第1話・出会いは雨と夕焼けの下にて
それは、とある雨の降る日の事だった。
私は、学校から家へと帰ろうとしていた。
いつも同じルートを通って帰っていたのだが、その中にはとあるゴミ捨て場の前を通る部分があった。
そして、其処にはいつも居る少年。
(私と同い年位に見えるけど、一体どうして、いつも此処に…?)
通る度に心配が募りはするのだが、生憎私に声をかける程の勇気なんて有るわけもなく…
(結局、人を見捨て、忘れ、放置する
どこかの親とそっくりなわけだ)
ふと、嫌なことを思い出してしまったなと首を静かに、微かに横に振る。
そうしている内に今日も、いつものゴミ捨て場の前に差し掛かった。
(また居るよ…大丈夫なのかな…)
ふと、気付かれないようにそっと彼の方を見た。
すると…
目が、合った。
(…う…)
なんだかここまで来て助けないのは、人として良くない、そんな気がしてしまった。
今思えば、それは運命のような物だったのかもしれない。
「…風邪引くよ」
そう言って私は、彼の方に自分の傘を差し出す。
彼は困ったように無言で私を見上げる。
まるで、その表情は虎に食べられそうになっている兎の様だった。
それはまるで、昔の私のようだった。
すると…
「ぐぅ~…」
彼のお腹が鳴った。
それも、気の弱そうな音が…
「…これ、ほら」
私は彼にパンを差し出した。
「…」
彼は無言で困ったように見上げ続けながらパンを返してきた。
「それ、お腹がいっぱいで食べられないからあげているだけだから。
ほら、気にしないで食べてくれない?」
そう言って私は、彼にもう一度パンを渡す。
彼は、目線で本当に良いの?と、首をかしげて聞いてきた。
良いよと伝えるように私は、頷く。
すると彼は、感謝の気持ちを表現するように、一礼してからパンを食べた。
彼女に渡されたパンの味は、あの時のパンと同じパンだというのに全く違った。
優しさに包まれるような、不思議な味。
まるで、これが幸せだと伝えてくるようで…
俺は、記憶を塗り替えるように、チーズチョコトーストと呼ばれる、コンビニで売られている人気のパンを食べきった。
『…あのさ、どうしていつもこんな所に居るの?』
私は、彼がハムスターの如くちょびちょびと食べ進めていき…パンを食べ終え、少し落ち着いたであろう頃を見計らってそう聞いた。
『……』
しかし、彼は待てど暮らせど無言だった。
『話したくないなら良いよ…只、一人なのは同じだね』
『同じ…?』
『うん、同じ』
俺の問いかけにそう答える彼女を横から見た。
その横顔はどこか寂しそうで、どこかあの人に似ていた。
『似てる…』
『うん、そうだね』
意味の違う似ていると言う単語が二人の間で交わされた。
そんな二人の横顔を、晴れたばかりの雲の隙間から溢れてきた夕日が照らす。
『ごめん、そろそろ帰るね』
彼女が去ろうとする。
『…そっか…さようなら』
俺は、どこか言い慣れてしまった台詞を口にした。
すると…
『サヨナラは悲しいからまたねにしよう
どうせまた明日来るんだから、また、ね?』
その言葉にどこか嫌な慣れを少し消された俺は、少し懐かしい気もする幸せさを噛み締めながらも、只無言で頷くしかなかった。
(明日が楽しみなんて、何時ぶりだろ…)
そして、俺はどこか寂しそうな彼女の背中を見送ったのだった…
既に会っている方は今晩は。
初めましての方は初めまして。
どうも、十六夜零です。
こちらの小説は、不定期の更新を予定しています。
なので、時間が空いたらちょっと更新、というレベルなので、即続きを載せられる訳ではありませんが、良ければ末永く宜しくお願い致します