0028:ダンジョン3階層クリア
やっとダンジョンの3階層に到着した。
扉を開けた先は普通に町だった。
しかし、この町の風景には見覚えがある。
サーランドの町並みにそっくりだ。
「な、なんだよ、ここは・・・サーランドなの・・・か?」
『ご主人様、落ち着いてください! ここはダンジョンの中です。サーランドではありません!』
「でも、この町並みは明らかにサーランドにそっくりだぞ?」
『た、確かにサーランドの町にそっくりですよね、旦那様・・・』
そうだよな、サーランドの町にそっくりだよな?
『落ち着くのじゃ、マスター。おそらくじゃがダンジョンコアがマスターの記憶を読み取ってサーランドとやらの町並みを再現しただけじゃ』
俺の記憶を読み取った? 町並みを再現した?
ダンジョンコアはそんなことまで出来るのか?
だとして何のためにこんなことをしてるんだ?
何もかも分からないことだらけだ。
ただ、ダンジョンの中であるなら落ち着かないと駄目だよな。
落ち着け 俺・・・落ち着け 俺・・・
「ふぅ・・・よし、落ち着こうか。ここがダンジョンの中だとして何でこんなことが起きているんだろうな?」
『考えられるのは妾達を混乱させるのが目的なんだと思うのじゃが・・・』
確かにジーナの言う通りだろうな。
さっきも混乱しかかったわけだしな。
『ご主人様、ジーナ、静かに! 向こうからモンスターがこちらに向かって来ますよ』
アイラが指差しした建物の影からモンスターが現れた。
ゴブリンソルジャー、ゴブリンアーチェリー、ゴブリンメイジの群れだ。
全部で30匹くらいはいる。
「一気に倒すぞ! 攻撃支援、防御支援、回避支援、発動!」
ジーナを先頭に、左右にはアイラと俺がゴブリン達に向かって走り始めた。
後方からサーシャが弓で先制攻撃をした。
『ギャッギャァァァ』
『グギャッギャギャ』
突然の先制攻撃に慌て始めるゴブリン達。
そこにジーナが盾でゴブリン達を吹き飛ばす。
まるでダンプカーに轢かれているようにも見える。
そして俺とアイラはジーナに吹き飛ばされたゴブリン達を斬り倒していく。
「なんかこれって楽な作業だよな」
『確かにそうですが・・・』
・・・
ゴブリンの上位種30匹を10分足らずで討伐した。
『ご主人様、引き続きモンスターの群れがこちらに向かって来ます』
「ジーナ、次は【挑発】を使ってみてくれるか?」
『了解なのじゃ、マスター』
引き続きやって来たのはホブゴブリンとゴブリン達の群れだ。
数にして10匹程度だ。
ジーナが【挑発】を発動するとモンスター達は左右にいる俺やアイラには目もくれずにジーナだけを狙って攻撃をしていた。
ジーナは防御に専念して左右から俺とアイラがモンスターを倒していった。
ジーナが吹き飛ばしたモンスターを倒すよりもこっちのほうがしっくりするな。
◇◆◇◆
結論としてジーナを仲間にしたのは大正解だった。
欲しかったタンク役として必要なスキルをジーナは一通り持っていた。
「何よりも【挑発】スキルが秀逸だよな」
【挑発】はその名の通りモンスターを挑発することでモンスターの意識をジーナに向けることが出来る。
ジーナが防御に集中している間に俺とアイラでモンスターを倒すこと出来た。
とりあえず、繰り返し押し寄せるゴブリン達をひたすら蹴散らした。
いくらゴブリンといっても数が多いと大変だ。
ゴブリン達の襲撃が止んだところで町の調査を開始することにした。
俺の記憶を読み取って再現した町ならギルドや宿屋があるはずだ。
そしてギルドがあった場所に向かってみると本当にギルドがあった。
中に入ってみるとサーランドのギルドと全く同じだった。
もちろん中には誰もいないが。
念のため宿屋にも行ってみたがギルドと同様に中身は全く同じだった。
もう1つ分かったことがある。
俺が入ったことが無い店や家には入れなかった。
このことから俺の記憶を再現していることは間違い無さそうだった。
ダンジョンコアが何の為にこんな事をしているのか分からないが。
「とりあえず、ここが俺の記憶を再現しているのは間違い無さそうだけど、先に進むためにはどうすれば良いんだろうね」
『何か心当たりは無いですか? ご主人様』
『旦那様が一番印象に残っている場所とか?』
『マスター、確かにその可能性が高いかも知れないぞ』
俺が一番印象に残っている場所か・・・
そうなるとあそこしか無いよな。
俺達はある場所に向かった。
それは奴隷商だ。
アイラと出会った場所だ。
奴隷商に到着し4階へ向かった。
4階の広間に到着するとあの日アイラが座っていた場所に50cmくらいの光輝く玉が浮いていた。
「もしかして、これがダンジョンコアなのか?」
確かに光輝く玉からは強力な魔力を感じる。
これがダンジョンコアで間違い無さそうだ。
「確か、ダンジョンコアの破壊は禁止されていたよな。この後はどうすればいいんだっけ?」
『ご主人様、ダンジョンコアの欠片を持ち帰れば依頼は完了しますよ』
そうだっけ? どうやらダンジョンに関する説明の一部を聞き逃していたらしい。
とりあえず、アイラに言われるがままにダンジョンコアにナイフを入れてみると簡単には切れた。
まるで豆腐のようにサクッと欠片が取れた。
「これをギルドに持って帰れば良いんだよね? というか、どうやって帰ればいいんだっけ?」
『ご主人様・・・何も聞いていなかったんですね・・・』
アイラが哀れんだ目で俺を見つめてきた。
「い、いや、途中まではちゃんと聞いていたんだけどね・・・早くダンジョンに行きたくてね・・・」
『旦那様、ダンジョンコアに手を当てて魔力を込めると地上に戻れるんですよ』
「え、サーシャはちゃんと聞いてたの?」
『当たり前じゃないですか。何を言っているんですか、当然ですよ』
マジか・・・
サーシャはお馬鹿キャラだと思っていたのに・・・
『もしかして、私の事をお馬鹿だと思っていませんか?』
「え、いやいや、そんな事はないよ」
サーシャがじっと俺のことを見ている。
サーシャの目は明らかに疑っている。
「あ~、そうだ。早く地上に戻ろうか?」
『・・・そうですね、早く戻りましょうか。旦那様』
誤魔化し切れなかったようだな・・・
ただ、早く地上に戻ってゆっくりと休みたいのは全員同じ気持ちのはずだ。
ダンジョンコアに手を当てて魔力を込めた。
すると足下に魔方陣が現れて無事に地上まで転送された。
これはこれで凄いよな。
一気に地上まで戻って来ることが出来たが辺りは真っ暗だ。
場所はダンジョンの入口から少し離れた場所のようだ。
少し先に街道があるのがなんとなく分かった。
時間のことを全く考えていなかったな。
今は真夜中だった。
『旦那様、そういえばお腹が減ったよね』
言われてみれば確かに腹が減ったな。
中ボス部屋の前で昼食を食べたのが最後だ。
「ここで夕食ついでに野営とするか」
『それじゃあ妾が夕食を作るから野営の準備を頼むのじゃ』
ジーナが鍋の準備をし始めたので俺はテントの準備をし、アイラとサーシャは石のかまどを作り始めた。
30分程で夕食の準備が完了した。
夕食を食べながらダンジョンで気になったことを確認することにした。
「ダンジョンの3階層なんだけど、何で俺の記憶を再現したんだろうね?」
『とくに意味は無いと思いますよ、ご主人様』
『う~ん、旦那様が中ボス部屋の扉を開けたからとか?』
『妾もサーシャの意見に賛成じゃ』
そう言われると確かに扉を開けた人間の記憶を読み取ったというのが一番説得力があるな。
しかし、結局は俺の記憶を再現した理由が不明のままだった。
そして夕食も終わり寝ることにした。
見張りが4人になったので1人あたりの見張り時間が少なくなったのはありがたい。
見張りの順番はサーシャ、アイラ、俺、ジーナの順番となった。
アイラが見張りをしているときに異変が発生した。
『ご主人様、起きてください。盗賊です』




