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99 vs 神 三

 五天。

 三神とともに、宇宙そのものと言っていい「一柱(いっちゅう)」の側に仕え、それを守るのが使命の神。文字通り別次元の存在で、こうして実体化して現れること自体が奇跡みたいな存在だ。


 そんなやつが、僕ごときのために現れた?

 うそだろ、おい。何考えてるんだこいつ。卑下するつもりはないが、僕にそこまでの価値があるとは思えないぞ。


 「ま、積もる話は落ち着いたところでしようではないか」

 「お前と話すことなんかない!」


 僕の抗議を聞き流し、鈴丸は掲げた右手をゆっくりと下ろした。


 「捕えよ」

 「はっ!」


 それを合図に、七王と九部が僕に襲いかかってきた。


 「おとなしく……捕まると思うなよっ!」


 勝てるわけがない、という思いを必死で打ち消し、僕は楓機構を全開にした。

 なりふり構わず数万体の人形を生み出し、襲いかかってくる神にぶつけてやる。


 「はあっ!」


 神々が気合一閃、呪いの人形達は次々と消されていく。一撃で数百体が吹き飛び、返す刀で数百体が塵と化す。


 「このっ!」


 ミト一人であれだけ苦戦した。そのミトに匹敵、あるいはそれ以上の力を持つ神が十八体。

 ありったけの力で呪いの人形を生み出しても、次から次へと消されていく。

 やばい、と思った。じわじわと包囲が縮まっていく。力の差は歴然、僕がフルパワーを出し続けてもこいつらの一体も倒すことはできないだろう。

 だけど倒せなくていい、何とかこの包囲を突破して逃げるだけでいい。月から地球までどうやって帰るかのかは後で考えればいい。

 捕まったら最後。そうなったら、僕は神々に力を吸い取られるだけの物となる。かつてあの森で二十年もそうだったように、今度は永遠に。


 「来るな……僕に触るなぁぁっ!」


 突き出された槍を避け、剣をかわし、ありったけの呪いを撒き散らして神を押し返す。死中に活を求めて懐に飛び込み、右腕と引き換えに包囲をくぐり抜ける。

 だけど、すぐに行く手を阻まれた。だめだ、付け入る隙がない。


 「ちくしょう……この、クソ神どもがぁぁっ!」

 「観念せい、悪霊!」


 一番偉そうな神、おそらく七王のリーダーが、僕に向かって叫ぶ。


 「十万年にわたり神々を汚し続けた罪、償え!」

 「ふざけるなぁっ! そもそも僕を嬲り物にしたのは、神の方だろうがぁっ!」


 ヒュッ、と風を切る音が聞こえた。

 ハッとした瞬間、頭の右側に衝撃が走り、僕はもんどり打ってその場に倒れた。


 「見事!」

 「捕らえろ!」


 離れたところから矢を放った女神がほくそ笑むのが見えた。槍を持った神が四方から殺到し、僕の両腕両足を地面に縫い付けた。


 「大人しく捕まれば、痛い目にあわぬというのに」


 神の一体があきれた声で言う。

 ふざけるな。捕まった後に、僕がどれだけの地獄を見ると思ってるんだ。

 永遠に。

 永遠に搾り取られ続けるんだぞ。お前ら神の生薬として、ただただ力を吸い取られ続けるんだぞ。


 「は……離せ……」


 両腕両足を引きちぎってでも逃れてやる。そう思ってもがいていたら、腹に剣を突き刺された。


 「うがっ……」

 「観念せい、悪霊」

 「離せ……離せよぉっ!」


 かつての……閉じ込められ、ひたすらエネルギーを貪られ続けた日々が思い浮かぶ。死んだほうがマシという苦痛と屈辱。それが延々と続く中、何度気が狂い、朽ち果てたことか。

 嫌だ。

 あんなのはもう嫌だ。ちくしょう、離せ、離せ。


 「ふむ、あっけない。こんなものなのか」


 高みの見物をしていた鈴丸がつまらなそうに言う。縄を持った神がやってきて、僕の体を縄でぐるぐる巻きにする。


 「ちく……しょお……」


 離せ。嫌だ。こんなの嫌だ。

 ……助けて。

 助けてくれよ、頼むよ、助けてくれよ。


 「ミト……」


 ちくしょう、どこにいるんだよ。何で助けに来てくれないんだよ。

 お前、俺のお供だろ。


 「連れて行け」

 「やだ……離せ、やめろ! ちくしょう……ミト……ミトぉっ、助けてよおっ! ミトぉっ!」

 「往生際の悪い。悪行の報い、存分に受けよ!」

 「離せ、離せよ! ミト、ミトぉっ、助けてよっ!」


 「はぁっはっはっ、なかなか可愛い声で呼んでくれるじゃねえか」


 泣き喚き、暴れていたら、足元からそんな叫び声が聞こえてきた。

 え? と目を見張り、そちらに目を向けると。

 地面から巨大な木槌が飛び出してきて、僕は、僕を担いでいた神と一緒に吹き飛ばされた。


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