プロローグ
「こ、こう?」
天王寺るりかははずかしそうに前かがみになり、たわわな胸を強調する。
「う、うん」
何でみんな好きなんだって思っててごめんなさい。
天王寺レベルの美少女にされると圧倒的な破壊力で、理性が吹き飛びそうになる。
興奮しすぎて鼻息が荒くないよう必死に自分を抑えた。
「写真とってもいい? 参考資料にしたいんだが」
こんなポーズをとりたいと男に言われて、普通女子は承知しないだろう。
彼氏でもないんだからなおさらだ。
「は、はい」
ところが天王寺は従順に引き受けてくれる。
「でも、顔はとらないでね。トラブルで流出したら困るから」
「おう」
彼女の注文に承知した。
誰かに見せるつもりなんてないが、ウィルスか何かで流出はありえない話じゃない。
彼女の男を悩殺するポーズを誰かに見せたくない、なんて黒い独占欲も正直ある。
写真をとったあと、彼女に出来上がりを見せた。
「はい、これならいいわ」
彼女は首から下の豊かな胸がクローズアップされてる絵に満足する。
よし、クリアだ。
制服姿だけど、これだけならうちの女子としか分からないよな。
「次はメイド服とかいいかな?」
「メイド服ね。了解」
俺の要求に天王寺はうなずく。
そしてミニスカメイド服に着替えてくれた。
「これでどう?」
「いいなぁ」
天王寺くらい美人でスタイルがいいと、普通に似合う。
「女豹ポーズとかしてもらってもいい?」
調子に乗って要求する。
「女豹ポーズ?」
不思議そうな顔をした天王寺に、俺は実例を見せてみる。
グラビアアイドルとかがやってるやつだ。
「もう、男子って……」
天王寺は頬を赤らめたものの、いやだとは言わなかった。
「本当に作品の参考になるの?」
と上目遣いに聞いてくる。
自覚してないだろうけど、目はうるんでてかなり色っぽい。
「うん。セクシーな女の子を書けるようになりたくて……」
これは本心だった。
俺が書けるキャラにセクシーな女の子、色っぽいお姉さんはない。
これからの作家人生を考えてバリエーションを増やしたいところだった。
「了解」
天王寺は納得したようだ。
「でも横向きでもいい? このままだと見えちゃうから」
彼女ははずかしそうに聞いてくる。
一瞬何のことだかわからなかったが、ミニスカを見て気づいた。
「も、もちろんだよ」
別に見せてほしかったわけじゃないのであわててうなずく。
「あ、そんなつもりだったと誤解してないから、安心して」
彼女もすばやく言った。
ちょっと気まずくなったものの、その後彼女はいろんなポーズを取ってくれる。
俺の部屋で二人きりで……。
天王寺を知ってる人間に自慢したところで、誰も信じてくれないだろう。
俺だって人から聞かされただけじゃ絶対に信じない。
ぼっちの俺と、学園一の美少女、アイドルとまで言われる飛び切りの美少女がどうしてこうなってるかと言えば、実は簡単な話だった。
俺は商業出版してるプロの作家で、彼女は俺のファン。
いや、ファンを超えた信者だった。
崇拝してる作家の役に立てるなら……というファン心理らしい。
作家としても、一人の男としても、作家デビューしてよかったというのが本音だった。
そんな天王寺とどうやって知り合い、仲良くなったのかと言われたら……。