0031:サーランド突入前
緊急依頼が発令された。
緊急依頼を受けた際にノースランドの南門に集合するように言われたので集合時間より少し早めに南門に到着していた。
他の冒険者達も既に集合しており冒険者だけで300人以上いた。
ソロの冒険者達はその場で仮のパーティーを組まさせれていた。
どうやら基本的にパーティー単位で活動するようだ。
まぁモンスターの数が多いらしいからパーティー単位のほうが良いはずだ。
集まった冒険者達はそれぞれ会話をしていた。
サーランド出身の冒険者達は
『モンスター共め、やっと恨みを晴らせる時が来たぜ!』
『あぁ、そうだな。やってやるぜ!』
と意気込みを語っており、ノースランドの冒険者達は
『おい、聞いたか? 今回の依頼は報酬が高いらしいな』
『あぁ、何でも1日当たり銅貨5枚らしいな』
『しかも倒したモンスターは通常の3倍の報酬が出るらしいしな。腕がなるぜ!』
それぞれの思いに違いはあれど冒険者達の士気は高い。
もちろん俺達は前者達と同じ思いだ。
集合時間になったところでゴッツが現れた。
『皆、よく集まってくれた。ここに集まってくれた総勢500人に改めて礼を言う。緊急依頼の内容は改めて言う必要は無いだろう。なので俺から言うことは単純だ。モンスター共を狩り尽くせ! 1匹も残すな! そして全員死ぬな! 以上だ!!』
『『おぉー!!!』』
冒険者とノースランドの兵士合わせて総勢500人近くの雄叫びは物凄い。
雄叫びと共に南門が開かれ、冒険者や兵士達が次々と城外に出ていった。
水や食料を積んだ馬車が最後に城門を潜った。
500人近くの移動は本当に軍隊の行軍のようだった。
『ご主人様、凄い人数ですよね』
『旦那様、これだけ人数がいればサーランドのモンスターなんか余裕だよね』
『本当に凄い人数じゃな』
確かに凄いよな。
これだけの人数がいればモンスターが1000や2000匹いても大丈夫な気がするよな。
「確かに凄い人数だよな。これだけ人数がいれば大丈夫だと思うよ」
大丈夫と言いつつも何故か不安を感じていた。
何かを見落としているんじゃないか?
ただの心配性なだけかも知れないが・・・
◇◆◇◆
途中で何度か休憩を挟みつつ移動していたが夕方になった。
冒険者と兵士だけの行軍のため進行速度が早くかなり進んだ。
街道沿いに野営に適した草原があり、そこで行軍が停止した。
『よーし、今日はここまでだ。各自、野営の準備をしろ! 野営の準備が終わったら各パーティーのリーダーは俺のところに集まってくれ!』
行軍が停止し、ゴッツが大声で指示を出した。
テントを設置するパーティーや寝袋だけ準備するパーティー等、野営の仕方は各パーティーそれぞれのようだ。
女性がいるパーティーは比較的テントを設置しているが、野郎共だけのパーティーは寝袋だけのようだな。
俺達はちゃんとテントを持っているのでテントを設置した。
俺達のテントの設置が完了したところでゴッツのところに向かった。
各パーティーのリーダーがゾロゾロと集まって来た。
総勢で70名程おり、中には女性もいた。
『全員集まったようだな。そうしたら見張りの順番を決めたい。済まないが4交代制として、順番はくじ引きとさせてもらう。』
ゴッツの隣に箱を持っている男がいた。
箱の中に札でも入っているのだろう。
まぁくじ引きは運だけで公平だから異論を唱える者は誰もいなかった。
くじを引く順番が回って来たので箱から札を1つ取り出した。
札には "1" と書かれていた。
見張りの順番が1番目ということか。
これはいい順番を引いたな。
4交代制だと一番辛いのが3番目だろう。
次が2番目だな。
やはり途中で起こされると十分な睡眠が取れない。
そういえば、【紅蓮の刃】にいた時の見張りはいつも3番目だったな。
シャリーは『寝不足はお肌の大敵なのよ』と言って見張りをしなかったからグレン、マッカス、ダン、俺の4人で見張りをしていた。
『くそっー、よりによって3を引いちまったかぁ! 仲間に怒られるよなぁ・・・』
『2かぁ、まぁ3よりはまだ良しかな?』
2か3の札を引いてしまった連中は残念そうな声を上げていた。
まぁくじ引きなので仕方が無いよな。
『全員、くじは引き終わったな。それじゃあ各自、見張りはちゃんとやってくれ! 頼んだぞ! 解散だ!』
ゴッツの解散の一声で各パーティーのリーダー達は自分達の寝床に戻っていった。
俺も俺達のテントに戻り、見張りの順番が1番目であること伝えた。
『旦那様、良くやってくれました。良かったー!』
見張りの順番が1番目であることをサーシャが一際喜んでいた。
まぁ見張りが終わればゆっくり寝れるしな。
夕食後、早速見張りに着くことにした。
見張りをしているとアイラがモンスターの気配を感じ取った。
『ご主人様、モンスターの気配が近付いて来ています。数はおよそ30匹程です』
正直、アイラ以外には把握出来ない。
暗闇の中なので姿は見えないが遠くから声が聞こえてきた。
『グギャギャ』
『ギィギャッギャ』
この発音はゴブリンだな。
念のため近くにいる冒険者パーティーにもゴブリンが近付いて来ていることを知らせた。
俺達を含めた3組のパーティーでゴブリン達を相手にすることになった。
『お、本当にゴブリンが来たな!』
『すげぇな、良く分かったな!』
他のパーティーもアイラの探知能力には驚いたようだ。
『とりあえず右側は俺達に任せろ!』
『じゃあ、左側は俺達だな!』
俺達が中央を担当することになった。
攻撃支援、防御支援、回避支援を発動させて突進した。
ジーナを先頭に、やや後ろの左右には俺とアイラが続き、その後方にはサーシャがいる。
サーシャの魔弓で先制攻撃を行い、ジーナがゴブリン達に突撃する。
そして、ジーナの突撃で倒せなかったゴブリン達は俺とアイラが倒していく。
『おぉ、すげぇな。特にあの盾を持ったチビッ子なんてゴブリンを吹き飛ばしたぞ!』
『いやいや、あの獣人の女もすげぇ早い動きをしてるぞ!』
『あの魔法の矢を放っているエルフも中々じゃないか?』
あれ? 俺はどうなの?
地味に頑張っているはずなんだけど?
3組のパーティーで相手したので30匹程のゴブリンは10分くらいで討伐が完了した。
その後は自分達が倒したゴブリンの魔石やドロップアイテムを拾っていく。
作業が終わった後、他のパーティー達がアイラ達を取り囲んでいた。
アイラ達を褒めちぎっていた。
さすがに俺が近くにいたので引き抜こうとする輩はいなかったが。
その後も見張りを続けながら雑談をしていたが見張りの交代の時間になった。
次の見張りのパーティーがやって来たところで俺達もテントに戻ることにした。
テントに戻ると睡魔が襲ってきた。
全員とキスをしてから寝ることにした。
「おやすみ~」
『『おやすみなさい~』』
◇◆◇◆
翌日の昼前にサーランドの近くまでたどり着くことが出来た。
ここで作戦会議となった。
このまま一気に攻め込むのか、それとも一泊してから攻め込むのかだ。
一泊してから攻め込む派の意見は、ここまで歩き続けているので休息をすべきとのことだ。
まぁ確かに言っていることに一理はあるな。
一方の一気に攻め込む派の意見は、一泊しても見張りがあるからあまり休息にはならないとのことだ。
こちらも言っていることに一理ある。
なのでどっちにするのか決めきれない感じなのだ。
『仕方が無いな。こうなったら多数決で決めることにするぞ!』
ゴッツが多数決と言い出した。
まぁ意見が別れた時には仕方が無いよな。
負けたほうは不満を持つかも知れないが時間が無いしな。
『では、一気に攻め込むのに賛成のものは手を上げてくれ!』
俺は一気に攻め込むのに賛成なので手を上げた。
何故か早く攻めたほうが良いと感じていたからだ。
回りを見ると手を上げているのは全体の7割くらいだった。
『よし、賛成多数なので一気に攻め込むぞ!』
『『おぉぉー!』』
どうやら手を上げなかった各パーティーのリーダーも文句無さそうだった。
決まったからにはちゃんとやる、といった感じだ。
『30分後にサーランドの町に突入するぞ! 各自、至急準備してくれ!』
各パーティーのリーダー達は自分達のパーティーのところに急いで戻っていった。
当然、俺も準備するために戻った。
とはいっても準備すること等無いような気がするが。