0013:定番のイベント
巨大ゴブリンを倒した後、体力の回復を少しだけ待って町に戻ってきた。
町に戻ると真っ先にギルドに向かった。
とりあえず換金しないと手持ちの金が少ない。
マジックバッグを購入したためだがマジックバッグを購入したことには関しては全く後悔は無い。
むしろ購入して良かったと思っている。
ルイーザさんの受付カウンターに並んでいた。
ちょうどギルドが混雑している時間帯になってしまった。
ようやく俺達の順番になった。
『レックスさん、今日もゴブリンの森に行って来たんですか? たまには休まないと駄目ですよ』
しまった・・・
ルイーザさんに指摘されてしまった。
よくよく考えてみると前世の俺は過労死したんだよな・・・
なのに俺自身もだがアイラにも休みを取らせないと駄目だよな。
「そうですね、明日は休暇を取ることにしますね」
『ふふふ、それが良いですよ。では査定しますので買取品を出してください』
マジックバッグから大量の魔石とドロップアイテムを取り出した。
『・・・え、レックスさん、まさか、これ全部ですか?』
「え、そうですけど?」
今は夕方である。
(この量を今から査定したら確実に残業になるわね・・・もう、レックスさんは・・・)
「えっと、ルイーザさん? どうしましたか?」
俺は魔石とドロップアイテムの前で固まっているルイーザさんに声を掛けた。
『あ、い、いえ、ごめんなさい。ちょっとね』
(危なかったわ、あやうく残業確定で残念がっていることがバレるところだったわ)
『じゃ、じゃあ査定をしますが、少し時間が掛かりますので、隣の酒場で食事でもして待ってて下さい』
ギルドの受付カウンターの横は酒場になっている。
酒場はギルドが経営しており酒場で落とす金はギルドの大事な運営資金となる。
「それじゃあ、少し食事でもしようか」
『あの、その、ご主人様。私も御一緒しても宜しいのでしょうか?』
「何を言っているの? 一緒に食べるよ。当たり前じゃないか」
やはりアイラは奴隷であることをまだ気にしているようだった。
大事な仲間だと何度も言っているんだけどな。
『でも、本当に御一緒しても大丈夫でしょうか?』
アイラが何を気にしているか分からなかったが躊躇しているアイラの手を引っ張ってテーブルについた。
そして俺とアイラの分の食事を注文した。
注文したのはオーク肉のステーキだ。
オーク肉のステーキを味わっていると3人の男達が俺達に近寄ってきた。
『おい、坊主。随分と美人の奴隷を連れているじゃねぇか』
3人の男達からは酒の匂いがしてきた。
どうやら酔っ払いのようだ。
「それがどうかしましたか?」
とりあえず、俺としては穏便に済ませたい。
『なぁ、坊主。その美人の奴隷を少し貸してくれねぇか?』
『ひゃっひゃっ、坊主。小遣いならやるからさぁ』
俺の額の血管がヒクヒクした。
俺の大事な仲間であるアイラを貸せだと?
『なぁ、坊主。大人の言うことは素直に聞くもんだぞ?』
冒険者同士の喧嘩にはギルドは不介入だ。
ただし相手を殺してしまった場合は別だ。
なので殺さなければ大丈夫だということだ。
どんなに痛めつけてもだ。
でも、こいつらはぶっ殺したいな。
「攻撃支援、防御支援、発動」
俺は小声でスキル発動させた。
これでこいつらには負ける気がしない。
それに回復支援もあるしな。
俺が椅子から立ち上がろうとした瞬間、アイラが俺の背中から抱き付いてきた。
『ご主人様、駄目ですよ』
アイラのおかげで怒りがとりあえず収まった。
しかし、この光景が逆に酔っ払いどもを怒らせたようだ。
『おい、小僧。俺達を怒らせたな。表に出やがれ! 俺達と決闘だ!』
その時だった。
ギルド内の館内放送が流れた。
『レックスさん。ゴブリンキングを討伐したレックスさん、査定が完了しました。受付カウンターに来て下さい』
この館内放送はマジックアイテムを使用しているらしい。
ギルド内はいつも騒がしいので必須のアイテムであると以前ルイーザさんから聞いた。
「あ、俺だ。査定が終わったようだな」
呼び出しするのはいいのだが、もう少し違った呼び出し方があると思うんだけどな。
それにしても、あの巨大ゴブリンはやはりゴブリンキングだったのか。
『お、おい、今、ゴブリンキングって言ったよな?』
『あ、あぁ、確かにゴブリンキングって言ってたな』
『ゴブリンキングってランクCモンスターだったよな?』
周りがざわついている。
俺達がゴブリンキングを倒したことが分かると俺達を見る周りの目が変わった。
先ほどまではひ弱そうな男を見る目をしていたが今は違う。
「あ、そう言えば表に出るんだっけ?」
先ほど、この3人の酔っ払いは俺に決闘を申し込んできていたよな。
なので3人の酔っ払いに確認した。
決闘を申し込まれたほうは当然拒否出来る。
そして決闘の場合は相手を殺してしまっても罪には問われない。
この世界の怖いルールの1つだ。
『あ、い、いや、さっきのことは忘れてくれ、どうやら酒を飲みすぎていたようだな』
『そ、そうだな、飲み過ぎは良くないな』
そう言うと3人の酔っ払いは自分達の席に戻っていった。
どうやらアイツ等はそこまで強くなかったらしい。
「アイラ、受付カウンターに行こうか」
『はい、ご主人様』
オーク肉のステーキをほぼ食べ終わっているので受付カウンターに向かった。
『レックスさん、お待たせしました。査定が完了しましたよ』
受付カウンターに行くとルイーザさんから手渡されたのは金貨2枚、大銀貨5枚、銀貨3枚であった。
金貨なんて生まれて初めて見たよ。
『・・・レックスさん、無理をしては駄目ですよって言いましたよね?』
初めて見た金貨に感動していたらルイーザさんから重低音の言葉が・・・
確かに無理をするなとは言われていたが、今回は仕方が無いよね?
「えっと、あ、はい・・・」
『【灼熱の風】を助ける為という話は聞きましたけど、それでも無理はしないで下さいね』
良かった・・・怒られるわけでは無かった。
「はい、分かりました」
ルイーザさんから少し苦言という名の小言を1時間ほど聞かされてやっと宿屋に帰って来た。
俺達の部屋に戻ってきてベッドの上に寝転んだ。
「いやぁ、今日は疲れたなぁ。アイラも疲れたでしょ?」
『いえ、大丈夫ですよ。ご主人様。それよりも今日はありがとうございました』
アイラが何に対して礼を言っているか分からなかったので、何のことなのかアイラに聞いてみたところ、ギルドの酒場での出来事のことだったらしい。
ベッドに寝転んでいた俺は上半身を起こした。
むしろ礼を言いたいのは俺のほうだった。
アイラが止めてくれたから冷静になれたのだからだ。
「あれは怒って当たり前じゃないか。むしろアイラが止めてくれたからた助かったよ・・・」
アイラを誰かに貸すなんてあり得ない。
どんな大金を積まれてもだ。
するとアイラが俺の目の前に座ると突然俺にキスをしてきた。
そして、そのままベッドに押し倒された。
『もし、ご主人様がお嫌でしたら言ってください』
嫌なはずが無い。
こんなに綺麗なアイラを嫌なんて言うはずが無い。
理性も自重もふっ飛んだ。
ついでに痩せ我慢もだ。
もう止まらない。
止めるつもりはさらさら無い。
アイラを抱いた。
体力の限界までアイラを抱いた。
そして幸せの絶頂の中で眠りについた。
◇◆◇◆
翌朝、起きた時にはいつもと変わらないアイラが俺の横にいた。
いや昨日よりも優しい笑顔をしているように思えた。
『ご主人様、今日は休暇にするんですよね? どこに行きましょうか?』
「そうだなぁ、とりあえず町をぶらぶらしてみようか。そろそろ新しい服も欲しいしね」
宿屋の1階食堂に向かったら女将さんがいた。
女将さんは何やらこちらを見てニヤニヤしていた。
女将さんが朝食のパンとスープを運んできてくれた時に一言。
『2人とも、ほどほどにね』
その言葉を聞いてアイラが顔を真っ赤になってしまった・・・
女将さんは俺達の部屋の隣に住んでいた。
なので夜の声が筒抜けになっていたようだ。
今後は少し注意しないといけないな・・・




