0109:辺境都市へ その1
金色の宝箱も無事に解錠しその中身の分配も揉めること無く終わった。
箱屋を出たところでミランダ達と別れた。
『レックス。短い間だったけど、あなた達と一緒に依頼を受けられて凄く楽しかったわ。また何処かで一緒に依頼を受けられると良いわね』
そう言ってミランダ達は去っていった。
【一輪の花】パーティーは全員がサバサバしていてやり易かった。
『旦那様、そう言えばミランダ達もそのうち辺境都市に向かうって言っていましたよ』
「え、そうなの? というか、いつの間にそんな話をしていたんだ?」
『ふふふ、女子を舐めては駄目ですよ』
う~ん、女子の情報共有能力は怖いな・・・
俺の情報も駄々漏れなんだろうな。
・・・俺の情報と言ってもほとんどが大した情報じゃないか。
唯一大事な情報は俺が転生者であることだけだが、さすがにその情報は話さないはずだよな。
「とりあえず、今日はアイテム鑑定屋に行ってスクロールの鑑定をしてもらうか」
アイテム鑑定屋は箱屋の隣にあった。
なので早速、アイテム鑑定屋に入ることにした。
「すみません、スクロールの鑑定をお願いします」
すると恰幅の良いオバチャンが出てきた。
『はいはい、スクロールの鑑定ね。1本、大銀貨1枚になるけど良いかい?』
確か以前に鑑定してもらった時と同じ値段だよな。
「はい、問題無いです」
マジックバッグからスクロールを5本取り出して大銀貨5枚と一緒にオバチャンに渡した。
『それじゃあ、早速、鑑定するわよ』
オバチャンがブツブツと独り言を言い始めた。
『・・・はい、鑑定が終わったわよ』
鑑定が完了し、スクロールの正体が判明した。
・回復スキル
・2重詠唱
・真空刃
・雷魔法
・火魔法
の5つだった。
「いくつか凄いのがあるな」
鑑定してくれたオバチャンも驚いていた。
『そうね、2重詠唱なんかは売れば白金貨100枚にはなりそうよね』
そう言われても売るつもりは全く無い。
一般人なら白金貨100枚もあれば一生安泰だけどな。
「さて、このスクロールを誰に使うかだな」
サーシャは回復スキルが欲しいと言い、シェリーは2重詠唱が欲しいと言ってきた。
まぁ、この2つはそれで問題無いかな。
真空刃
超欲しい。
中二病が疼くよな。
刀に超マッチするよな。
きっと攻撃の幅が広がるよな。
俺が真空刃のスクロールをじーっと見ているのを皆が見ていたようだ。
『ご主人様、そんなに真空刃が気に入りましたか?』
『まぁ、旦那様で良いんじゃない?』
『そうじゃのう、マスターにご褒美じゃ』
『ふふふ、レックス、子供みたいね』
『レックス殿、真空刃、後で見せてくださいね』
という事で真空刃は俺が貰えることになった。
雷魔法も捨てがたいところだが、2つは欲張り過ぎだよな。
そうなるとアイラかジーナかナギサに魔法を覚えさせたいが魔法は詠唱が必要らしい。
俺やシェリーみたいに省略や短縮スキルが無いと役に立たないかもしれない。
そう思っていたらオバチャンから
『詠唱短縮のスクロールなら丁度2本あるよ』
とのことだった。
詠唱短縮のスクロール2本で白金貨50枚にまけてくれるとのことなので即決で購入した。
なので火魔法と雷魔法は、アイラが雷魔法、ナギサが火魔法となった。
ジーナは申し訳無いが次回となった。
これでケルベロス討伐の報酬は全て無くなってしまったが得たものは大きかった。
かなりの戦力増加になったはずだ。
アイテム鑑定屋を出ると早速、全員でスクロールを使った。
俺もスクロールを使って真空刃を取得した。
【真空刃】
武器に魔力を込めて振るうと真空の刃を放つことが出来る。
威力と距離は術者のレベルに依存する。
「早速試してみたいな」
『ご主人様、私も雷魔法を試したいです』
『レックス殿、私もです』
「よし! とりあえず、町の外に行くぞ!」
ということで町の外に出てモンスターを探している。
ケルベロスがいた山には行かず、周辺を探してみた。
『ご主人様、ゴブリンですがいました!』
「じゃあ、まずはアイラからいくか?」
『はい。では、お先に』
アイラはゴブリンに向かって駆け出した。
そして右手を上に向けるとゴブリンの上から雷が落ちた。
ゴブリンは黒焦げになり魔石とドロップアイテムを残して消えた。
アイラの雷魔法は中々の威力だった。
『レックス殿、次は私にやらせて下さい!』
ナギサも早く試したいようだ。
アイラも次のモンスターを探していた。
『ナギサ、向こうにコボルトがいますよ』
『アイラ、ありがとう』
そう言うとナギサはコボルトがいる方向に向かって駆け出した。
ナギサが蝉丸を構えると蝉丸の刃から炎が吹き出し、そのままコボルトに斬りつけるとコボルトの傷口が燃えていた。
「え? 何あれ? あんなことが出来るの?」
てっきりシェリーみたいにファイアボールみたいなものを放つと思っていたが違った。
『まぁ、魔法は使う人のイメージによって色々なのよ、レックス。それじゃあ、次は私ね』
シェリーが使える魔法は火魔法と水魔法だ。
これを2重詠唱して意味があるのか?
『シェリー、あそこにコボルトがいますよ』
アイラが見つけたコボルトに向かってシェリーが近寄っていく。
シェリーは右手でファイアボール、そして左手でアイスアローを同時に放った。
異なる属性の魔法を2つ同時に放った。
これは複数のモンスターを相手にするときに役立ちそうだ。
「最後は俺の番だな」
『ご主人様、あちらにゴブリンがいますよ』
ゴブリンは3匹おりゴブリンに向かって駆け出した。
駆けながら村正に魔力を込めて横凪ぎから真空刃を発動した。
「うぉっ、結構キツいな・・・」
真空刃を発動した瞬間、魔力がごそっと持っていかれた。
村正から放たれた真空の刃は数10m 離れたゴブリン3匹の身体を真っ二つにした。
『『おぉぉぉ、凄いです!!』』
真空刃の切れ味は上々だった。
魔力をごっそりと持っていかれるので連発は難しそうだ。
ただ、無限魔力があるのですぐに回復するので問題は無い。
戦力アップが出来たことに満足した。
相変わらず金は貯まらないがそれは愛嬌だろう。
『ご主人様、辺境都市に向けて明日、出発しますか?』
「そうだな、明日出発することにしようか」
元々出発の準備をしてスルガの町を出てきたので今さら準備することはほとんど無い。
敢えて言うならまったりするくらいか。
『あぁ、旦那様がスケベな目をしてるー!』
さすがはサーシャだ。
俺の考えていたことを読み取りやがった。
以前までの俺なら誤魔化すことを考えていただろうがここは敢えてそんなことはしない。
「そうだよ、悪いか?」
『うわ、開き直ったな・・・やるな』
どうせスケベなことをするのは事実だしな。
コソコソせずに堂々を宣言するのが一番だろう。
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『ご主人様・・・そうハッキリと宣言されるとちょっと・・・』
え? アイラは何を言ってるんだ?
『そうじゃのう・・・さすがにのう・・・』
あれ? ジーナまで・・・
『レックス、少しは女心を勉強したほうが良いんじゃない?』
シェリーまでもが・・・
『レックス殿、デリカシーが無さ過ぎですよ』
ついにはナギサまでも・・・
アイラ達全員が冷めた目で俺を見てる。
俺は何かを間違えてしまったのか?
頭を抱えてひたすら考え込んでいる俺に向かってアイラ達が呆れたように言った言葉だ。
『『ムードが欠片も無いんですよ!』』
ムード? そう言われると確かに俺はがっつくばかりだったな。
しかし・・・しかしだ、こんな美女に囲まれてがっつくな、と言うのは酷な話だよな。
腹を空かせた犬の前に美味しそうな餌を置くようなものだよな。
・・・躾られた犬なら我慢出来るかもしれないな。
そうすると俺は犬以下なのか?
いや、そんなことは・・・無いはず・・・
ちょっと、いや、かなり自信が無くなってきたぞ。
あ、ヤバい・・・ちょっと落ち込んできたな。
ちょっとへこみ気味の俺に対してアイラ達が憐れんだのか嬉しい言葉をかけてくれた。
『『しょうがないですね、徐々にムードを意識するようにして下さいね・・・』』
そして今日もアイラ達を抱いた。
ムードを出せるように頑張ろうー!
・・・ところでムードってどうやって出せるんだ?
 




