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07~ 天然偽善者と借り物競争の災難② ~

1000PV&総合評価100突破しました!ありがとうございます!

引き続きこの作品を宜しくお願いします!

「刀夜、おつかれの様子だな」

  洋太は、俺の様子をずっとみていたのか苦笑していた。

「もう順番回ってくるぞ? これからだってのに大丈夫か?」

「全然大丈夫。てか、なんで俺ばっかり連れていかれたんだ?」

  俺は疑問に思ったことを洋太に聞く。すると、「しらね」とそっけない返事が返ってきた。

  なんだろう。少し拗ねてるような怒ってるような感じがするのは気のせいだろうか……。

 



  ようやく、自分の番がスタートした。

  俺は走ってお題の紙が入っている箱から、紙を選ぶ。

  どうか、簡単なお題が来ますように! そう願いながら紙を引いた。

  お題を見る。そこで目にしたお題は、借り物競争の定番『好きな人』と書かれてあった。

  いやいやいや! 定番すぎて逆に引くわ! こんなの誰がするんだよ! しかも、俺好きな人いないし……佐藤さんは一応気になってる人だから、好きな人じゃないし!

  このお題は無理だと判断した俺は、係の人に「チェンジで」と声をかける。

  この借り物競争は、引いたお題が無理だったらチェンジして貰える。だが、もちろんその分デメリットがある。

  それは、20秒間待ってからまたお題を引く。というものだ。競走の中での20秒はかなり痛い。

  だが、変えずにゴールせずに終わるよりは最下位でもゴールして終わった方がいいと判断した。

  俺が20秒間待っている間に、ほかの人たちはどんどんゴールしていく。

  くそぉ! 誰だよこんなお題考えたやつ! それ引いた俺も運悪すぎだよ。

  あ、もしかして。洋太の言ってた「もう1回何かあるぞ」的なものはこれだったのか!

  タイミングわっる!

  あぁ、でもリレーの時コケるよりましか。とボヤいている間に20秒が経った。

  もう一度お題を引く。

  今回のお題は――『髪が長い人と短い人(女子)』

  さっきよりはまだ、ましだけど! ましだけど!

  なんで短い人は男子じゃダメなの?! なんでわざわざ女子なんて条件付けるんだよ?!

  俺は胸中で文句を言いながら、とりあえず自分のクラスのテントに向かう。

  髪が長い人、長い人……塩崎さんかな?

「塩崎さん! 一緒に来てくれない?!」

「良いわよ。さっきは助けられたしね」

  即答?!

「ありがとう!」

  ありがとう塩崎さん! ありがとう! さっきは塩崎さんのお題に付き合ってあげて良かったなぁー。

  いや、正確には付き合わざるを得なかったわけだが……。

  さてと、残るは髪の短い人(女子)だ。髪の短い女子なんてそこまでいない。

  しかもどこまでが短いと判断されるのかがわからない。とりあえず、肩ぐらいまでなら短いっていうかな?

  記憶を頼りに、髪の短い人を探し出す。

  あっ! 加田野さんは、確かショートカットだったよね。よし、加田野さんを探そう!

  テントを一通り見渡したが、どこにも加田野さんの姿はなかった。

  近くにいたクラスの女子に加田野さんがどこにいるかを聞くと、

「あー。さっきトイレの方向行ってたから、トイレじゃない?」

  とさらっと答えてくれた。

  加田野さんがどこにいるかが分かったのはいい……いいけど、今からじゃ間に合わない〜!!

  他に誰かいないか? 誰か……。

  俺がテントを見渡していると、ある人と目が合った。

  あ、この人なら髪が短い女子に分類されるんじゃないか。そう思って声をかける。

「さ、佐藤さん! 来て!」

  俺が叫ぶと、佐藤さんは肩をビクッとさせたが、コクんコクんと頷いてくれた。

「チッ」

  ん? なんか今隣から『チッ』て聞こえてきたけど、気のせいだよね? 塩崎さんが舌打ちなんてするはずないもんね。

  まぁいいか! よし、これで後はゴールするだけだ!





  俺は塩崎さんと、佐藤さんと一緒にゴールに向かって走り出した。

  結果は――5位。

  う〜ん。まぁお題が難しいだけあったし、しょうがないかな。

  結果は10人中5位と、なんとも普通な結果。でも、俺は最下位にならずに済んだ事に安堵しつつテントに帰って行った。




  ●●●

  刀夜が、佐藤と塩崎を連れて走っていったのを見届ける俺――谷川洋太。

  皆は気付いただろうか。刀夜は、学校中で可愛い、美人と噂の人達を連れて行ってしまったのだ。

  そこら中の男子共が睨み付けてるのに、何食わぬ顔で走っていく刀夜を見届けながら俺は思う。

  あいつ、やっぱり天然バカだな。

  学校内で有名なランキング――美人ランキングで上位の2人を連れていくとか他の男どもに殺されるぞ。

  みんな、それをわかっているから誰も今まで誘わなかったのに、それを刀夜が誘いやがった。

「誰だ、あのガキ……」

「禁忌に触れてしまったな……」

「あいつぅぅぅー! 許さん! 許さん!」

「これがいわゆる両手に花ッ!……」

  こりゃ、相当恨み買っちゃったな。なんか、『両手に花』とか聞こえて来たが、確かに! ずるいぞ刀夜。抜け駆けしやがって!

  まぁ、体育祭の後大変な目に遭うのを考えると、同情心の方が湧いてくる。

  刀夜がゴールして戻ってきた。

  俺は刀夜の肩に手を置き言う。

  「ドンマイ刀夜。強く生きろよ……」

  ●●●




  「ドンマイ刀夜。強く生きろよ……」

  テントに帰ってきてすぐに、洋太に変なことを言われた。

  何言ってるんだこいつ。あ、もしかして5位だった事を励まそうとしてくれたのか?!

  普段からかってくるばかりの洋太が励まして来たので、とうとう頭おかしくなったかと思いつつ座る。

「ただ5位取っただけで、大袈裟な」

  若干苦笑いで言うと洋太は「あぁ、そうだな」と言ってきた。

  何故かとても可哀想な生き物を見るような目で。

  うわ、きも! こいつのこんな表情初めてみたわ!

  俺は、若干引きつつ。否、ドン引きしつつ借り物競争をみる。



  すると、突然 わっ! と声援があがる。よく聞くと、「キャ〜ッ! 先輩!」や「キャ〜ッ! 副会長こっち来てー!」などと黄色い声援が多かった。

  うわ、あの2年の金髪副会長モテモテだな。いーなー! 俺もあんな風にモテたい。

  そんな事を思って見ていると、しばらく経ってから ドッ! とさっきの黄色い声援を掻き消さんばかりの声援が響く。

  見ると眼鏡を掛けている真面目な会長がいた。

  わ、すごい……。

  副会長は女子の声援が多かったみたいだけど、会長は多くの男子と女子が応援してる。やはり、会長の方が信頼されているんだろう。

  会長を応援している男子が多いのは、副会長がモテモテでそれに嫉妬して会長を応援している。概ね、そんな感じだろう。

  しかも2人とも、借り物競争は他の人と圧倒的な差をつけて1位でゴールしている。

  凄い! 人望が厚い人達だけができることだ! 俺も早くあんな風に信頼されたりモテたりしたいなー。その為にもいい事をして善ポイント集めないと!




  次の男女別学年対抗リレーは1年生にとって圧倒的に不利だ。

  だが、それをわかっているからこそ勝ちたいと思う気持ちが強くなる。

  1年生でも2、3年生に勝てるということを証明してやる!

  俺は椅子から立ち上がり洋太に「勝つぞ」と一言言い、2人で入場門に歩いて行った。


 

 

 




 


次話も読んでくださると嬉しいです!

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