0086:オークが湧いてくる
『ねぇねぇ、レックスちゃん。私達の麗しい戦いをちゃんと見てくれたかしら?』
「えっと、ちゃんと見たよな? サーシャ?」
『え、な、なんで私に振るのよ、旦那様!』
「いや、サーシャなら上手い言い方を出てきそうだしな・・・ほら、俺って口下手だしさ!」
『ず、狡いよ、旦那様!』
皆がサーシャのほうに視線を向けた。
サーシャよ、すまんな。
俺にはあの戦いを上手く総括する言葉が見つからないんだよ。
少なくとも麗しさの欠片も無かったことだけは確かだ。
『えっと、そうねぇ、あの凄い戦いを言葉にするならねぇ・・・餓えた熊に戦乙女が降臨したような戦いでしたよ?』
え? 餓えた熊に戦乙女が降臨?
それを言うなら逆じゃないのか? 戦乙女に餓えた熊が降臨じゃないのか?
ヤバいと思い恐る恐るダンテ達を見ると何故かダンテ達はポーっとしている。
『戦乙女・・・良い響きだわ・・・最高よ』
どうやら、戦乙女と言う言葉だけで満足したようだった。
ダンテ達はサーシャに握手を求め始めた。
サーシャよ、素晴らしい言葉だったぞ。
『マスターよ、そろそろ先に進むのじゃ』
ジーナはマイペースだった・・・
サーシャがチーム瓦解の危機を救ったのに。
『ご主人様、この先にオークの上位種が4匹います』
まだオークがいるのか。
やはり2階層はオークが溢れているようだ。
「今度は俺達が倒すよ」
そう言ってアイラとジーナを先行させた。
いつものようにサーシャの魔弓とシェリーの魔法で先制攻撃し、その後に俺達が止めを刺した。
その後も何度かオーク共を倒した。
『はぁはぁ、レックスちゃん達は全然息切れしていないわね。一体、どういう体力をしているのよ?』
俺の強化支援のおかげなんだが、あまり手の内を晒すのは良くないよな。
「まぁ、それなりに鍛えているからね」
これは嘘じゃない。
結構、モンスター退治をこなしているからな。
『確かに旦那様は依頼を受ける時は毎日のように依頼を受ける時があるからね』
『え、レックスちゃん達、そんなに依頼をこなしているの?』
え~と、確かにまとめて依頼をこなすこともあるな。
『ま、まぁ、たまに・・・かな』
『なるほどね、レックスちゃん達が強い理由が分かったわ』
とりあえず納得してくれたようだ。
すると笛の音が聞こえてきた。
確か本体に集合する合図だったよな。
『本体に何か合ったのかしら? とりあえず本体に合流しましょうか、レックスちゃん』
魔石とドロップアイテムを回収して本体に合流すべく戻った。
本体に合流すると他のチームも続々と戻ってきた。
全チームが戻ってきたところで、ガボットが合流の合図を送った理由を説明した。
『今日はここで野営するぞ。まだ先は長そうだからな。まだ無理をする必要は無いからな。休息取れるところで休息にする』
どうやら本体は休息が出来る場所を探していたようだった。
良く見ると全員が横になれるスペースがあった。
もちろん見張りを必要だが。
『それじゃあ、各チームで見張りの順番を決めてくれ。5交代で頼むぞ!』
各チームで見張り時間がバラバラにならないようにする訳か。
とりあえず、ダンテ達と見張りの順番を相談しないとな。
「それで見張りの順番なんだが・・・」
『あ、私はレックスちゃんと同じなら順番はどこでも良いわよ』
『ズルいわよ、ダンテ! 私もレックスちゃんと同じが良いわ!』
ヤ、ヤバい・・・
間違っても【麗しの花】メンバーとの見張りはしたくない。
色々と理由をつけた。
我ながらかなり無茶苦茶な理由だった。
しかし何とかなるもんだった。
その結果、【麗しの花】メンバーと一緒の見張りを回避することが出来た。
1番目は俺、シェリー
2番目はアイラ、ヤンヌ
3番目はジーナ、メッシュ
4番目はナギサ、ビロード
5番目はサーシャ、ダンテ
1番目の見張りは俺とシェリーだ。
見張りをしている最中は暇なので会話していた。
『レックス、かなり必死だったわね』
「いや、当たり前だろう・・・」
『でもダンテ達は凄く良い人よ?』
それは分かっているつもりだ。
ダンテ達は良い悪いでいえば良い人達だろう。
それは間違い無いと思う。
・・・オネエじゃなければ素直にそう思えるんだけどな。
『そう言えば、ダンテ達から男の落とし方を習ったのよ』
「は? 男の落とし方?」
いやいや、ダンテ達に落とせる男なんていないだろう?
『そうよ。今度、試してあげるわね』
「えっと、何か怖いんだけど・・・」
本当に物理的に落とすんじゃないよな?
絞め落として拉致監禁とかじゃないよな?
何か恐ろしいことが想像出来てしまった。
そして見張りの交代時間になった。
本来ならすぐにでも寝たいところだがシェリーから聞いた話が気になって中々寝付けなかった。
◇◆◇◆
翌朝、少し寝不足であった。
欠伸が止まらない。
『あら? レックスちゃん、寝不足? 駄目よ、冒険者たるものが寝不足なんて』
そう声を掛けてきたのは俺の寝不足の原因であるダンテだった。
「ちょっとだけ寝不足だけど探索には影響しないようにするよ」
『分かったわ。頑張って頂戴よ、レックスちゃん。チュッ』
頑張るから投げキッスだけは止めてくれ!
そういうところが寝不足の原因なんだから。
アイラ達も起きてきたので全員で朝食にした。
他のチームも朝食を食べ始めているようだ。
朝食後にガボットが本日の予定を説明した。
『今日も引き続き、2階層のオーク共を掃討する。そして出来れば3階層まで辿り着きたい』
『おっしゃー! やるぞー!』
『一気に稼ぐぞー!』
『オーク共よ、待ってろよ!』
他の冒険者達はかなり元気な様子だ。
『レックスちゃん、私達も行くわよー!』
残念ながらチーム編成は変わらずだ。
誰も大きな怪我をしていないしな。
昨日と同じようにアイラがオークを探しだし、俺達とダンテ達で交互にオークを討伐していった。
ただし、オークの数によっては順番を交代したりした。
結果的に俺達が上位種を多く倒すことになったがあまり気にしていない。
それよりもオークを多く倒したことでレベルアップした。
「よしっ、レベルが上がったぞ」
俺だけでなくアイラ達もレベルが上がった。
ステータスを確認するとスキル表示に変化があった。
「あれ? スキルに "Ⅱ" が付いたぞ」
『へぇ、レックスちゃんって意外とレベルが高かったのね。レベル11になると習得したスキルの効果がアップするのよ』
ダンテの言う通り、ステータスを確認してみると確かにスキルの効果が上がっていた。
【攻撃支援Ⅱ】
術士のレベルx12のダメージ付与を自分を含むパーティー全員に支援する。
【防御支援Ⅱ】
術士のレベルx12のダメージ軽減を自分を含むパーティー全員に支援する。
という具合だった。
これが "Ⅱ" になった効果のようだ。
「確かにスキルの効果は上がっているけど微々たるもんだな」
『それでも上がらないよりはマシでしょ? ねぇ、レックスちゃん』
それもそうだよな。
あと、ダンテ達がいるので言わなかったが新しいスキルが取得出来た。
【隷属支援Ⅱ】
術士に隷属している全員の能力を術士レベルx2%向上させる。
これが新しく取得したスキルだ。
内容だけ見ると結構凄い能力だよな。
条件はあれだけど・・・
後で皆に相談しないとな。
アイラ達の顔を見るとアイラ達も新しいスキルを取得したようだ。
『それにしてもレックスちゃん達で強い訳が分かったわ。まさかレベル11だったなんてね。正直、驚きだわ』
「そんなに驚くところなのか?」
『そりゃあそうよ。レックスちゃんの年齢でレベル10超えなんて聞かないわよ』
まぁ、俺の場合は経験値2倍があるからな。
もちろん言えないけどな。
「まぁ、それなりに戦闘経験だけは豊富だからね」
社畜経験が身に染み付いているのか何故か働いていないと落ち着かないんだよな。
なので結果として沢山の依頼をこなしてきた。
それにしても、レベル11でスキルが "Ⅱ" になったということはレベル21になるとスキルが "Ⅲ" になるのかな?
『さてと、レックスちゃん達が更に強くなったことだし先に進むわよ』
引き続き、オークを倒しつつ先に進んだ。
しかしオークをかなり倒しているが打ち止めになる様子が無い。
まるでゴブリンのようにオークが湧いてくる。
「キリがないな・・・」
『はぁはぁ、本当よね・・・』
ダンテ達の体力もそろそろ限界かな。
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名前:レックス
種族:ヒューマン
年齢:17
レベル:11
ランク:C
ジョブ:支援術士
ジョブスキル:
【攻撃支援Ⅱ】【防御支援Ⅱ】【回復支援Ⅱ】
【回避支援Ⅱ】【強化支援Ⅱ】【魔力支援Ⅱ】
【魔法支援Ⅱ】【隠密支援Ⅱ】【隷属支援Ⅱ】
加護:
【経験値2倍】【無詠唱】
【ジョブスキル全体化】【無限魔力】
【回復魔法】【刀剣術】【マッピング】
名前:アイラ (主人:レックス)
種族:狐人族
年齢:20
レベル:10
ランク:C
ジョブ:軽戦士
ジョブスキル:
【双剣】【速度強化】【腕力強化】
【剣撃強化】【連撃強化】
加護:
【状態異常攻撃】【生活魔法(火)】
名前:サーシャ (主人:レックス)
種族:エルフ
年齢:18
レベル:9
ランク:C
ジョブ:魔弓士
ジョブスキル:
【魔弓】【命中率補正】【誘導矢】
【弓強化】
加護:
【付与魔法】【風魔法】【異常回復】
名前:ジーナ (所有者:レックス)
種族:ヒューマン (人工生命体)
年齢:19
レベル:11
ランク:C
ジョブ:重騎士
ジョブスキル:
【盾術Ⅱ】【大剣術Ⅱ】【挑発Ⅱ】
【シールドアタックⅡ】【速度補正Ⅱ】
加護:
【解析】【罠探知】【生活魔法(光)】
名前:シェリー
種族:ヒューマン
年齢:19
レベル:10
ランク:C
ジョブ:魔法使い
ジョブスキル:
【火魔法】【詠唱短縮】【範囲魔法】
【魔力制御】【水魔法】【精神強化】
加護:
【杖術】
名前:ナギサ
種族:ヒューマン
年齢:18
レベル:7
ランク:E
ジョブ:薙刀使い
ジョブスキル:
【薙刀術】【腕力強化】【刀撃強化】
【体術】
加護:
【回復魔法】




