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104 孤軍

 俺の腕の中で、零が崩れて砂になった。

 だけどまあ、大したことじゃない。今までだって零は粉々の肉片になっても復活し、しれっと戻ってきた。今回もそれと同じだろう。まったく、楓機構ってのはすげえもんだ。


 崩れる前に俺に謝ったのは、ちょっと変だったけどな。


 ま、たまにはそういうこともあるだろう。気にすることじゃない。


 「……ったくよぉ」


 俺は立ち上がり、涼しい顔で立っている鈴丸と向き合った。


 「さて、どうするかね、三代目一寸法師」

 「そりゃおめえ、零が復活するまで、お前らとバトルしかねえだろ」

 「復活?」


 俺の言葉に鈴丸が笑う。あん? 感じ悪いな、こいつ。


 「ありえぬよ。楓機構が壊れたのだからな」

 「そうかよ」


 俺は打出の小槌を構えた。鈴丸以外の神が武器を構えて俺を囲む。鈴丸入れて、全部で十体。おっと、神の単位は「柱」だっけ? ん、零は「体」て言ってたな。古代と現代の文化の違い、てやつか?

 ま、どうでもいいけどな。


 「そんじゃま、楓機構が直って、それから零が復活して、の二段構えだな」

 「現実を受け入れられぬか」


 鈴丸が俺を哀れむような顔で見やがった。あん? 腹立つな、こいつ。


 「まあ、それもよいが……どうだ、少し落ち着いて酒でも酌み交わさぬか?」

 「キライなやつと酒飲んでもまずいだろ」

 「確かにそうだな」


 左手の神が俺に襲いかかろうと槍を構え直した。

 だけど、それを鈴丸が制する。


 「三代目。私はね、お前も含め、一寸法師には敬意を持っているのだよ」

 「あん?」

 「もちろんかつては憎んだ。しかし今ではこう思うのだよ。一寸法師がいたからこそ、私はこの高みにまで至れたのだ、とね」


 なんていうか、意識高い系の嫌味なやつっぽいな。神ってこういうものなのか?

 すげーむかつく。


 「さればこそ、神となった今、お前をむざむざと失うのは惜しい。この宇宙の損失とすら思っている」

 「心配いらねえ」


 ブウンッ、と打出の小槌が唸る。俺の体を青いオーラが包む。


 「やられて滅びるのはお前らの方だ。俺は、お前らを倒してから、のんびりと零が帰ってくるのを待つさ」

 「我らの間に、戦う理由はないのだがな」

 「いーや、十分あるぜ」


 何言ってやがるんだこのバカは。


 「お前は、俺の(・・)零に手を出した。人の物にベタベタ触りやがって。不愉快だ!」


 零は俺のだ。

 性格悪くて、素行悪くて、寝起き悪くて、口が悪くて、手癖悪くて、身持ち悪くて、酒癖悪くて。いいとこ探すのが大変な悪霊だけどよ。

 意外とビビリで、可愛いとこがあるんだぜ。


 「そんなわけで、お前は倒す」

 「ふむ、そこまで言うなら仕方ない」


 鈴丸が一歩引く。残りの神が前に出て俺を包囲する。

 いいねいいね、そうこなくちゃ。出し惜しみは無しだ。全身全霊、ガチの全力で暴れてやる。

 おっとそうだ、一つ忘れてた。


 「おい鈴丸。先代からの伝言があるぞ。聞くか?」

 「ほう、ポポロビッチからかね? 伺おう」


 へえ、先代の名前覚えてるのか。どうやらお前にとって忘れられない相手みたいだな。

 よし、それなら効果はバツグンだろう。耳の穴かっぽじってよーく聞きやがれ。


 「神でも鬼でも小人でもない、ただの人に負けた奴が偉そうにするなよ、この負け犬、だとよ!」


 お?

 初めて鈴丸の顔色が変わったぜ。

 ぎゃははは、どうやら鈴丸の古傷えぐったみたいだな、ざまあみやがれってんだ。


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