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0074:赤いゴブリンの正体


ジーナの掛け声で全員が起きた。

馬車の外に出ると馬車を取り囲むように無数の赤いゴブリンが30匹ほどいた。

支援を発動して戦闘準備も整った。


これから戦闘だ・・・というところで赤いゴブリン達が一斉に土下座をしてきた。

一体、何が起こっているのか分からないが戦う意思は無さそうだった。


「う~ん、どうやら戦う必要は無さそうだが、お前達の中で話が出来る奴はいるのか?」


赤いゴブリン達は全員首を横に振った。

こちらの言葉は理解しているようだが、話が出来ないらしい。


すると赤いゴブリン達の中から1匹のメスゴブリンが立ち上がって俺達の目の前にやって来た。


そして俺の目の前でしゃがむと枝を拾って地面にガリガリと文字を書き始めた。


【我々は元々人間です】


「お前達、元人間だったのか?」


赤いゴブリン達はコクりと頷いた。


「その元人間のお前達が何故赤いゴブリンの姿に変わってしまったんだ?」


目の前の赤いメスゴブリンが続けてガリガリと地面に文字を書いていった。

仕方が無いとはいえ、筆談はスムーズに会話が進まない。


【理由は分からない。ある日突然村の人間が次々とゴブリンになった】


「人間が突然ゴブリンになるなんてことがあるのか?」


しかし、目の前にいるゴブリンは少なくとも俺の言葉を理解して、かつ俺達が読める言葉を書くことが出来ている。


なので絶対にあり得ないとは言えない状況なのは確かだ。


『マスターよ、もしかしたら獣化の呪いかも知れんのじゃ』


「獣化の呪い? なにそれ?」


『詳しくは分からないのじゃが、妾の頭の中のデータベースにはそのような情報があるのじゃ』


『なに? そのデータ? ベース?』


サーシャがデータベースという言葉にハテナの顔をしている。

サーシャだけでなく、アイラもシェリーもナギサも同じだった。


まぁ、俺は前世の記憶があるのでデータベースの意味は分かる。


「まぁ、この場合はジーナの頭の中に蓄えられている知識だと思えばいいよ。それよりも獣化の呪いが本当にあるんなら原因はなんだろうな?」


再びメスゴブリンが地面にガリガリと書いた。


【私達を助けて欲しい】


「助けて欲しいのは分かるけど原因が分からないと何も出来ないしなぁ・・・」


するとメスゴブリンが何かを思い出したらしく地面にガリガリと書いた。


【私達がゴブリンになる少し前に私達の村にモンスターがやって来ました。そのモンスターは特に村人を襲うことなく帰りました】


『ふ~ん。なんとなくですけど、そのモンスターが村に何かを仕込んでいったんですかね?』


「その可能性は十分にあるな。なぁ? お前達の村に案内してもらえるか?」


『ご主人様、危険です! まだ原因が分からないですし、このゴブリン達が嘘をついている可能性だってあります!』


確かにアイラの言う通り、ゴブリン達が嘘をついている可能性もある。

しかし放っておいて良いことでは無い気がする。


『マスターよ、獣化の呪いは呪いの元を体内に取り入れなければ影響を受けないはずじゃ』


ジーナの記憶のデータベースには断片的な情報があるらしい。

情報は無いよりは全然マシだ。


「それなら村にあるのは一切口に入れないようにすれば大丈夫だよな」


『レックスがそう言うなら仕方が無いわね。その代わり、もし嘘をついていたら私の火魔法であんた達を消し炭にするからね!』


シェリーは手の平の上に炎を出して見せて赤いゴブリン達を威圧している。

メスゴブリンはまた地面にガリガリと文字を書いた。


【もし嘘だと感じたら遠慮無く焼き殺して下さい】


ここまで言うからには本当のことなのかも知れない。


「それじゃ、村まで案内してくれるか?」


馬車をマジックバッグにしまって赤いゴブリン達の後ろに付いていくことになった。

赤いゴブリン達に街道に沿って歩いていたが途中から森の中に入っていった。


『ご主人様、ひょっとしたら彼らは隠れ里の者達なのでは?』


隠れ里の者達とは税金が払えない等の理由で町や村に住めなくなった者達が集まって森の中で暮らしている集団のことだ。


「もしかして、お前達は隠れ里の者達なのか?」


そう聞くとメスゴブリンはコクりと頷いた。

噂は聞いていたが本当にいるとは思ってもいなかった。


ゴブリン達に案内されて森の中を歩くこと30分程で彼らの隠れ里に到着した。

隠れ里といっても人が住んでいる場所には見えない。


「ここがお前達の隠れ里なのか?」


念のため確認するとメスゴブリンがコクりと頷いた。

よく見ると畑もあり井戸もあった。

確かにここで生活をしている形跡はある。


「どこで寝ているんだ?」


するとメスゴブリンが指差しした方向を見ると洞穴があった。

どうやら洞穴の中で全員が寝泊まりをしているようだった。


彼らの私生活を確認するのはこのくらいにしておいて何から始めるとするか・・・

人がゴブリン化するなんて尋常じゃないよな。


「ジーナ、罠探知出来るかな?」


『おぉ、なるほど。ちょっとやってみるのじゃ』


ジーナが罠探知を使いながら里の中を歩き始めた。

するとジーナが何かを発見したようだ。


『マスター、何やら怪しげな物があるのじゃ』


ジーナが発見した物は畑の中に埋まっていた。

慎重に畑の中から掘り出すと真っ赤な魔石のような物だった。


「これがゴブリン化の原因なのか?」


『それは分からないのじゃ』


この真っ赤な魔石をどうするか話し合いが始まった。

破壊するべきなのか、どこか遠くに捨てに行くべきなのか。

それと赤いゴブリンになってしまった人達を元に戻すことが出来るのか?


ゴブリン達とも話し合った解決策は分からないが真っ赤な魔石は破壊すべきで意見が一致した。


『それじゃあ、魔弓を放つよー!』


真っ赤な魔石から十分な距離をとってサーシャが魔石に向かって魔弓を放った。

8本の矢が全て魔石に命中すると魔石はバラバラに砕け散った。


そして砕け散った魔石から赤い煙が立ち上るとその煙が赤いゴブリン達の方に向かっていった。


赤い煙がゴブリン達を覆い包むとゴブリン達の皮膚表面が砕け落ちていった。

赤いゴブリン達の皮膚が全て砕け散ると人間の姿が現れた。


『おぉぉ、も、元の姿に戻れた?』

『ほ、本当に元に戻れたのか?』


メスゴブリンも同様にゴブリンの皮膚が砕けて人間の姿になった。

当然、全裸姿だった。

しかも意外に若い女性だった。


『え、あ、やだぁー! 見ないでー!』


元メスゴブリンは両手で大事なところを隠してしゃがんでしまった。


俺がじぃーっと見ていると背後から目隠しされた。


『レックス! 一体どこを見ているのよ?』


どうやら目隠ししているのはシェリーのようだが魔法使いとは思えない程の力を感じた。


「シェリー、ちょっ、ちょっと目が潰れちゃうから勘弁してくれー!」


とりあえず、元メスゴブリン達はさっさと服を着てくれ!

でないと俺の目が本当に潰れそうだ・・・



・・・なんとか俺の目が潰されることは回避された。

本当に酷い目にあった。


さて、元ゴブリン達に確認しないといけないことがある。


「それで、これからどうするんだ?」


この場所は真っ赤な魔石を持ち込んだ奴にバレている。

なので、このままこの場所にいると同じことが起こる可能性が高い。


『そ、それは・・・』

『急にそんなことを言われても・・・』


そりゃあ、こういう反応になるよな。

こんなところに住んでいるくらいだしな。

成り行きで助けたが、ずっと面倒を見るわけにもいかない。


『義を見てせざるは勇なきなり、ですよ。レックス殿』


ナギサから日本のことわざが出た。


「ナギサ、その言葉はどこで知ったんだ?」


『私の故郷である和の国の言葉です』


薙刀といい、着物といい、やはり和の国を建国したのは元日本人か。

そうなるとドワーフ王国の次には行ってみたいな。


『ご主人様、その言葉の意味はなんですか?』


「簡単に言えば、困っている人がいたら助けてあげましょう、だな」


『へぇ、でも旦那様、よくそんな言葉を知っていましたね』


「そ、そんな事よりも、ここの人達をどうするかのほうが先決だろ?」


そろそろ、俺が転生者であることを教えたほうが良いかも知れないな。

いつまでも隠しておいても仕方ない。


『のぅ? この辺りに村は無いのか? やはり村で暮らすのが1番じゃないのか?』


『い、一応、近くに村はありますが我々を受け入れてくれるかどうかは・・・』


「分かった。交渉は俺達がしてみるよ」


という事で、近くの村に向かうことになった。

まずは街道に出ると元ゴブリン達の案内で村に向かった。


先頭を歩いていたアイラが突然立ち止まった。


『あなた、一体何者ですか?』

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