0101:和の国に到着
ドワーフ国で10日間過ごした。
ダンジョンコアは思いの外、高額の買い取り価格だった。
なんと白金貨100枚で買い取ってもらった。
これには俺だけでなくアイラ達も驚いていた。
『これで暫くは働かなくても大丈夫ですよね? 旦那様』
サーシャはこんなことを言っていたがモンスター退治をやめるつもりは無い。
レベルアップはしないと駄目だからな。
そしてコートも無事に受け取った。
店長曰く、
『ワイバーンのコートよりも物理防御も魔法防御も数段上がっているはずだ』
とのことだった。
実質、金を支払っていないのに防御力が上がったことになる。
最後に馬車の改良が終わった。
車輪が木製から金属に変わり、車軸と本体との間にはサスが付けられていた。
ガーラン曰く、
『アカとクロが全力で走っても馬車が壊れることは無いばすだよ。しかしも馬車の揺れもかなり軽減されるはずさ』
と満足そうに語っていた。
とりあえず、ドワーフ国でやりたいことは全て終わった。
「次は、和の国に行ってみようか?」
元日本人としては是非とも行ってみたい国となる。
それとナギサに薙刀を購入してやりたい。
一応、槍も使いこなしているがナギサのジョブはあくまでも【薙刀使い】だ。
やはりジョブに適した武器のほうがいいはずだよな。
『レックス殿、和の国に行くのは良いんですが、かなり変わった国ですよ? 本当に行くんですか?』
うん? ナギサは行きたくないのか?
「俺としては是非とも行ってみたいんだけど、嫌なのか?」
『そうよね、ナギサが生まれた国を見てみたいよね、ねぇ旦那様』
『・・・はい、分かりました。ちょっと気が進みませんが』
何故気が進まないのか分からないが、とりあえず和の国に向かうことになった。
幸いなことに和の国はドワーフ国の隣だ。
俺達の馬車なら数日で到着出来る距離だ。
「それじゃあ、明日の朝に出発するか」
◇◆◇◆
ナギサが言うには和の国までは3日程度の距離らしい。
今は御者席にナギサがいる。
その隣には俺が座っていた。
「なぁ、ナギサ。何で和の国に行くのに気乗りしないんだ? もちろん、言いたくないなら言わなくて良いけど」
『以前、武者修行のために和の国を出たと話をしましたよね?』
「あぁ、確かにそう言っていたな」
『実はあれって半分は正解で、半分は嘘なんです』
「それってどういうこと?」
ナギサはまず和の国のことから話してくれた。
和の国では国王のことをショーグンと呼び、ショーグンの下にダイミョーがおり、ダイミョーが各都市を統治しているとのことだ。
なのでダイミョーは領地を持っている貴族みたいなものらしい。
ナギサの父親は複数いるダイミョーの1人の配下でハタモトという役職であったがその父親がモンスターとの戦いで戦死してしまったとのことだ。
その後、ナギサの家は没落してしまい母親も亡くなってしまった。
そして、ナギサは1人で生活するために冒険者になって和の国を出たということだった。
ここまでは、この世界ならよく聞く話だ。
なのであまり気にする必要は無いと思うが。
『あと・・・親が勝手に決めた許嫁がいるんです・・・』
「え、それって、マジ?」
『・・・はい、マジですよ。それもあるので和の国に戻るのは気乗りしないんですよ』
それは確かに気乗りしないよな。
というか、俺とナギサは既に男女の仲になっているけど大丈夫なのかな?
まさか、いきなり斬り捨て御免とかにならないよな?
◇◆◇◆
そして3日後、和の国との国境に到着した。
和の国はとくに鎖国などはしていないため問題無く和の国に入ることが出来た。
国境から近くの町に向かった。
町を取り囲む壁は他の国と同じく石を使った壁であった。
「う~ん、何かイメージが違うよなぁ」
『レックス殿、何ですか? そのイメージって』
「あ、独り言だから忘れてくれ」
しかしイメージが違ったのは壁だけだった。
町の中に入ると木の板で作られた家が建ち並んでいた。
「おぉぉぉ、これだよ、これ!」
目の前に広がっている光景は時代劇の城下町そのものだった。
『へぇ、これが和の国の風景ですか』
『なんかエルフの里に似ていますね』
『何やら味わいがあるのじゃ』
『ちょっと変わった建物よね』
そして通りを歩いている人の多くが袴や着物を着ていた。
アイラ達は初めて見る町並みや服装に興味津々であった。
「そういえば、ここは何ていう町なんだ?」
『ここはスルガの町ですよ、レックス殿』
町の名前まで和風だった。
しかし、この風景は落ち着くな。
ただし、町並みは完全に和風ではあるがちゃんとキャンプ場もあるし、普通の服装をして歩いている人もいた。
とりあえず、馬車をキャンプ場に預けて町を散策することにした。
「そうだ、忘れないうちにナギサの薙刀を買いに行くか」
という事で早速武器屋に向かった。
ありがたいことに看板は和の国でも同じだった。
武器屋に入ると威勢のいい声で出迎えられた。
『へい、らっしゃい! どんな武器を探してるんだい?』
これではまるで八百屋のオッサンと一緒だな。
「あ、仲間の武器を探しているんだけど薙刀はあるかな?」
『へぇ、これまた珍しい武器を探しているんだな。だが、うちには当然置いてあるぞ!』
オッサンはドヤ顔で薙刀が飾ってある場所に案内してくれた。
さすがに和の国の武器屋だ。
ちゃんと薙刀が複数陳列されていた。
「ナギサ、好きなものを選んでいいぞ」
ナギサが薙刀を選んでいる間、俺は違う場所に移動した。
そこは刀が飾ってある場所だ。
刀が飾ってあるスペースは通常の剣が飾られているスペースよりも広かった。
「さすがは和の国の武器屋だな。色んな刀があるな」
村正と同じような刀もあれば、それよりも巨大な刀もあった。
商品の説明文を読んでみると、【大太刀】と書かれていた。
『どうしたんだ、坊主。その大太刀が気に入ったのか? でも止めといたほうがいいぞ。それは馬鹿力が自慢の馬鹿が使う武器だからな』
大太刀をよく見ると刃が潰れていた。
ということは、大太刀は斬るんではなく叩き潰すように使う武器なんだろうな。
大剣と同じか。
『レックス殿、この薙刀に決めました』
ナギサが嬉しそうに一本の薙刀を持ってきた。
『ほう・・・お嬢ちゃん、中々見る目があるな。数ある薙刀からそれを選ぶなんてな。その薙刀の名前は【蝉丸】という名だ』
え? 蝉丸って確か武蔵坊弁慶が使っていた薙刀と同じ名前だったような・・・
蝉丸を持たせてもらったところかなりの重さだった。
「こんな重いので大丈夫なのか?」
『え? 全然平気ですけど?』
ナギサも意外に力持ちであることが判明した。
少なくても俺よりも力があるのは間違いない。
『旦那様、大丈夫ですよ。旦那様は私よりも力がありますから。多分ですけど』
『そうね、私よりはレックスのほうが力はあるわね』
サーシャやシェリーと比較されてもな。
むしろ逆に悲しくなるな。
とりあえず、蝉丸の代金として大金貨5枚を支払い、武器屋をあとにした。
その後はスルガの町をフラフラと散策してみた。
屋台で団子を買ってみたりもした。
団子はアイラ達に好評だった。
ここまで和風が再現されているなら食事も期待出来るな。
ここは是非とも和食を食べてみたい。
色々と食事処を探していると10人ほどの男達に突然囲まれた。
そして1人の男が一歩前に出て来て言った。
『ナギサ殿ですな? ノブヤス様がお待ちですぞ』
「ノブヤスって誰だ? ナギサの知り合いか?」
『レックス殿、前に話した許嫁の名前です』
親同士が勝手に決めたと言っていた許嫁か。
『貴様! ノブヤス様を呼び捨てにするとは。生かしておけん!』
そう言うと男達は刀を抜き出した。
ノブヤスがどのくらい偉いのか知らんが呼び捨てにしただけでこの騒ぎか。
男達が刀を抜いたので俺達も応戦する態勢を整えた。
そして気付かれないように支援も発動した。
すると、男達とは違う方向から声がした。
『双方、武器を仕舞うがよい! ここは天下の往来だぞ!』




