0033:サーランド突入 その2
身体が強化された今の俺達ならゴブリンキング2匹くらいなら倒せそうな気がする。
「ゴブリンキング2匹は俺達が倒す。道を開けてくれ!」
『だ、大丈夫なのか?』
『ゴブリンキングが2匹もだぞ?』
上級者パーティーが道を開けた瞬間、強化支援で強化された走力で一気に上級者パーティーを追い抜いた。
『は、速い、マジかよ? すげぇな・・・』
『ちょっと自信を無くすな・・・』
この後も頑張ってもらわないといけないので自信を無くすなよ。
そんなことよりもゴブリンキングだ。
「サーシャ! 先制攻撃いけるか?」
『余裕だよ、旦那様。ついでに誘導矢も見せるからね』
サーシャが魔弓の矢を放つと矢が4本になった。
そして4本に別れた矢が途中で軌道を変えて1匹のゴブリンキングに全部突き刺さった。
う~ん、2本ずつ左右のゴブリンキングに矢が突き刺さると思っていたんだが違ったようだ。
それぞれの矢を別々に誘導するのは練習が必要そうだ。
「アイラ、ダメージを喰らっているほうを頼めるか?」
『了解です! ご主人様』
即答だった。
アイラなら負傷しているゴブリンキングの攻撃はかすりもしないだろう。
アイラがモンスターから攻撃を受ける姿は想像出来ないしな。
「ジーナ、俺と一緒に無傷のほうを倒すぞ!」
『マスター、承知なのじゃ!』
「サーシャは適当に援護してくれ!」
『ちょっと、適当って酷くないですか? 旦那様・・・』
とりあえず、サーシャは上手く援護して欲しい。
ジーナはゴブリンキングに向かって行った。
俺もジーナに遅れないように付いていく。
ゴブリンキングは大剣を持っておりジーナに大剣を振り下ろしてきたがジーナは大盾で問題なく受け止めた。
そして右手に持っていたジェネラルの大剣をゴブリンキングの腹に突き刺した。
『グギャギャャャャ』
その隙に俺はジーナの左側からゴブリンキングの横に回り込んだ。
そして村正でゴブリンキングの脇腹を斬り裂いた。
強化支援のおかげか、思いの外ゴブリンキングの脇腹を深々と斬り裂くことが出来た。
ゴブリンキングの腹の半分近くが斬り裂かれていた。
そして動きが止まったゴブリンキングを俺とジーナで斬り付けていく。
『おいおい、マジかよ・・・』
『ゴブリンキングに圧倒的じゃないか・・・』
上級者パーティー達も驚きの声を上げているが俺も驚いている。
まさか、ここまで強くなれるとは思っていなかった。
そしてゴブリンキングは大剣を落として片膝を地面に着いた。
そのゴブリンキングの首を斬り落とした。
アイラのほうを見るとアイラもゴブリンキングの討伐が完了していた。
『こっちは一人でゴブリンキングを倒したのか・・・』
『なんか凄いなぁ・・・』
レベルアップに強化支援が加わった力に改めて驚いたな。
以前、ゴブリンキングを倒した時とは雲泥の差だ。
強くなったことに感動していると、上級者パーティー達が近寄ってきた。
そして数人が話し掛けてきた。
『今、他のパーティーとも相談したんだが実力的には君達のほうが上のようだ。非常に残念だけどね。なのでボスモンスターを探すところまでは僕達が担当するから君達はボスモンスターを倒すことに専念して欲しいんだけど、どうかな?』
本来は格下相手にするべき提案じゃないだろう。
でも必要があれば格下相手にも頭を下げることも出来る人達のようだ。
ここまでされたら断れないな。
「分かりました。ボスモンスターは俺達が引き受けますね」
『ありがとう。では俺達が先頭に立ってモンスター達を蹴散らしていくからな』
あれ? 途中まで変わらない気がするな。
元々上級者パーティーが先頭になって進むんだよな。
「そういえば領主の屋敷ってどこだっけ?」
そういえば、2年も暮らしていたのに領主の屋敷の場所が分からなかった。
まぁ全く縁が無かった場所だったからな。
『それなら、あそこの角を右に曲がったらすぐ目の前にあるぞ!』
上級者パーティーの1人が教えてくれた。
どうやら、もうすぐ到着するらしい。
言われたように角を曲がると確かに巨大な屋敷があった。
そして屋敷から何か嫌な雰囲気を感じた。
『ご主人様、何か嫌な気配を感じます・・・』
『旦那様、変な感じがしますね・・・』
『マスター、妾もじゃ・・・』
どうやら、俺だけじゃなくアイラ達も同様に嫌な気配を感じているようだ。
目の前にある領主の屋敷にボスモンスターがいると思われた。
『よし、屋敷に突入するぞ!』
上級者パーティーのメンバーは誰もこの嫌な気配に感付いていない様子だ。
もしくは感付いているが無視しているのかも知れないな。
ボスモンスターがいるだろうことは元々想定の範囲内だしな。
屋敷の門を通り抜けると剣を持ったゴブリン達が十数匹現れた。
いわゆる警護兵みたいものだろう。
『マスターよ、ゴブリンジェネラルとゴブリンソルジャーじゃ!』
ジーナは解析持ちだ。
すぐにモンスターの種類が分かるらしい。
『ここは俺達に任せてお前達は屋敷の中に向かってくれ!』
3組の上級者パーティーのうち1組のパーティーが足止め役を買って出た。
俺達は2組の上級者パーティーと共に屋敷の中に突入した。
『ご主人様、あちらからかなり強い気配を感じます。恐らくはボスモンスターかと思われます』
アイラの案内に従って屋敷の2階に移動した。
階段を駆け上がり立派な扉の前に到着すると1階からゴブリンジェネラルやゴブリンソルジャー達がやって来ようとしていた。
どうやら1階の部屋に潜んでいたようだ。
『ここは俺達が引き受けるから部屋の中は頼んだぞ!』
そう言うと上級者パーティー達はゴブリンジェネラルやソルジャー達を倒しに向かった。
そして扉の前に残ったのは俺達だけになった。
「扉を開けるよ? 準備はいいかな?」
アイラ達が頷いたのでゆっくりと扉を開けた。
扉の中はかなり広い部屋になっていた。
ダンスフロアなのか天井も高い。
「くっ、なんだ? この臭いは?」
『『く、臭いです!』』
部屋中から漂ってくる腐敗臭が酷い。
そんな酷い臭いが充満している部屋の奥に1匹のモンスターがいた。
モンスターは座っており何かを食べていた。
そしてモンスターの傍らには無数の死体が転がっていた。
恐らく腐敗臭は死体のものだろう。
《ニンゲンガ、ナンノヨウダ?》
「しゃ、喋ったのか? モンスターが・・・」
『だ、旦那様、モンスターが喋ってるよ』
《フハハハ、ハナセルノハ、ニンゲンダケダト、オモッタカ?》
『マスター、奴はゴブリンエンペラーじゃ』
ジーナの解析でモンスターの正体は分かった。
ゴブリンキングよりも更に上位のモンスターだ。
しかし話をすることが出来るモンスターの存在には驚きだった。
《キマラハ、ココニ、ナニヲシニキタノダ?》
「お前達は大人しくこのサーランドから立ち去るつもりはあるか?」
話が通じるなら交渉が出来るかも知れない。
一瞬、そう考えてみて聞いてみた。
《ハハハハ、キサマラハ、エサナノダゾ。エサノハナシナド、キクヒツヨウガ、アルノカ?》
どうやら話は出来るが話は全く通じないようだ。
しかも俺達のことを餌だと言いやがった。
ゴブリンエンペラーは食べていた物を投げ捨てて、ゆっくりと立ち上がった。
右手には大剣を握っており、そして大剣を俺達の方に向けて言い放った。
《コノエサニモ、アキテキタトコロダ。シンセンナ、ニクヲタベル、トシヨウカ》
ゴブリンエンペラーが殺気を放ち始めた。




