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0006:奴隷商人アラン


ルイーザさんに聞いた奴隷商の店に到着した。

かなり大きな店だった。


「奴隷商人ってかなり儲かるのかな?」


奴隷商の店は5階建てになっており周囲の建物よりも一際目立っていた。

しかも見た目がかなり清潔そうな雰囲気だ。

勝手な想像ではもっとダーティなイメージだったのだが・・・


「というか、本当にここで合っているんだよな?」


ルイーザさんから教えてもらった場所のはずなんだがイメージと違い過ぎて店の中に入りにくい。


店の前で入ろうかどうしようか悩んでいると店の中から若い男性が出て俺に話しかけてきた。


『当店に何かご用事でも?』


「あ、は、はい。実は奴隷について少し話を聞きたくて。あ、一応ギルドからの紹介状もあります」


急いでズボンから紹介状を取り出して若い男性にギルドからの紹介状を手渡すと、若い男性はその場で紹介状を読み始めた。


『なるほど、承知しました。それでは店の中にお入り下さい。当店のマスターがご説明しますので。こちらへどうぞ』


とりあえず若い男性の案内で店の中に入ることになった。

店の中に入ると店の内装も清潔にされていた。

奴隷というダーティなイメージを払拭するためなのかな?


1階は受付カウンターがあるだけで広々としていた。

その受付カウンターで待っているとダンディなオジサンが現れた。


『初めまして。私が当店のマスターを務めているアランと申します。以後、お見知りおき下さい』


「あ、はい。俺は冒険者をしているレックスと言います。よろしくお願いします」


『レックス様ですね。では早速ですが、こちらの部屋へどうぞ』


今度はアランに部屋まで案内された。


『レックス様。どうぞ、ソファに座って下さい』


アランに言われるがままにソファに腰を降ろした。

俺がソファに座るとアランもソファに座った。


「あの、なんで一介の冒険者である俺に対してここまで丁寧な対応をしてくれるんですか?」


さっきからずっと不思議に思っていた。

高ランク冒険者ならいざ知らず、こう言ってはなんだが俺はまだ低ランク冒険者だ。


『あぁ、なるほど。レックス様はギルドが紹介状を出してくれるという意味をご存知無いようですな』


アランが言うにはギルドとは本来は全ての冒険者を支援することが目的であるため特定の冒険者に肩入れはしないらしい。

なので本来は紹介状なんか発行しないらしい。


「確かに依怙贔屓していると見られる可能性があるか・・・」


『左様です。なのでギルドが紹介状を出すたいうことだけでもレックス様が有望視されている証かと』


そう言われると何かくすぐったい感じもするのだが、ルイーザさんの場合は危なっかしい弟のために・・・という感じもするな。


『それで本日、レックス様は奴隷の何をお聞きしたいのでしょうか?』


正直、まだ奴隷を購入すると決めていないので何を聞こうか考えていなかった。


「そうですねぇ、まず冒険者が奴隷を購入するのって普通なんでしょうか?」


『そうですなぁ・・・同じパーティーの冒険者同士で揉める原因はご存知ですかな?』


質問したのに質問で返されてしまった。


「う~ん、性格の不一致とかですか?」


『はははは、それもあるかも知れませんが多くの場合は報酬の分配ですよ。前衛、中衛、後衛と役割はそれぞれですが戦闘の貢献度はどうでしょうか?』


確かに前衛の敵の攻撃を受けるし率先して敵に突進しなければならない危険なポジションだ。

それに比べると中衛や後衛は比較的安全だよな。


俺もそれでクビになったようなもんだしな。

報酬は俺の知らないところで削られていたけど。


『ただ、戦闘の貢献度なんてものは数字化出来ません。なので報酬に対して正しい配分が出来ないのです。そうなると不平不満が蓄積していくのですよ』


なるほどね。

確かにアランの言うとおりだな。


『では、報酬の配分で揉めないようにするためにはどうすれば良いですかな?』


「なるほど、そこで奴隷の出番ということですか?」


『そうです。奴隷の持ち物は全てが奴隷の主人に帰属します』


なるほど、ジャ◯◯ンニズムか。

俺の物は俺の物、お前の物は俺の物か。

確かにそれなら揉めることは無いよな。


『なので奴隷を購入する冒険者の方はそれなりに多くいますよ』


このアランは中々商売上手だな。

奴隷を購入するメリットから説明している。


「奴隷を購入するメリットは分かりました。でらデメリットは何でしょうか?」


『奴隷の衣食住を確保することと年始の税を奴隷分も納めることくらいかと』


それだけなの? そりゃあ奴隷も生きているんだから衣食住の提供は当たり前だよな。

税金も納めるのが当たり前だしな。


あれ? 奴隷を購入するのに抵抗が無くなってきたぞ?


『ちなみにレックス様が購入するならどんな役割の奴隷が必要ですかな?』


今、俺が必要としているのは前衛だよな。

俺は支援術士だしな。

最近はソロでゴブリン狩りをしているから支援術士であることを忘れそうになるが。


「俺が必要なのは前衛ですかね」


『なるほど。性別に希望はありますかね?』


「え、えっと、で、出来れば女性・・・がいいかな・・・」


あえて口に出して言うとちょっと恥ずかしいが大事なことだ。


『ははは、そうでしょうな。どうですかな? 今、お売り出来る前衛に適した女性奴隷を見てみますか?』


アランはソファから立ち上がると俺の腕を引っ張り、店の4階へ向かった。


アランが言うには

2階は戦闘系男性奴隷

3階は非戦闘系男性奴隷

4階は戦闘系女性奴隷

5階は非戦闘系女性奴隷

がいるとのことだ。


4階に上がると広間のような場所に案内された。

そこには女性達がたくさんいた。

全員奴隷なのだろうか?


さすが戦闘系フロアだ。

筋肉ムキムキの女性も結構いた。

・・・多分、女性だよね?


『レックス様、どうですか? 気になる奴隷はいますか?』


いや、どうですか? と言われてもね。

筋肉ムキムキは論外としても確かに何人かはそこそこに綺麗な女性もいるけど。


ふと、広間の隅っこを見てみると一人で膝を組んでいる女性がいた。

あれは先日、馬車で運ばれていた獣人の女性だった。


髪の毛は汚れているためか灰色だ。

しかもこちらを向いてくれないため顔もよく分からない。


「アラン殿、あそこに座っている女性は?」


『彼女ですか? 彼女は先日入荷したばかりの奴隷ですね。もし彼女が気になるなら話をしても構わないですが、正直お勧めはしませんよ』


「え、それってどうしてですか?」


『彼女はレベル1なのですぐには戦闘の役に立ちませんよ』


なるほどね、レベルを1つ上げるにも時間がかかるからね。

奴隷を買うということは即戦力を買うわけだからお勧めはしないということか。


ただ、俺の場合は【経験値2倍】がある。

そして俺の懐も潤沢ではない。


「アラン殿、もし彼女を買うとしたらいくらになりますか?」


『そうですねぇ・・・レベル1ですしギルドの紹介状のことも加味して金貨1枚で如何でしょうか?』


「金貨1枚かぁ、残念ながら少しだけ足らないなぁ・・・」


俺の手持ちは大銀貨8枚、銀貨5枚、銅貨、鉄貨がそれなりというところだった。


俺が諦めようかと思ったところアランから提案があった。


『レックス様、5日間待ちましょう。その間に金貨1枚準備して頂くということでどうでしょうか?』


5日間で銀貨15枚以上稼げばいいのか。

決して無理な数字じゃない。


「俺としてありがたいのですが、それでいいのですか? 稼げる保証は無いですが」


稼げる自信はあるが失敗する可能性もある。

その時に違約金とか言われても困るので確認しておく。


『構わないですよ。こちらとしても5日間で売れる保証は無いですからな』


確かにその通りだ。


なのですんなりとアランとの交渉が成立した。

本当は奴隷のことを聞きに来ただけだったのに奴隷を購入することになってしまった。

何故、あの子を購入すると決めたのか分からないが後悔は無い。


「分かりました。では5日後にまた来ますね」


『はい。お待ちしております』


最後に広間の隅っこに座っている獣人の女性に向かって声を掛けた。

俺から色々と話し掛けたが獣人の女性はじっと俺の目を見ているだけだった。


「ちゃんと5日後に迎えにくるからね」


最後に迎えに来ることを告げると獣人の女性はコクンと小さく頷いた。

一瞬、ニッコリと微笑んだように見えた。

笑顔が凄い美人のように見えた。


アランが店の出口まで見送りしてくれた。


『では、5日後にまたお会いしましょう』


奴隷商の店から出ると夕方になっていた。

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