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0078:貴族様を救う


『ご主人様、どうやらオークが馬車に襲い掛かっているようです!』


砂煙のためアイラ以外には何が起こっているのか全く分からない。

アイラの視力を計ったら10.0とかあるんじゃないのかな?


『ご主人様、助けに行きますか?』


余計なことを考えていたらアイラからどうするのか? と聞かれた。

さすがに見捨てるわけにはいかないよな。


「仕方が無いな。助けに行くぞ!」


馬車の速度を上げて進んだ。

確かにオーク共が馬車を襲っていた。

豪華な馬車が3台だった。


「あれ? あの馬車に見覚えがあるな」


『レックス殿、あれは昨日見かけた貴族の馬車ですよ』


おぉ、思い出した。

俺達が買う予定だったボルボルの実をかっさらった連中か。


どちらにしても見捨てるわけにはいかない。

それによく見ると10人いたはずの騎兵が5人になっている。

一方のオーク共は8匹いた。


念のため助けが必要か確認することにした。

後で揉め事にならないようにすることは大事なことだ。


「俺達は冒険者だが助けが必要か?」


『ぼ、冒険者か? 見れば分かるだろう? 助けが必要だ!』

『は、早く加勢してくれ!』


どうやら助けが必要とのことなので支援を発動して助けに入ることにした。


「よし! オーク共を蹴散らすぞ!」


『『おぉぉぉ!!』』


俺とアイラとジーナとナギサは馬車から降りてオークに向かって行った。

サーシャとシェリーは馬車の御者席に立ち、魔弓と魔法を放った。


まずはサーシャとシェリーの攻撃でオークの半分が倒れた。

そしてジーナを先頭に俺、アイラ、ジーナ、ナギサは生き残ったオーク達に攻撃を加えていった。


今の俺達にとってノーマルオークは脅威ではない。

数分で残ったオーク共を斬り倒した。


「ふぅ、これで片付いたな」


『まぁ妾達ならオークごときは余裕なのじゃ』


倒したオーク共が魔石とドロップアイテムに変わったところで生き残った騎兵の1人が近寄って来た。


『助かったよ。礼を言うぞ!』


フルフェイスの兜を被ったままなので顔が分からないが男の声だった。


「まぁ、たまたま通りかかっただけなんで。それよりも俺達が倒したオークの魔石とドロップアイテムは俺達の分で良いですよね?」


『うん? いや、ここにあるものは全部持っていって良いぞ。我々には必要無いからな』


「そうですか。では遠慮なく」


そうはいっても俺達が倒した分以外だと2匹分しかなかった。

彼らはオーク2匹しか倒せなかったようだ。


魔石とドロップアイテムを全部回収したので立ち去ろうとしたら先程の騎兵に呼び止められた。


『ちょっと待ってくれ。我らの主が話をしたいと言っているんだが少し時間をくれないか?』


正直、面倒臭い話になりそうな気がするな。


「えっと、断ることは出来ますか?」


『え? ちょっと待ってくれ。何でだ?』


「だって貴族なんですよね? 俺達、貴族の人達と話をしたことが無いですし。礼儀作法もなっていないですよ」


俺がそう言うと騎兵の男は兜を脱ぎ、困った顔を見せた。

すると馬車のほうから声が聞こえてきた。


『どうしたのじゃ? 冒険者共はまだこっちに来ないのか?』


どうやら貴族様は俺達が来ないことにご立腹しているようだ。


『すまない! 言葉使いはこっちでフォローするから来てくれ!』


『ご主人様、どうやら顔を見せたほうが良いかも知れませんよ?』


アイラにも言われたので仕方が無い。

渋々、騎兵と共に貴族のところに向かった。


『遅いぞ! 我はお前達と違って暇では無いんだぞ!』


貴族の前に着いた瞬間に怒鳴られた。

まるで豚のように太った貴族にだ。

助けてもらった分際でいきなりこんなことを言い始めるとは・・・


『あ、主様、さ、さすがにそれは・・・』


俺達を連れてきた騎兵の男が口を挟んだ。

しかし豚貴族は黙らない。


『うるさい! 貴様らがだらしないから我がこんな目に遭っているんだろうが!』


そう言われると騎兵の男は悔しそうな顔をして頭を下げていた。

さすがに可哀想に思えてきた。


「遅れてしまい申し訳ありませんでした。しかし魔石やドロップアイテムは我々冒険者にとって唯一の収入源なので、御容赦頂ければ幸いです」


『ふん! まぁいい。我は心が広いからな。特別に赦してやろう。それよりもだ、我の護衛が半分に減ってしまった。そこでだ。お前達を暫くは雇ってやろう。次の町までだがな』


この豚貴族は一体何を言っているんだ?

礼の1つも無く、暫く雇ってやるだと?


どうやって断ろうかと考えていると箱馬車の中から声が聞こえてきた。


『父上、その言い方はさすがに失礼ですよ』


箱馬車から出てきたのは1人の美少女だった。


・・・あれ? 父上って言っていたよな?

とても豚貴族の娘には思えないぞ?

おそらく奥さん似なのだろうな。

豚貴族に似ている部分は一切無いな。


『む、そ、そうか、セシリアよ・・・』


どうやら豚貴族はこの娘には頭が上がらないようだ。


『冒険者よ、済まなかったな。実は我が娘を次の町にある魔法学院へ入学させるために送っている最中なのだ。そこまで護衛を頼めるだろうか?』


急に豚貴族の態度が気持ち悪いくらいに変わった。

よくもここまで態度を変化させることが出来るものだと感心させられた。


豚貴族だけなら護衛を断りたいところだが、こんな素直で綺麗な少女がいるとなると断りにくいな。


『冒険者様、申し訳ありませんが護衛を引き受けて頂けますでしょうか?』


セシリアと呼ばれた美少女が頭を下げてきた。

貴族様の娘に頭を下げられたら断れないな。


「分かりました。次の町までなら俺達も一緒ですので護衛させてもらいます」


『ありがとうございます。あ、あの、お名前を伺っても宜しいでしょうか?』


「俺の名前はレックスと言います」


アイラ、サーシャ、ジーナ、シェリー、ナギサを紹介した。


『私の名前はセシリア・オーヴゴットと言います。宜しくお願いします』


豚貴族も名乗っていたが完全に聞き流していたので記憶に残っていない。

いや、男爵と名乗っていたことだけが記憶にあるな。


とりあえず、先程のオークとの戦闘で亡くなった騎兵の遺体は街道の傍に埋葬した。

その後、俺達も護衛に加わり出発した。


何故かセシリアは俺達の馬車に乗っていた。

豚貴族は文句を言っていたがセシリアが説き伏せた。


『助かりましたわ。父上と一緒の馬車は正直、かなり窮屈でしたのよ』


おーい、そんなことを言ったら豚貴族様はきっと号泣するぞ?


『セシリア様・・・父上様のことをそのように仰っては・・・』


『ふふふ。いいのよ、サーシャさん。実際に窮屈なんですもの』


シェリーがセシリアを諌めたが、セシリアは笑いながら反論した。

しかし父上を嫌っている訳では無さそうだ。


その後、セシリアから身の上話を聞かされた。


セシリアは男爵の正妻の娘とのことだが、彼女の母親はセシリアを産んで数年後に死去したとのことだ。


男爵は正妻に良く似ているセシリアを溺愛しており跡継ぎにしたいようだ。

そのための魔法学院への入学らしい。


ちなみに女性が貴族家の当主であるのも珍しく無いとのことだ。


「ところでセシリア様のジョブは魔法使いなんですか?」


『いえ、私のジョブは魔導師なんですよ』


「え、魔導師なんですか? 凄いな」


正直、驚きだな。

魔法使いの上位ジョブだ。

豚貴族が跡継ぎにしたいのも良く分かった。

この容姿に上位ジョブの持ち主なら跡継ぎとして文句無しだろう。


『レックス様達はどんなジョブなんですか?』


俺達のジョブをセシリアに教えたところ俺とナギサのジョブにハテナの顔をしていた。


『えっと、支援術士に薙刀使いですか?』


「聞いたことが無いですよね?」


『・・・そうですね。正直、聞いたことが無いです』


確かに薙刀使いは聞いたことが無いだろうな。

でも支援術士は知っていると思ったが知らなかったらしい。

ちょっと残念だった。


『で、でも、レックス様達はあっという間にオークの群れを倒されましたので、きっとお強いジョブなんでしょうね?』


セシリアに気を遣わしてしまったな・・・


その後もセシリアとの会話が進んでいった。

いわゆる女子の会話だった。

女子の会話に入れない俺は御者席にいた。


そして野営となった。

さすがに寝る時間なったらセシリアは男爵の馬車に戻っていった。


見張りは騎兵達ですることになった。

ちょっとだけ楽させてもらった。


翌朝は早くから出発することになったが、何故かセシリアはまた俺達の馬車に乗っていた。


特にモンスターに襲われることも無く、翌日の昼前に次の町に到着した。

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