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0030:緊急依頼発令


ギルドに入ってきた男の一言でギルド内は一気に騒がしくなった。


『なんだと! それは本当なのか?』


『あぁ、本当だ・・・俺のパーティーメンバーは俺以外は全員、殺られちまった・・・』


サーランドのモンスターが再びノースランドに押し寄せてくると言った男は全身が傷だらけだった。

とても嘘を言っているようには見えない。

そもそも嘘を言う必要も無いはずだしな。


傷だらけの男が言うにはギルドの依頼でサーランド周辺の様子を確認するために仲間パーティーと一緒に探索していたらしい。


確かに依頼ボードにはそんな依頼があったのを覚えている。

俺達は受けなかったが。


『町の中を確認するために町から離れた木に登ろうとしたところに大量のゴブリン達が襲い掛かってきたんだ・・・』


ゴブリンは単体では弱い。

単体のゴブリン相手なら負ける冒険者はまずいない。

しかしゴブリンは群れるモンスターであり群れたゴブリンを相手に命を落とす冒険者は毎年いる。


そして、この傷だらけの男のパーティーメンバーが命を落としている以上はゴブリンの群れはそれなりにいるということだ。


考えられるのはサーランドの町の中には溢れる程のゴブリンがいて町の外に溢れてきたものなのか、もしくは偶然にも町の外に出てきたゴブリンにたまたま冒険者が見つかってしまったのか。


普通に考えれば前者だと思うが。

そうなると、このノースランドの都市にまたモンスターが押し寄せてくる可能性は高い。


『ご主人様、緊急依頼が発令されるかも知れませんね』


緊急依頼とはギルドが緊急事態と判断したときに発令され多くの冒険者が集められる。


一応、緊急依頼を拒否することも出来るらしいがギルドへの貢献度が下がり、次回のランクアップに影響すると言われている。

事実は分からないが。


『旦那様、緊急依頼が発令されたら受けるの?』

『まぁマスターのことだから受けるのじゃろ?』


サーランドを襲ったモンスターが相手だ。

緊急依頼が発令されたら受けると思う。

もちろんアイラ達が嫌と言えば考えるが。


「アイラ達はどうしたい?」


『ご主人様が駄目と言わないなら受けたいです』

『前回のリベンジをしたいよね、やっぱり』

『妾は前回のことを知らないけど皆が受けるなら問題無いのじゃ』


俺としても受ける気は満々である。

アイラ達にも異存は無さそうなので憂いはないな。


『レックスさん・・・ひょっとしたら緊急依頼が発令されたら受ける気ですか?』


ルイーザさんからの質問だ。

もしかしたら危険だから駄目とか言われるかと思っていたら予想外の言葉だった。


『しっかりやるのよ。でも怪我したら駄目ですからね!』


ルイーザさんからも了承をもらえた。

これで緊急依頼を受けることに支障は無くなったな。

そしてルイーザさんが言うには緊急依頼が発令されるのは早くても明日になるだろうとのことだった。


明日に備えて今日は予定通りのんびりすることにした。


『よっしゃー、明日に備えて飲むぞー!』

『おぉ、そうだな。景気付けに一杯やるか!』


ギルド内にいた冒険者達が酒を飲み始めた。

まぁ明日に備えての過ごし方は人それぞれだしな。


「じゃあ俺達はそろそろ出ようか」


ギルドのカウンター横の酒場が盛り上がり始めたのを尻目に俺達はギルドを出た。

ギルドを出たのはいいが何をするのか決めていなかった。


『旦那様、ところで何をしましょうかね?』


「そうなんだよね。何をしようか? 何かしたいことはある?」


俺達4人は悩み始めてしまった・・・

この世界には娯楽は少ない。

皆、毎日を生きるのに精一杯だからだ。


結局はすることが無いため町の中をブラブラすることになった。

すると俺達と同じようにブラブラしている冒険者が多いことに気が付いた。


「皆、同じなんだな・・・」


『そのようですね、ご主人様』


暇になると悪さをする奴等も当然出てくる。

ブラブラしていると冒険者風の男3人組が俺達に近寄ってきた。

3人はニタニタしており気持ち悪いな。

とりあえず醜男A、B、Cと名付けよう。

そして醜男Aが定番のセリフを吐いた。


『なぁ小僧、随分綺麗な女達を連れているじゃねぇか。ちょっと俺達に貸してくれねぇかな? いいだろう?』


あまりにも定番すぎて返答に困っているとサーシャが出てきた。


『ちょっと、あんた達! いい加減にしなさいよね』


すると今度は醜男BとCが言ってしまった。


『うるせぇ! やっぱ、お前は要らねぇや。胸が小さいしな』

『ひゃっははは、そうだな。お前は小さいから要らねぇや』


次の瞬間、サーシャの右足の蹴りが醜男Bの顎にヒットし、そのまま回転して今度は左足での後ろ回し蹴りが醜男Cの顎にヒットした。

醜男BとCはぶっ飛び、そのまま倒れた。

2~3mは飛んだかな? 死んでないよね?


どうやら気絶しているだけのようだった。

ちょっと安心した。


ただ、仲間のそんな姿を見た醜男Aは当然怒り声を荒げた。


『て、てめぇ、突然何をしやがるんだ!』


『あぁ? ふざけるなよ! 誰の胸が小さいだと? それでてめぇらに迷惑かけたのか? 舐めたことを言っているとてめぇらの粗末なもんを踏み潰すぞ!』


サーシャはキレると怖いな・・・

そしていつの間にか野次馬が集まっていた。

野次馬の中には当然女性冒険者達もいる。


『何なの、あいつら。女を舐めているの?』

『醜男のくせに胸で女を判断しているの?』

『あんな醜男なんてゴブリンのメスで十分でしょ?』

『いや、ゴブリンのメスのほうが可哀想よ』

『そうよね、どうせ粗末なもんしか持ってないだろうしね』


・・・散々な言われようだ。

さすがにちょっと可哀想に思えてきた。

醜男BとCは気絶しているため野次馬で集まってきた女性冒険者達の罵倒は醜男Aに向けられている。


醜男Aは気絶している醜男BとCを担ぎ上げ、そのまま逃走した。

逃げる際にこれまた定番のセリフを残していった。


『てめぇら、覚えていろよ! 必ず仕返しするからな!』


あまりにも定番な終わり方に集まっていた野次馬達も笑いながら解散していった。


『旦那様、果物でも買いに行きますか?』


サーシャは何も無かったかのようだ。

いつものサーシャの顔に戻っていた。


「そ、そうだね・・・」


その後と色んな屋台で買い食いをして時間を潰すことにした。

その後は宿屋に戻り夕食を食べたがアイラ達はよく食べる。

どこに入るのかの不思議だ。


『ご主人様、食べれる時に食べておくのが基本ですよ』


まぁ俺もこの世界で育ったので理解しているつもりだが、それでも限度があると思う。

果物とかは別腹なのだろうか?

夕食が終わり部屋に戻った。

明日に備えて今日は大人しく寝ることになった。


◇◆◇◆


翌日、ギルドに行ってみると緊急依頼が発令されていた。

昨日、アイラ達と話した通り緊急依頼に参加するためギルドの受付カウンターに並んだ。

ルイーザさんが俺達の顔を確認すると笑顔になった。


『レックスさん。やっぱり緊急依頼を受けるんですね』


昨日は頑張れと言っていたが少し心配なのだろう。

笑顔が少しぎこちない。


「もちろんですよ。サーランドを奪ったモンスターどもを1匹でも多く倒してやるつもりですよ」


『その気持ちはよく分かるけど無理だけはしちゃ駄目よ』


無理をするなと言われてもな。

未だにあの日のことを思い出すことがある。

子供や老人は生きながらに喰われ、女は凌辱された後に喰われてしまった。


俺達が弱かったために助けられなかった。

そう思うと悔しさが溢れてきた。

そして同じような思いにいるのか目を閉じて天を見上げている冒険者達がいた。

彼らはサーランドのギルドで何度か見かけた冒険者達だ。


暫くすると緊急依頼の受付が終わった。

そして1人の体格の良い男が出てきた。

サーランドのギルドでギルドマスターをしていた男だ。


『皆、よく集まってくれたな。今回のモンスター討伐軍を指揮することになった、ゴッツだ。よろしく頼むぞ』


サーランドに2年も暮らしていたが始めてギルドマスターの名前を聞いたな。

それにしても体格と名前が完全に一致しているな。


『今から3時間後に南門に集合してくれ』

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