0083:無事に救出完了
「くそっ、オークなんかに挟み撃ちされるなんて・・・」
『マスターよ、前方のオークはオークジェネラルとオークソルジャーなのじゃ!』
1匹だけ大きなオークがいる。
あいつがオークジェネラルだろう。
すると、残り4匹がオークソルジャーだな。
後ろにいるオーク共は普通のオークだ。
「サーシャとナギサの2人で後ろのオーク共を何とかしてくれ。俺達は前の上位種を倒す!」
とりあえず、オークメイジやオークアーチェリーがいなくて助かった。
メイジやアーチェリーの魔法や矢を避けたりしたら生徒達に被弾する可能性があったからな。
『生徒達は俺達に任せてくれ!』
護衛の冒険者達もまだ頑張れそうだ。
まぁ、元々はあんた達の仕事だしな。
「よし! 行くぞー!」
俺の掛け声と同時にシェリーがファイアボールを放った。
ファイアボールはオークジェネラルの足下に着弾し辺り一面を燃やしたがオーク達にはそれほどのダメージが無さそうだった。
そしてオークジェネラルを先頭にオーク共が突進してきた。
ジーナは大盾を構えてオークジェネラルと対峙した。
『ここは通さないのじゃ!』
ジーナは挑発スキルを使っているらしくオークジェネラルだけでなくオークソルジャーまでがジーナに向かい始めた。
「アイラ! オーク共をジーナの横に行かせるな!」
『了解しました! ご主人様!』
ジーナを左右から挟み撃ちしようとしてくるオークソルジャーは俺とアイラで食い止めた。
オークソルジャーと小競り合いしていたが、ジーナを挟み撃ちしたいオークソルジャーだが俺とアイラに邪魔されており徐々に苛立ってきているようだった。
『ブモォォォ!』
『ブギィィィ!』
持っている剣を無茶苦茶に振り回してきた。
アイラはオークソルジャーの剣を余裕で回避しており、回避する毎にオークソルジャーの身体に一撃を加えていた。
俺のほうはアイラのように回避出来ないが村正でオークソルジャーの剣を受け流していた。
受け流した際に隙があれば一撃を加えた。
俺達のほうは一進一退の攻防を続けていた。
一方のサーシャとナギサのほうは優勢だった。
サーシャの魔弓で先制し、ナギサがオーク達へ突っ込んだ。
ナギサはオークの間合いの外から足元への攻撃を繰り返していた。
足元を攻撃されたオークはどうしても動きが止まってしまう。
そこをサーシャの魔弓で止めを刺されていた。
ノーマルオークの討伐が完了したサーシャとナギサがこちらの戦闘に加わってきた。
乱戦になっているためサーシャの魔弓は頼れない。
「サーシャ、シェリー、回り込めるか?」
『分かった! ちょっと待ってて』
『了解よ、レックス!』
俺の意図を把握したサーシャとシェリーが左右に別れてオーク共の左右斜め後方に移動し始めた。
ジーナの挑発を受けているためかオーク共はサーシャとシェリーの行動に気付いていない様子だった。
そしてサーシャとシェリーが魔弓と火魔法の準備を終えたようだ。
『皆、下がって!』
『行くわよー!』
サーシャとシェリーの掛け声で俺達は後ろに飛び下がった。
次の瞬間、サーシャの魔弓とシェリーのファイアボールがオーク共の背中に直撃した。
『ヴボォォォォ!』
『ブギィィィィ!』
無防備の背中に突然の攻撃を受けたオーク共はかなりのダメージを負ったようだ。
そしてオーク共は後方から攻撃してきたサーシャとシェリーのほうを振り向いた。
「背中を見せたな! チャンスだ!」
今度は俺達がオーク共を背中から斬りつけた。
俺とアイラはオークソルジャーを2匹ずつ斬り倒し、オークジェネラルはジーナが脇腹に剣を突き刺し、ナギサは槍を喉元に突き刺して倒した。
「・・・ふぅ、何とか倒したな」
念のためアイラが周囲を確認しに行った。
その間に護衛の冒険者達が魔石とドロップアイテムを回収してきてくれた。
さすがに猫ババはしていないようだった。
『今回は助けに来てくれて本当に助かったよ、ありがとう』
魔石とドロップアイテムを俺に手渡すと4人の冒険者達が頭を下げてきた。
「いやいや、冒険者は助け合うのがルールなんだから気にしないでくれ。それに生徒の中に知り合いもいたしな」
『そうなのか。それでも誰一人怪我をしてなくて本当に良かったよ・・・』
ようやく4人の冒険者達はほっとした様子を見せた。
この4人は実力はさておき真面目な性格なんだろうな。
周囲を確認しに行っていたアイラが戻ってきた。
『ご主人様、今なら周囲にモンスターがいませんので1階層に行きませんか?』
危険が無くなったところで緊張の糸が切れたのか生徒達が泣き出してしまった。
とりあえず何とか1階層まで戻って休憩することにした。
1階層に戻るまでの間、セシリアが俺にベッタリと張り付いていた。
階段を上がって1階層に着いたところで皆が腰を降ろした。
「そう言えば、あんた達の武器はどうしたんだ?」
改めて4人の冒険者達の姿を確認すると全員武器を持っていなかった。
『え、あぁ・・・恥ずかしい話なんだが、あの子達と逃げる時に無くしてしまったんだよ。それであの岩の隙間から動けなくなってしまったんだよ』
なるほどね。
それでも生徒達を見捨てたりはしなかったんだから良くやったと言いたいな。
マジックバッグからオークジェネラルの魔石を取り出して彼らに渡した。
「新しい武器を購入する際の足しにしてくれ」
オークジェネラルはランクCモンスターでも上位モンスターだ。
そのモンスターの魔石なのでそこそこの値段で売れるはずだ。
『え、本当にいいのかい?』
「もちろんだ。俺達の知り合いの子を最後まで守ってくれたお礼だよ」
『なんか申し訳無い気がするけど遠慮なく貰っておくよ』
そろそろ出口に行こうとしたら生徒達が全員寝てしまっていた。
仕方が無いので生徒達は背負って行くしかないな。
まぁ、冒険者も生徒も4人ずつだから丁度良いかなと思っていたが、冒険者の中の1人の女性が足をくじいているので背負うのは無理と言い出した。
そうすると何故か全員が俺のほうを見た。
しかもニタニタしている。
そして俺の足を枕に寝ているセシリアがいた。
「な、何で皆して俺のほうを見てるんだ?」
『セシリア様は旦那様が背負って下さいね』
皆がウンウンと頷いてる。
こうなると何を言っても無駄だよな。
セシリアは俺が背負って行くことになった。
う~ん、やはりサーシャよりも寂しいな。
背中に何の感触も感じられない。
今後の成長に期待だな・・・
『旦那様・・・何か非常に失礼なことを考えていませんか?』
「・・・キノセイダヨ」
出口までの途中でゴブリン達が何度か襲ってきたが難なく撃退して出口に到着した。
ようやくダンジョンを脱出して学院に戻った。
到着すると教師達が慌てて近寄ってきた。
「生徒達を連れて帰って来ました」
『レックスさん、皆さん、全員、ご無事ですか?』
女性教師が全員の安否を確認してきた。
「はい、全員無事です」
『よ、良かったわぁ・・・一安心ね』
俺達が戻ってくるまでずっと心配しっぱなしだったのだろう。
女性教師はヘナヘナと腰を降ろした。
『スミマセンでした。俺達がだらしなかったために・・・』
4人組の冒険者達が頭を下げて謝罪していた。
『いえ、あなた方も怪我が無くてなによりですわ』
その後は4人組の冒険者達から話を聞いた。
話を聞いたところ2階層に入ったところで突然複数のオーク上位種から襲われたらしい。
「何で2階層にオークの上位種なんて現れたんですかね?」
『確かにそうだよな。俺達も何度もダンジョンに潜っているが2階層は普通のオークのはずだよな』
その後も話をしたが、結局なんで2階層でオークの上位種が出てきたのか分からずだった。
とりあえずギルドに報告しておくことで話は終わった。
寝ていた生徒達も起きてきた。
『『レックス様、今回は本当にありがとうございました!』』
セシリア達はまだ眠そうだったがちゃんとお礼を言ってきた。
うん、皆、礼儀正しくて良いね。
セシリア達と少し話をしてキャンプ場に戻ることにした。
今日は疲れたのでゆっくりと休むことにした。




