0080:学院裏のダンジョン
俺達の名前が呼ばれたので隣の教室に移動した。
移動した教室の中には3人の年配教師と思われる男性が2人、女性が1人いた。
3人の教師は長机に並んで座っており、そして長机の上に水晶玉が置いてあった。
『我々はこの学院で教師をしている者です。我々が今日の面接をさせて頂きます』
女性教師が代表して挨拶をしてきた。
『では、早速いくつかの質問をさせて頂きますわね』
女性教師はそう言うと次々と質問してきた。
質問され回答する度に教師達は目の前に置いてあった水晶玉を見ていた。
おそらくは嘘発見器みたいな物だろう。
まぁ嘘を吐くつもりは全く無いが、嘘を吐いた場合に水晶玉がどう反応するのか見てみたい。
『では最後の質問になります。もしダンジョンの中で強力なモンスターと出会ってしまった場合に生徒達を逃がす事を優先出来ますか?』
「はい。もちろんです」
それが仕事なのだから当たり前の話だ。
もちろん水晶玉は何も反応しなかった。
『ありがとうございました。合否の結果は今日中にギルドに連絡させてもらいます』
とりあえず無事に面接が終わったようだ。
合否の結果はこれからではあるが。
教室を出て学院を出ようとしたところ、前のほうから歩いてくる女性がいた。
セシリアだった。
『あ、あれ? レックス様じゃないですか。一体どうしたんですか?』
「面接を受けに来たんですよ」
この学院に面接を受けに来た経緯をセシリアに説明した。
『そうしたら、私がダンジョンに入る時にレックス様達に護衛をしてもらうことがあるかも知れませんね』
セシリアはもの凄く期待しているような表情をしている。
しかし残念ながらそれほど長期間護衛の依頼をするつもりは無い。
「もし、そうなったら頑張りますよ」
そう言ってセシリアと別れて学院を出た。
『旦那様。セシリア様にかなり好かれているみたいですねぇ』
「なんだ? 妬いているのか?」
『まさか。セシリア様は可愛いですけど、私達大人の魅力に敵わないですよ』
確かにセシリアは美少女ではあるんだが、残念なくらいにペッタンコなんだよな。
明らかにサーシャよりも小さいんだよな。
『・・・旦那様、何かムカつく事を考えていませんか?』
「え、何も考えないいないよ」
『・・・本当ですかぁ・・・』
「本当だって」
いやぁ、危なかったなぁ。
相変わらずサーシャは鋭いよな。
「そんなことよりも今日はどこかで食事してから帰るか」
『む、なにか誤魔化された気がする・・・』
サーシャ、しつこいな・・・
とりあえず食事が出来る店を探して食事をした。
食事をした後はプラプラと町の散策をした。
やはりかなり大きな町だった。
◇◆◇◆
翌朝、面接の結果を聞くためにギルドへ向かった。
ギルドに到着すると受付カウンターに行った。
「昨日の学院の面接結果が届いているかと思いますが」
『ちょっとお待ち下さいね・・・あ、来てますね。おめでとうございます。レックスさん達は合格とのことです』
良かったー、とりあえず合格したらしい。
『・・・それと、早速ですが明日、ダンジョンの護衛を頼みたいとのことです』
早速、護衛の依頼か。
「分かりました。明日、学院に行けばいいんですかね?」
『そうですね、昨日面接した教室に来て欲しいとのことですよ』
「了解しました。ありがとうございます」
受付嬢に礼を言ってギルドをあとにした。
無事に面接も合格したし、今日は昨日の購入した武器の使い勝手を確認することにした。
町の外に出て近くの森に入っていった。
『ご主人様、ゴブリンならいますよ』
本当にゴブリンはどこでもいるよな。
まぁ今日は新しい武器の確認だけなので丁度良いかも知れない。
俺は武器を新調していないので見ているだけだった。
アイラ達はゴブリン相手に無双していた。
まぁ、元々実力差があるので当たり前に結果ではあるが。
俺はひたすらゴブリンの魔石とドロップアイテムを拾う役割をしていた。
・・・あ、他にも役割があったな。
サーシャとシェリーに魔力を供給する役割が。
結局、ゴブリンを100匹ほど狩って新しい武器の使い勝手確認が終わった。
・・・狩り過ぎだよな。
夕方になったので町に帰ることにした。
町に戻るとギルドに寄らずにキャンプ場に直行した。
「明日は朝から学院に行かないといけないからな」
そう言って明日からの英気を蓄えるためにアイラ達を全力で抱いた。
アイラ達は当然文句を言っていた。
◇◆◇◆
翌朝、予定通り学院へ向かった。
学院に到着し面接した教室の中に入ると面接した教師と生徒と思える面子が5人いた。
改めて見ると生徒達は俺とそんなに年齢が離れていない気がするな。
どう見ても16~18歳くらいに見える。
生徒達も俺達に対して怪訝そうな顔をしていた。
そりゃそうだよな。
ダンジョンの中でいざというときに自分達の命を助けてくれる大事な役目を担うはずの存在なんだからな。
「俺達はランクCパーティーでランクBモンスターを倒したことがあるんで安心してくれ」
『ランクBモンスターってマジか?』
『パーティーもランクCなのか』
『まぁ、それなら安心だよな?』
不安そうにしていた生徒達が落ち着きを取り戻してきた。
『分かりましたわ。それではあなた達に護衛をお願いしますわ』
生徒は全部で5人おり、男が3人、女が2人。
そしてその中の女の1人が護衛は俺達にお願いすると言ってきた。
「はい。任せて下さい」
俺達と生徒達との間で合意が成されたと見なした教師がダンジョンに向かうように言った。
『では、早速ダンジョンに向かって下さい。ダンジョンは学院の裏側にありますよ』
実はダンジョンの入口は学院の裏側にあるらしい。
教師と生徒達の案内でダンジョンに向かった。
広い学院の中を通り抜けて学院の裏側に到着した。
ダンジョンの入口はすぐに分かった。
学院の裏側から少し離れたところに枯れた巨木があり、その巨木の根本にポッカリとダンジョンの入口が出来ていたのだ。
「ダンジョンの入口が大きいな」
ダンジョンの入口を見た俺の感想だ。
今まで見たダンジョンの入口は人が1人ずつしか入れない程度の広さだったが、ここのダンジョンは違った。
『そうですね、ご主人様。あれだけの広さがあれば3~4人は同時に出入りが出来そうですね』
『実はあのダンジョンの入口は元々あった入口じゃないんですよ。元々の入口は町の外にあります。この入口は学院長の空間魔法で作られたものなんですよ』
しかも今見えているのは入口専用らしい。
なので帰りは正規の出入口から出てくる必要があるとのことだ。
教師の1人がドヤ顔で説明してくれた。
しかし、こんなものを作れるなんて学院長って凄い人なのかも知れないな。
まぁ、とりあえず今は深く考えることをやめて仕事に集中することにしよう。
仕事をこなすのは大事だ。
「じゃあ、まずは俺達が先行してダンジョンの中に入りますから」
しっかりと支援を発動させて、ジーナを先頭にダンジョンの中に進むことにした。
ダンジョンの中は他のダンジョンと同じく壁が光っており薄暗いが進めないことは無い。
暫く進むと奥から明かりが見えてきた。
『マスターよ、平原があるのじゃ』
「まぁダンジョンがこういう場所なのは経験済みだから今更驚きはしないけどな」
誰も驚かないと思っていたがナギサだけは驚いていた。
ナギサはずっとソロだったためにダンジョンに入ったことが無かったらしい。
『ダンジョンの噂は聞いていましたけど、実際に入ってみるとやはり変わった場所なんですね』
ナギサは驚いてはいるが慌てた様子は特に無かった。
むしろ、サーシャとシェリーに護衛されて一緒にやって来た生徒達のほうが驚いていた。
『初めて入ったけど、これダンジョンかぁ』
『聞いていた通り凄いねぇ』
『ちょっとビックリだよねぇ』
ダンジョンの中に入ったら常に戦闘の準備をしないと・・・




