0076:ボルボルの実の採取
元ゴブリンメンバーを村に移住させるための作業を開始して3日間が経過した。
小型猪は俺達が買い取りしたので元ゴブリンメンバー全員の手元には大銀貨3枚がある。
これで税金も支払えるはずだし当面の生活にも支障は無いはずだ。
なので村長が提示した条件を全てクリアしたことになる。
「これで大丈夫なはずだよな?」
倒した小型猪も100匹を超えたが50匹ほどを村に提供した。
『そうですね。村長の条件は全て満たしていますね、ご主人様』
「じゃあ、明日にでも村を出て次の町を目指すとするか」
◇◆◇◆
翌日、村長に挨拶をして、元ゴブリンメンバーにも挨拶をして村を出た。
街道に出るとマジックバッグから馬車を出して馬車で移動し始めた。
馬車の移動中、ずっとあることを考えていた。
皆に話をしなければいけないと考えていたことだ。
『レックス、何か考え事?』
シェリーが俺の横に座って聞いてきた。
「そうだな。昼食の時に皆に話をするよ」
そして昼食のために休憩となり昼食を食べながら皆に話し始めた。
『今まで、皆には話をしていなかったが実は俺は転生者なんだ。俺はこの世界とは別の世界からやって来たんだ』
『やっぱり、そうだったんですね』
『ふ~ん、それで何か変わるの?』
『大したことは無いのじゃ』
『ねぇ別の世界ってどんなところなの?』
『もしかしてニッポンなんですか?』
あれ? 誰も拒絶反応は無いな?
「ねぇ? 誰も驚かないの?」
『『え? 何で驚くの?』』
「だって別の世界からやって来たんだよ?」
『『何か今さらな感じだし・・・』』
ひょっとしたら気にしていたのは俺だけなのかな?
『ご主人様はご主人様ですしね』
『そうだよね、旦那様だしね』
『マスター、気にし過ぎなのじゃ』
『レックス、皆の言う通りよ』
『レックス殿、和の国の建国者も転生者よ』
皆から励まされると転生者であることを気にしていたことが馬鹿馬鹿しくなってきたな。
転生者であろうと、そうでなかろうとこの世界で生まれ育ったことには変わり無い。
「ありがとう、皆。転生者であることを気にするのは今日で終わりにするよ」
アイラ達がニッコリと微笑んでくれた。
良いメンバーに恵まれたと心から思った。
『それじぁ、昼食も食べたから出発するのじゃ』
その後はゴブリンやコボルトに襲われるも問題無く討伐していった。
ゴブリンやコボルトでは小遣い稼ぎにしかならない。
むしろ魔石やドロップアイテムを回収するほうが面倒だったりする。
「ゴブリンみたいな雑魚モンスターを寄せ付けないアイテムとかあると良いんだけどな」
『レックス殿。そういうマジックアイテムって普通にありますよ?』
ナギサが何で知らないの? という顔をしている。
知らなかったんだから仕方が無いじゃん。
ナギサはソロで旅をしていたからそういったアイテムに詳しいらしい。
「ナギサ、そのアイテムを持っているのか?」
『持っていたんですけど、レッドスパイダーに壊されました・・・』
そういえば、レッドスパイダーに捕まったんだよな。
その時に壊されたのか。
それじゃあ仕方が無いよな。
「次の町に着いたらアイテム屋で購入しよう」
夕方頃になって町の壁が見えてきた。
人目のつかない場所で馬車をマジックバッグにしまった。
町の門には門番がいたが特に門番から声をかけられることもなく町の中に入れた。
今日はキャンプ場に直行した。
町のキャンプ場なので夕食、風呂の後にアイラ達を思う存分に抱いた。
やっぱりアイラ達は最高だった。
◇◆◇◆
翌日、朝食後にアイテム屋に向かった。
ナギサから聞いた雑魚モンスター避けのマジックアイテムを購入するのが目的だ。
アイテム屋に到着すると早速カウンターに向かった。
「すみません、雑魚モンスター避けのアイテムってありますか?」
『は? 雑魚モンスター避け・・・ですか?』
あれ? なんか店員が困った顔をしている。
何か間違ったことを言ったのか?
『レックス殿・・・そんな名前のアイテムじゃないですよ。すみません、ボルボルの実です』
『あ~っ、そう言うことですか! ちょっとお待ち下さいね』
店員は理解したようでボルボルの実とやらを取りに行った。
「ボルボルの実?」
とりあえず、ナギサに聞いてみた。
『そうです。ゴブリンやコボルトはボルボルの実の匂いを嫌っているので近寄って来ないんですよ』
「という事は、他の雑魚モンスターには効果が無かったりするのか?」
『?? それはそうですよ』
ちゃんと考えれば当たり前だよな。
雑魚モンスター全てに効果があるアイテムなんて無いか・・・
それでもゴブリンやコボルトが寄って来ないだけでも十分な効果がある・・・かな。
ボルボルの実を取りに行った店員が戻ってきた。
『申し訳ありません、只今ボルボルの実の在庫を切らしておりまして・・・』
「え、在庫切れですか?」
店員が申し訳無さそうに何度も頭を下げてきた。
在庫切れは店員のせいじゃないので怒る訳にはいかない。
諦めてアイテム屋を出ようとしたところで店員から一言。
『ギルドで依頼を受けて頂ければすぐに入手出来ると思いますよ』
店員の話によると、この町の近くにボルボルの木があり、ギルドでボルボルの実を採取する依頼があるはずとのことだった。
「分かりました。ギルドに行ってみます」
店員に礼を言ってギルドに向かうことにした。
ギルドに到着するとすぐに依頼ボードを確認した。
「あった! あれだよな」
依頼書をボードから引き剥がして中身を確認した。
【ボルボルの実の採取】
『確かにボルボルの実の採取依頼ですね。でも報酬が凄く安いですね』
確かに報酬は安い。
ボルボルの実が10個で銅貨1枚だ。
「まぁ今回は報酬目当てじゃないしな」
早速、依頼書を持って受付カウンターに向かった。
そして受付嬢に依頼書を渡した。
「この依頼を受けたいんですけど」
受付嬢は俺達のことをジロジロと見ながらギルドカードを渡すように言ってきた。
俺達のギルドカードを確認すると一言。
『ありがとうございます。あなた達なら大丈夫そうですね』
「えっと、どういうことですか?」
『実は最近、ボルボルの木が生えている周辺にウォーターモンキーというモンスターが大量発生したんですよ』
受付嬢が言うにはウォーターモンキーはボルボルの実が好物らしい。
ウォーターモンキー自体はランクDモンスターであるが群れるためランクC相当となっているとのことだ。
『大きい町じゃないので高ランク冒険者がいなくて困っていたんですよ』
ちょっと面倒臭いけど今後の快適な旅のためにもボルボルの実は手に入れておきたい。
「分かりました。その依頼受けますね」
受付嬢からボルボルの木がある場所を聞いた。
ギルドを出て屋台で食事を調達した後、町を出て受付嬢に聞いた場所に向かった。
報酬が安いだけあってボルボルの木が生えている場所は町から近かった。
町から少し離れた小さな森の中に泉があり、泉の周辺にボルボルの木が何本も生えていた。
「この木がボルボルの木だよな? 一応、実がなっているしな」
『はい、レックス殿、あれがボルボルの実で間違いないです』
ボルボルの実は親指の爪ほどの大きさだった。
しかし、1本の木に大量の実がなっていた。
10個で銅貨1枚の理由がよく分かった。
『ご主人様、モンスターがやって来ます。しかも上のほうからです』
「モンスター? 上から?」
アイラがモンスターの気配を察知したようだ。
木の葉が擦れる音がしてくる。
どうやら木の枝を使って移動しているようだ。
俺達がいる周囲の木に続々とモンスター達が集まってきた。
モンスターの数はおよそ30匹ほどだ。
『旦那様、あれがウォーターモンキーなのかな?』
体長は1mくらいだが、1匹だけ巨大な猿がいた。
「あいつも猿なのか?」
体長は2mくらいはある。
もはや猿ではなくゴリラに近い。
『あれはウォーターモンキーリーダーなのじゃ』
ジーナの解析でモンスターの名前が判明した。
確か、モンスター図鑑に載っていたな。
「ウォーターモンキーリーダーはランクCモンスターだったな。火が弱点のはずだ」
早速、モンスター図鑑が役に立った。
ウォーターモンキーの群れを迎え撃とうと態勢を整えようとしたところ、ウォーターモンキー達が思いがけない行動をした。
『ウッギィィィ』
リーダーの掛け声と共にウォーターモンキー達は一斉に木から飛び出した。
「え? 何処に行くんだ、こいつらは?」




