0077:結局無駄骨だった
木の上にいたウォーターモンキー達が一斉に木の上から泉へ飛び込んだ。
まさかの集団自殺か? と思ったが違った。
『サーシャ、シェリー、妾の後ろに来るのじゃ!』
ジーナは大盾を構えた。
俺とアイラとナギサは武器を構えた。
泉に飛び込んだウォーターモンキーは泉の中からウォーターボールらしきものを放ってきた。
アイラはウォーターボールをサクサクと回避するが俺とナギサはそうもいかない。
俺達の横を通り過ぎたウォーターボールは木の幹にぶつかると木の幹が少し抉れた。
「マジか! かなりの威力があるな!」
『ご主人様、ちゃんと回避してくださいよ』
とてもアイラみたいな動きは出来ない。
なので回避不可のウォーターボールは刀で切り裂くしかない。
「このぉー!」
ウォーターボールを刀で切り裂くとウォーターボールは破裂した。
木の幹を抉ったような威力は無くなったがウォーターボールの水でびしょ濡れになった。
ナギサも俺と同じようにびしょ濡れだ。
『この猿めぇー、成敗してくれるわ!』
一度びしょ濡れになってしまえば、後は何度濡れようが同じことだ。
飛んでくるウォーターボールを切り裂きながらウォーターモンキーがいる泉に突撃した。
『旦那様、ナギサ、魔弓を放つよ!』
後ろからサーシャの合図だ。
俺とナギサは咄嗟に左右に別れたのと同時にサーシャが放たれた。
『ウッギィィィ』
『キッギィィィ』
サーシャの魔弓は泉にいるウォーターモンキーに命中したがウォーターモンキーの数は多い。
数匹が倒されたところでウォーターモンキーの攻撃は止まらない。
『次は私の番ね。いくわよー!』
続いてシェリーのファイアボールが放たれた。
シェリーのファイアボールはウォーターモンキーに着弾する前にウォーターモンキーの頭上で爆発した。
『やったわ! うまくいったわ!』
どうやら失敗ではなく意図的にウォーターモンキーの頭上でファイアボールを破裂させたらしい。
『ウキャッキャー!』
『ウッキィィー!』
ウォーターモンキー達を倒すところまで無理だったようだがダメージはしっかりと与えたようだ。
ウォーターモンキー達が怯んだようなので一気に倒そうとした瞬間、ウォーターモンキーリーダーが大声で吠えた。
『ウッギィィィー!』
このリーダーの声を聞いたウォーターモンキー達が一斉に撤退を開始した。
どうやら、このまま戦闘を続けても不利なのを理解したようだ。
「マジか、撤退したな・・・」
モンスターが絶妙なタイミングで撤退の判断を下したことに驚いた。
ところでアイラ達も同じ意見のようだ。
『驚きですよね、ご主人様』
「絶妙なタイミングで撤退されたな・・・」
とりあえず、ウォーターモンキー達は逃げてしまったので仕方が無い。
ウォーターモンキーは3匹しか討伐出来なかった。
『仕方が無いのじゃ。それよりとボルボルの実の採取なのじゃ』
確かにジーナの言う通りだ。
ウォーターモンキーの魔石とドロップアイテムを回収した後にボルボルの実もしっかりと採取した。
ボルボルの実を700~800個ほど採取して町に戻ることにした。
「これで暫くは快適な旅が出来るのかな」
森の中を移動しているとアイラが後ろを気にしていた。
「アイラ、どうしたんだ?」
『恐らくなのですがウォーターモンキー達が私達の後をつけているようです』
逃げたと思われたウォーターモンキーが実はこっそりと俺達を追い掛けてきたらしい。
「ウォーターモンキー達の姿が見えるのか?」
『いえ、姿は見えません。かなり警戒しているようです』
だとすると少し面倒だな。
無理してウォーターモンキー達と戦う必要も無いよな。
「一気に森を走り抜けるか?」
『確かにその方が良いかも知れませんね』
強化支援を使って全員の走力を強化した。
そして一気に森を駆け抜けた。
後方からウォーターモンキーの悔しそうな叫び声が聞こえてきた。
無事に町に到着するとギルドへ向かい依頼達成の報告をした。
『ありがとうございました。ボルボルの実の在庫が無くなっていたので助かりました』
受付嬢からそう言われて報酬を受け取った。
全部で大銅貨7枚と銅貨5枚だった。
10個で銅貨1枚なので採取したボルボルの実は750個ということか。
『多分ですが、明日にはアイテム屋にボルボルの実を使ったモンスター避けが売られると思いますよ』
とりあえず依頼は終わったことだし、今日はゆっくりすることにした。
◇◆◇◆
翌日、早速アイテム屋に向かうことにした。
アイテム屋に到着すると適当に店員を捕まえて聞いてみた。
「ボルボルの実は入荷しました?」
『あ、先日の冒険者の方ですね? はい、大量にボルボルの実が入荷出来ましたよ』
良かった。
無事に入荷したらしい。
「それじゃあ、ボルボルの実を購入したいんですけど」
『すみません・・・ボルボルの実を購入はしたんですが、まだ加工が終わってないんです。明日には加工が終わる予定です』
しまったな。
言われてみればボルボルの実がそのまま使える訳無いか。
どんな加工をするのか分からないが。
「分かりました。明日、また来ますね」
アイテム屋を出た後、アイラ達に聞いてみた。
「今日は暇になったな。何かやりたいことでもある?」
ボルボルの実が購入出来ていれば、そのまま次の町に向かって出発しているところだ。
『う~ん、これといって何も無いですね』
『右に同じく~』
『何も無いのじゃ』
『そうねぇ、無いわね~』
『私も思い付かないわ』
1人くらい何かありそうだと思ったのに当てが外れたな。
仕方が無いので町の中をブラブラすることになった。
通りに屋台が並んでいるのはどの町も一緒だった。
屋台で串肉や果物やジュースを買って食べ歩きをした。
すると前方から豪華な馬車が3台、縦列でこちらに向かってきた。
しかも護衛らしき騎兵が10人もいた。
『ご主人様、貴族だと思います。道の端に寄っておきましょう』
よく見ると町の人達も道の端に寄っている。
揉め事を起こすつもりは無いのでアイラの言う通りに道の端に寄った。
3台の箱馬車が俺達の目の前に通り過ぎた。
箱馬車の窓はカーテンのようなもので隠されていたので馬車の中にどんな人が乗っていたのかは分からなかった。
馬車が通り過ぎるまでは若干緊張したが、特に揉め事も起こらずに馬車は通り過ぎていった。
引き続き、町の散策を続けたがこれといって何かがあったわけでは無く、結局は意味もなく散歩しただけだった。
「散歩しただけだったな」
『たまには良いじゃないですか、旦那様』
『そうよね、たまにはのんびりするのも良いかと思うわよ、レックス』
アイラもジーナもナギサも頷いていた。
帰りに多少の食材を購入してキャンプ場に戻った。
夕食後は風呂に入り、夜はアイラ達を抱いて幸せを満喫した。
◇◆◇◆
翌日、今度こそはとアイテム屋に向かったがアイテム屋に到着すると残念なお知らせがあった。
『申し訳ありせん! ボルボルの実は売り切れです。本当に申し訳ありせん!』
店員が申し訳なさそうに頭を下げてきた。
どうやら店員の話によると昨日の貴族らしき集団はやはり貴族だったらしく、その貴族がボルボルの実を強引に全てを購入したらしい。
「マジか・・・」
折角、ギルドの依頼を受けてまで準備したのにな。
こればかりはアイテム屋に怒っても仕方が無いしな。
『あの・・・もし、よろしければ当店から指名依頼を出させてもらうことも出来ますが、如何したしましょうか?』
再度、ウォーターモンキー達と戦う必要があるんだよな?
そう思うと指名依頼を受けるのも面倒臭いな。
「いや、いいです。ボルボルの実が買えなかったのは残念ですが」
店員の申し出は断った。
旅の必需品らしいから、きっと次の町でも売っているだろう。
なので、この町にはもう用事は無いのでさっさと出発することにした。
町を出て人目のつかない場所で馬車をマジックバッグから取り出した。
街道を進んでいくとかなり前の方から砂煙が立ち上がっているのが見えた。
「あの土煙はなんだ?」




