10~ 謎の違和感 ~
佐藤さん視点で始まります。
真田くんとは、小学3年生の時に同じクラスになって初めて出会った。
真田くんは、とても明るく活発的で、誰にでも優しかった。天然で、可愛らしいところもあり先生達にも人気があったのだ。
高校1年生になった今でも、あまり変わっていないような気がする。
小3の終わりに私は親の事情で転校して真田くんとは1年間しか関わってなかったけど……。
その時はまだ真田くんの方が背が高くてかっこよかったなぁー。もちろん今もかっこいいけどね。っって! 何考えてるんだ私!
自分が考えていたことに恥ずかしくなる私。
まぁ、そんな事はどうでもよくて(どうでも良くない)真田くんのことに関して気になる事があるのだ。
私とはまるで初対面のように接してきた。まぁ、1年間しか関わってないし、前髪で目を隠してた頃とは違い、私の容姿もだいぶ変わったから覚えてないのも当たり前か。
名前は同じだから、覚えててくれてたら嬉しかったんだけどな……。
この事はあまり気にしていない。じゃあ、何がそんなに気になるのかって?
それは――小3の時にいっつも一緒にいた双子の妹、“紗夜”ちゃんがこの高校にいない事だ。
最初は、「違う高校に行ったのかな。でもあんなに真田くんの事が大好きだった紗夜ちゃんが、違う高校に行くって珍しいこともあるんだなー」程度にしか思っていなかった。
だけど、入学してからもう3ヶ月以上たった今でも紗夜ちゃんの話が真田くんから聞こえてこない。
私が直接聞いた方が早い気がするが、それを聞くには昔の私の事を話さないといけなくなる。「美人ランキング1位の佐藤優花はなんと昔『陰キャ』でした」なんて恥ずかしくて言えない。
とりあえず、私の気持ちは置いといて。
真田くんの口から紗夜ちゃんの話が聞こえてこないのはおかしい。
恥ずかしいけど、紗夜ちゃんの今が気になるから頑張って聞いてみようかな……。
1人で悩んでいると、真田くんが「もう始まるよ!」と声をかけてきた。
ハッ! そうだった。今は体育祭の最中で、今から真田くんと二人三脚をする。
紗夜ちゃんの事はまた今度考えるとして今は体育祭に集中しないと。
「1位取ろうね、真田くん!」
「だね! 頑張ろう!」
お互いに励ましあって、スタートラインに並ぶ。
よーい――――パンッ!
スタートの掛け声の後にスターターピストルの音が鳴り響く。
私たちがゆっくりと足を出すタイミングを揃えて加速し始めると共に、テントから声援が送られる。
「「いっちにっ、いっちにっ」」
真田くんと私は声でお互いにタイミングを合わせてどんどん加速する。
他の人たちを置いて、独走状態だ。
「流石、1位の佐藤さん!」
「やっぱ、佐藤さんはなんでも出来て凄いな!」
「顔も可愛いくて、勉強もできて、運動もできる。完璧……」
周囲の人たちは私の事を褒めまくっている。
うーん。私より真田くんの方が凄いのにな。
「一緒に走ってるやつ、死ね!」
「佐藤様を汚すな!」
「チビ!」
真田くんの方が凄いのに、皆は悪口を言う。主に男子たち。
何あの、男子たち! 真田くんの良さを知りもせずに悪口言うな!
真田くんの悪口を言われ、ついイライラしてしまう私。
はー。ダメダメ私、集中しないと。と自分を落ち着かせる。
心の中で色々と言っていたら、ゴールの目の前にいた。
えっ?! はやっ! もうゴール?
驚いている内にゴールする。
「やったね! 佐藤さん!」
無邪気な笑顔で言ってくる真田くん。
「そうだね! 楽勝だったね!」
私も嬉しくて真田くんの方を向いて笑う。
――近っ!
顔が近くてビックリしてしまった私は、バランスを崩す。後ろに倒れそうになるが、真田くんが肩を掴んで静止させてくれ――――たと思ったら、そのまま真田くんの方に倒れ始めた。
あっ!! マジックテープ……。
そう思った時にはもう遅く、ビリッとマジックテープの剥がれる音がすると共に勢いよく倒れた。
いてて、真田くんは大丈夫かな?
顔を上げてみると、真田くんの顔が近くにあった。びっくりして上半身を起こすと、真田くんは私の下にいた。
「わっ!! ごめんなさいごめんなさい! 真田くん大丈夫?!」
私は真田くんに馬乗りになっているが、心配して声をかける。
「ん、大丈夫だよ。ちょっと痛かったけどね。佐藤さんは大丈夫?」
真田くんは苦笑しながらも私の心配をしてくれた。
私はその瞬間、“なにかのスイッチ”が入ってしまった。
「――ふふ、大丈夫だよ? 自分の心配より私の心配してくれるなんて、優しいね」
私はそう言いながら、真田くんの頬をそっと優しく触る。
真田くんの上からどいて立ち上がる。真田くんは呆然としていたが、私は少し腰を曲げて手を伸ばしながら「ありがと」と声をかけた。
「っえ?! あ、いや。ありがとう」
真田くんはお礼を言いながら手を掴んでゆっくり立ち上がる。
立ち上がったのを確認して私は、グッと真田くんを引っ張る。
「えっっ」
真田くんは驚いた声を出して私の目の前まで来る。
私は真田くんの目をじっと見つめて、ニヤッと笑みを浮かべる。そして、真田くんの耳元に口を近ずけ「カッコよかったよ」と囁く。
囁いた途端、私は“正常な意識”に戻った。
あぁぁぁあっっ! またやっちゃったよぉぉー!
私は恥ずかしいあまり、走って逃げてしまった。
真田くんに、なんて思われたかな。やっぱりキモいって思われたかな。何言ってんだこいつみたいに思われてないよねぇ……。
私は真田くんにどう思われてるかを想像しながら、落ち着くためにトイレに駆け込んだ。
●●●
佐藤さんが走ってトイレに行くのを俺はただ、ぼーっと見届けていた。
あれ、佐藤さんなんか様子がいつもと違ったような……。
しかも走り去る前俺に「カッコよかったよ」とか言ってたよね。
えぇーっ?! 嘘! 嘘だよね?! 校内ランキング1位のあの佐藤さんからまさか言われるわけないよね。うん、言われるわけない……。
多分倒れた時に、頭かなんか打って聞き間違えただけだよね!
それよりも、佐藤さんはなんであんなに急いでトイレに行ったんだろう。
あぁ! きっと、顔に傷が付いてないかを確認しに行ったんだね。女の子はそういうの気になるよな。
俺は、疑問に思ったがすぐに答えにたどり着いて1人で納得する。
見た感じ、傷は付いてなかったから大丈夫だよね?
あとでまた謝ろうと決め、俺はテントに戻った。
●●●
トイレにしばらくいた私は、だいぶ落ち着いてきたので外に出ることにした。
はぁー、とため息をこぼしながら外に出る。
「よう! さっきは大変だったな」
「ふぁっ?!」
いきなり声をかけられたことにびっくりして思わず変な声を出してしまった。
声のした方に顔を向けるとそこには、二人三脚を終えた谷川くんがいた。
「そ、そうだね。でも怪我がなかったから良かったよ」
若干同様しつつも、言葉を返す。
「それにしても、刀夜のやつバカだよなー! またコケやがったし」
谷川くんは、苦笑しながら会話を続けてきた。
ということは、私になにか用があって待っていたのかな?
でも、私に何の用があるのかな? 特になにもないと思うけどな……。
そんな私の考えを察してか、谷川くんは「聞きたいことがあるんだけど 、いい?」と顔色を伺うようにして言ってきた。
私はコクんと頷いて応える。
どんな事を聞かれるんだろう。
まさか、真田くんの事を“特別な存在”と思ってることがバレたのかな?
「じゃあ、聞くけど。佐藤、お前ってもしかして――S……なのか……?」
――――え?
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