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退学になった

夜野よるのコウ君、君に退学処分を下す」

 理事長室で俺の向かい側のソファーに座った理事長が重々しくそう言った。

 

 理由は明白である。

 俺が吸血鬼だからだ。


 人間の中にはまれに、突然変異で吸血鬼として生まれる者がいる。

 吸血鬼は異常な再生能力や驚異的な寿命、すさまじいほどの飢餓耐性を持つ代わりに、日光を浴びるとだんだん灰になるという弱点を抱えていた。

 そこで、普通の人間同様に活動するためには耐日光薬が必要になるのだ。

 なお、それでもパフォーマンスは日光の影響で夜間に比べて劣るが。

 

 ついでに言うと、耐日光薬は原材料費が高い。

 そのため、学生の場合は学校側が全額負担してくれるようになっているのだ。


 コストカット

 それが無遅刻無欠席成績平均並みの俺が退学になった理由だろう。



「うちはね、今予算不足で困っているんだよ。この学校のボロボロっぷりを見たらわかるだろ。だから、オマエを真っ先に切り落とすことにした」

 理事長は冷酷な表情で俺を見ながらしゃべり始めた。


「私は吸血鬼のことを人間になれなかった劣等種だと考えている。全ての吸血鬼は今すぐ天日干しにして殺すべきだと思っている。なぜかって?劣った種は優秀な種の邪魔でしかないからだ。吸血鬼というお荷物のせいでこの国の経済は行き詰ったのだと私は考えている。吸血鬼には吸血鬼なりの特性があり、それを理解したうえで社会参加させればいいじゃないかという意見もあるが、そんなめんどくさいことをしたら社会は収縮すると私は考えている。出来損ない。不完全。社会のゴミクズ。それがお前たち吸血鬼だ。立場をわきまえろ。お前はこの栄えあるA高校にいていい生徒ではない。さっさと去れ。このゴミ野郎。どこかで野垂れ死んどけ。このクズ野郎。以上だ。もう話すことはない」


そう言って理事長は反論の隙も与えずに理事室を去っていった。




 帰宅後、俺は学校を退学になったことを人間である両親に話した。

 両親は冷たい目で俺を見てこう言った。

「退学になったことはすでに知っている。お前を育てる気はもうない。これからはお前の幼馴染の家で養ってもらえ。すでに交渉や準備等は済ませた」

 

 俺は悲しくなって言い返す気も起きず、荷物をまとめて近所の幼馴染の家に家出した。

 もしかしたらもう二度と家には帰らないかもしれないと思った。



 幼馴染も吸血鬼であった。

 そして、幼馴染の両親は吸血鬼に理解がある人であった。

「まったくひどいことがあるものだね」

「学校の一番偉い人が差別だなんて世も末だな」

 二人は今日俺の身に起きた出来事を知って口々にそう言ってくれた。


「ベニさんの部屋にあがってもよいでしょうか」

 ベニとは幼馴染の名前である。

「ああ、いいぞ。君はベニが心を開く数少ない人物だからな」

 ベニの父さんは快く許可してくれた。


 階段を上がり、ベニがいる部屋の扉の前に立つ。

 俺はノックをする。

「…どうぞ」

 中から心細そうな少女の声がする。

 俺はゆっくり扉を開ける。


 部屋の中には銀髪の少女が大人しそうにベッドに座っていた。

 色白い肌と慎ましく均整のとれた小さな体はまるで人形のようであった。

 彼女はここ数年間家の外から出たことがない。

 学校での吸血鬼イジメがトラウマになっているのだ。


「…こんばんは。コウ君」

「こんばんは」

 俺は今日退学処分になった上に家から追い出されたことを微塵も感じさせないような表情で彼女の前でしゃがみ、あいさつを返した。


「…ねえ、今日とってもつらいことがあったでしょ。悲しい瞳をしている」

 早速バレてしまったか。

 長年一緒にいるせいか、俺たちはお互いの考えていること等がなんとなくわかるようになっている。

 いわゆる以心伝心いしんでんしんというやつだ。


「…そうだ。詳しくは言えないが、とってもつらいことがあった」

 とてもじゃないが事の詳細は彼女に言えそうになかった。

 俺もまた吸血鬼差別に負けてしまったのだから。


 突然、おれの頭上にぬくもりが乗っかかる。

 ベニが俺の頭を撫でた。


「…大丈夫、大丈夫」

 そう言ってベニは俺の頭をやさしく撫でる。

 彼女は一見おとなしそうに見えて若干アクティブなところがあるのだ。

 そして、そんな状態が1分ほど続いた。



 そろそろ「もう大丈夫」と言って撫でるのを切り上げてもらおうかと思ったその時、


 俺のスマホとベニのスマホから警報が鳴り響いた。

 俺とベニは各々のスマホに目を向けた。


「なんだ。ダンジョン生成通知か」

 数年前のとある出来事によって、この国限定でダンジョンが時々出没するようになったのだ。

 正直、俺達には関係のない話だが…


 …待てよ。


 …ダンジョンって日光入らないよな。


 …しかも、吸血鬼ってめっちゃ体丈夫だよな。


 …もしかしたら、ダンジョン攻略って吸血鬼にとって天職なのでは!?


「俺、今からちょっとダンジョン攻略してくる。すごいことがわかった気がするんだ」

「…コウ君は昔からそうやっていろんなことに挑戦してきたよね。わかった。いってらっしゃい。頑張ってね」

 ベニにそう言われた後、俺はベニの両親に事情を説明し、夜間の外出の許可をもらえた。

 

 俺は、ダンジョンに入るのに必要なギルドカードを作るべく、ギルドセンターへと向かった。


今日はあと2回投稿します!(その分はすでに書き終えています!)

ざまぁ系を本格的に書くのは初めてなので拙いところもありますが、応援よろしくお願いします!

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