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小人族御伽草子 呪いの珍皇子  作者: おかやす
第1章 サンライズ
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9 高松・昼

 一時間ほど休憩すると回復したので、私と零は白峰寺を出て高松へ向かった。


 「すごいね」


 一度山を下り、「さぬき浜街道」と名付けられた県道を通って高松へと向かう。この道は五色台の山の中を突っ切るのだが、その時の景色が最高だった。


 「山が迫ってくるみたい」


 隣で楽しそうにはしゃぐ零を見ていると、なんだかほっとした。中身はともかく、見た目はハイスペックな美少女とのドライブだ。零につられてはしゃいで話していたら、白峰寺でのことも気のせいだと思えるようになり、随分と気が楽になった。

 三十分ほどで五色台を越え、高松市内へと入った。さすがは県庁所在地、坂出とは違って大きな町で、中心部へ近づくほど建物や車が増えた。


 「さて、飯はどうしようか」

 「うどん、でしょ?」

 「だな」


 高松に到着しレンタカーを返すと、私は零とともに高松の中心街へと向かった。高松駅近くから南へと伸びる日本一長いというアーケード街を歩き、かなり南へと行ったところにある有名なうどん屋で昼食を済ませた。


 「うどん屋、コンビニより多いですね」

 「さすがはうどん県だな」


 日曜の午後ということもあり、アーケード街は人でごった返していた。人混みに流されて何度かはぐれそうになり、気がつけば零が私の腕に抱きついていた。おいおいと思ったが、零は「いいじゃないですか」とニコニコ笑ってぎゅーっと抱きついてきた。

 まったくこいつは最後までからかいやがって、と思ったが、悪い気はしなかった。はたから見て男同士だと思う人もいないだろう。旅の恥はかき捨てというし、まあこれはこれでいい思い出か、と割り切ることにした。

 腹ごなしもかねて商店街を歩きまわり、お土産を買ったりウィンドウショッピングを楽しんだりした後、世界中に出店している有名コーヒーショップで一息ついた。


 「祐一さんは、これからどうするんです?」

 「今日は高松に泊まって、明日、東京へ戻るかな」


 零の問いに、私はブラックコーヒーを飲みながら答えた。ちなみに零はキャラメルフラペチーノとかいう甘そうなやつである。三十半ばのおじさんは見ただけで胸焼けしそうだ。


 「祐一さんも東京に行くんだ」

 「なんだ、零もか?」

 「うん」


 なら今日は高松に泊まって、明日飛行機で東京へ戻るか、と思った。もう夕方だ、慌てて帰ることもないし、もう一泊ぐらいしても問題ないだろう。

 帰ったところで、仕事があるわけじゃない。


 「またツインで同室?」

 「……シングルで別室だ」

 「なーんだ。僕、祐一さんならいいかな、て思ってたのに」

 「何がだ。何がいいんだ」

 「わかってるくせに」


 零はククッと笑ってストローに口をつけた。大人をからかうのも大概にしてもらいたい。


 「あ、そうだ。だったら、寝台列車で帰る、てのはどうかな?」

 「寝台列車?」


 零いわく、高松から東京へは寝台列車が運行されているという。すぐにスマホで検索してみると、たしかに高松〜東京間で運行されていた。


 「へえ、岡山で出雲からの列車と連結するのか」

 「人気あるんですよ。切符が取れるかどうかわからないけど。ダメ元で聞きに行ってみません?」

 「そうだな」


 これから駅へ行って切符が取れればそれで帰る、そうでなければ高松に泊まる。

 私と零はそう決めると、さっそく切符を取りに駅へ向かった。


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