09~ 体育祭2日目 ~ 懐かしい匂い ~
体育祭2日目に入ります
2日目の種目は
1、100m走 (皆)
2、男女別1500mリレー (代)
3、男女混合二人三脚 (代)
4、クラス対抗リレー (皆)
5、学年対抗リレー (代)
という感じだ。
俺は今日も全部の種目に出ないといけない。うん、めっちゃ疲れそう!
まだ昨日の疲れが全部取れてないから不安だな。
不安を抱きながらも時間は過ぎていくわけで、100m走が始まる。
昨日は1年、2年、3年の順だったので今日はその逆の3年生からだ。
黒髪眼鏡会長が走る時は物凄い声援。金髪副会長が走る時は黄色い声援。
隣にいた洋太は「ぐぬぬ……」と羨ましそうな顔で見ていた。
ほんとに、2人とも凄い人気なのだ。 聞いたところによると、ファンクラブ的なのもあるらしい。
「なぁ、刀夜。俺も生徒会に入ったらモテるかな?」
真剣な顔で洋太が聞いてくる。それに俺は、
「モテるんじゃないかな? まぁ、生徒会に入れればだけど……」と答えた。
まぁ嘘はついてない。洋太は顔はイケメンだからちゃんと仕事とかをしたらモテると思う。あと、クッソみたいな性格を直したら。
そんなアドバイスをもちろん本人に言うわけがない。なぜなら、洋太がモテたら俺がモテなくなってしまうからだ!
俺がそんな事を思っているとは知らずに洋太は、「よし、俺生徒会入るわ!」と勢いよく立ち上がって拳を握った。
「頑張れ、洋太!」
生徒会入れたら、性格悪くてもちょっとはモテるようになると思うよ!
そんなやり取りを終始聞いていた勇心は「頑張れ洋太」と何故か苦笑しながら言っていた。
そういえば、勇心ってモテたいとかは思わないのかな?
そんな疑問が頭によぎった所で、1年生の順番が回ってきた。
俺は、危なげなく1位を取った。洋太や、勇心、加田野さん、佐藤さん、塩崎さんも1位で赤団は大量に得点を獲得した。
その後の代表種目1500mリレーでは、洋太が最初に走って差をつけて、次に俺がその差を保ったままゴールするという感じで1位。佐藤さんと塩崎さんコンビも1位だったみたいだ。
なんか、B組強すぎない? 他のクラスが可哀想に思えてきちゃったよ……。このクラスだけ人選ミスってない先生! クラス決める時運動神経良い人バラけさせた方が絶対いいよ?!
なんて思っていると、放送で二人三脚に出る人は準備して下さい的なのが聞こえてきた。
「洋太、勇心。はやく行こうよ!」
「いや待て刀夜。そんな早く行っても暇だからゆっくり行こうぜ」
洋太は相変わらずの爽やかスマイルを披露する。
「あはは。そうだぞ刀夜。慌てすぎてまたコケたらどーすんの?」
確かに……。勇心が言うように、またコケて恥ずかしいところは見られたくないな!
二人三脚は2人1組で、クラス毎に3組必要だ。つまり、男子3人女子3人の計6人。今までの代表種目は、俺と洋太と佐藤さんと、塩崎さんの4人で足りていた。
だけど、今回はあと2人足りないから加田野さんと勇心が出ることになっている。
あと、1番最後にある学年対抗リレーにも一緒に出る。
「洋太、勇心! 1位取れよー!」
「あぁ、もちろん。当たり前だろ!」
「取れるかわかんないけど頑張るわ!」
洋太は相変わらず自信満々だけど、勇心はやっぱりちょっと緊張してるのかな?
「ゆーしん君っ! 緊張しなくても楽しいから大丈夫だぞー?」
「あはは。緊張してるのばれた? 楽しむねぇー……。善処するよ」
「おい勇心。刀夜のメンタルは鋼だから普通の人は楽しめねぇぞ」
あれ、なんか今俺のメンタルが鋼とか何とか聞こえてきたような気が……。
そんなまさかね。俺だって緊張はするし、みんなの前でコケた時も死ぬほど恥ずかしかったんだからね!
俺たちは、ゆっくりと歩きながら入場門に向かう。
女子3人は先に行ってるのかな? 塩崎さんとかが時間は守らないと、とか言って早く行ってそうだなー。
俺がそんな事を考えていると洋太が
「刀夜、お前本当にコケんなよ? 今回コケたら色々な意味でやばいぞ」
「わかってるって、そんな何回も言わないでも。大丈夫大丈夫!」
もー洋太ったら、流石に何回もコケるわけないじゃないですかー!
「てか、なんでそんなに念を押してくるの?」
洋太はさっきからというか、朝から「二人三脚の時だけはコケんなよ」と耳にたこができる程言ってきた。
「うわまじか……。やっぱり分かってねぇじゃん……」
洋太は肩を落として顔に手を当て「はぁ〜」と溜息をつきながら、ゆっくり右左に首を振る。
えぇ? 何にそんな溜息をついてんのさ……。
そんな困惑した俺をみて、勇心は苦笑しながら言ってきた。
「刀夜。多分だけど、刀夜のペアが美人ランキング1位の佐藤さんだからじゃ……」
あっ! そ、そうだった。忘れてたけど、俺のペアって佐藤さんじゃん……。
俺と佐藤さんの足は結ばれてるわけだから、俺がコケたら当然佐藤さんもコケるわけで……。
美人に傷をつけた最低最悪な人認定される……と洋太は言いたいのか。
確かにそんなことがあったら――モテないじゃん! それどころか学校行けなくなっちゃうかもしれないぞ!
これは、かなり大変な事だと気付いてしまった俺は、急に心臓がバクバクなり始めた。
「や、やばい。緊張してきた……」
「はははは! 刀夜でも緊張するんだな!」
「それ俺も思った」
本当に面白そうに笑う洋太と勇心を見ていると、なぜだかこっちも可笑しくなって自然と笑みがこぼれた。
まだ緊張してるけど、何となく大丈夫な気がした。
――大丈夫な気がしたのはただの気のせいだった。
「真田くん。これ着けるよー?」
佐藤さんはそう言って二人三脚用のマジックテープを着けるためにしゃがみこむ。
俺はと言うと、緊張して立ち尽くしているだけだった。
佐藤さんは自分の右足首と俺の左足首にマジックテープを巻き着ける。
「よしっ、これで大丈夫かな」
そう言って立ち上がってこっちを向いてきた佐藤さん。
俺も丁度そっちを向いていたので顔が向き合う感じになってしまう。
ち、近っ! 足も当たってるし、体も当たってるし。でも離れようとしたらコケるし。
「思ったより近いねー」
と俺が思ってたよりそんなに同様していない様子の佐藤さん。
「緊張してる? あはは。大丈夫だよー。楽しく行こうよ」
佐藤さんはニコッと首を傾げながら笑う。
風でフワッと佐藤さんの髪が揺れた。それと同時にいい匂いがする。
うわぁ、なんだろうこの匂い。少し甘くて優しい感じの匂いだ。どこかで嗅いだことのある懐かしい匂い。でも、いつどこで嗅いだのか思い出せない。
「いい匂い……」
あっ、思わず口に出しちゃったけど褒めてるから怒られたりしないよね?
「っ?! あ、あんまり匂いは嗅がないで欲しいな。……ほら、汗かいてるし」
いやいや、全然いい匂いなんですけど?! 女の子ってみんなこんなにいい匂いするの?!
佐藤さんと話していると、というか匂いを嗅いだら何故か自然と緊張が解けてきた気がした。
これなら問題なく1位取れそうだな! 佐藤さんの匂いのお陰なのか???
まぁ、頑張ろー!
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「いい匂い……」
真田くんがそんな事を言った。
「っ?! あ、あんまり匂いは嗅がないで欲しいな。……ほら、汗かいてるし」
急にそんな事言われたら、恥ずかしい……。それに小動物みたいにクンクンと私の匂いを嗅ぐ真田くんはとても可愛い……。
私と身長はあんまり変わらなくて、でも私より少し小さい。
――あの時はまだ真田くんの方が高かった様な気がする。
やっと体育祭2日目に突入しました!
1500PV超えました。ありがとうございます!