0022:新規ダンジョン発見
スタンピード発生のためサーランドの町からノースランドの都市に逃避行となり一部の被害者が出たがサーランドの住民のほとんどがノースランドに到着した。
サーランドの住民がノースランドに到着した2日後にスタンピードのモンスター達はノースランドに攻め寄せて来たが、ノースランドは頑丈な城壁を持ち、戦力も豊富だった。
数日間、攻城戦が続いたが次第にモンスター達は食料不足に陥り共食いを始めた。
一度共食いが始まり出すと統制を失ったモンスター達は瓦解し始めた。
そこでノースランドの全兵力で一気に攻勢をかけることになった。
そこには当然サーランドから逃げてきた兵力も加わった。
その中には俺達も当然加わった。
戦闘は丸一日続いたがモンスター達を押し返すことに成功した。
その後、逃げ出したモンスター達はサーランドを根城にしているらしい。
このようにモンスターに乗っ取られた町は少なくないとのことだった。
程なくしてサーランドの住民はノースランドで暮らすことが許可された。
ノースランドは巨大な都市であったが元々住民に少なかったのでサーランドの住民を受け入れることが出来たらしい。
◇◆◇◆
スタンピードが発生してから1ヶ月が過ぎた。
ノースランドでの生活にも大分慣れてきた。
俺達だけでなく宿屋の女将さん、武器屋の禿げマッチョ店長、アイテム屋のナタリーさん、ギルド受付のルイーザさん達もこのノースランドで生活している。
「じゃあ、女将さん。ギルドに行ってくるよ」
『レックスさん。気を付けて下さいよ。それと、今の私は副女将ですからね。間違えないで下さいね』
女将さんはノースランドの宿屋で副女将として再就職していた。
他に禿げマッチョ店長やナタリーさんは商品を持って逃げてきていたため自分の店を再開していた。
宿屋を出てギルドに向かった。
ここ最近はスタンピードのせいで討伐系依頼が増加している。
俺達としても採取系依頼より討伐系依頼のほうを率先して受注している。
ギルドに到着すると真っ先に依頼ボードへ向かった。
条件の良い依頼は早い者勝ちだからだ。
依頼ボードに1つ面白そうな依頼を見つけた。
【新規発見されたダンジョンの調査】
「アイラ、サーシャ、あの依頼はどうかな? ちょっと面白そうじゃない?」
『ダンジョンの調査依頼ですか』
『確かにちょっと面白そうですよね』
まずは依頼の内容を確認するために受付カウンターにルイーザさんのところに向かった。
「ルイーザさん、このダンジョン調査依頼なんですが詳細な情報が欲しいです」
『あ、レックスさん。おはようございます。そのダンジョン調査依頼ですね。ちょっと待ってて下さいね』
ルイーザさんは資料を確認しに行った。
そして戻って来るとダンジョンの情報を教えてくれた。
とはいっても発見されたばかりのダンジョンなので場所くらいしか分からないそうだ。
まぁ、だから調査依頼が出ているんだろう。
考えてみれば当たり前のことだったな。
ダンジョンが発見された場所はノースランドの北にある森の中らしい。
森の中にあった巨大な木にある日、雷が落ちて大木の根本にダンジョンの入口が現れたとのことだ。
『レックスさん、もしダンジョンに行くなら事前準備をしっかりしてくださいね』
ルイーザさん曰く、水、食料は少なくても数日分は必要でテント等も必需品とのことだ。
確かに当たり前だよな。
オートキャンプ場に行く訳じゃないからな。
ルイーザさんにお礼を言ってギルドを出た。
そして、そのままアイテム屋のナタリーさんのところに向かった。
「ナタリーさん、ダンジョンに行きたいんだけど、良いアイテムはあるかな?」
『え、レックス君、突然何を言っているの?』
しまった・・・
ちゃんと説明しないと駄目だよな。
ナタリーさんにちゃんと説明した。
『へぇ、そうなんだ。ダンジョンねぇ・・・ちょっと待っててね』
そう言うとナタリーさんは店の奥からテント、寝袋、水筒を持ってきてくれた。
マジックテント
4人用テントでかなり小さく折り畳める。
マジックシュラフ
小さく折り畳める1人用の寝袋。
マジックボトル
500mlのペットボトルサイズだが50リットルの容量がある。
他にもキャンピング道具も合わせて購入することにした。
『まぁ、マジックボトルは1人2本は持っておいたほうが良いかと思うよ。とりあえず全部で金貨1枚でいいよ』
結構な金額になってしまった。
なけなしの金貨1枚を支払った。
頑張って稼いでもすぐに金が無くなるな。
『ねぇ、アイラ。旦那様って結構金遣いが粗いよね?』
『そうねぇ、でも無駄遣いをしている訳じゃないのよね。だから困っているのよねぇ』
そうなのか、困っていたのか・・・
無駄遣いをしている訳じゃないはずなんだが。
何故か金が貯まらないんだよな。
それが問題なんだろうけど。
とりあえず、先行投資だと思うことにしよう。
「そ、そんなことよりも、今日は食料を調達して明日にはダンジョンに向かうよ」
『そうですね、ご主人様』
『うまく誤魔化したね、旦那様』
あちこちの店で食料を購入してはマジックバッグに詰め込んだ。
そろそろワンランクの上のマジックバッグが欲しくなってきたな。
◇◆◇◆
翌日、ルイーザさん直筆の地図を片手にダンジョンに向かった。
ノースランドの北門を出て街道沿いを進んでいる。
『ご主人様、この地図ですけど本当に大丈夫ですか?』
ルイーザさん直筆の地図は凄く曖昧だ・・・
残念ながら地図としてはあまり役に立たないな。
とりあえず街道沿いに進み、森を目指すことにした。
・・・それが確実だな。
途中で野生の鹿を発見したので狩りをしつつ森に向かっていた。
食料は余るくらいが丁度良い。
マジックバッグにしまっておけば腐ることも無いしね。
昼過ぎ頃に北の森に到着した。
ダンジョンの入口を探すのに時間が掛かるかと思っていたがそんなことは無かった。
何故なら俺達と同じようにダンジョンを目指していた他の冒険者達が多数いたのだ。
そして混乱しないようにだろうか、ダンジョンの入口にはギルドの職員らしき人達が数人おり渋滞整理をしていた。
ダンジョンの入口に向かって出来ている行列に俺達も並んだ。
『旦那様、ここにいる皆は並んでまでダンジョンに入りたいんですかね?』
一般的にダンジョンの中には宝物があると言われており発見した宝は発見した人の物になる。
中には白金貨数枚になる財宝もあるらしい。
なので新規に発見されたダンジョンには多くの冒険者が群がってくるのだ。
ただし、当然ダンジョンには危険が付き物だ。
モンスターもいるしトラップもある。
「まぁ、ダンジョンには一攫千金の夢があるからね」
『ご主人様、サーシャ、やっと私達の順番になりましたよ』
行列は出来ていたがあまり時間が掛からず俺達の順番が回ってきた。
『ギルドカードは持っているよな? 見せてくれるか?』
ギルドの職員らしき男にギルドカードを提示した。
『ふむ、特に問題は無いな。では簡単な説明をするぞ』
ギルドの職員らしき男の説明は本当に簡単だった。
ダンジョンに入るのは自己責任なので怪我しても死んでも文句は言わないこと。
他の冒険者と揉め事を起こさないこと。
最後がダンジョンコアを破壊しないこと。
説明は以上だった。
ダンジョン内のルールは非常に単純だった。
ダンジョンコアとはダンジョンの頭脳であり心臓でもある。
ダンジョンコアが破壊されない限りダンジョンは成長し続ける。
ただ、ダンジョンコアの成長を止める方法もあるらしい。
その方法を利用して発展した都市がダンジョン都市だ。
いずれはダンジョン都市にも行ってみたいな。
そして一説にはダンジョンは死んだ人の遺体を吸収してダンジョンを拡張しているとの噂がある。
そのためにダンジョンは宝を用意して冒険者達を誘き寄せているとか言われている。
そう考えると、まるでゴキブリぽいぽいのようだな。
・・・いや、たとえが良くなかったな。
とりあえず、ダンジョンの栄養分にだけはならないようにしないとな。
噂の真偽は不明だが宝が出るのは事実なのでダンジョンが見つかると冒険者達が群がってくるのだ。
宝はさておきダンジョンにはモンスターがたくさん出るのは間違いない。
モンスターを倒すことで魔石やドロップアイテムが得られるので金稼ぎにはなる。
『よし、通っても良いぞ。くれぐれも無理はするなよ』
「ありがとうございます。無理しないようにします」
許可が出たので大木の根本に出来たダンジョンの入口である階段を降りていった。
薄暗い階段の中は木の匂いが充満していた。
階段をかなり降ったところで明かりが見えてきた。
「結構深い階段だったね」
『ご主人様、そろそろダンジョンの内部になるはずですから気を付けて下さいね』
階段を降りていった先は想定外の場所だった。




