0026:超古代の宝物
「中ボス部屋から強制的に転送されたようだけど、ひょっとしたら罠に引っ掛かったのか?」
そうは言ってみたが、冷静に考えるとあの中ボスの部屋には何人も出入りしているはずだ。
なので今さら俺達だけが罠に掛かるのも変な話だ。
もしくは他にも罠に掛かった冒険者達がいるが全員死んでいるから噂にもなっていないのか?
『ご主人様、色々考えても仕方無いですよ。まずは周囲を確認してみましょうか』
『そうだよね、アイラの言う通りだよね』
確かにそうだ、まずは周囲を確認するのが重要だな。
薄暗いのでちょっと大変そうではあるが。
・・・
確認したところ、ここは部屋の中のようだった。
そして扉が1つだけあった。
なので、先に進むためにはこの扉を開ける必要ある。
「じゃあ、この扉を開けるぞ?」
『一応、戦闘態勢だけは整えておきましょう』
『嫌だけど仕方が無いよね・・・』
支援魔法を発動し準備万端だ。
ゆっくりと扉を開けてみると扉は音も立てずにすっと開いた。
扉の中は真っ白な空間が広がっている。
広いのか、そうじゃないのかも分からない不思議な空間だ。
そして、その不思議な空間にほぼ透明な棺のようなものが立てられていた。
その棺の中には青い髪の女性が入っていた。
しかも裸のままだ。
パッと見た感じではまるで人形のように綺麗だった。
「あれは人なのか? それとも人形なのか?」
とりあえず慎重に棺のほうに近付いてみた。
近くで見ると改めてその綺麗さが再確認出来た。
『ちょっと旦那様、いくら人形でもあまりジロジロ見ちゃ駄目でしょ?』
「え、あ、あぁ、ゴメン・・・」
すると突然、棺が『キィィィ』と音を立てて開いた。
そして、棺の中に入っていた女性が倒れかかってきた。
咄嗟のことなので女性を抱き支えた。
「え、や、柔らかい・・・」
まるで人のような感触だ。
とても人形とは思えないな。
ここでサーシャが訳の分からないことを言い始めた。
『ちょっと、旦那様、まさか人形の胸を揉んだんですか?』
「ちょっと待て、何で俺が柔らかいと言ったら胸を揉んだことになるんだ? おかしいだろ?」
『いやいや、おかしくないですよ。だって旦那様ですから』
いやいや、それは明らかにおかしいだろ。
言っている意味が全く分からないな。
俺とサーシャが醜い言い争いをしている最中、我関せずのアイラが女性の様子を確認していた。
『ご、ご主人様、この女性ですが生きているようですよ・・・』
「え、マジで?」
『うそー、本当に?』
地面に寝かしている女性の頬を触ってみたところ確かに体温を感じた。
続いて心臓の鼓動を確認するために触ろうとしたらアイラとサーシャに止められた。
『ご主人様、何をする気ですか?』
『旦那様には私達がいるのに・・・』
何か勘違いされているようだ。
まさかこの状況で胸を揉むわけ無いのに。
「心臓の鼓動を確認するだけだよ・・・」
『『え、そうなの?』』
こいつらは・・・まったく・・・
文句の一つも言いたいところだったが、今は目の前の女性の状態を確認するほうが先決だ。
そっと女性の胸に手を当ててみた。
とくん・・・とくん・・・
「微かに鼓動はあるけど・・・弱々しいな」
効果があるのか分からないが心臓マッサージをしてみた。
しかし状況は替わらない。
「最後の手段だ。人工呼吸を試してみるか」
女性に口付けをして人工呼吸を試みた。
とくん、とくん、とくん
「お、心臓の鼓動が正常になってきたぞ」
人工呼吸を続けようと再度口付けをした時、突然大量の魔力が吸い取られる感じになった。
なので一旦口付けを離そうとした瞬間、女性の手が俺の頭を掴んで逃げられなくなった。
「うっー、うー、うっー」
何とか引き離そうとするが腕の力が強過ぎて引き剥がせない。
『え、えっと、どうすれば良いんですか?』
『わ、分からないよ、そんなの・・・』
突然の状況にアイラもサーシャも黙って見ているしか無かったようだ。
一方の俺はひたすら魔力を吸い取られ続けていた。
いくら【無限魔力】があってもたまったもんでは無い。
しかし、どんなに引き離そうとしても引き離せなかった。
胸を揉んでも駄目だった・・・中々の感触だったが。
魔力を吸い取られること10分くらい経過したところでようやく解放された。
【無限魔力】があっても少し頭がクラクラする。
そして裸の女性が口を開いた。
『そなた達は何者じゃ?』
「いや、それはこっちが知りたいんだけどね。とりあえず自己紹介をすると俺はレックス、こちらはアイラとサーシャだ。君の名前は?」
『妾の名はジーナじゃ』
「ジーナか。それでジーナはなんでこんな所にいるんだ? というかジーナは何者なんだ?」
ジーナの説明によるとジーナは超古代に作られた人工生命体らしい。
ただしジーナの体内の魔力回路に欠陥があり、魔力の消費量が半端無いためジーナの作成者がここに遺棄したとのことだ。
ただし、ジーナの消費する魔力を十分に供給出来る者が現れた場合にここへ転移する罠を仕掛けたらしい。
「う~ん、そこまでの話は分かったけど、どうすれば良いんだ?」
『簡単なことだ。レックスが妾を必要としないなら、妾をここに再び遺棄すれば良いだけじゃ』
遺棄すれば良いだけって・・・
さすがにそれは人としてどうかなと思うぞ。
しかしジーナを連れていくにはアイラとサーシャが何と言うかだな。
『言っておくが妾は役に立つぞ。レベルは妾の所有者と同じになるしな。それに性欲処理も可能じゃ。人工生命体といってもベースは人間だからな』
『『な、な、性欲処理って・・・』』
『一応、妾のスペックを見せるからそれで判断してもらっても構わないぞ。ステータスオープン』
名前:ジーナ (仮所有者:レックス)
種族:ヒューマン (人工生命体)
年齢:19
レベル:6
ジョブ:重騎士
ジョブスキル:
【盾術】【大剣術】【挑発】
加護:
【解析】
ジーナのステータスを見せてもらったが中々のステータスだった。
「仮所有者ってなに?」
『妾に魔力を供給してくれたからじゃな。正式に契約すれば仮が無くなるから大丈夫じゃ』
「年齢が19歳になっているのは?」
『人工生命体に生まれ変わった歳じゃな』
ジーナのステータスは今の俺達に足りないタンク役であり、かつ解析持ちだ。
正直、仲間に加えたいところだな。
仲間にしない場合は再びジーナをここに遺棄するというのも引っ掛かるしな。
アイラとサーシャに何て言うか迷っているとアイラとサーシャのほうから言ってきた。
『ご主人様、ジーナを仲間に加えましょう。さすがに遺棄するのは酷い話ですし・・・』
『そうだよね。私より胸が大きいのがちょっと気になるけど・・・』
アイラとサーシャが納得してくれたのであれば俺としても問題は無い。
サーシャが胸に拘っていることを除けば・・・だけど。
『それじゃあ、早速契約を行うのじゃ』
ジーナが俺の胸に右手を当てて呪文を唱え始めた。
呪文の詠唱が終わるとジーナが再度ステータスを見せてくれた。
確かに仮が無くなっていた。
「それじゃ、ジーナ、これからよろしく頼むね」
ジーナはニッコリと微笑んだ。
人工生命体とはとても思えないな。
『それじゃあ、早速地上に戻ることにしようか』
ジーナは丸出しのお尻をフリフリさせながら地面を見て歩いている。
『あったぞ、このボタンを押すと地上へ戻るための魔方陣が出来るのじゃ』
『ちょっ、ちょっと待ってジーナ。裸のまま地上に戻るつもりなの?』
ジーナがボタンを押そうしたところアイラが慌てて止めに入った。
確かに裸のままでは不味いよな。
服はアイラの予備を着せて靴はサンダルだ。
それでも無いよりはましだろう。
アイラの服がぴったりだった。
ということはジーナの胸はアイラに匹敵するということだ。
それを見ていたサーシャがポツリと呟いていた。
『もげればいいのに・・・というか、もげろ!』
もげろって・・・うん、聞こえなかったことにしよう。
きっとそれが皆の為になる。
そう信じよう。
『それじゃあ、今度こそ地上に戻っても良いかな?』
ジーナがボタンを押すと再び魔方陣が現れて周囲が光に包まれた。
気が付いたら地上に戻ってきた。




