0058:盗賊はよく出る
ノーランドを出発してコーランドに到着したが町には入らずに先に進んだ。
今目指しているのはメリサの町だ。
メリサはこの周辺では1番大きい町になる。
ただし少し遠いらしい。
「しばらくはメリサの町で依頼をこなすか」
『それが良いかも知れませんね、ご主人様』
街道沿いは比較的モンスターが出ないのだが、それでもゴブリンやコボルトなどのモンスターは現れる。
「またゴブリンか・・・」
『またゴブリンですか・・・旦那様』
ゴブリンの5~6匹程度なら全く問題無い。
ゴブリンを瞬殺して先に進んでいく。
夕方になり、野営する場所を探していると野営に最適な場所を見つけたが先客がいた。
なので先に進もうとしたところ、その先客から声を掛けられた。
『旅の冒険者の方々ですよね。どうですか、ご一緒しませんか?』
そう言ってきたのは商人のような姿をしている男3人組だった。
「いいんですか?」
『もちろん、構いませんよ。と言うか冒険者の方々が一緒のほうが安心出来ますからね』
それならばと、一緒に野営をすることにした。
夕食はバラバラに食べたが夕食後に商人らしき男達と焚き火を挟んで会話した。
『なるほど、旅の冒険者なんですか。羨ましいですな。こんな美人を連れての旅なんて』
『全くだな。こんな美人達と旅が出来るなら俺も冒険者を目指すべきだったな』
まぁ確かにそうだろうな。
俺が逆の立場なら呪いをかけていたかも知れない。
そろそろ見張りの順番を決めて寝る準備をしようかと思った時にアイラが何か探知したようだ。
『ご主人様、こちらに向かってくるものがいます。おそらくは盗賊かと思います』
アイラは相変わらず高い探知能力は発揮する。
『あ、あの、と、盗賊がやってくるんでしょうか?』
アイラの言葉に商人らしき男達が狼狽え始めた。
「アイラ、盗賊は何人くらいか分かる?」
『7~8人です、ご主人様』
そのくらいの人数なら俺達が相手すれば問題無いだろう。
「じゃあ、俺達が盗賊達の相手をしてきます」
『え、相手は7~8人もいるのに大丈夫なんですか? それよりも逃げたほうが良くないですかね?』
商人達は本気で心配しているようだ。
まぁ若造と女子だけのパーティーだからな。
心配になる気持ちも分からんでもない。
「大丈夫だと思いますよ。とりあえず行ってきますよ」
そう言って野営地から出て盗賊が向かってくる方向に少し進んだ。
『ご主人様、少し待って下さい。盗賊の動きが止まりました』
「それって、こっちの動きが見えているのかな?」
『かもしれません。あ、盗賊が撤退していきます! ご主人様、どうしますか?』
どうやら奇襲をかけられないから襲うのを諦めたのかも知れない。
「追いかけてみるか。ちょうど試したいこともあるしね」
『レックス、何を試すつもりなの?』
「隠密支援だよ。スキルの説明だと200mくらいまでなら俺達の気配は気付かれないはずなんだけどね」
『へぇ、面白そうですね。旦那様』
「じゃあ、行くよ。隠密支援、発動」
多分、スキルが発動されたはずなんだが発動された感覚が無いので分からない。
『マスター、これで隠密支援が発動されたのか?』
ジーナだけでなくアイラ達も分からないと言っている。
まぁ、支援を発動した俺も分からないのだから当然だ。
「と、とりあえず盗賊達を追いかけてみるか」
『ご主人様、こっちです』
アイラが先頭になって盗賊達が逃げた方向に向かった。
盗賊達は街道沿いの林の中へ逃げたらしい。
林の中はほとんど真っ暗だ。
『ね、ねぇ、レックス、暗くて歩きにくいんだけど・・・』
「仕方無いなぁ、ほら背負ってやるよ」
そう言ってシェリーの前で止まり背中を差し出した。
『えっと、いいの?』
「あぁ、大丈夫だよ。早く乗って」
そう言うとシェリーが俺の背中に乗ってきた。
強化支援を発動しているのでシェリー1人くらいはなんてことは無い。
「じゃあ、行くよ」
『・・・変な所を触らないでよ?』
そんなことは保証出来ない。
それが嫌ならちゃんと自分で歩くべきだ。
アイラ達から少し遅れたので急ぐことにした。
しかし背中の柔らかい感触が気持ちいい。
背中の感触を楽しみながらスピードを上げた。
『ちょっ、ちょっと、レックス。変な所を触らないでって言ったでしょ?』
「そんな事を言っても、ちゃんと支えないと振り落としちゃうだろ?」
背中と両手で柔らかい感触を味わいながらアイラ達に追い付いた。
『・・・旦那様、何をしているんですか?』
サーシャが冷やかな視線を投げ掛けてきた。
別に変なプレイに目覚めた訳じゃないぞ。
「シェリーが暗闇の中だと歩きにくいというから背負って来たんだよ」
『うぅぅぅ、なんか恥ずかしい・・・』
シェリーが恥ずかしがっているな。
ただ、あまりモジモジされると俺が歩きにくいんだけどな。
『ご主人様、見えますか? あそこに盗賊達がいます』
盗賊達に近付いたのでシェリーのお尻を揉むのは一旦止めて、シェリーを背中から降ろした。
盗賊達は俺達の前にいる。
盗賊達の人数は8人いた。
距離にして300mくらい先だ。
そして気付かれてはいないようだ。
「一応、隠密支援の効果はあるのかな?」
『そのようじゃの』
300mくらいの距離を維持しつつ盗賊達の後を付いていった。
盗賊は周囲を警戒しながらゆっくりと先を進んでいるが俺達に気付いた様子は無い。
盗賊達が進んだ先にはテントがあった。
どうやら、この盗賊達はアジトを持たないであちこちを転々としながら盗賊をしている集団のようだ。
「一応、盗賊達のねぐらも判明したから捕まえるか?」
『そうですね、ご主人様。さっさと片付けてしまいましょうか』
サーシャ、ジーナ、シェリーも頷いた。
ゆっくりと盗賊達に近付いていった。
盗賊達まで残り50mくらいのところで気付かれた。
『お、お前達は何者だ!』
『て、てめぇら、俺達が誰なのか分かってるのか?』
近くまで接近を許してしまったからだろうか、盗賊達は酷く慌てていた。
「お前達は盗賊だろ? 俺達を襲おうとしてただろ?」
『な、なんだと! まさか、あの場所から俺達に気付かれないで此処まで付いてきたのか?』
「まぁ、そういうことになるかな」
『ば、馬鹿な・・・そんなことがあるのか?』
どうやら、尾行されない自信があったのか、もしくは尾行に気付く自信があったらしい。
まぁどちらでもいいけどな。
「そんなことよりも降伏するか、全員ここで死ぬか、決めてくれないか?」
『ちっ、この糞ガキが! 偉そうなことをほざきやがって!』
『ガキと女だけで俺達を倒せると思ってやがるのか?』
村正を抜いて刀の先を盗賊達に向けた。
「倒せる自信があるから追ってきたに決まってるじゃん。こっちの人数が少ないんだし。頭が悪いんじゃないのか?」
あえて挑発してみた。
生け捕りにして近くの町まで盗賊を連れていくのはちょっと面倒だ。
なので襲いかかってきてくれれば心置きなく返り討ちに出来る。
なので降参されると逆に困る。
『この糞ガキがぁ! 調子に乗ってんじゃねえぞぉ!』
『ぶっ殺してやる!!』
盗賊達8人が剣を振り回しながら一斉に襲い掛かって来た。
50mの距離を一気に詰めてこようとする盗賊達に向かってサーシャの魔弓が放たれた。
『ぐあぁぁぁ!』
『い、いってぇぇ!』
そして勢いが止まった盗賊達に対してジーナがシールドアタックで吹き飛ばした。
『がはっ!』
『ぐおぉぉ!』
そのジーナの両サイドからアイラと俺が盗賊達を斬り裂いていった。
そして残った盗賊達をシェリーの火魔法で焼き尽くした。
あっという間に8人の盗賊を討伐した。
「予想通り、大したことは無かったな」
『そうですね。まぁ奇襲しか出来ないような連中はこの程度ですね、ご主人様』
アイラは辛口だな。
それはそうと盗賊のテントの中を確認するか。
盗賊の持ち物は盗賊を倒した者がもらえるからな。
テントの中身を確認したが何も無かった・・・
「マジか・・・何も無いな」
ガッカリして野営地に戻って来たが驚くべきことが発生していた。
「え、マジで・・・あり得ないだろ?」




