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0052:港町コナーン


『ご主人様、今度はオークが5匹こちらに向かって来てます』


オークが5匹か。

なんで俺の場合だけ、条件が難しいんだろう?

まぁ刀剣術を試すのには丁度良いかも知れないな。


「よし、行ってくるよ!」


『ご主人様、無理はしないように』

『旦那様、助っ人の準備は出来てますからね』

『マスター、格好いいところを見せるのじゃ』

『レックス、しっかりね』


これは格好悪いところは見せられないな。

気合いを入れないといけないな。


村正を片手に持ってオークに突っ込んだ。

不思議と身体の動きがスムーズだ。

まるで何かに操られているような感覚だった。


「これが刀剣術スキルなのか・・・」


魔力を込めた村正は意図も容易くオークを両断した。

そしてバランスを崩すこともなく次々とオークを斬り倒していく。

普段だと途中で躓くところだが今回は躓かずにオークを倒していった。


そして気が付いたら5匹のオークを全て倒していた。


『『おぉぉぉ!!!』』


初めて攻撃系のスキル効果を実感した。

もちろん支援も使っての結果ではあるが、これならちゃんと前衛としてやって行けそうだ。


「よし。皆、新しいスキルの確認は終わったよな。それじゃ帰るか」


『ご主人様、凄く嬉しそうですね』

『あ~、分かるなぁ』

『そうじゃの、嬉しそうじゃな』

『そうねぇ、バレバレね』


平静を装っていたつもりだったがバレていたようだった。

ずっと欲しかった攻撃系スキルが手に入ったのだから仕方が無い。


◇◆◇◆


商業都市に戻ってきた。

ギルドに向かい、オークの魔石とドロップアイテムを買い取りしてもらった。


査定をしてもらっている間に依頼ボードを見てみた。

すると商業都市と隣町である港町で冒険者募集の張り紙があった。


《クラーケン討伐の冒険者を複数募集》


「クラーケンって烏賊のモンスターだよな?」


あくまでも前世での記憶の話だ。

この世界では違うかも知れない。


『レックスさん、ひょっとしたらクラーケンを見たことがあるんですか?』


後ろから受付嬢が声を掛けてきた。


「いえ、聞いたことがあるだけですよ」


どうやらこっちの世界でもクラーケンは烏賊のモンスターのようだ。


『そのクラーケンが隣の港町に現れてしまって困っているんですよ。なにせ港町が使えなくなってしまうと、この商業都市にも荷物が入って来なくなるんですよ・・・』


確かに商業都市に荷物が入ってこないと商業にならないな。


『レックスさん、クラーケン退治に行きませんか?』


「・・・クラーケンのランクは?」


『・・・えっと、ランクAモンスターです』


「・・・俺達を殺す気ですか?」


『・・・いやいや、単独で戦う訳じゃないですし、レックスさん達はランク以上に強いじゃないですか』


支援スキルを使えばそれなりの強さにはなると思うけどランクAモンスターは別格だろう。

腕利きのパーティーが集まってくるだろうから見てみたい気もするが。


であれば、依頼は受けずに港町に行ってみるのは良いかも知れないな。

とりあえず、オークの査定が終わり報酬を受け取ってキャンプ場に戻った。


その日の夜、ベッドの上で皆の意見を聞いてみた。


「港町に行ってみようか?」


『レックス、まさかクラーケンを倒すとか言わないわよね?』


「もちろんだ。単純に強いパーティーが集まるんだろう? 強いパーティーの戦い方を見ておきたくてね」


ランクAモンスターを倒すためにはランクAパーティーが複数必要だと言われている。

なのでランクAパーティーの戦い方がいくつか見られるはずだ。


間違い無く今後の参考になるはずだ。


『確かにご主人様の言う通りかも知れませんね』


「ついでに観光も兼ねてね。港町だから変わったものが手に入るかも知れないしね」


ということで、港町コナーンに行くことに決まった。


◇◆◇◆


翌日、朝食後に馬車で港町に向かった。

盗賊から奪った馬車なので文句は言えないが乗り心地はあまり良くない。


「ゴーレム馬車が欲しいな」


ゴーレム馬車とは魔力で動く馬車で本当の馬を必要としない。

そして馬がゴーレムのものと馬車本体がゴーレムの物の2種類が存在している。


『ご主人様、ゴーレム馬車は非常に高価ですよ。とても庶民には買えませんよ』


「それくらいは俺も知っているよ」


ゴーレム馬車は王族、貴族でも一部の人間しか持っていないと言われている。

そしてゴーレム馬車は白金貨が数千枚とも言われる値段がするらしい。


『でもレックスの言うことも分かるわよね。1度でいいからゴーレム馬車に乗ってみたいわよね』


『そうだよね、私も1度でいいから乗ってみたいですよ、旦那様』


サーシャとシェリーはゴーレム馬車に乗ってみたいとのことだ。


そんな話をしつつ、ゴブリンを倒しつつしながら港町に向かっていた。

途中で冒険者パーティーをそれなりに見かけた。

皆、港町に向かっているようだ。


「あれってクラーケン退治のために向かっているんだよな?」


『そうだと思いますよ、ご主人様』


『あんまり強そうな感じがしなかったね、旦那様』


俺もサーシャと同じように感じた。

決して弱い訳じゃないんだと思うのだが。


『この手の大型モンスター討伐には多くの冒険者パーティーが集まってくるからね。皆が強い訳じゃないわよ』


シェリーが説明してくれた内容としては中型、大型モンスターの討伐には複数のパーティーが集まって協力することは良くあるらしい。


馬車を走らせて夕方頃に港町に到着した。

潮の香りがして町の外からでも船が見えた。


港町の入口の門には門番がいた。


『すまないが、身分証明書を見せてくれ』


門番が言うにはクラーケン退治のために冒険者を集めているが中に盗賊が混じってしまうことに懸念して身分証明書をチェックしているとのことだ。


確かにどさくさに紛れて盗賊が入り込む可能性はある。

なので素直にギルドカードを門番に見せた。


『冒険者か。ひょっとしてクラーケン退治に来たのか? いやぁ助かるよ。よろしく頼むな』


門番は勝手に納得して門を通してくれた。


『ご主人様、よろしかったんですか?』


「え、なにが?」


『門番の人が勘違いしてましたよ』


「まぁ勝手に勘違いしただけだし、俺達は特に嘘をついたわけじゃないしな」


『まぁ、それはそうですけど・・・』


港町の中に入ってみると町の中には冒険者で溢れ返っていた。


「まさか、この冒険者達が全員クラーケン退治に来たのか?」


あまりの冒険者達の多さに驚いていると背後から声がした。


『はははは、それは違うぞ、坊主。大半の奴等はクラーケン退治に参加したっていう看板が欲しいだけで真面目にクラーケンを倒そうとは思っていない連中だ』


後ろを振り向くとそこには髭面をした如何にも冒険者と思われるオッサン達がいた。


「クラーケン退治に参加した看板ですか?」


『あぁそうだ。高ランクモンスターの討伐に参加したことがあるってだけで箔が付くからな。奴等はそういった連中だな』


なるほどね。

冒険者はそういった見栄みたいなものも必要な時があるらしいな。


俺達はあのクラーケン討伐に参加したことがあるんだぞ、みたいな言い方をするんだろうな。


俺にはまだそういった場面に遭遇したことは無いが・・・


「ところで、あなた達はクラーケン退治に参加するんですか?」


『あぁ、もちろんだ。俺達はランクAパーティーの【灼熱の斧】だ。お前達もクラーケン退治に参加するんだろう? 少なくてもあの辺にいる冒険者達よりは強そうに見えるしな』


灼熱という名前の通り、暑苦しそうなオッサンズのパーティーだ。


「いや、俺達はクラーケン退治を見学にし来ただけですよ」


『はぁ? 見学だと・・・? まぁいいか。お前達なら十分戦力になると思うから気が変わったら参加しろよな!』


そう言うと【灼熱の斧】達は去っていった。


「だから、参加しないって。見学だけなんだから」


俺がそう言うとアイラ達がクスクスと笑っていた。

いや、本当に今回は見学するだけだよ?

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[気になる点] 何度か「少なくても」と使ってますが、 「少なくとも」が正しい言葉です。
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