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0085:怖いものを見てしまった


『よっしゃー、稼ぐぞー!』

『かなり気前が良いな!』


緊急依頼の報酬が2倍になった。

緊急依頼というだけで報酬が上乗せされているのに更に2倍だ。


他の冒険者達は歓喜の声を上げていた。

いや、一部の冒険者達は渋い表情をしていた。


「恐らく、結構危険な依頼なんだろうな」


『だと思います、ご主人様』


恐らく渋い表情をしている冒険者達は俺達と同じ事を考えているんだろう。


ガボットが話を続けた。


『ダンジョンの中では2パーティーで1チームを組んでもらう。なお、組み合わせはこちらで既に決定済みだ』


マジか? とも思ったが良く考えてみると俺達はこの町の冒険者達に詳しく無い。

なので誰と組もうと同じことだ。


ガボットが次々とパーティーの組み合わせを読み上げていく。


『レックスパーティーと【麗しの花】パーティーはチーム7だ』


【麗しの花】って素晴らしい響きだな。

明らかに女性だけのパーティーだよな。


『ねぇ、あなた達がレックスパーティーで良いのかしら?』


後ろから声を掛けられたので振り向いた。


あれ?

あれれ?


後ろには男性冒険者が4人いた。

ちょっと、こいつら邪魔だな。


男性冒険者の後ろを覗いてみた。

きっとコイツらの後ろに【麗しの花】パーティーが隠れてしまったのだろう。


「・・・」


あれ? 後ろには誰もいないな?

声を掛けられたのは空耳だったのか?


『ねぇ、あなた達がレックスパーティーかしらって聞いているんだけど?』


男性冒険者の1人がハスキーボイスで話掛けてきた。


「えっと、はい・・・俺がレックス・・・ですけど?」


『そう、私達が【麗しの花】よ。よろしくね』


そう言い放ってきたオッサン達は全員、アゴが青かった・・・

そして腰の辺りをクネクネさせていた。

何かキモいんですけど・・・


全然、麗しく無いんですけど?

ガボットを殺したい・・・

というかガボットは殺しても大丈夫だよな?


全パーティーのチーム分けが発表されたところでダンジョンに向かうことになった。

全部で10チームとなった。


ダンジョンに向かう途中で【麗しの花】とお互いに自己紹介をした。

リーダーはダンテと言う戦士だった。

残りはメッシュも戦士、ビロードが狩人、ヤンヌが魔法使いだった。

4人の割にはバランスの良さそうパーティーだ。


【麗しの花】は全員がランクCのパーティーであり、見た目はさておき、実力はありそうだった。


『へぇ、レックスちゃん達は旅の冒険者なんだぁ』

『なんか楽しそうよねぇ』


何故か【麗しの花】メンバーは俺にベタベタしてくる。

話をしていると悪い奴等では無いんだが・・・


ダンジョン入口に到着したところでガボットが指示を出し始めた。


『よし、チーム1と2が先頭になって進むぞ』


本来であれば1階層で出てくるモンスターはゴブリンのはずだ。

これは学院生徒の護衛で何度もここに来ているので俺達も把握している。


ダンジョンの1階層を進んでいるが全くモンスターが現れない。


「おかしいな、ゴブリンが出てこないな」


『確かに変ですね、ご主人様。モンスターの気配が全くしないです』


『レックスちゃん、それって本当に?』


ダンテが不思議そうな顔をして聞いてきた。

確かに不自然だ。

ゴブリンはいくら倒しても凄い勢いで増殖するモンスターだ。

ゴブリンがいなくなるんて想像出来ない。


とりあえず、先頭のチームがどんどん進んでいく。

結局、モンスターに襲われることなく2階層への階段に到着した。


『なぁ、モンスターが全然いなかったな』

『あぁ、少し変だよな』

『いつもならゴブリンが出てくるよな』


さすがに他の冒険者達もこの状況がおかしいと感じているようだった。

しかし、この状況が何なのか分からない。


『・・・2階層へ進むぞ。ただし、より慎重に頼むぞ!』


ガボットが先に進むように指示を出した。

確かにここに留まっていても仕方が無いよな。


チーム1と2が引き続き先頭に立って進むことになった。

確かに戦闘は無かったが先頭に立つだけでも神経を使うと思うのだが。


『あら、レックスちゃん。何か気になるのかしら?』


ダンテが俺の顔を見て話しかけてきた。


「あ、あぁ、チーム1と2がすり減らないかなって」


『そういうことね。でも彼らのパーティーにはシーフがいるから仕方ないわね』


なるほど、シーフがいるのか。

索敵能力が素晴らしいのだろうな。

アイラと比べてどっちのほうが優れているのかな?


『レックス殿、どうしたの? そろそろ出発するわよ』


「あ、いや、シーフの索敵能力ってアイラと比べてどっちのほうが優れているんだろうかなって」


『そりゃあ、アイラのほうが優れていると思うわね。数百mも先のモンスターの数まで把握出来る人なんて聞いたことも無いしね』


アイラの能力は旅をしていたナギサすら聞いたことが無いレベルなのか。


それはさておき、階段を降りて2階層に到着した。

アイラが一言。


『あちこちからオークの気配がしますね』


それって周囲はオークだらけということか。

しかし、その辺はチーム1と2にいるシーフも把握しているようだった。

ガボットとチーム1、2が話をしている。


『チーム3、4、5、6、7は少し距離を取って散開してくれ。オーク共を殲滅する。ただし無理はするな。疲れたらチーム8、9、10と交代するんだ』


なるほどな。

チームを入れ替えしながら継戦していくわけか。

チーム1、2は索敵専用なのかも知れない。


『レックスちゃん、私達はこっちよ』


ダンテが俺達を手招きして呼んでいる。


そういえば、俺達はチーム7だったな。

ダンテ達と同じチームになった衝撃でスッカリと忘れていた。


「ごめん、今行くよ」


ダンテ達と合流したところでアイラから


『ご主人様、この先にオークが5匹います』


とのことだ。

するとダンテ達が驚きの表情を見せた。


『レックスちゃん、疑うつもりは無いんだけど本当にこの先にオークがいるの?』


森の中なので視界はかなり狭い。

100m先が何とか見える程度だ。

もちろん、100m先には何も見えない。


「アイラがいると言うなら必ずオークがいるよ。とりあえず俺達が先行するから」


『え、えぇ、分かったわ・・・』


支援を発動させてアイラとジーナを先頭に先に進んだ。

そしてアイラの言った通りオークが5匹いた。


『ほ、本当にオークがいたわね。しかも数も5匹ね』


ダンテがそう言った瞬間にサーシャの魔弓とシェリーのアイスアローが放たれ、俺、アイラ、ジーナ、ナギサが突進した。


『プギィィッ』

『ブヒィィッ』


魔弓と魔法が直撃した直後にオーク共の首を斬り落とした。

あっという間の瞬殺劇にダンテ達が驚いていた。


『ね、ねぇ、レックスちゃん達って本当にランクCパーティーなの? とてもそうには見えないんだけど・・・』


「いや、本当にランクCパーティーだよ」


俺のギルドカードをダンテ達に見せた。

ギルドカードにはちゃんとランクCの文字が刻まれていた。


『・・・確かにランクCのようね』


「下準備ありの不意討ちなら誰でもあれくらいは出来ると思うけどな」


『いやいや、不意討ちは出来るかも知れないけど、一撃でオークの首を斬り落とすなんて普通じゃないわよ!』


ダンテにそう言われると支援効果が利いているのかも知れない。


『まぁでもレックスちゃん達と同じチームになったことを幸運だったかも知れないわね』


俺にとって悲運だったけどね。


『ご主人様、向こうにもオークがいます。恐らく上位種が3匹です』


『レックスちゃん、今度は私達が実力を見せる番ね。上位種とはいえ3匹なら私達だけで十分よ』


実力を見せてくれると言うのでダンテ達に任せてみるか。

ヤバくなれば助太刀すれば良いだけだしな。


アイラを先頭に進むとオークの上位種が3匹いた。

今度はダンテ達も驚くことは無かった。


『レックスちゃん、ちゃんと見てなさいよ。乙女の戦いをね』


いや、お前らは乙女じゃないだろ・・・


ダンテ達がオーク共に突っ込んだ。


『うおぉぉりゃぁぁぁ!』

『おらぁぁぁ! 死にやがれぇぇ!』


・・・乙女らしさは欠片も無い戦い方ではあるがオーク共を圧倒していた。


ダンテとメッシュの2人の戦士が圧倒的な強さを持っていた。

そしてオークの首を捻り取った。


「なんつう馬鹿力なんだよ・・・」


ダンテとメッシュが捻り取ったオークの首を片手に一言。


『どうだった? 乙女の可憐な戦いぶりは?』


さっきも思ったが乙女じゃねぇし、可憐なところも微塵もねぇし。


狂戦士とか野獣という言葉しか思い付かなかった。

これは俺のボキャブラリーの問題なのかな?

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