本編
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※作中【モブ複数】のセリフはガヤみたいな感じなので沢山いてくれたほうが助かります。
※複数人で同時に言うセリフはなるべく合わせてほしいですが、合わなくても大丈夫です。
※「ルビ:煙草を吸いながら」「ルビ:煙草を咥えながら」は煙を吸ったり吐いたり煙草を加えながら喋ったりして頂けると雰囲気が出ます。
※フランクはリアス役の方推奨の兼役ですが、出来る男性の方がやって頂いても構いません。
【配役表(♂6:♀1:不問1)】
①ミハエル♂
②シルヴェスター ♂
③リチャード♂
④クラリス♀
⑤ローガン♂
⑥サシャ♂
⑦パク ♂♀
⑧リアス♂
◾︎本編
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シルヴェスター→ナレーション
サシャ→モブA
パク→モブB
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ナレ「ここはアメリカにあるとある路地裏。1人の女性が息を切らし2人の男性から逃げていた」
モブA「くそっ!!あのアマどこ行きやがった!!」
モブB「手分けして探すぞ!!お前はあっちを探せ!!」
モブA「分かった!」
ナレ「辺りを見渡し2人の気配が無いことを察知した女性は息を整え一息つく」
クラリス「はぁ…はぁ…はぁ…こ、ここまでくればもう大丈夫ね…」
ナレ「息切れていた彼女はゆっくりと呼吸を整えた」
クラリス「…ここで捕まるわけにはいかない…これを早く世間に公表しなきゃこの街が大変なことになる…」
ナレ「クラリスが行動を開始した瞬間とある男に出くわす。彼女はその顔に見覚えがあった。その男はタバコを吸いながらニヤついた顔で彼女を見つめていた」
リアス「よぉ、鬼ごっこは終わりだ嬢ちゃん」
クラリス「あんた…幹部の…」
リアス「おぉ、俺の顔を覚えてくれてるなんて嬉しい限りだねぇ」
クラリス「…リアス・ロッシ。マフィア『エルドラド』幹部会の長。マフィアなのに殺しが嫌いで今まで殺しをせずに持ち前の頭だけで幹部にまで上り詰めた男。命令はなんでも受けるが殺しの命令だけは絶対に受けない事から付いたあだ名は『ロッキー・ロッシ』」
リアス「はっはっはっは。随分と俺のことを知っているようだねぇ」
クラリス「そんなことはどうでもいいわ。それで、そんな『エルドラド』の幹部様が直々に来たってことは…」
リアス「そう。君が大事そうに持ってるその重要書類が目的だ。さぁ、これからどうする気だい?一流記者のクラリスお嬢ちゃん?」
クラリス「!?ど、どうして私の名前を!?」
リアス「どうして??はっはっはっは。どうやら緊張しすぎて頭が回っていないようだ。なぁ、嬢ちゃん。俺らはマフィアだぜ?それくらいの情報手に入れてないとでも??それに、君の記事は前々から見ていたしバッチリと顔出しもしているからねぇ...知ってたさ。そんな有名人のお嬢ちゃんだ。居場所を突き止めるのなんてコーヒーを淹れるくらい簡単だったぜ」
クラリス「そういうことだったのね。それで、どうするつもり?この書類を手に入れて私を殺す?」
リアス「ふっ、おいおい、さっきお嬢ちゃんが自分の口で言ってたじゃないか。俺は殺しが嫌いなんでね。その書類を手に入れたら君に対して何かするつもりはないよ…少なくても俺はね」
クラリス「…どういうこと?」
リアス「俺の任務はその書類を取り返すことだけ。それ以外は管轄外だ。だがまぁ、もし仮にお嬢ちゃんがこの場から逃げられたとしても今度は別の奴らが君のもとへやってくる。その後は...分かるね?」
クラリス「…ええ」
ナレ「リアスはタバコを吸い終えるとポケットから携帯灰皿を取り出し吸殻を中に入れる」
リアス「...だが、まぁ素直に書類を渡してくれれば幹部の特権だ。お嬢ちゃんを殺しはしないしさせるつもりもない。絶対にね。そこだけは約束しよう」
クラリス「噂通りマフィアとは思えない言動ね」
リアス「あぁ、よく言われるよ」
ナレ「リアスがニヤリと笑った瞬間クラリスを追いかけていた2人の部下が合流してきた」
モブB「あっ!!お前こんなところにいやがったのか!!おい!こっちだ!!」
モブA「はぁ...はぁ...くそっ!手間かけさせやが...って...ロ、ロッシさん!!」
リアス「あぁ?お前ら今来たのか?流石に遅すぎ」
モブA「いや、この女が思った以上に素早くて...」
モブB「で、でもアンタがここに?」
リアス「念の為だよ念の為。はぁ...確かにお嬢ちゃんが素早かったのかもしれねぇが見失ったのはお前らがトロかったからだろ?」
モブB「す、すいません」
モブA「お、仰る通りです」
リアス「はぁ...さて、とんだ邪魔者が入っちまったが...返答やいかに」
クラリス「…答えはノーよ。この資料は絶対に渡さない。私の命を懸けてでも守らなきゃいけない価値がある」
リアス「…そうか。そいつぁ残念だ。そしたら力づくで奪わなきゃいけなくなるなぁ。おい、あとは任せる」
モブA「えっと、任せるとは?」
リアス「お前ら察しが悪いなぁ。だからこのお嬢ちゃんの後始末だよ。俺は殺しは勿論暴力も嫌いなんだ。それくらい分かるだろ?」
モブA「あっ、はい...」
リアス「...はぁ、気絶させるだけでいい。ただし、絶対殺すんじゃねぇぞ」
モブA「わ、分かりました!!」
モブB「ってぇことだ。俺らも正直女をボコすのは気が引けるが上からの命令だ。悪く思うなよ。よし、やっちまうぞ!!」
クラリス「本格的にマズくなってきたわね...ど、どうしたら...」
ナレ「そういって部下たちはクラリスにジリジリと歩み寄ってきた…その時だった」
ローガン「待ちな」
モブA「あぁん?なんだおっさん??」
モブB「誰だか知らねぇが、痛い目見たくなかったらとっとと失せな!!」
ナレ「4人の前に現れたのは屈強そうな壮年の男だった。その男を見てリアスの表情が変わる」
リアス「!?あ、アンタは…」
ローガン「ようリアス。相変わらず殺しはしてねぇみてぇだな」
リアス「...ふっ、勿論さぁ。それが俺の信条なんでねぇ」
モブA「...え?リアスさん?」
モブB「このおっさん知ってるんですか??」
リアス「あぁ、ちょっとな。いやぁ、それにしても、まさかこんなところでアンタに会えるとは思いもしなかったよ。ところで、何でこんなところに?もしかしてそのお嬢ちゃんの護衛とか?」
ナレ「壮年の男は煙草に火を付け、煙草を咥え煙を吐きながらリアスからの質問に答えた」
ローガン「いいや、たまたまだよ。道を歩いていたら路地裏で声がしたんで行ってみたら偶然見覚えのある奴が部下を引き連れて1人のお嬢ちゃんと何か話してた。で、話が進むにつれお前の部下がか弱い女の子相手にジリジリと近づいていくところを見てこりゃあいかんと思って声を掛けた。それだけさ」
リアス「へぇ。真実かどうかは置いておこう。で、俺たちをどうする気だい?」
モブA「お、おい...俺らどうしたら...」
モブB「俺らの目的はあの資料だ。手に入れないと大変なことになる」
モブA「あぁ、そうだな...」
ローガン「いいや。なんもしねぇさ」
リアス「…は?今なんて…」
ローガン「だから、何もしねぇって。言ったろ?俺はたまたま居合わせただけだってなぁ。でも、このお嬢ちゃん。お前が動くってことぁ結構な重要人物なんだろ?」
リアス「…ああ」
ローガン「へぇ、なるほど」
ナレ「壮年の男はそう言うと煙草を指で持ち視線を女の方に向け、ジーッと見つめた」
クラリス「な、何よ...」
ローガン「うーん…よし決めた。今の発言は撤回。何もしねぇって言ったのはナシだ」
リアス「...どういう意味だい?」
ローガン「そのままの意味だよ」
ナレ「そして男は視線をリアスに向け、煙草の煙を吐きながらこう言い放った」
ローガン「なぁ、リアス。このお嬢ちゃんを見逃しちゃあくれねぇか?」
ナレ「男の発言を聞き、リアスの部下2人は咄嗟に強く反発した」
モブA「はぁ?おいおっさん!テメェ何言ってんだ!!」
モブB「そんな頼みリアスさんが飲むわけねぇだろ!!寝言は寝てから言え!!」
ローガン「それはお前らが決める事じゃねぇだろ?」
モブA「何だと!?こんなおっさん俺らがぶちのめしてやる!!行くぞ!!」
モブB「あぁ!!」
リアス「ちょっと待て!!その人相手にお前らが...」
モブA「はああああああ!!!」
モブB「おおおおおおお!!!」
ナレ「リアスの助言を聞かずに部下は男に向かって殴りかかりに行った」
ローガン「おうおう最近のガキは威勢がいいなぁ...だが...」
ナレ「ローガンはそういうと指で挟んでいた煙草を弾いた後、部下のうちの1人に蹴りを、そしてもう1人の胸ぐらをつかみそのまま背負い投げを掛けた」
モブA「ぐあっ!!」
モブB「がはっ!!」
ローガン「10年...いや100年経ったところでお前らにこの俺は倒せねぇよ」
クラリス「す、凄い。この人一体何者なの??」
ローガン「ふぅ。ちょっと身体が鈍っちまったか。こりゃあ後で鍛え直しだな。さぁて、残りはお前だ、リアス」
リアス「ははは、流石だよ」
ローガン「もう一度聞くぞリアス。この嬢ちゃんを見逃しちゃあくれねぇか?もし見逃してくれたら…そうだなぁ…酒を奢ろう」
ナレ「男の意外な提案にクラリスは驚き、リアスは笑った」
クラリス「はぁ!?」
リアス「ふふふふふ…あっははははははははははは!ははははは!!はぁ…いやぁ、こんなに大笑いしたのは久しぶりだ...ふぅ、分かった。見逃すよ。その代わり!ちゃぁんと!酒奢ってくださいよ」
ローガン「あぁ、約束する」
クラリス「ちょ、ちょっと待って!本当にそれで見逃してくれるの!?それにこの人は一体…」
リアス「あぁ?この人か?この人は…(ローガンの顔を見る)あぁ…えっと…アレだ。俺の昔からの知り合いさ。仕事で何回も世話になっててな」
ナレ「ロッシの知り合いでありクラリスの前に突然現れたこの男性はローガン・ディールス。謎が多い人物だが性格は陽気さと豪快さを兼ね備えている。現在はタクシードライバーをしている」
ローガン「そういうことだ嬢ちゃん。ここはコイツのご厚意ってやつに甘えようじゃねぇか」
リアス「と、言う訳だ。そろそろ俺は帰るぜ」
ローガン「あ、あぁ。ありがとな」
リアス「ふっ、なぁに昔のよしみだ。あの時の恩返しってことで...(倒れてる部下に目を向け)あ、そうだ。そこの馬鹿2人はそのまま寝かしておいてやってくれ。どうやら凄く疲れてるみてぇだからなぁ。そんじゃあな」
ナレ「そしてリアスがゆっくりとその場を後にした。リアスの姿が見えなくなるとローガンはゆっくりと口を開いた」
ローガン「さてと、お嬢ちゃん。大丈夫かい?」
クラリス「え、ええ。助けてくれてありがとう」
ローガン「いいってことよ。あ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺はローガン・ディールス。しがねぇタクシードライバーさ。よろしくな」
クラリス「私はクラリス。記者をやっているわ」
ローガン「知ってる。さっき聞いてたからよぉ」
クラリス「そう…だったわね」
ローガン「さて、お互い自己紹介が終わったところで1つ聞かせてくれ。アンタ、何でアイツらに狙われてた?」
クラリス「…それは…この書類が原因よ」
ローガン「書類?」
ナレ「クラリスはカバンに入っている書類を取りだした」
クラリス「この書類には重要なことが書かれているの。それをテレビ局に持っていこうとしたら…」
ローガン「へぇ…テレビ局に持って行って大々的に公表したいくらいの代物ってわけか」
クラリス「ええ。でも、今度またアイツらが来たら…」
ローガン「あぁー…それなら、1ついい所を知ってるぜ」
クラリス「いい所?」
ローガン「あぁ。そこに行けば何とかなるかもしんねぇなぁ」
クラリス「本当に?」
ローガン「ああ。そこの常連客である俺が保証する」
クラリス「…分かった。連れってって」
ローガン「OK。んじゃあ付いてきな」
ナレ「ローガンが歩き出した瞬間、クラリスが後ろから声を掛ける」
クラリス「待って」
ローガン「あぁん?」
クラリス「そこってどんな所なの?」
ローガン「ふっ…なぁに。煙草屋さ」
クラリス「煙草屋!?今のご時世に煙草屋って…」
ローガン「まぁ、行ったら分かるさ」
ナレ「ニッコリと笑いローガンは足早に歩きだした」
クラリス「あっ、ちょっと!待ちなさいよ!!」
ナレ「彼女達がいるのはアメリカにある都市『ベイラス』女性記者クラリスが煙草屋と聞いて驚いたのには訳がある。アメリカにはとある法律が執行されている。その法律の名は『排煙令』内外問わず煙草の販売・喫煙・所持・輸出入が全て禁止されている。そのため、各地の煙草屋は廃業を余儀なくされた。そんな中、まだ営業を続けている店があった。その店の名は『Black Stone』。この店が営業出来ているのには1つの理由がある。これは煙草屋を営む3人の男性の物語である」
ミハエル「煙草と硝煙の香り」
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リアス→ナレーション
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【Black Stone店内】
ナレ「2人は煙草屋【Black Stone】に着きドアを開けて入店した」
ミハエル「いらっしゃいませ」
ローガン「よぉ、ミハエル。商売繁盛してっか??」
ミハエル「やぁ、ローガン。ぼちぼちだよ」
ローガン「そうか。まぁ、ここはちと特殊だからなぁ!しょうがねぇか!がっはははははは!!」
ミハエル「ふっ。(後ろのクラリスに気づき)おや?ローガン後ろの女性は…」
ローガン「あぁ、こいつぁ…」
クラリス「こ、こんにちは。私の名前はクラリス。記者をやっています。とある事情があってローガンさんに連れてきて貰いました」
ミハエル「これはご丁寧に…私は『Black Stone』店主のミハエル・ヴァンデッタです。どうぞお見知りおきを」
クラリス「よ、よろしく」
ローガン「こいつとはたまたま知り合ったんだけどよぉ。どうもお困りのようなんでな。お前らなら何とかしてくれるだろうと思ってなぁ」
ミハエル「なるほど…では、奥の部屋で話を聞こう。それではこちらに」
ナレ「ミハエル・ヴァンデッタ。煙草屋『Black Stone』の店主。元陸軍出身で退役前の階級は少尉。常に冷静沈着で適切な指示を下す。淡々とした喋り方でテンションが上がることはほぼない負けず嫌いな男である。体つきがよく黒いスーツとオールバックが特徴である」
クラリス「あの、ミハエルさん。話の前に1つ質問があるのだけど、いいかしら?」
ミハエル「何かね?」
クラリス「今のご時世、煙草屋なんてやっている店は私の知っている限りここだけなんだけど、どうして営業を続けていられているのかしら?」
ナレ「クラリスの話を聞いてミハエルは眉をひそめた」
ミハエル「ん?おいローガン、もしかしてまだ彼女に説明していないのか?」
ローガン「ああ。俺が説明するよりもお前らから直接してもらったほうが手っ取り早いと思ってな」
ミハエル「そうか、分かった。そしたら説明してあげよう。付いてきたまえ」
クラリス「ええ」
ミハエル「ローガンはここに残ってくれ」
ローガン「あいよ」
ナレ「そういってミハエルは鍵が掛かっているドアを開け彼女を地下室へ案内した」
ミハエル「ここだ。入りたまえ」
クラリス「!?こ、ここは」
ナレ「彼女が見た光景。それは厳重に管理された銃などの武器が壁一面に並べてあり、その奥には試し撃ちが出来るスペースがあった」
ミハエル「ここ『Black Stone』には煙草屋ともう1つ武器屋の顔も持っているんだ。我々が取り扱っているのは普通のガンショップじゃ中々手に入らない珍しいものばかりだ。それに加えて現地に直接行かなきゃ買えない物も揃っている」
クラリス「…正直驚いたわ。でも、よくここまで隠し通せているわね。どうして…」
ミハエル「別に隠し通しているわけじゃない。我々が今も営業を続けていられている理由が一つある」
クラリス「理由?それって…」
ミハエル「あぁ。それは…」
シルヴェスター「俺らの店には強力な後ろ盾があるからさ」
ナレ「そういって奥から大柄な男性が出てきた」
クラリス「あ、貴方は…」
ミハエル「あぁ、彼はこの店の従業員であるシルヴィー・ハンコック。この武器屋スペースの管理をしている」
シルヴェスター「シルヴェスターだ!おい、ミハエル。今度そのあだ名で呼んだらただじゃおかねぇからな」
ミハエル「すまん」
シルヴェスター「と、いうわけだ。よろしくな嬢ちゃん(手を差し出す)」
クラリス「ええ。よろしく。」
ナレ「そういって2人は握手を交わした。彼はシルヴェスター・ハンコック。煙草屋兼武器屋『Black Stone』の従業員。元傭兵で様々な地を転々としていたため世界情勢に関しては1番詳しい。傭兵時代の2つ名は「死神」。身体中には大量の傷跡があり筋骨隆々。長髪で無精ひげを生やしている」
クラリス「で、さっき言っていた後ろ盾って…」
シルヴェスター「あぁ…この『ベイラス』には沢山の荒くれ者共がいてなぁ、マフィア・ギャング・娼婦…上げたらキリがねぇ。俺たちはそういうやつら…主に裏社会の人間に武器を売っている。だが、こういう商売をやっているともれなく政府が動くんだがなぁ…そうならないって事は…何故だが分かるか?」
クラリス「ま、まさか…」
シルヴェスター「そう。アメリカ政府の奴らもウチの店を贔屓にしてるって事さ。つまり、この店の存在を揉み消してる」
クラリス「ど、どうして…」
シルヴェスター「どうしてって言われても客にはそれぞれ色んな理由がある。たとえ政府の奴らでもな。そんな連中でも俺らみてぇな裏社会に首を突っ込んでる人間をアテにしねぇと上手くやっていけねぇのさ。だから、煙草屋に関して目を瞑ってもらってるって訳だ」
クラリス「……」
ミハエル「記者として表のニュースを取り上げてる君には少々刺激が強すぎる話だろうが、彼が言ったことは全て事実だ。これが我々が今も営業を続けていられる理由だ。分かってもらえたかね?」
クラリス「…分かったわ。貴方がたを信じます」
ミハエル「そうか。それを聞いて安心したよ」
シルヴェスター「ところでよぉ、その嬢ちゃんは俺らに一体何の用なんだ?」
ミハエル「あぁ、お前にはまだ言ってなかったな。なんでも、彼女が私達に頼み事があると」
シルヴェスター「へぇー頼み事ねぇ…」
ミハエル「とにかく、早く上に戻ろう。ローガンを待たせている」
シルヴェスター「あぁん?何だよローガンのおっさん来てんのかよ」
ミハエル「あぁ。彼女はローガンの紹介でここに来た」
シルヴェスター「なるほどな」
ミハエル「では行こう」
ナレ「ミハエル・クラリス・シルヴェスターの3人が煙草屋スペースに戻ってくるとローガンが誰かと会話している声が聞こえた」
リチャード「最近、前職よりデスクワークが多くなってきてねぇ。もう腰が痛くて痛くて…」
ローガン「がっはっはっは!お前ももう歳だな。早く医者行って治してもらえ」
リチャード「そうするよ。(3人に気づく)あっ、お帰り。彼女が例の?」
ミハエル「あぁ」
ナレ「眼鏡をかけている細身の男はクラリスの存在に気付くと煙草を灰皿に押し付け、腕を伸ばした」
リチャード「初めまして、僕はリチャード・スミス。この店の従業員さ。よろしくね」
クラリス「よ、よろしく」
ナレ「そして2人は握手を交わした。リチャード・スミス。煙草屋兼武器屋「Black Stone」の従業員であり2人の参謀役。主に煙草や武器の受注・情報系統・相手方とのネゴシエーション担当。元刑事のため情報収集が得意でハッキングやプログラミングなどのPC作業が出来る。そのため情報屋の友人が多い。短髪でやせ型。黒縁眼鏡を掛けている」
ミハエル「よし、それでは本題に入ろう。クラリス、私たちに頼みたいこととは一体何かね?」
クラリス「えぇ。実はこの書類なんだけど…」
ナレ「そういって彼女は封筒の中から書類を取り出しミハエルに渡した」
ミハエル「随分と分厚いな…リチャード、中身を読んでくれるか?」
リチャード「はいよ。えぇっとどれどれ…」
ミハエル「リチャードが書類を読んでいる間に話を進めよう。ローガンから話は聞いたのだが何故『エルドラド』の連中に追われていたのかね?もしかしてあの書類の中身と何か関係が…」
クラリス「えぇ。この書類は…」
リチャード「な、何だこれは!?」
ミハエル「意外と早かったな」
リチャード「全国速読選手権準優勝を舐めてもらっちゃあ困るよ!ってそういう話じゃなくて!!何で君がこんな重要書類を持っているんだ!?」
ミハエル「どういうことだ?」
リチャード「これは…『エルドラド』の現ボス、サシャ・ロマーノフが過去に行ってきた隠蔽工作・各国の重要人物との密会に関する資料だ!!」
シルヴェスター「おいおい『エルドラド』のサシャ・ロマーノフっていえば相当のクズって噂の野郎じゃねぇか」
ナレ「『エルドラド』とはベイラスを牛耳るマフィアである。構成人数は約800人。麻薬・人身売買・殺人はもちろんのことベイラスに存在している店のほとんどを経営している。昔はフランク・ロマーノフという男がボスをやっていたが、今は息子のサシャ・ロマーノフが後を継いでいる」
リチャード「それに最近はベイラスだけじゃ飽き足らず他の国と同盟を組んで勢力を拡大しようとしているって噂もある…もしかしたらこの書類1つで沢山の国が動くことになる…何故君がこんな重要書類を持っているんだい!?」
クラリス「この書類は、私達記者の訴えよ」
ミハエル「訴え?」
クラリス「えぇ。私達は色んな国を回って日々取材をしているわ。その中で『エルドラド』の存在とボスであるサシャ・ロマーノフの行動は様々な記者から噂が流れていたの。中には聞いただけで吐き気がするものもあった。でもその確証は何処にもない。ある時、1人の男性記者が『エルドラド』についての記事を書こうとした。だけど、その1週間後、彼は何者かに殺されたわ。犯人は1発で『エルドラド』の連中だって分かった。多分知っちゃいけないことを知ったんだと思う。それを聞いた私たちは恐怖感に見舞われた…でも、サシャ・ロマーノフが起こしてきた悪行を全世界の人たちに知ってほしかった。今は1つの街を牛耳っているマフィアに過ぎないけど、もしかしたら今後世界を飲み喰らってしまう可能性だって0じゃない。そう思った私たち記者団は水面下で『エルドラド』やサシャ・ロマーノフについて調べた。それからはというもの私達はいろんな人達に話を聞きに行ったわ。中には危険な賭けをしたものもあった。それでも私達は情報を探りに探った。その結果がこれよ」
ミハエル「…そうか。よく頑張ったね」
クラリス「えぇ。ありがとう」
ナレ「するとローガンは髭を触りながらリチャードが持っているその書類をじっと見つめる」
ローガン「…なぁ、リチャード。その書類俺にも見せちゃあくれねぇか?」
リチャード「...って言ってるけど?」
クラリス「構わないわ」
ローガン「おう。ありがとな嬢ちゃん」
[SE:ページをめくる音]
ローガン「ほう…なるほどなぁ。確かにこいつぁすげぇな。よくここまで調べたもんだ。なぁ、お嬢ちゃん…この書類に書いてあることは全て本当さ」
クラリス「た、確かにその書類は全部有力な情報筋から貰った本当の情報よ。でも、なんでそんな自信を持って言えるの!?」
ローガン「このページに書いてある【自分の邪魔になる当時の『エルドラド』幹部数人を隠蔽工作を使ってクビにした】ってあるだろ?」
クラリス「えぇ。それが何か…?」
ローガン「その幹部の1人ってぇのが…この俺さ」
クラリス「…え?」
シルヴェスター「お、おっさん!!あんたぁまさか…」
ローガン「あぁ。俺は『エルドラド』の元幹部で前ボス、フランク・ロマーノフの腹心だった」
リチャード「そ、そうだったんだ…今年1番の驚きだよ」
ミハエル「何故今まで黙っていたんだ?」
ローガン「黙ってたって言われても聞かれなかったからな。それに言いふらすようなことでもねぇしな」
クラリス「じゃあ、あのリアス・ロッシと知り合いだったのは」
ローガン「あぁ、俺はあいつの教育係だったからな。入りたての時はよく一緒に組まされてた。アイツが言っていた昔世話になったってぇのは多分その時の話だろうよ」
シルヴェスター「おい、お前らあの『ロッキー・ロッシ』に会ったのかよ」
ローガン「会ったっていうか、お嬢ちゃんがリアスに襲われそうになっていたところを助けたっていうか…見逃してもらったってぇわけさ」
ミハエル「見逃した?『エルドラド』の幹部が?」
ローガン「アイツぁ普通の幹部とはちげぇからなぁ。酒奢るって言ったら見逃してくれたよ。でもまぁ、アイツもサシャ・ロマーノフに対して何か思うことがあるんだろうな。そうじゃなきゃ見逃しちゃあくれねぇよ」
リチャード「なるほどねぇ。で、話戻るけどさ。ローガンは何で隠蔽工作ごときでクビになったんだい?」
ローガン「…当時担当してた仕事である部下がかなりデケェヘマをしたんだが...そのヘマを俺のせいにされたんだよ」
リチャード「ボスに抗議したの?」
ローガン「そりゃあ抗議したさぁ。でもなぁ、ボスは認めちゃあくれなかった。ヘマをした当の本人も既にサシャの手先になってて俺に罪を擦り付けてきた。しかも一丁前に偽装した証拠書類まで提出してきてなぁ。それが何故か通って俺はクビになり遠くの国に5年間飛ばされたってぇわけさ。そしてもう大丈夫だろうってことになり去年俺はここに戻ってきてその1か月後にお前らと出会ったのさ」
シルヴェスター「ふっ、反吐が出る話だぜ。ボスも結局はおっさんを信じなかったってわけじゃねぇか」
ローガン「さぁなぁ。ボスも何か理由があったと思うが…こればっかりはさっぱりわからねぇ」
シルヴェスター「まぁ、そうだろうなぁ」
ミハエル「それで、だ。君はこの書類をテレビ局に持って行って公表したい…そうだったね?」
クラリス「えぇ。そこで、貴方がたに頼みたいのはテレビ局に行くまでの護衛をお願いしたいの」
シルヴェスター「護衛ねぇ…1人で行ったらいつ『エルドラド』の連中に襲われるか分からねぇからってことか?」
クラリス「そういうことよ…私は何としてもこの書類を全世界に公表したい。この世界を『エルドラド』の連中の好き勝手にさせたくはない。だから、お願い。私を守って欲しいの」
シルヴェスター「…こう言ってるけどどうするよ?ミハエル??」
ミハエル「…分かった。その依頼引き受けようじゃないか」
クラリス「あ、ありがとう。頼りにしてるわ」
リチャード「そうとなっちゃあ早速作戦の打ち合わせをしないとね」
ミハエル「そうだな。まずは、クラリス。君は作戦が終わるまでの間ここに住んでもらう」
クラリス「え?なんで??」
リチャード「何でって君の安全を確保しておかないと。それにウチの3.4階は事務所兼居住スペースになっていてゲストルームもある。あと、念のためちゃぁんとドアに鍵を掛けられるから寝込みを襲われる心配はないよ」
クラリス「寝込みって…まさか襲う人がいるの?」
リチャード「いやいや、そんなやつはいないよ。一応僕とミハエルは既婚者だしシルヴェスターは『女・子供は身も心も傷つけない』が信条だから。念のため言ってみただけさ」
クラリス「…それならいいけど」
ミハエル「よし、決まりだな。そしたら、君は一度家に帰って準備をしてきたまえ。でも念のためローガンとシルヴェスター。申し訳ないが彼女に付いてやってくれないか?」
シルヴェスター「あぁいいぜ」
ローガン「勿論」
ミハエル「よし。そしたら今から1時間後までに戻ってきてくれ。その間私とリチャードが作戦を立てておく」
シルヴェスター「あいよ。んじゃ行くぞ2人とも」
ミハエル「それじゃあまた後で」
クラリス「えぇ…行ってきます」
リチャード「行ってらっしゃい」
ナレ「そういって3人はクラリスの家に行き残った2人は作戦を立てることになった。その頃『エルドラド』の本部では…」
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ナレーション→クラリス
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【エルドラド本部サシャの部屋】
サシャ「おいパク」
パク「はい、なんでしょうか?」
サシャ「例の書類と女はまだ見つからないのか?」
パク「はい。未だ奪還に行ったロッシとその部下たちから連絡が来ておりません」
サシャ「そうか。チッ、アイツらめ、女相手に何手こずっているんだ」
パク「部下たちはともかくロッシは元々殺しが嫌いな男です。もしかしたら何かやっているのかもしれません」
サシャ「ふん。どうだかな」
ナレ「サシャ・ロマーノフ。ベイラスを牛耳るマフィア「エルドラド」の現ボス。前ボスフランク・ロマーノフの息子。昔は父親を尊敬している真面目で爽やかな好青年だったのだがとある理由で人間不信になってしまい、それからはというもの人に対して平気で嘘をつき・裏切り・自分の立場が常に一番上になれるのならば隠蔽工作でも何でもやるという性格になってしまった。そしてサシャの隣にいるのはパク・リョンハ。「エルドラド」の幹部でサシャの腹心。性格は寡黙でクール。少し妖艶さも持つ。少年時代、中国で殺人ロボットのような教育をされてきた過去を持っており、その際視察に訪れていたまだ好青年だったサシャと出会い身柄を預かることになり現在に至る。2人が話しているとドアをノックし1人の男が入ってきた。」
リアス「うーっす、失礼しあーっす」
サシャ「ふん、やっと戻ったか」
リアス「連絡が遅くなってしまって申し訳ないですぅ」
サシャ「で、書類と例の女は?」
リアス「えっとぉ、大変申し訳ないんですがぁ…実はぁ...逃げられちゃいましてぇ」
サシャ「何?逃げられただと?」
リアス「いやぁ、追い詰めたんですが途中で邪魔が入ってしまって」
サシャ「邪魔だぁ!?」
リアス「えぇ。その邪魔者がまぁとんでもなく強くて…あ、一応応戦はしたんですけどねぇ?…んで、見事に腹にパンチ入れられてその場で気絶しちゃってぇ…その間にまんまと逃げられちゃいましたぁ。いやぁ、面目ないっす」
パク「ロッシさん…その話本当なんですか?」
リアス「あぁ、本当さ…まさかこの俺が嘘をついているとでも?」
パク「いや、決してそう言う訳では」
リアス「ふっ、そうかい。ならいいんだけどよぉ」
サシャ「ふん。まぁ、いい。とにかく引き続き捜索を続けろ。いいな?」
リアス「りょーかいです」
サシャ「話は以上だ。下がれ」
リアス「それじゃあ失礼しあっす」
ナレ「リアスはドアを開閉し部屋から出ていった。それを見送ったサシャはパクに声を掛ける」
サシャ「おい、パク。お前に頼みたいことがある」
パク「何でしょうか?」
サシャ「この女について詳しく調べてこい。いいな?」
パク「畏まりました。それでは失礼致します」
サシャ「...何としてもあの書類を奪ってやる…どんな手段を使ってでもな」
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ナレーション→リアス
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ナレ「時間は夜10時ごろ。『Black Stone』では作戦会議が終わり各々事務所兼居住スペースで自由に過ごしていたり店で仕事をしていた。クラリスは居住スペースにいた」
クラリス「作戦実行は2日後か…頑張らなくちゃ…」
ナレ「クラリスがそういうと、脱衣室のドアが開いた」
シルヴェスター「あぁ~さっぱりしたなぁ…って、あ。何だいたのか嬢ちゃん」
クラリス「ちょ、ちょっと!上着なさいよ!!」
シルヴェスター「何言ってんだよちゃんとズボン履いてるじゃねぇか」
クラリス「それとこれとは話が違うのよ!…って貴方…それ…」
シルヴェスター「あぁ?何だよ人の上半身見て…お前もしかして俺みてぇなムキムキが好きなのか??」
クラリス「ち、違うわよ!!そうじゃなくて…その傷…」
シルヴェスター「あ?この傷か?…こいつぁ一生取れない戦いの記録達さ」
クラリス「戦いの…記録…」
ナレ「そういってシルヴェスターは窓を開けた後、煙草に火をつけた」
シルヴェスター「あぁ。闘っては身も心も傷ついてそれが毎回続く。いつしかその悲しみや痛みを乗り越えて人は強くなるもんだ…なぁ、お前さんの戦地は何処だ?この社会だろ。場所や武器は違えど人ってぇもんは毎日必ず何処かで戦争を繰り広げてるもんさ。そこに身を置くお前さんも俺と同じ立派な戦士だ。そう俺は思うぜ」
クラリス「そう…なのかしら。毎日同じような生活だったから。そう言われても自覚がないの」
シルヴェスター「今、自覚が無くてもいいさ。肝心なのはこれから自覚するかどうかだ。自覚したら、もしかするとお前さんの仕事の仕方も変わるかもしれねぇ。ましてや今持っている武器はミサイル並みのデケェもんなんだからよぉ…絶対成功させようぜ」
クラリス「…えぇ、ありがとう」
シルヴェスター「へへっ、いいってことよ。あぁ、ところでよぉ、お前さんの家族ってどんな人なんだ?」
クラリス「私の家族は母と祖父母だけ。母は生まれてからずっと女手一つで私を育ててくれた。こうして生きてこられたのもお母さんのおかげなの」
シルヴェスター「そう…だったのか。そうすると親父さんは?」
クラリス「…父のことは知らないわ。祖父母は父の事に関しては一度も話してくれなかったから…でも、母が一度だけ話してくれたことがあって…とても逞しくて私のことをいつも気にかけてくれる優しい人だったって言ってたわ」
シルヴェスター「…そうか。いい親父さんじゃねぇか。きっとお前さんのことも遠くから見守ってくれてると思うぜ」
クラリス「そう…だといいんだけど」
シルヴェスター「いや、きっとそうに決まってるさ…そういえばお前さん若い時の嫁に似てるな」
クラリス「え?奥さんいたの?」
シルヴェスター「…正確には嫁と娘がな。もう20年も会ってねぇし娘に至っては産まれた瞬間すら立ち会えてねぇ…」
クラリス「そうだったの…なんか悪いこと聞いちゃったわね」
シルヴェスター「いや、それを言うなら俺もお前さんに悪いこと聞いちまった。すまねぇな」
クラリス「気にしないで。ねぇ、もしかしてそのネックレスの中身って」
シルヴェスター「あぁ。嫁の…若い時の写真が入ってる」
クラリス「え!?なになにちょっと見せてよ!!」
シルヴェスター「嫌だよ。恥ずかしったらありゃしない」
クラリス「えぇ~なんでよ。ケチィ」
シルヴェスター「ケチもへったくれもあるか!嫌なもんは嫌なんだよ!!」
クラリス「そしたら!今回の作戦が成功した暁にはその中身見せてよね!!」
シルヴェスター「はぁ!?何でそんな話になるんだよ!?」
クラリス「いいから!!見せてよね!!それじゃおやすみ!!」
シルヴェスター「あ、おい!待てよ!!はぁ...ったく何でこんなことになっちまったんだぁ…?ま、いっか」
クラリス「ふふん、楽しみだわ」
ナレ「するとクラリスの携帯が鳴り始めた」
クラリス「誰かしら?こんな遅くに…非通知?はい、もしもし?」
ナレ「クラリスの応答に対し反応はなかった」
クラリス「もしもし?」
サシャ「…サシャ・ロマーノフだ」
クラリス「!?アンタ、何で私の番号を!?」
サシャ「なぁに、調べたら簡単に出てくるさ。そんなことはともかく…明日の正午我々のアジトに1人で来い。勿論例の書類をもってなぁ」
クラリス「そ、そんなの応じるわけがないじゃない!」
サシャ「そうか…そいつぁ残念だな。だが、もし来なかったら…お前の家族や友人・仕事仲間皆死ぬことになるぞ」
クラリス「!?…なんて卑怯なの」
サシャ「卑怯??はっ、最高の誉め言葉だな。俺は何としてもその書類を手に入れなければならない。どんな卑怯な手を使ってでもなぁ…さぁ、どうする?」
クラリス「…分かったわ。ただし、約束して頂戴。書類を渡したら他の人には手を出さないって」
サシャ「あぁ…約束しよう。アジトの居場所は後でメールを送ろう。それではまた明日」
ナレ「サシャが電話を切るとクラリスは携帯を握りしめ覚悟の表情を決める」
クラリス「…私が何とかしなくちゃ」
ナレ「翌日、つまり作戦決行の前日の午前11時55分ごろ。『Black Stone』店内にて」
リチャード「2人とも大変だ!クラリスがいない!」
ミハエル「何!?どういうことだ!?」
リチャード「分からない。それにあの書類も無いんだ」
シルヴェスター「アイツ…もしかしてあの後何かあったのか」
リチャード「あの後って??」
シルヴェスター「お前らが仕事している間、事務所でアイツと話してたんだよ」
リチャード「なるほどね。流石に1人でテレビ局に行ったわけじゃないよね?」
ミハエル「当たり前だろう。元々今回の依頼はテレビ局までの護衛だ。それに、あれほど作戦会議をしたのにそれを蔑ろにするような性格だとは思えない。そうなると…シルヴェスターと話した後誰かから連絡があった」
リチャード「誰かって…まさか」
ミハエル「あぁ。おそらくサシャ・ロマーノフからだろう。これは推測だが、書類を渡さないと身内の命はないと言われたんだろう」
リチャード「なんとも悪党らしいベタなセリフだね」
シルヴェスター「クソ…アイツ…なんで俺に相談してくれなかったんだ」
ミハエル「彼女は元々正義感と責任感が強い性格だ。自分が蒔いた種は自分で処理しなければならないと思ったんだろう」
シルヴェスター「はぁ…アイツの中での信念ってぇわけか。まったく恐れ入ったよ」
リチャード「それで、彼女が行った場所っていうのは…やっぱり『エルドラド』のアジトだよね」
ミハエル「あぁ。リチャード、アジトの場所は分かるか?」
リチャード「勿論。ここから車で10分程度の場所だよ」
ミハエル「よし。それじゃあ今からクラリス奪還作戦を実行する。シルヴェスターは装備の準備をリチャードはここに残って俺たちのサポートをしてくれ」
シルヴェスター「あいよ」
リチャード「りょーかい」
ナレ「3人が準備を進めようとしたとき、とある男が声を掛ける」
ローガン「待ってくれ」
ミハエル「ローガン…」
ローガン「俺も行く。いや、行かせてくれ...実は作戦会議の時、首を突っ込まないほうがいいと思って行かないことを決めてた。だが...家で何日か考えたとき気持ちが変わった。やっぱり俺はアイツ…サシャを一度ぶん殴らねぇと気が済まねぇ」
ミハエル「そうか。分かった。そしたらシルヴィー、ローガンに武器を貸してやってくれ」
シルヴェスター「OK。んじゃあおっさんこっちだ。付いてきな」
ローガン「あぁ。よろしく頼む」
シルヴェスター「あとお前は後でぶちのめす」
リチャード「そのあだ名もう慣れたら?」
シルヴェスター「うるせぇ!!黙ってろ!!」
ミハエル「準備出来次第すぐに向かう。40秒…いや、20秒で支度しろ!」
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リチャード→ナレーション
ミハエル→モブC
リアス→モブD
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ナレ「午前12時。クラリスは『エルドラド』のアジト内サシャの部屋にいた」
パク「サシャ様、クラリス様が参りました」
サシャ「おぉ、待っていたぞ。ようこそ我が『エルドラド』アジトへ。約束通り書類は持ってきたんだろうな?」
クラリス「勿論よ」
ナレ「そういってクラリスはサシャに書類を渡した」
サシャ「ふふ…確かに受け取った」
クラリス「さぁ、今度は貴方が約束を果たす番よ。今ここでもう一度仲間に手を出さないと約束しなさい」
サシャ「…ふふふふふふふ」
クラリス「何が可笑しいの!?早く誓いなさい!」
サシャ「くははははははは!!つくづく馬鹿な女だな。書類を手にした今約束を守る必要はなくなった」
クラリス「何ですって!?」
サシャ「言ったろ?どんな手を使ってでも奪って見せるってなぁ。おい、パク。その女を殺せ。その後にお前の仲間も殺す」
クラリス「!?…私を騙したのね!?どこまでも卑怯な男!!ホント最低だわ!!」
サシャ「吠えろ吠えろ。負け犬の遠吠えにはピッタリの言葉だ。さぁ、絶望しろ。お前の死に場所はここだ。おい、パク…やれ」
パク「…畏まりました」
ナレ「そしてパクはクラリスに銃口を向けた」
パク「女性相手に銃口を向けたくはないのですが、主の命令です。抗うことは出来ません」
クラリス「こんなところで…こんなところで私は…あぁ、何であの3人に相談しなかったのかしら…私ってホント馬鹿だな…」
パク「さようなら」
ナレ「パクが引き金を引こうとした。その時…」
モブD「な、何だお前ら!?うわぁっ!!」
サシャ「!?何事だ!!」
モブC「し、失礼します!!侵入者です!!侵入者が現れました!!」
サシャ「なにぃ!!おい、パク!!その女の始末は俺がする!!お前は応援に迎え!!」
パク「御意!」
サシャ「ふっ、お前を助けに来た連中か?だが、もう遅い。死ねぇ!!」
ナレ「その時、窓から何かが放り込まれた」
サシャ「今度は何だ!?」
ナレ「するとシューという音をしながら煙が吹き出て辺り一面が白い煙で充満する」
サシャ「何!?発煙弾だと!?ごほっごほっ!!」
ナレ「発煙で視界が遮られている間部屋に残っていた仲間が全員何者かによって殺され銃声と仲間が倒れる音だけが聞こえる」
モブ複数「ぐあっ!」「ごはっ!!」「うっ!!」
サシャ「な、仲間が…!?くそっ!!誰だ!!」
シルヴェスター「なぁに、ただの煙草屋さ」
サシャ「煙草屋…煙草屋だと!?」
シルヴェスター「あぁ。しかもとびっきりつぇえ煙草屋だ」
ナレ「そういうと煙幕が収まり徐々にその姿が明らかになっていく」
クラリス「シ…シルヴェスター?」
シルヴェスター「はぁ…まったく(マスクを外す)ホント世話のかかるお姫様だぜ」
サシャ「お、お前のその顔見たことあるぞ!?伝説の傭兵『死神』ハンコックだな」
シルヴェスター「ほう、俺の事知ってんのか」
サシャ「マフィアの世界でお前の顔を知らないやつはいない」
シルヴェスター「へぇー俺も随分とまぁ有名になっちまったもんだなぁ」
サシャ「引退後忽然と姿を消したと聞いていたが...お前のような奴が何故...?」
シルヴェスター「何故って?俺らの依頼人を救いにさ。さぁて、大人しく観念するんだな」
サシャ「死神と言えど昔の話。そんなお前がこの俺を倒せるとでも思っているのか??」
シルヴェスター「昔の話じゃねぇさ。俺は今でもれっきとした死神だよ」
サシャ「そのセリフ!!言ったことを後悔させてやる!!やれお前ら!!」
ナレ「そういうと部下たちが一斉に襲い掛かってきた」
シルヴェスター「クラリス!!お前は下がってろ!!」
クラリス「うん!」
モブC「はああああ!!!」
シルヴェスター「はっ!なんだぁ!?その殴り方は!?チンタラチンタラしてんじゃねぇ!!ぞ!!」
モブC「ぐあっ!!」
ナレ「そしてシルヴェスターはあっという間に部下たちをなぎ倒していった」
シルヴェスター「ふぅ。コレで全員か?チッ、なんだよ準備運動にもならなかったじゃねぇか」
サシャ「ば、馬鹿な。俺の部下たちが」
シルヴェスター「この部下たちクッソよえぇなぁ。もうちょい鍛えておいたほうがよかったんじゃねぇか?」
サシャ「あっ、ああああああああ!!!」
ナレ「サシャはその場から逃げようとするがシルヴェスターに止められた」
シルヴェスター「おいおい。ボスが逃げてどうすんだよ!!とんだチキン野郎じゃねぇか!!」
サシャ「ひいいいいいいいい!!!や、やめろ!!」
ナレ「そしてシルヴェスターはサシャが逃げないように気絶させた」
サシャ「うっ!!」
シルヴェスター「お前はそこで寝てろ...さてと、ミハエル達はどうなってっかなぁ」
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クラリス→ナレーション
サシャ→モブA
パク→モブB
----------------
ナレ「時は少し戻り、アジト下層部では激しい銃撃戦が繰り広げられていた」
モブB「そこだぁ!!殺せぇ!!!」
ローガン「くそっ!!これだけ敵が多いんじゃ上にも行けねぇ!!」
ミハエル「今頃シルヴェスターが上に行ってるはずだ!クソ、仕方ない…これを使うか!ふっ!!」
ナレ「ミハエルは何かを投げた。すると近くにいた敵の元に転がり落ちる」
モブA「ん?何だこれ??ってヤバイ!!グレネードだぁ!!早く逃げ…」
ナレ「敵の1人が叫んだ途端、グレネードが爆発し次々と他の敵が吹っ飛ばされた」
モブ複数「うわぁっ!!」
ミハエル「よし!大方片は付いたな。ローガン!!上に行くぞ!!」
ローガン「おう!」
ナレ「2人は階段を駆け上がり上の階へと到着する」
ミハエル「くそ!まだ居るか…ローガン!敵を殲滅しつつ一刻も早くサシャの部屋に行くぞ!!」
ローガン「!?ミハエルあぶねぇ!!」
ミハエル「なに!?」
ナレ「ミハエルの目元に銃弾が掠めて壁に被弾する」
ミハエル「危なかった…ありがとうローガン」
ローガン「いいってことよ...なぁんか只ならぬ匂いがすんなぁ…そこにいるのは誰だ!?出てきな!!」
パク「貴方がたをサシャ様の所に行かせるわけにはいかない」
ミハエル「アイツは…」
ローガン「パク・リョンハ。サシャの腹心だ…ここは俺がやる。お前は早くサシャの部屋に行け」
ミハエル「…ローガン」
ローガン「へっ、なぁに心配すんな。俺もすぐに追いつく。それに、新旧ボスの腹心同志だ。前々から
戦ってみたかったんだよ」
ミハエル「…分かった。ローガン…死ぬなよ」
ローガン「あぁ。お前もな」
パク「行かせない!!」
ローガン「させねぇよ!」
パク「くっ!!」
ローガン「おいおい、誰狙ってんだ。お前の相手はこの俺だ」
パク「ローガン・ディールス。前ボスの腹心が何故ここに」
ローガン「ちょっとサシャに用があってな」
パク「そうか。それなら、なおの事貴方を通すわけにはいかない」
ローガン「そうかい。だったら力づくで行かせてもらうぜ!!」
ナレ「そういうとローガンはパクに向かって殴りかかろうとするが拳を受け止められ、思いっきり捻られた」
ローガン「があああああああっ!!」
パク「私は昔、母国である中国で殺人ロボットとして育てられました。当時の私に心はなく教官と呼ばれる奴らの指示に従ってばかりでした。ある時、サシャ様が視察で施設を訪れたとき私をいたく気に入り多額の金を払い引き取って下さいました。それからはというもの私に様々な教育をして下さり無事人間としての心を取り戻すことが出来ました。今の私があるのは全てあの方のお陰。貴方がどんな目的で再びこの地へ足を踏み入れたのかは存じ上げません。ですが、サシャ様に仇なす者は全て排除します」
ローガン「へっ...そうかい...それじゃあ...やれるものならやってみな!!」
ナレ「そういうとローガンはパクに肘打ちを食らわせた」
パク「ぐっ!!」
ローガン「おー痛てぇなぁおい。さぁてと、反撃開始と行くか!!」
パク「ふぅ...来い!!」
ナレ「そう言うとパクは身構えローガンをグッと睨んだ」
ローガン「ほぅ?その構え...中国拳法か」
パク「ふっ...よく分かりましたね」
ローガン「昔闘ったことがあってなぁ」
パク「なるほど...しかし私は強いですよ?」
ローガン「へぇ?随分と自信があるようだな...こりゃあ楽しみだ」
パク「さぁ、何処からでも掛かって来なさい!」
ローガン「それじゃあ遠慮なく行かせてもらうぜ!!うおおおおおお!!!ふん!!」
パク「くっ!!」
ローガン「お前の過去がどうだったのかは正直知らねぇ!!だがっ!!お前が崇拝してるそのサシャ・ロマーノフって男はっ!!俺を含めた無害な奴らをっ!!全て騙してっ!!陥れたっ!!言わば悪魔だっ!!そんな奴を今でもお前はっ!!その過去の恩義ってやつだけでっ!!支持!!してるって言うのかあああっ!?」
パク「ぐあぁつ!!...くっ、貴方に...貴方に何が分かる!?」
ローガン「なに!?はえぇ!!」
パク「確かにっ!!サシャ様はっ!!私がお側にお付きになったあとっ!!まるで人が変わったように別人になりましたっ!!中にはっ!!私でさえもっ!!目を瞑らざるを得ないものも沢山ありました...ですがっ!!私はっ!!そんなサシャ様を!!今でもっ!!そしてこれからもっ!!お慕い申していますっ!!その為にはっ!!私もサシャ様と同じ悪魔になりましょう!!」
ローガン「がはっ!!...ふっ、はははははは...へぇ、そうかい。お前、良いやつだな...だがなぁ、マフィアには向かねぇよ」
パク「なに?」
ローガン「お前は"ただの"良いやつだ。そんなんじゃあいつまで経ってもマフィアになんかなれねぇ。純粋に優しいだけじゃあダメだ。時には悪魔にならなきゃいけねぇ時だってある。今の話を聞く限りだとお前はその悪魔にすらなれねぇんだよ。ずっと天使のままだ」
パク「...私が良いやつ?優しい?天使??はっ、馬鹿馬鹿しい。貴方がそう思うならそれで結構。そこまで言うのなら貴方を倒して私は悪魔になる。そしてサシャ様のお側に居続けるんだああああ!!!」
ナレ「パクはローガン目掛けて素早く走っていった。しかし」
ローガン「残念だったな、パク・リョンハ。お前の速さにはもう慣れた」
パク「なに!?」
ローガン「おうらぁ!!」
パク「がはっ!!...そ、そんな...」
ナレ「そしてパクは力尽きそのまま倒れる」
ローガン「おぉ、いててててて。さぁてと、早くアイツらと合流しねぇとなぁ」
ナレ「場所は変わってサシャの部屋。数十分後目を覚ますとサシャは椅子に縛り付けられており、その間にミハエルはシルヴェスター達と合流し2人で煙草を吸っていた」
サシャ「ん…うぅん…はっ!俺は一体…な、何だこれは!?」
シルヴェスター「よぉ、目が覚めたか?サシャ・ロマーノフ」
サシャ「お前ら...俺の部屋で煙草を吸うとはいい度胸だな」
ミハエル「この状況でそんなことを言えるお前も良い度胸だと私は思うがね」
サシャ「そりゃあどうも。俺は煙草が大嫌いなんだよ」
ミハエル「そんなに毛嫌いしなくてもいいじゃないか。確かに煙草、特に煙には有害性がある。だが、煙草は良いものだぞ。国や銘柄ごとに味や香りが違う。嗜好品として楽しむのが良いのさ」
サシャ「ふっ、流石は煙草屋だ。だが、この俺に煙草の良さを語ったところで無意味だぞ」
ミハエル「分かっている。私はただ考えを改めて欲しい...それだけさ」
サシャ「改めるつもりは毛頭無い。ところで、いつまで縛っているつもりだ?」
シルヴェスター「お前がまた逃げるかもしれねぇからなぁ。それの保険だよ」
サシャ「...そうか。だが、それも無駄な事だ。俺には腹心のパクがいる。アイツの武術は一流だ。お前らなんてアイツの手にかかれば…」
ローガン「いや…そいつぁ無理だな」
ミハエル「ローガン!無事だったか」
ローガン「あぁ...かろうじてな」
サシャ「ローガン・ディールス…」
ローガン「よぉ、サシャ元気してっか?」
サシャ「…何しに来た?」
ローガン「いや、なぁに…お前と話すためさ」
サシャ「なに?」
ローガン「単刀直入に言う。おめぇさん…この『エルドラド』をどうしてぇんだ。前ボスフランク・ロマーノフが作り上げたこの組織を」
サシャ「あのクソ親父は関係ない!確かにここを作ったのはアイツだ…だがなぁ!今のボスはこの俺だ!!俺がアイツ以上にここをデケェ組織にするんだよ!!そのためならどんな手を使ってでもやり遂げる!その気持ちがアンタに分かるのか!?」
ローガン「その気持ちは分からなくもねぇ…上に立つものとしての責務だと俺は思う。だが、おめぇさんが言ってることとやってることは全く違う。おめぇさんが今やってることはなぁ…単なる独りよがりだ。自己満足だ。部下のことは気にせず自分がやりたいことをやり続ける。そんなんじゃ部下も付いて行こうにも付いて行けねぇ。それに比べてフランクさんはいつも部下のことを気にかけて下さっていた。あの人はマフィアとは思えないほど優しくて強いお方だ。おめぇさんがそれをクソだと思っているのなら…何時まで経っても本当のボスにはなれねぇよ」
サシャ「黙れ黙れ!!老いぼれ風情が偉そうに!!俺はアイツとは違う!!俺はアイツを超えるんだよおおおおお!!!!」
ローガン「この大馬鹿野郎が!!」
サシャ「ぐっ!」
ローガン「なぁ!おめぇはいつからそんな性格になった!?あぁん!?少なくとも最後に見たときは爽やかないい男だったじゃねぇか!!それがなんでここまで落ちぶれた!?気でも狂ったか!?えぇ!?何とか言ってみろ!!」
ナレ「ミハエルがローガンを静かに見守っているとリチャードから通信が入る」
リチャード「ミハエル!!おい、ミハエル!!」
ミハエル「ん??どうしたリチャード!?」
リチャード「いますぐローガンを止めろ!!彼に見せたいものがあるんだ!」
ミハエル「見せたいものだと!?」
リチャード「いいから早く!!」
ミハエル「あ、あぁ。おい!ローガン!そこまでだ!そいつを何発も殴ったところで何も変わらない。いったん落ち着くんだ」
ローガン「!?…(深呼吸)すまん。つい熱くなっちまった」
ミハエル「構わない。それよりもリチャードがお前に見せたいものがあるらしい」
ローガン「あぁん?俺に見せたいもの?」
ミハエル「あぁ。このタブレットを見てくれ」
ナレ「そういってミハエルはローガンにタブレットを見せた」
ローガン「何だよ…ってこれは」
リチャード「それはパソコンの中に入ってた前ボスフランク・ロマーノフの遺書だよ」
ミハエル「パソコンの中…デジタル遺品か」
リチャード「その通り」
ナレ「デジタル遺品とは故人が電子機器やインターネット上に遺したデータのことである」
ローガン「ボスの遺書だと…どうやってこれを!?」
リチャード「実は3人がアジトに向かった後店にとある人物がUSBメモリーを持って来店したんだ。その中にこの遺書が入っていた」
ローガン「とある人物…誰だそいつぁ?」
リチャード「リアス・ロッシだよ」
ローガン「はぁ!?リアスだって!?」
リチャード「なんでも、ボスの命令で遺書のデータが入ったUSBを隠して然るべき時にとある人物に見せるように言われたんだってさ」
ミハエル「そのとある人物というのがローガンってことか」
リチャード「そういうこと」
シルヴェスター「...最初に遺書を見せるのがサシャじゃなくておっさんなのか」
リチャード「...まぁそこに関してはもしかしたら遺書に何か書いてあるかもしれないね」
ローガン「なるほどなぁ…言われてみたらリアスは隠し事が上手かったからなぁ。ボスも人が悪い…ふぅ、さて読むとするか」
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リアス→フランク
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フランク「親愛なる部下ローガンへ。お前がこれを読んでいるとき、私はもうこの世にはいないだろう。そして、無事お前の手にこの遺書が渡ったということだな。これを大事に持っていてくれたロッシにお前から礼を言っておいてくれ。さて、ローガン、お前に2つ頼みたいことがある。まずは、私の息子サシャの事だ。私が死んだ今、エルドラドのボスはアイツがやっていることだろう。そこでだ、私の代わりにサシャがエルドラドの本当のボスにふさわしいか見極めてはくれないか?もし、ふさわしくないのなら…殺してしまっても構わない。それが親である私・そしてサシャ本人にとってのけじめとなるだろう。そして、2つ目だ。可能ならば私はお前にエルドラドのボスを引き継いで貰いたい。そうは言っても私はあの時お前を解雇した。その件に関しては大変申し訳ないと思っている。これには深い訳がある。サシャは当時からお前の事を酷く嫌っていた。アイツがボスになった暁には一目散にお前を探し出して殺すだろう。そうならないために私はお前をサシャの目が届かない遠くの国に飛ばし、身の安全を確保したのだ。決してお前に失望したわけではない。何故なら私はお前がやったとはこれっぽちも思っていないからだ。だから、あの時の言葉は全てサシャを騙すための演技だ。大変心苦しいものだったが、お前を守るために仕方なくやったことだ。どうか許してほしい。さて、長くなってしまったが、これは最愛の部下のお前にしか頼めないことだ。こうは言ったが、これは強制ではない。お前の意思に全てを委ねよう。そして、最後に一言言わせてほしい。私はこれからもずっとお前の味方だ。空の上から見守っている。フランク・ロマーノフ」
ナレ「フランクからの遺書を読んだローガンは目から大粒の涙を流した」
ローガン「…ボス…アンタって人は…俺ぁボスに心配かけてばっかだったなぁ…ちくしょう…優しすぎる…アンタァ優しすぎるぜボス。俺ぁアンタの部下になって本当に良かった…」
シルヴェスター「おっさん!よかったじゃねぇか!!」
ローガン「あぁ...ほんと俺ぁ幸せもんだよ…」
シルヴェスター「というかいつまで泣いてるんだよ!!」
ローガン「あぁ…歳取ると涙もろくてなぁ…ぐずっ」
ナレ「ローガンが服で涙を拭いているとクラリスが無言でティッシュを手渡した」
ローガン「おぉ、ありがとな嬢ちゃん…と、いう訳だ。俺ぁ今からボスの遺言に従いお前に判決を言い渡す。サシャ...お前はボスにゃあ向いてねぇよ。そして、2度と同じことが起きないようにお前を殺す」
サシャ「なっ!?お、おい!!冗談だろ!?」
ローガン「この状況で冗談言うと思うか?」
サシャ「や、やめろ!!お、俺が悪かった!!だから頼む!!俺を殺さないでくれ!!」
ローガン「酷い命乞いだな。おめぇさんはなぁ…ボスの顔にドロ…いや、ヘドロを塗ったんだよ!!」
ナレ「そういってローガンはサシャに銃口を向けた」
サシャ「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!パ、パクゥ!!何処だ!?何処にいるぅ!?は、早くこの老いぼれを殺せぇ!!パクゥゥゥゥ!!!!」
ローガン「あの野郎はもう来ねぇよ。さぁ、あの世で親父に懺悔してこい」
ナレ「ローガンが引き金を引こうとしたとき。後ろから銃声が聞こえた」
シルヴェスター「おっさん!!」
ローガン「がはぁっ...く、くそっお前…もう意識取り戻したのか…」
パク「サシャ様は私が守る…たとえ命を賭してでも…」
サシャ「パク!!よく来た!!早くこいつらを…」
パク「ぐあっ!!」
ミハエル「そうはさせない」
ナレ「ミハエルはサシャに引き金を引き、心臓に被弾する」
サシャ「パクウウウウウウウウウウ!!!!」
パク「ぐっ...うぅっ、まだだ...まだ私は...」
ナレ「パクは最後の力を振り絞り立ち上がろうとするが思うように力が入らずまた倒れてしまう。そして自らの死を察したのか血が流れる身体を引きずりながらサシャの元へゆっくりと向かった」
パク「はぁ…はぁ…サ、サシャ様…」
サシャ「パク...もういい...もう...いいんだ...」
パク「はぁ...はぁ...わ、私は…最後まで使命を…全うしました。最後に厚かましい願いだということは…重々承知しております…ですが…一言…この私に…何か…お言葉を…頂けませんか?」
サシャ「パク…お前…」
パク「サシャ様…」
サシャ「…よくやったパク。ゆっくり休んでくれ。」
パク「サシャ様…ありがとう…ございます…それを聞けただけで私は…もう…」
サシャ「パ、パク。...くっ...お前は本当に馬鹿で真面目で...最高の部下だったよ」
ナレ「サシャはパクを静かに看取ると先程までの表情とは違う何か憑き物が取れたかのような清々しい表情になっていた。そして近くにいたミハエルに声を掛けた」
サシャ「おい…早く殺せ…俺の負けだ」
ミハエル「...いいんだな?」
サシャ「…あぁ。パクの死で目が覚めた。あの世で親父とパク、そして…全ての部下に謝ってくる。それが今の俺に出来る最大限のけじめだ」
ミハエル「…そうか。さらばだ、サシャ・ロマーノフ」
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パク→ナレーション
サシャ→記者
ローガン→リーズ議員
----------------
ナレ「こうして事件は幕を閉じた。あの後ミハエルはローガンを病院に送り届け、シルヴェスターとクラリスは近くのテレビ局に行き書類を提出した。書類のことは瞬く間に全国に拡散され大きな波紋を呼んだ。そして、数日後『Black Stone』店内でテレビを見ていると今回の事件に関わっていたであろう議員が記者に取り囲まれている映像が映っていた」
記者「リーズ議員!!先日の記事については全て本当なんですか!?」
リーズ「いやぁ、記憶にございませんな」
記者「とぼけないでください!!リーズ議員!!一言お願いします!!リーズ議員!!」
ナレ「シルヴェスターはつまらないと思ったのかテレビを消してタバコを吸い始める」
シルヴェスター「はぁ、まったく毎日毎日この話題で持ちきりだな…流石にもう飽きたぜ」
リチャード「そう言うなよ。あの後、書類を持ち込んだクラリスはテレビ局に引っ張りだこだって話だよ」
シルヴェスター「…まぁ、あれほどデカい情報だ。アイツに取材が殺到するのも無理ねぇさな。そういや、ローガンは?」
リチャード「あの後、病院で診てもらったら命に別状はないってさ。今は意識を取り戻して入院生活を送ってるよ」
シルヴェスター「そうか。そいつぁよかった」
リチャード「丁度ミハエルが見舞いに行ってるよ。もうそろそろ帰ってくると思うんだけど…」
ナレ「2人がそう会話しているとベルの音が鳴り誰かが入ってきた」
クラリス「こんにちは」
リチャード「やぁ、クラリス。調子はどう?」
クラリス「毎日毎日取材だのなんだので天手古舞よ」
リチャード「そいつは大変だね…ところで、今日は何の御用で?」
クラリス「えぇ、実は…(シルヴェスターを見ながら)」
シルヴェスター「…はぁ、やっぱりか」
ナレ「シルヴェスターは苦い顔をしながら煙草を灰皿に押し付ける」
クラリス「当然でしょ。あの後一回も見せてもらってないんだから」
リチャード「え?何々?何の話?」
クラリス「シルヴェスターがペンダントの写真を見せてくれないの」
リチャード「あぁ…なるほどね」
シルヴェスター「なぁ、本当に見せなきゃダメか?」
クラリス「勿論。さぁ、早く見せて」
シルヴェスター「チッ、わぁったよ、見せればいいんだろ。見せれば」
ナレ「そういってシルヴェスターはペンダントの写真をクラリスに見せた。それを見たクラリスは表情を変えた」
クラリス「…え?」
シルヴェスター「お?どうしたそんな顔して?もしかして嫁が美人過ぎて驚いたか?」
クラリス「なんで貴方がこの写真を持っているの!?」
シルヴェスター「…は?どういうことだよ?」
クラリス「この写真は母の若い時の写真よ!!」
ナレ「そういってクラリスは財布を取り出しシルヴェスターにある写真を見せた。その写真とはシルヴェスターが持っているものと同じものだった」
シルヴェスター「…は?えっ、ちょ!?母!?そういや、お前の苗字って聞いてなかったな!?」
クラリス「…シャルロッテ。私の名はクラリス・シャルロッテよ」
シルヴェスター「シャルロッテ…まさか、お前の母さんの名前って…」
クラリス「ラウラ…ラウラ・シャルロッテよ」
シルヴェスター「…おいおい、マジかよ…ってことぁお前…まさか俺の…」
リチャード「え?なになに?…どういうこと?」
シルヴェスター「…こいつぁ俺の…娘だ」
ナレ「突然のシルヴェスターの告白にリチャードは驚き煙草の煙でむせ始めた」
リチャード「ゴホッゴホッ!!え、はぁ!?おいおいマジかよ…それ初耳だったんだけど...!こ、こんなことってあるんだね…」
クラリス「ど、どうして…どうしてお母さんと私を捨てたの!?」
シルヴェスター「…別に捨てたわけじゃねぇ。嫁の両親…つまりおめぇと一緒に暮らしてた爺さん婆さんに勘当されたんだよ。傭兵の婿なんかいらねぇってな」
クラリス「そんな…」
シルヴェスター「俺はその後彼女との連絡を絶った。それに当時は住まいを転々としてたからなぁ。足取りも掴みづらかっただろうさ。でもなぁ、1つだけ続けていたことがある。それぁ、傭兵で貰った報酬をお前が生まれる直前に作った口座の中に毎月入れてたんだ。父親として夫として少しでも2人を養うためにな」
クラリス「…そうだったの」
リチャード「シルヴェスター…」
シルヴェスター「だから…俺を父親って認めてくれるかどうかはお前次第だ。でもなぁ、俺はお前が娘と分かってまだ驚いちゃあいるが内心はとても嬉しい。なんせこんなに大きく成長してたんだからなぁ」
クラリス「…少し時間を頂戴。でも、1つだけ貴方にやって欲しいことがあるの」
シルヴェスター「…なんだ?」
クラリス「お母さんと会ってあげて。貴方の事今でもずっと待ち続けているから…」
シルヴェスター「バカ言え…俺にアイツと会う資格は…」
クラリス「あるわ。貴方だって今でも母の事愛しているんでしょう?そのペンダントが何よりの証拠よ」
シルヴェスター「…分かった。お前がそういうなら…」
クラリス「それがいいわ。母も貴方と会ったら喜んでくれるわ」
シルヴェスター「そうだといいんだが…なんかこっぱずかしいな」
クラリス「こっぱずかしいのは同じでしょ!…私達はこれからゆっくりと歩み寄っていけばいいと思う。家族の時間をゆっくりとね」
シルヴェスター「あぁ、そうだな」
リチャード「良かったなシルヴィー」
シルヴェスター「はぁ!?お、おい!何でお前が泣いてるんだよ!?」
リチャード「だって、僕達3人は幼馴染じゃないか!!喜ぶのは当然じゃないか!!」
クラリス「え!?貴方たち幼馴染だったの!?」
リチャード「あぁ。ミハエルとシルヴィーが通ってた学校に僕が転入してきたんだ。で、家がすぐ近くだったからすぐ仲良くなってね。それから高校でもずっと一緒のクラスでね。大人になってからもちょくちょく連絡を取ってたんだ。ミハエルがこの店を開くときに丁度前の職を辞めた僕とシルヴィーを誘ってくれたんだ。」
クラリス「へぇ。そうだったの。だから、あんなにチームワークがよかったのね」
シルヴェスター「ま、何十年って仲だからなぁ」
リチャード「それに水臭いじゃないかシルヴィー!?何でそんな重要な事僕らに相談してくれなかったんだ!?」
シルヴェスター「いやぁ、まぁコレに関しては話が話だからなぁ。流石にお前には言えなかったんだよ。ってかリチャードそのあだ名止めろって言ったよな??ん??」
リチャード「別にいいじゃん。顔に似合わず可愛いあだ名じゃないか!!」
シルヴェスター「恥ずかしいんだよコッチは!!」
ナレ「するとまたベルの音が鳴りミハエルが店の中に入ってきた」
ミハエル「ただいま。おぉ、クラリス来ていたのかね?」
クラリス「こんにちは」
リチャード「ローガンはどうだった?」
ミハエル「あぁ。相変わらず元気だったよ。それでローガンはエルドラドのボスになることを決めたらしい」
シルヴェスター「そうか…おっさん遂に決めたか」
ミハエル「あぁ。その時は襲名パーティーでもしてあげよう」
シルヴェスター「そうだな」
ミハエル「ところで、リチャード。お前目が赤いが何かあったのか??」
リチャード「あぁ!実はねシルヴィーとクラリスが…」
シルヴェスター「おぉい!!ちょっ!!やめろ!!恥ずかしいんだよ!!おい、クラリスこいつを止めてくれ!!」
クラリス「嫌だ」
シルヴェスター「はぁ!?お前!!マジで勘弁してくれよ!!」
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クラリス→謎のマダム
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ナレ「アメリカのとある都市『ベイラス』。そこにある煙草屋兼武器屋『Black Stone』。武器を買うには1つの合言葉を言わなければならない」
ミハエル「いらっしゃいませ。『Black Stone』へようこそ」
謎のマダム「ねぇ...煙草を...1本...くれないかしら?」
ミハエル「ふっ、畏まりました。それではこちらへ…」
ナレ「ここには毎日刺激的な客が来る。目的は煙草なのか武器なのか…さて、貴方はどちらをご所望で?」
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ローガン→ナレーション
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ナレ「話はクラリス救出作戦の最中に遡る。Black Stoneの店に残ったリチャードはミハエル達に作戦の指示を伝えていた」
リチャード「ミハエル・ローガンは1階から突入。シルヴィーは隣のビルから2階に上がってガラスを割り発煙弾を投擲。敵の視界を眩ませつつそのまま突入。...大丈夫1階のドアは既にこっちでロック解除済みだ。そのまま入れるよ」
ナレ「リチャードは一息つくと煙草に火をつける。すると店のベルが鳴り誰かが入ってきた」
リチャード「ん?アレ?おかしいな。今日はクローズにしてたんだけど。もしかして誰かが看板を掛け忘れたかな。」
ナレ「首を傾げたままリチャードは煙草の吸い殻を灰皿に押し付け奥の従業員スペースから店へと出ていく」
リチャード「あ、お客様すみません。本日は休業しておりまして...ってアンタ」
ナレ「リチャードは驚いた表情で客を見る。その正体は」
リアス「やぁ。ちょっと渡したいものがあってね。休みを承知で店に入らせて貰った」
リチャード「...リアス・ロッシ」
リアス「アンタも俺を知ってたか。あ〜そりゃあそうか。裏社会に足を突っ込んでるのなら俺の情報を把握していて当然だったな。そうだろ?Black Stoneの参謀担当で元刑事のリチャード・スミスさん?」
リチャード「何の用だ?」
リアス「おいおい、そんな怖い顔をしないでくれよ。最初に言ったろ?俺は渡したいものがあるだけだ。ミハエルとシルヴェスター・そしてローガンさんが居ない内に店を壊そうとかそんな事は考えちゃあいないから安心してくれ」
リチャード「僕たち3人ならまだしもローガンがここにいることを把握しているあたり...もしかして付けていたのか」
リアス「そりゃあ勿論。あの人から聞いたと思うが、俺が去った後実は部下を1人忍ばせていてね。ローガンとお嬢ちゃんの後を密かに付けさせてもらった。でもまぁそんな事しなくても俺の予想通りだったから良かったんだけどさ」
リチャード「用意周到だな。その話を聞いて尚更信用出来なくなったよ」
リアス「まぁ信用するかしないかはアンタの自由だ。好きにしてくれて構わないさ。でも重要なのはそんな事じゃあない。あくまで俺はとあるブツを私に来ただけだ」
リチャード「とあるブツ?何だそれは」
ナレ「リアスは内ポケットから煙草とライターを取りだしたあと胸ポケットからスっと取り出した」
リアス「コレだよ。あ、煙草吸っていいかい?」
リチャード「...どうぞ。ってコレはUSBメモリーか?」
リアス「そうだ。この中にはある書類が入っている」
リチャード「書類?」
リアス「あぁ。エルドラドの前ボス、フランク・ロマーノフの遺書だよ」
リチャード「い、遺書!?」
リアス「直筆で書いたものを撮った写真データと念の為書いている時の動画も中に入っている。遺書の内容と一致させるようにね」
リチャード「なるほど、所謂デジタル遺品ってやつか。中身は見たのか?」
リアス「中身?遺書のか??見てないぜ。見たのは書いている姿だけだ。なんせ動画を撮ったのは俺だからな。んで、そのUSBにデータを移動させたのはフランクさん本人だ。まぁあの人はアナログ人間だからな。データ移動も大分苦戦していたがね」
リチャード「見ることも出来たんじゃないのか?」
リアス「そいつぁ無理だ。データを閲覧する時にパスワードを設定してたし、例え見れたとしても俺はそこまで遺産とか遺書とかに興味無いからな。それに他人の家のことに首を突っ込まないのは誰だってそうだろ?」
リチャード「た、確かにそうだな。で、そのパスワードって言うのは?」
リアス「あーそうだった。この紙に書いてある」
ナレ「リアスからパスワードが書かれた紙を受け取ったリチャードはじっと彼を見つめたあと静かな口調でリアスに聞く」
リチャード「何故コレを僕に?」
ナレ「リアスは近くにあった灰皿に吸殻を押し付けるとニヤリと笑った」
リアス「おいおい勘違いすんな。アンタにじゃねぇ。ローガンさんにだ」
リチャード「ローガンに?」
リアス「あぁ、ローガンさんはフランクさんの元腹心だ。ずっと傍に居て職務を全うしたからな。それをフランクさんはずっと見ていたし感謝もしていた。だからあの人がウチの組織を抜ける際、ずっと悩んでいたのを俺は知ってる。現にこうやってローガンに渡して欲しいって指示してきたのはフランクさんだ。だからあの人と関わりがあるこの店に来た。その遺書を読む義務が1番あるのはバカ息子のサシャじゃねぇ。血の繋がった家族じゃねぇが、まるで本当の家族のように接してくれたローガンさんだと俺は思ってる。だからアンタに頼みがある。その遺書をローガンさんに届けてくれねぇか」
ナレ「先程まで飄々とした表情をしていたリアスが真剣な表情でリチャードを見つめる。それを見た彼は少し笑みを浮かべる」
リチャード「ふっ、アンタやっぱりロッキーロッシだな」
リアス「は?どういうことだよ?」
リチャード「意志が強い頑固者ってことだよ。...ふぅ、分かった。アンタとフランクさんの望み。このリチャード・スミスが責任をもって彼に届けるよ」
リアス「ありがとよ。んじゃ渡せるものも渡せたし俺はここら辺でお暇するわ」
リチャード「あぁ、気を付けて帰れよ」
リアス「おいおい、俺はガキじゃねぇんだ。ちゃんと帰るさ。あばよ」
ナレ「そして店を出たリアスはもう一度煙草に火を付け飄々とした足取りで店を後にしたのであった」
(完)
最後までお読みいただきありがとうございました。
凄く疲れたと思います...ごめんなさい。
ハードボイルド系の作品・洋画・海外ドラマが大好きで3つの雰囲気を併せ持つ作品を書けたらいいなと思って書いたのが前作の『Double Wolf』という作品で今回の『煙草と硝煙の香り』で2作目になります。
こういうジャンル以外にも様々なジャンルの台本に挑戦していきたいと思っているのでこれからもよろしくお願いします。
ちなみに最後に出てくる謎のマダムの存在は...頭の片隅に置いておいてください笑
(2024年1月3日追記)
皆様、お久しぶりです。今回、改めてこの作品を読み色々と加筆修正をしなきゃいけないなと思い筆を取らせて頂きました。最後のおまけ的なやつは実はずっと頭の中にあったアイディアでいつ書こうか温めてきたものです。まぁ本編でリチャードとリアスの出番が少なかったからね?リアスに関しては有難いことに皆さんの記憶に残ってくれているみたいで大変嬉しく思っています。なので次はリアスの話を書けたらいいなと思いますので宜しくお願い致します。




