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0075:移住計画


先頭を歩いていたアイラが双剣を抜いて1人の元ゴブリンに剣先を向けた。


『あなたは一体何者ですか?』


アイラが剣先を向けている相手は俺達と相対していた元メスゴブリンだ。


『え、わ、私ですか?』


『えぇ、そうです。他の人からはもうモンスターの匂いはしないのに、あなたからは未だにモンスターの匂いがプンプンします!』


最初はアイラに剣先を向けられて動揺しているように見えた女性だったが、アイラから明確に指摘されると観念したように口調が変わった。


『・・・匂いか。まさか、ここまで嗅覚に優れているとは思いもしなかったよ』


そう言うと女の身体が紫色に変化していった。

口からは2本の牙が上から下へ生えてきた。


そして見かけよりも何よりも圧倒的な威圧感を感じる。

正直、まともに戦っても勝てる気がしない。


そんな相手に対してアイラ、ジーナ、ナギサが俺の前に立っていた。

3人とも全身が震えていた。


そして俺の左右にはサーシャとシェリーがピッタリとくっついていた。

もちろんサーシャもシェリーも全身ガクガクと震えている。


俺は急いで支援を発動させた。

正直なところ、今の俺の支援は何も役に立たないだろうが。

目の前の相手はそれくらい圧倒的だ。


『ふふふ、震えているようね。安心なさい。今日は何もしないで見逃してあげるわ。研究の成果は十分に得られたしね』


「け、研究の成果って赤いゴブリン化のことか?」


『えぇ、そうよ。中々面白い結果が得られて満足しているのよ。とても気分が良いわ、だから今回は見逃してあげるわ』


こちらから攻撃を仕掛けるのは自殺行為だ。

立ち去るなら早く立ち去って欲しい。


『あ、そうだわ。あなたの名前をまだ聞いていなかったわね。なんて名前なの?』


「・・・レックスだ・・・」


『そう、レックスって言うのね。私の名前はバンパイア・クイーンのエリザベスよ。覚えておいてね。それじゃあ、またね』


そう言うとエリザベスは目の前から消えた。

ひょっとして、移動魔法とかかな。

とりあえず、九死に一生を得たな。


俺達全員が腰が抜けたように地面に座り込んでしまった。


『・・・あの圧倒的な威圧感は間違いなくランクS以上ですよね、ご主人様』


今までにランクBモンスターとは戦ったことがあるが、それよりも遥か上位の威圧感だった。

正直、チビらなくて良かったと思っているくらいだ。


『・・・あんな恐ろしいモンスターもいるんですね』

『あやつはかなり危険なのじゃ』

『・・・まだ寒気が治まらないわ』

『あんな恐怖を感じたのは初めてです』


ふと、元ゴブリンの面々は全員気絶していた。

冒険者である俺達でさえ圧倒されたわけだし無理もない。

これでは移動出来ないので野営することになった。


全員を街道脇に寄せて焚き火を起こした。

見張りの順番を決めて仮眠を取ることにした。


◇◆◇◆


朝、全員で朝食を食べた。

元ゴブリンの面々にも朝食を食べさせた。


『久しぶりに肉を食べたな』

『あぁ、凄く旨いな』


ゴブリン時代に何を食べていたのか気になったが怖かったので聞くのは止めた。


朝食後に村に向けて出発したが不思議なことが判明した。

元ゴブリンの面々は昨日のことを全員覚えていないのだ。

バンパイア・クイーンのことも、仲間だった女性のこともだ。


そして、自分達がゴブリンにされていたことも記憶から完全に削除されていた。


『おそらく記憶を操作されたと思われますね』


アイラだけでなく他の皆も同じ意見だった。

何故そんなことをしたのか不明ではあるが。


「まぁ、記憶に無いなら無いで困ることは無いよな」


『しかし、バンパイア・クイーンって凄いスキルを持っているのね。そう思わない? レックス』


きっと他にも凄いスキルを持っているんだろうな。

出来れば二度と会いたく無いな。

たとえ、美人で巨乳の持ち主であってもだ。


街道を歩いていると村が見えてきた。

門番もいるくらいの規模の村だ。


門番に事情を話した。


『事情は分かったが、俺の一存では決められない。なので直接村長と話をしてくれ』


そう言われて俺とアイラの2名だけ村に入ることを許可された。

門番に村長の家の場所を聞いて村長の家に向かった。


「ここがさっき門番から聞いた村長の家か」


特別大きい家ではなく、むしろ普通の家だった。

ドアをノックしてみた。


『開いとるぞい、入って良いぞい』


入って良いとのことなのでドアを開けて家の中に入った。


「失礼します。俺は冒険者のレックスと言います。実はお願いがあって来ました」


そう言って、元ゴブリンの面々をこの村に引き取って欲しいことを伝えた。

もちろん、元ゴブリンだったことは伏せた。


正直、期待薄ではあったが村長から条件付きで了承を得た。


『・・・うむ、分かったぞい。ただし空き家が無いので自分達で住む家を確保すること。税金を納めること。そしてお願いなのだが、村の畑を食い荒らす獣を退治してくれんかの?』


家を建てるための土地は村長が用意してくれるとのことだった。

この村には300人程しかいないらしいので人手不足とのことだった。


「分かりました。その条件は俺達が解決します。とりあえず、一度仲間達を村の中に入れても良いですか?」


『あぁ、それは構わないぞい』


とりあえず全員の入村の許可を貰ったので、村長の家を出て村の外で待っているサーシャ達のところに向かった。


門番にも村長から許可を貰ったことを伝えて全員で村の中に入った。

村に入ったところで村長の条件を全員に伝えた。


『ちょっ、ちょっと待ってください。その条件は私達には無理なのでは・・・』

『俺達だけでは厳しいよな・・・』


なんか最初から諦めムードになっているな。

全部俺達がやれば楽勝だと思うのだが、それでは駄目だよな。


「乗り掛かった舟だ。家の材料は準備してやる。獣の退治も手伝ってやるし、倒した獣を俺達が買い取ってやる。それでも駄目なら勝手にしろ!」


『わ、分かった・・・もし本当に手伝ってくれるならお願いしたい・・・』

『そ、そうだよな・・・いつまでも隠れ里で生きていけるわけじゃないしな』


どうやら少しはやる気が出てきたようだ。

この世界には生活保護なんてものは存在しないので自分達で頑張るしか無い。


まずは男達を引き連れて村の外にある林に向かった。

大木を伐るには時間が掛かるので直径30cm未満の手頃な木を伐りまくった。


俺、アイラ、ジーナ、ナギサの4人で木を伐り、残りメンバー達で枝を払っていく。

ある程度材木の形になったものを次々とマジックバッグにしまっていった。


「そろそろ本数も十分かな?」


伐採した木の本数は優に200本を超えていた。

立派な家を作るわけでは無いので十分だと思われる。


村に戻ると早速、家作りを開始した。

すると村人達も集まって来て家作りのアドバイスをしてくれた。

丸太だけで簡単に家を建てる方法だった。


『そうそう、そこに丸太をはめるんだよ』

『丸太をそこに立ててな・・・違う違う、そこに立てるんだよ』


村人達のアドバイスのおかげであっという間に家が2軒出来た。

あと2~3軒建てれば家は完了するな。


本日はここまでにした。

女性陣は今日建てた家で寝て、野郎達は野宿することになった。


◇◆◇◆


翌日は獣退治するメンバーと家を建てるメンバーに別れた。

俺、アイラ、サーシャは獣退治に、ジーナ、シェリー、ナギサは家を建てる側になった。


村長から聞いた村の畑を食い荒らす獣は小型猪のような獣らしい。

人を襲うことは無いらしいのだが、かなり警戒心が強く、しかも逃げ足が素早いらしい。


村の畑から少し離れた森の中に入っていく。

村長曰く、小型猪は森からやって来て畑を食い荒らしていくとのことだ。


『ご主人様、こっちから小型生物の気配を感じます』


アイラの案内に従って進む遠くに小型猪が3匹いた。


「サーシャ、魔弓で狙えるか?」


『う~ん、ちょっと遠いけどやってみるよ』


サーシャが魔弓を放つと小型猪を2匹仕留めたが1匹は逃げてしまった。


「・・・1匹、逃がしたか」


『ちょっと、旦那様、この距離で2匹倒したのを褒めて欲しいんだけど・・・』


「次は頑張ろうな」


そう言ってサーシャの頭を撫でてやった。

サーシャは少し頬を膨らませていたが満更でも無さそうだった。


その後もアイラが小型猪を探してサーシャが魔弓で倒していった。


元ゴブリンの面々も一緒にいるがサーシャの魔弓で怪我して動けなくなった小型猪の止めを刺させている。

大した役目では無いがちゃんと作業をした実績を残させた。


「そろそろ、十分かな?」


倒した小型猪は50匹を超えていた。

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