0023:ダンジョン1階層
ダンジョン入口の階段を降った先は森の中だった。
ダンジョンの中なのに上のから光が降り注いでおり鬱蒼を茂った森の葉の隙間から光が洩れていた。
地面には雑草があちこちと生えていたが歩くには邪魔にならなそうだった。
「森の中・・・だねよぇ・・・」
『そうですね、ご主人様』
『ねぇ、なんで森の中なの?』
雰囲気としてはゴブリンの森を思い出させる。
ただし、ここにいるモンスターがゴブリンであるかどうかは分からない。
なので注意しながら先を進む必要がある。
『ご主人様、向こうから川が流れている音がします』
俺とサーシャは耳を澄ましてみたが何も聞こえなかった。
「何も聞こえないよな・・・」
『何も聞こえないですね・・・』
それでもアイラの能力には絶大な信頼を寄せているので少しも疑っていない。
とりあえずアイラが案内する方向に進むことにした。
慎重に進むこと10分程で川が見えてきた。
川幅は2~3m程あるが見た目は浅めの川だ。
「この川の水は飲めるのかな?」
そう言って川に手を入れてみた。
特に手が痺れたりはしないな。
続いて川の水を手で掬って口に含んでみた。
『ご、ご主人様、そんなことは私達にまかせて下さい・・・』
『え、わ、私達? それって私も含まれているの?』
「いやいや、こんなことはアイラ達には頼めないよ。それに何かあっても回復支援があれば何とかなるって」
アイラからは小言をもらってしまったが飲み水を確保出来たのは大きいな。
マジックボトルは持っているがこれで水の心配が無くなった。
「とりあえず川に沿って進むことにしようか」
川の上流に向かって歩き始めた。
モンスターが襲ってくる気配は今のところは無かった。
しばらく歩いていると日が傾きかけてきた。
「凄いな。ここまで再現されているのか」
『ご主人様、少し早めに野営の準備をしましょうか』
確かにアイラの言う通りだな。
慣れない場所で無駄に歩き回るのは危険だ。
マジックバッグからテントと寝袋を取り出した。
テントに魔力を込めると折り畳まれていたテントが自動的に広がっていく。
『おぉ、地味に凄いですねぇ。旦那様』
地味っていうなよ・・・
確かに地味ではあるがこれって凄い技術だよ。
多分だけど・・・
アイラが焚き火用の枝を拾いに行っている間に俺とサーシャで夕食の準備をすることになった。
ここで意外な発見があった。
サーシャは料理が出来るのだった。
ダンジョンに来る途中で狩った鹿を手際よく捌いていた。
『まぁ、ほら、色んな親類のところで下働きしていたからね』
確かにサーシャからはそう聞いていたが、普段のサーシャから家事が出来るイメージが全く湧かなかったのですっかりと忘れていた。
アイラは拾ってきた枝を組んで炎を纏う剣で枝に火を点けていた。
雷炎の双剣は意外に便利だった。
意外に美味しかった夕食も終わった。
川で食器等を洗うのは俺の役目になった。
「さてと、見張りの順番はどうする?」
3人で話し合った結果、アイラ、サーシャ、俺の順で見張りをすることになった。
「アイラ、それじゃ見張り、よろしくね」
『じゃあ、後でね。』
俺とサーシャはテントに入って仮眠を取ることにした。
・・・
何やら手に柔らかい感触がある。
凄い気持ち良く、揉みほぐしていた。
と、その時だ。
俺の横顔が何かに押さえ付けられた。
よく見るとサーシャが仁王立ちで俺の顔を踏みつけていた。
さすがに靴は脱いでおり裸足だったが・・・
いやいや、そうじゃないだろ、俺。
何でサーシャに踏みつけられているんだ?
『だ・ん・な・さ・ま・・・見張りの順番ですよ』
「ちょっと待て、何で俺が踏みつけられているんだ?」
俺がそう言うとサーシャは指を指した。
その先には俺の手があり、アイラの胸を揉んでいた。
「え、あ、こ、これは寝ぼけていて・・・」
『旦那様は私の胸は全然触ってくれないのに・・・』
え、そっちなの?
そういうことならと、俺は立ち上がるとそのままサーシャにキスをしてサーシャの胸を揉んだ。
「俺はサーシャの胸も好きだからね」
『だ、旦那様、あなたは馬鹿ですか? 全く・・・早く見張りに行って下さい』
サーシャはそう言うと寝袋に潜ってしまった。
とりあえずサーシャの機嫌は戻ったようだ。
テントの外に外に出るとテントの入口横に魔石とドロップアイテムが置かれていた。
数は少ないがやはりモンスターが現れたようだった。
「ちゃんと警戒しておかないといけないな」
しかし1時間が経過し、2時間が経過したがモンスターは現れない。
すると段々睡魔が襲ってきた。
「仕方が無いな。素振りでもしてるか」
焚き火の前から立ち上がり素振りを始めた。
イメージはアイラの動きだ。
アイラはモンスターの攻撃をスレスレで回避している。
ちょっとの動きで回避しているので次の動き出しが早いのだ。
素振りをしているうちに夜が明けてきた。
するとテントからアイラが起きて来た。
『おはようございます、ご主人様。もしかして夜中ずっと訓練していたのですか?』
「いや、ずっとじゃないよ。あまりにも暇だったから途中からだよ」
『では、サーシャが起きてくるまでの間、少し私がお相手しましょうか?』
サーシャが起きてくるまで少しは時間があるはずだ。
なので久しぶりにアイラと手合わせをしてみることになった。
・・・
『そこ、隙だらけですよ』
「こ、このぉ・・・」
・・・
『まだまだ甘いですよ、ご主人様』
「くっ、くそぉ・・・」
・・・
『ねぇ、2人ともぉ、まだやるのぉ?』
サーシャがいつの間にか起きていたようだ。
俺とアイラの訓練をずっと見ていたが途中で飽きてしまったので声を掛けたとのことだ。
いつの間にか朝食の準備が出来ていた。
アイラとの訓練に夢中になっていたため気付かなかった。
「はぁはぁ、い、いや、もうお仕舞いにするよ」
俺は汗だくになってしまった。
アイラも少し汗をかいたようだ。
これで涼しい顔をされていたら俺が悲しい。
『ねぇ、朝食が終わったらそこの川で水浴びしない?』
朝食中にサーシャが提案してきた。
確かに俺は汗だくになったので汗を流したい。
同じく汗をかいていたアイラも了承してくれた。
朝食後、3人とも裸になって川で水浴びをした。
アイラとサーシャの裸は凄く綺麗だ。
正直、この場で押し倒したい衝動を抑えるのに苦労した。
『ご主人様、あまりジロジロ見ないで下さい』
『えぇ? いいじゃない。見せつけてあげようよ』
◇◆◇◆
水浴びも終わりスッキリしたところで出発することにした。
再び川に沿ってとりあえず上流に向かって進んでいる。
昨日とは打って変わりモンスターが出てきた。
体長1m程の巨大な牙を持った猿だ。
かなり凶悪な面構えをしていた。
『キィィー』
『キッキィィー』
最初は2匹だけだったが鳴き声で仲間を呼び寄せたらしく、いつの間にか10匹程にふえている。
「あの猿って何て言うモンスターか知ってる?」
『いえ、分かりません』
『私も知らないよ』
普通なら転生ボーナスで鑑定とか解析とかのスキルを貰えるんだろうけど、あいにく俺は神様からそんなスキルは貰えなかった。
「とりあえず、あの猿を倒すぞ!」
『『はい、了解しました!』』
サーシャが魔弓を放つと猿達は木から降りてきた。
身体が大きいため木から木へ飛び移れないようだ。
木から地面に降りた猿達がこちらに向かって来た。
「攻撃支援、防御支援、回避支援、発動!」
支援を発動して俺とアイラが猿達を迎え撃つ。
アイラは相変わらずモンスターの動きを見切って最小限の動きでモンスターの攻撃を回避してカウンターを入れていた。
一方の俺はアイラのようには見切れないので1匹を斬りつけると他の猿達から攻撃を受けてしまっていた。
しかし、すぐに回復支援を発動させて回復した。
とりあえず猿の巨大な牙に咬まれないようにだけ気を付けた。
猿の爪で顔や腕に引っ掻き傷は付けられるがこちらはすぐに回復した。
まぁ怪我をしているのは俺だけなんだが。
猿を6匹程倒すと残りの4匹は急に逃げだした。
どうやら敵わないと判断したんだろう。
とりあえず魔石とドロップアイテムを回収して先に進んだ。
その後も巨大なカエル、巨大なヘビと戦うことになったがなんとか倒すことが出来た。
そして川の上流に到着すると滝があった。
『ご主人様、滝の裏に洞窟が見えますね』




