0079:学院からの依頼
一時的に貴族の護衛となったがオークの群れを倒した後は特にモンスターに襲われることも無く次の町に到着した。
「結構、大きな町なんだな」
町の壁もかなり頑丈そうである。
しかも壁の前には空堀まであった。
これならモンスターが襲ってきても大丈夫そうだ。
『はい。この周辺では一番大きい町ですよ、レックス様。しかも、この町にはダンジョンもあると聞いています』
「へぇ、魔法学院以外にダンジョンまであるのか」
『なんでも、魔法学院の授業の中にはダンジョン探索もあるらしいです』
深い階層まで行かないだろうが凄い授業があるもんだ。
さすがは異世界といったところだろう。
貴族のご一向様ということでスンナリと町の中に入ることが出来た。
オーヴゴット家の別宅に到着したところで男爵から食事会のお誘いがあった。
『どうじゃ? 夕食くらいは食べていかないか? ちょっとした食事会ならすぐに準備出来るぞ』
「申し訳ありませんが、ギルドに行って早く仕事を探さないといけませんので」
男爵からのお誘いもあったが適当な理由をつけて丁重にお断りした。
セシリアは非常に残念そうな顔をしていたが貴族の食事会は堅苦しそうだしな。
『そうか・・・残念だが仕方が無いな。これは少ないがここまでの護衛の代金だ』
男爵はそう言うと騎兵の1人が布袋を俺に手渡してきた。
中身を確認すると金貨が10枚も入っていた。
「こんなに沢山貰えるほど仕事をしていないですけど?」
『はははは、構わんよ。安心を買ったわけだからな』
今まで豚貴族と呼んでしまって申し訳無かったな。
急に罪悪感を感じてしまった。
とりあえず、心の中で謝罪してセシリア達と別れた。
まずは馬車をキャンプ場に預けてギルドに向かうことにした。
ギルドに到着するとまずはオークの魔石とドロップアイテムの買い取りをお願いした。
そして査定をしてもらっている間に依頼ボードを見てみた。
「あれ、ちょっとこの依頼を見てみて」
依頼ボードから依頼書を剥がしてアイラ達に見せてみた。
『へぇ、こんな依頼もあるんですね。旦那様』
見つけた依頼は魔法学院の生徒の護衛だった。
護衛といっても生徒達がダンジョンで魔法の練習をするための付き添いだった。
いわゆる護衛というやつだ。
「ちょっと面白そうだよな?」
『え? レックス、まさかその依頼を受ける気なの?』
「そのまさかだよ。魔法学院の生徒達がどんな魔法を使うのか興味がないか?」
『う~ん、確かに興味はあるけど・・・』
「なら決まりだな。早速受付カウンターに行こうか」
まだ渋っているシェリーの尻をポンっと叩いて諦めるように促した。
『もうっ、レックスのスケベ! 分かったわよ! 行くわよ!』
依頼書を持って受付カウンターに並んだ。
大きい町だけあって冒険者の数も多いようだ。
ようやく俺達の順番になった。
「すみません、この依頼を受けたいんですが」
受付嬢は俺達を一人一人見ている。
何やらチェックをしているようだ。
一通りチェックが終わってから話し始めた。
『それでは皆さんのギルドカードを拝見させて下さい』
言われるがままにギルドカードを受付嬢に渡した。
『・・・はい、ありがとうございました。とりあえず大丈夫そうですね』
「えっと、何が大丈夫なのでしょうか?」
『ダンジョンに入る必要がありますので低ランクの冒険者はこの依頼は受けられないんですよ』
確かに護衛するのに低ランクじゃ不味いよな。
『それでは、魔法学院の関係者と面接がありますので、明日の朝に魔法学院に行って下さい』
「え? 面接なんてあるんですか?」
『もちろんです!』
受付嬢は何を言っているんだ? と言わんばかりの顔をしている。
どうやらギルドは冒険者を紹介するだけらしいな。
「分かりました。すみませんが魔法学院の場所を教えてもらっても良いですか?」
『はい。魔法学院の場所は・・・ですよ』
魔法学院の場所を教えてくれている間、何故か受付嬢は嬉しそうにしていた。
とりあえず受付嬢から魔法学院の場所は聞いたのでギルドからの紹介状を貰った。
あとはオークの魔石とドロップアイテムの報酬を受け取ってギルドをあとにした。
「今日はこのままキャンプ場に戻ることにしようか?」
『ねぇ、レックス。明日は魔法学院に行くんだから少しは小綺麗な格好をしたほうが良くないかしら?』
なるほど。
面接に行くんだからその考え方もあるが・・・
「でも冒険者として面接に行くんだから装備がしっかりしているところを見せたほうが良いんじゃないかな?」
『う~ん、確かにそうかも知れないわね』
という事で武器屋に向かうことにした。
主に防具を新調するためにだ。
武器屋に到着し店の中に入った。
大きい町の武器屋だけあって色々な武器、防具が並んでいた。
「この際だから良い装備があれば買い換えてもいいよ」
『『分かりましたー!』』
そう言うとアイラ達は自分達の武器、防具を探しに行った。
なので俺も自分の武器、防具を探してみることにした。
しかし残念ながら刀は置いて無かった。
やはり和の国に行くしか無いな。
武器の新調は諦めて防具を探してみることにした。
「コートか・・・格好良いな、これ」
商品の説明書に書かれた内容を見るとワイバーンの鱗を革で挟んで作られたコートのようだ。
物理攻撃はもちろんのこと、魔法攻撃にも耐性があるらしい。
「よし、これを買うか!」
革の服とズボン、そしてワイバーン製のコートを選んだ。
そしてよく見るとコートの隣にはワイバーン製の上着とスカートのセットもあった。
これは是非ともアイラ達に履かせたい。
そういえばアイラ達のほうはどうかな? とアイラ達を探すと全員武器コーナーにいた。
アイラは剣をじっと見ていた。
「アイラ、どうしたんだ? その剣が欲しいのか?」
『あ、ご主人様。そうなんですが値段のほうが・・・』
アイラが見ていたのは炎竜の剣と雷竜の剣だった。
今持っている双剣よりも少し剣が長いかな。
値段はそれぞれが大金貨3枚だった。
「欲しいなら買うよ」
『え、よろしいんですか?』
「もちろんだよ。戦力の増強には金を惜しむつもりは無いからな」
そして他の遠慮を知らない面子はそれぞれが気に入った武器、防具を持ってきた。
サーシャは風竜の弓、ジーナは土竜の剣と土竜の大盾、シェリーは炎竜の杖、ナギサは水竜の槍を選んだようだ。
さすがに薙刀は売っていなかったが、ナギサが選んだ水竜の槍は矛先が剣のように長い槍だった。
店員を呼んでまとめて購入することにした。
全部で白金貨5枚、大金貨8枚が消えたが中々良い買い物をした。
特にスカートが最高だった。
とりあえず、これで明日の準備は完了した。
キャンプ場に戻ってゆっくりすることにした。
◇◆◇◆
翌朝、ギルドの受付嬢に教えてもらった通りの場所に向かうと柵に覆われた大きな校舎が見えてきた。
「あれが魔法学院か・・・結構、立派な建物だな」
門はあったが閉じられているわけでも無く難無く学院の中に入れた。
すると学院の関係者と思われる人から声を掛けられた。
『すみません、その格好からすると面接を受けに来た冒険者の方でしょうか?』
「はい、その通りです。何処に向かえば良いでしょうか?」
『あ、それではご案内しますのでこちらへどうぞ』
ギルドからの紹介状を渡して案内してもらうことにした。
学院の建物の中に入ると教室がたくさん並んでいた。
今はこちらの教室は誰も使っていないようだ。
なので残念ながら授業の様子は見られない。
『では、こちらの教室の中で少しお待ちを』
そう言って案内してくれた人が教室の手前で止まり、教室のドアを開けてくれた。
教室の中を見ると俺達以外にも冒険者達がいた。
どうやら俺達と同じように面接を受けに来た冒険者達なのだろう。
『それでは面接を開始致します。順番にお呼びしますので名前を呼ばれたら隣の教室へ移動して下さい』
冒険者達の名前が順番に呼ばれて別の教室に移動していった。
そして俺達の順番が回ってきたようだ。
『レックスさん、アイラさん、サーシャさん、ジーナさん、シェリーさん、ナギサさん、隣の教室にお越し下さい』
お呼びが掛かったので隣の教室に移動した。




