろう?』
どうやら他の冒険者達は疑心暗鬼のようだ。
俺も自分の目で見てなかったら疑うだろうな。
『まぁ待て。そろそろ確認しに行ってるメンバーが戻って来るはずだ』
すると砦の確認をしに行っていた冒険者達が戻って来た。
『確かに砦があったぞ! そこの坊主の言う通りだった!』
だから、俺は坊主じゃない!
『マジか! オークが砦を作っているのか』
『だとすると、その砦からオークが量産されている可能性があるのか』
ガボットは軽く咳払いをして話し始めた。
『皆、もう分かっている通りオークの砦が確認されている。このまま砦を放置するわけにはいかない。一気に砦を叩き潰すぞ!』
『『おぉぉぉ!!』』
『作戦を伝えるぞ。まず遠距離攻撃が出来る者は見張りを倒してくれ』
すると十数人が手を上げた。
サーシャもだ。
『次に火魔法を使えるのは何人いる?』
手を上げたのはシェリーも含めて4人だった。
火魔法限定だからかも知れないが魔法使いの数は少なかった。
『お前達はオークの砦を燃やすことに専念してくれ。その他の者は砦から出てくるオーク共を根絶やしするんだ』
作戦は至ってシンプルだった。
『異論は無いか? 異論が無いようなら1時間後に作戦を開始するから各自休憩してくれ』
特に他の冒険者から異論は出なかった。
それぞれが自分のパーティーで集まっていた。
まぁそのほうが落ち着くのは間違い無い。
そして1時間が経過した。
『よし、皆、準備は良いか?』
全員が軽く頷いた。
『作戦開始するぞ! 進めー!』
ガボットの合図で全員が一斉に行動を開始した。




