0025:ダンジョン2階層
マジックバッグを追加購入した翌日、俺達は再びダンジョンに向かった。
何度も往復しているだけあって2階層のウサギ狩りポイントまではスムーズに移動出来た。
そしてウサギどもは毎回、俺達に襲い掛かってくる。
当然、金になるので蹴散らした。
「さてと、ここまで戻ってきたね。じゃあ当初の予定通り山を目指すことにしようか」
実は山の中に3階層へ降り階段があることが既に判明していた。
何度も往復していると途中で他の冒険者達とすれ違うことが何度かあった。
その冒険者達から情報を得ていたのだ。
もちろん、普通はそんな大事な情報は教えてくれないのだがアイラの色仕掛けで野郎冒険者達はコロッと引っ掛かった。
最初はサーシャがチャレンジしていたのだが、サーシャでは全然駄目だったので途中でアイラと交代したのだ。
それに関しては、当然サーシャは激怒りしていた。
『あんな糞野郎共はウサギに喰われれば良いのに・・・』
確かに情報を教えてくれた冒険者達は糞野郎共だったな。
何故ならアイラの胸をずっと見ていたからだ。
アイラの胸は俺だけの物なのに。
そしてサーシャの胸には全く見向きもしなかったしな。
山に到着すると糞野郎冒険者達に教えてもらった山の頂上を目指して登り始めた。
それなりに傾斜のある山ではあるがちゃんと道があったため、そこまでは苦労しなかった。
山の頂上に到達すると今度は山の中に降る階段があった。
「これって3階層への降り階段かな?」
『分かりませんけど、先に行くしか無いですよね。ご主人様』
確かにアイラの言う通りだよな。
先に進むしか無いので慎重に降り階段を降りていった。
螺旋階段になっているのだがかなり深い階段だ。
しかも周囲は薄暗いので注意が必要だ。
降り階段を降りると通路に繋がっていた。
その通路の先には冒険者達が行列を作っていた。
「何でこんなところに行列が出来ているんだろうな?」
『何を待っているんですかね? 旦那様』
ボケッとしていても仕方が無いので行列の最後尾に並び、ついでに俺達の前に並んでいる冒険者達に訊ねてみた。
「スミマセン、これって何の行列なんですか?」
『なんだ知らないのか? 中ボス部屋に入るための行列だぞ』
厳つい顔をしているが案外親切な冒険者が色々と教えてくれた。
厳つい顔の冒険者が言うには中ボス部屋は1パーティーしか同時に入れない。
そして一度部屋に入ると勝負がつくまで部屋から出ることが出来ないらしい。
ただし、ここの中ボスは大したことは無いらしい。
そして大事なのが中ボスを倒すと地上に戻れる魔方陣が現れる。
魔方陣には乗らずに部屋の奥の扉を開けると3階層への降り階段がある小部屋に入れるらしい。
『しかし、お前達は3人のパーティーなのか? よくここまで辿り着けたな』
そう言われると他のパーティーは大半が5~6人のパーティーのようだ。
人数が少ないパーティーでも4人か。
パーティーの人数が多いほうが安全なのは言うまでも無いことだ。
しかし、俺は今のところ無理にパーティーメンバーを増やす気にはなれない。
もちろん増やさないという訳ではないが。
その他にも色々と話し込んでいるうちに親切な厳つい顔をした冒険者達の順番になった。
『じゃあな、機会があったらまた色々とおしえてやるぞ』
そう言って中ボスの部屋に入っていった。
今までの傾向からすると中ボス部屋での戦闘は10~20分くらいで決着が着くはずだ。
勝ったのか負けたのかは不明だが。
「そろそろ俺達の番だな。準備はいいかな?」
『はい。いつでも大丈夫ですよ、ご主人様』
『ちょっとドキドキだけどね、旦那様』
アイラもサーシャも準備万端のようだ。
心の準備が出来たところで中ボス部屋の扉が開いた。
深呼吸をして部屋の中に入った。
部屋の中に入ると扉が閉まった。
扉が閉まるのと同時に部屋の地面中央に魔方陣みたいなものが現れ、魔方陣の中から1匹のモンスターが現れた。
見た目はオークだが鎧と兜を纏い、大剣を持っていた。
明らかにオークの上位種だと思われる。
『ご主人様、あの見た目からオークソルジャーかオークジェネラルかと思われます』
オークの上位種とは戦ったことは無いが1匹だ。
何とかなるだろう。
「攻撃支援、防御支援、回避支援、発動! 行くぞ!」
『『はい、了解です!!』』
とりあえず、オークソルジャーなのか、オークジェネラルなのか分からないので鎧のオークと呼ぶことにした。
アイラを先頭に鎧のオークに突進した。
すると鎧のオークは大剣を横に構えた。
あの構えだと大剣を横凪ぎにしてくるに違いない。
『ブッフォォォ!』
鎧のオークは雄叫びをあげながら予想通り、大剣を横凪ぎしてきた。
アイラはすっと身体を屈めて大剣の下を潜り抜けて、がら空きになった脇腹に剣撃を与えた。
一方で俺は立ち止まり大剣が通り過ぎるのを待って再度突進した。
俺にはアイラみたいな動きはちょっと無理だ・・・
大剣は空振りすると隙だらけになる。
その隙をついて鎧のオークの腹に刀を突き刺した。
『ブギィィィ・・・』
俺とアイラの攻撃を喰らった鎧のオークは悲鳴のような声をあげた。
そこにサーシャの矢が1本、鎧のオークの顔面に突き刺さった。
2本の矢は外れてしまったようだ。
命中率には難有りだが1本当たっただけでも良しとする。
怒り狂った鎧のオークは大剣をブンブン振り回し始めた。
大剣を振り回す度に傷口から血が吹き出していたが鎧のオークはお構い無しだった。
鎧のオークは変わらず大剣を振り回しているだけなので回避することは難しく無い。
大剣を回避する度に腹や足にダメージを与えていく。
それでも鎧のオークは中々倒れない。
「くそっ、こいつ結構しぶといな。こうなったら・・・」
『ご主人様、焦っては駄目ですよ!』
一気に懐に飛び込んでやろうかと思ったところでアイラから焦るなとの言葉だった。
アイラの言葉に従って地道に鎧のオークを削っていく。
鎧のオークも地道に削られていることに対して苛立ちが隠せず突進しようとするがその度にサーシャの矢が飛んできて突進出来ないでいた。
サーシャも地味に役に立っていた。
地道に鎧のオークを削っていった。
そして、ついに鎧のオークが倒れた。
本当にしぶとい相手だった。
鎧のオークは魔石とドロップアイテムを残して死体が消えた。
ドロップアイテムは大剣だったが、かなりの重さだ。
少なくても俺には扱えそうになかった。
「アイラ、サーシャ、2人とも怪我はないか?」
サーシャは後衛のため余程の事がない限り怪我はしないはずだ。
そしてアイラも怪我は無かった。
アイラは鎧のオークの攻撃を全て回避していたので当然か。
なので怪我をしたのは俺だけだった。
とはいっても戦闘中に回復しているが。
あの厳つい顔をした冒険者達の情報が正しければそろそろ魔方陣が出現するはずだ。
すると足下に魔方陣が現れた。
しかし、その魔方陣は部屋全体に広がっている。
「ちょっ、ちょっと待て。これじゃあ強制的に地上に戻されちゃうんじゃないのか?」
『わ、分かりません! ご主人様』
『え、え、な、なんで? どうなってるの? 旦那様、何とかして下さいよ!』
「無茶を言うなよ、どうにもならない!」
とりあえず、俺達3人がバラバラになるのだけは不味い。
そう感じたため、とっさにアイラとサーシャを手を掴んで2人を抱き寄せた。
そして次の瞬間、辺り一面が光に包まれた。
目を開けていられない程の強い光だ。
それと同時に意識が薄れていった・・・
◇◆◇◆
しばらくすると目を覚ました。
どうやら気絶をしてしまっていたようだ。
地面に寝転んでいた。
しかし両脇にはアイラとサーシャをしっかりと抱き抱えていた。
しっかりと2人の胸を掴んでいたが気付かれる前にそっと手を離した。
「アイラ、サーシャ、2人とも大丈夫か? 怪我は無いか?」
『はい、ご主人様。とりあえず大丈夫なようです』
『私も大丈夫だけど、ここはどこなの?』
周囲を見渡してみたが、どうやら地上ではないようだ。
地上に強制送還は免れたようだ。
かといってダンジョンの中とも少し違う様子だった。
「ここは一体どこなんだ?」