0111:辺境都市へ その3
ナギサがビッグフットに薙刀の突きを入れると白い塊がポロリと落ちてきた。
『旦那様、これってビッグフットの首ですかね?』
白いフワフワな毛に覆われていたため頭が見えていなかったが、ビッグフットの巨大な身体からは想定出来ないくらい小さく貧相な頭だった。
「ナギサのおかげでビッグフットの首がどの辺にあるのか分かったな」
次から楽に倒せそうだ。
とはいっても乱獲は禁止されている。
とりあえずビッグフットをマジックバッグにしまい、次のビッグフットを探すことにした。
『ご主人様、向こうにもいるようです』
アイラの案内でビッグフットがいる方向に向かうとビッグフットが3匹いた。1匹余分だ。
「倒していいのはあと2匹だよな。2匹倒したら残りの1匹は逃げてくれるかな?」
もし、仲間の敵討ちとばかりに襲い掛かってきたどうするか? 簡単に逃げ切れるか?
『まぁ逃げ切れなければ罰金覚悟で倒すした無いよね? ねぇ、旦那様』
出来れば無駄な罰金は支払いたく無いが・・・
とはいっても、このままボーっとしていて仕方が無いな。
「俺とナギサでビッグフットを1匹ずつ倒す。もしも残りの1匹が襲い掛かってきても防御に専念してくれ」
『マスター、もし駄目そうなら倒しても良いのか?』
「その時は倒してもいいよ。下手に怪我するくらいなら罰金のほうがマシだよ」
『了解なのじゃ!』
3匹のビッグフットに向かっていった。
俺とナギサは同時にビッグフットの首を目掛けて攻撃を試みた。
白い毛に覆われているが首がある場所はなんとなく分かっている。
ナギサは薙刀で突きを喰らわした。
一方の俺はビッグフットの首に向かって真空刃を至近距離から放った。
するとビッグフットの巨体から首がポロリと落ちてきた。
何度見てもドキリとするな。
さて、残りの1匹は逃げてくれるかな?
残りの1匹を見ると逃げていない。
ビッグフットは逃げずにその場でピョンピョンと跳ね始めた。
「あいつ、何をしてるんだ?」
『『さぁ?』』
ピョンピョンと跳ねていたビッグフットが突然大きく飛び跳ねた。
その着地先は・・・俺達の真上だ!
大きく飛び跳ねているので回避するのは楽勝だった。
ただし、ビッグフットが着地した地面は抉れていた。
巨体を利用したビッグフットの反撃だった。
再びビッグフットはピョンピョンと跳ねている。
「倒したビッグフット2匹を回収しないといけないのに」
普通の状況なら当たる攻撃では無いが倒したビッグフットをマジックバッグにしまっている最中だと万が一のことがある。
『マスター、妾が挑発で奴を惹き付けるからその間に回収するのじゃ』
ジーナはそう言うと俺達から少し離れたところまで移動して挑発スキルを発動させたようだ。
ビッグフットがジーナのほうを向いて移動し始めた。
「よし、チャンスだ」
倒したビッグフットの近くに寄り無事に回収した。
ジーナのほうを見てみるとビッグフットの攻撃を難なく回避していた。
「ジーナ、回収したぞ!」
『了解なのじゃ! ではこやつを吹き飛ばしたら引き上げるのじゃ』
そう言うとジーナはピョンピョンと跳ねているビッグフットに対してシールドアタックを喰らわした。
するとシールドアタックを喰らったビッグフットは、ボフッという音と共にゴロゴロと転がっていった。
丸い身体せいでかなり遠くまで転がっていった。
「多分、倒していないよな?」
『『さぁ、どうでしょう?』』
そりゃあ、分からないよな。
聞くだけ野暮だったな。
とりあえず、今のうちに退却しよう。
無事にビッグフットを3匹倒したので町へ帰ることにした。
すると荷台にビッグフットに1匹討伐しただろう冒険者パーティーと遭遇した。
『よう、あんた達もビッグフット狩りに来た冒険者達だよな? 今日は諦めたのか?』
どうやら、俺達が手ぶらなので気にしているようだった。
「いや、ちゃんと倒したぞ。マジックバッグにしまってあるだけだよ」
『おっと、そうなのか。まぁ何にせよ、お互いに狩れて何よりだな。ビッグフットが狩れないと税金が払えるかどうかも怪しくなるしな』
男は笑いながら言っているがこの辺りの冒険者はそんなにギリギリなのか?
ちょっと笑えないんだけどな・・・
とりあえず、町に到着してギルドに向かった。
「すみません、ビッグフットの買い取りをお願いします」
『ビッグフットの買い取りですね。ではギルドの裏にある小屋に行って下さい。そこで買い取りをしていますので』
受付嬢が言うにはカウンターではなくギルドの裏の小屋で買い取りを行っているとのことだった。
確かにビッグフットは大きいからカウンターに持っていったら邪魔だよな。
早速、ギルドの裏にあるという小屋に行ってみると他の冒険者達が並んでいた。
『マスター、あそこに並ぶのか?』
ざっと数十人の冒険者達が並んでいた。
パーティーなんだろうけど買い取り査定を小屋の中でやっているらしく行列が進まない。
「う~ん、どうするかなぁ・・・」
『旦那様、無理して買い取りしてもらわなくても良いんじゃないですか?』
確かにそうだよな。
肉は自分達で食べれば良いしな。
金に関しても困っていないし。
「よし! ビッグフットの肉は全部、俺達の食材にするか」
『レックス、それなら食事に行きましょうよ』
という事でビッグフットは売らずに食堂に向かった。
食堂では早速ビッグフットの肉を使った料理がメニューに加わっていた。
「おばちゃん、ビッグフットの肉料理を6人分お願い!」
『はいよ! 凄く旨いから期待して待ってな!』
そう言われると過剰に期待してしまう。
料理が出てくるのが待ちきれない。
『遅くなってすまないね。さぁ食べておくれ』
20分程待ってやっと出て来た。
出て来た料理は普通に肉と野菜が入ったスープとパンだった。
スープに入っている肉がビッグフットの肉なんだろうけど見た目は普通だ。
スープに入っている肉を一口すると甘味が口中に広がってくる。
しかも肉が凄く柔らかい。
「これは確かに旨いな!」
アイラ達は言葉を発せずひたむきに肉を食べている。
これでは俺が普段からまともな食事を与えていないようにも見えるぞ。
『『おかわり出来ますか?』』
は、早い・・・
もう一人前を食べきってしまったようだ。
『すみません。ビッグフットの肉料理はお一人様一品までとなっています。その代わりに当店自慢の料理をお持ちしますね』
『『仕方ないですね』』
それでも結局アイラ達は三人前を頼んでしっかりと食べきった。
・・・太らないかな? それだけが心配だ。
言うと必ず怒られるから言わないが。
◇◆◇◆
翌日、辺境都市に向けて出発した。
途中で街道沿いに流れている川を見つけてビッグフットを解体したくらいで問題は全く発生しなかった。
アイラ達と馬車の旅を満喫した。
ビッグフットを狩った町を出発して10日ほど経過した。
『ご主人様、辺境都市だと思われます』
御者席にいたアイラから声が掛けられた。
思わず御者席のほうに身を乗り出すと前方に巨大な都市が見えていた。
「凄い頑丈そうな城壁だな・・・」
『『さすがにデカいですね・・・』』
今まで見たどの都市よりも大きく、城壁も頑丈そうなであった。
辺境都市はアスレー帝国との国境に面しており、また魔族の森と呼ばれている広大な森にも近い。
魔族の森には高ランクモンスターがウヨウヨしているらしい。
まずは暫くの間はこの辺境都市を拠点にするつもりだ。




