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 寒くなってきたとは思ってはいたものの、やはり直接的な寒さを感じる季節になってきた。

 

 また、大学内にも、リクルートスーツを着ている学生も沢山いる。今の時代、リクルートスーツを着ているからといって、就活をしているわけでは無いということはわかってはいるものの、彼らが何年生なのか気になるところである。


 歩いていると、ふと視界に図書館が入った。僕は、三秒とかからずに、図書館に行くことを決めた。


 この大学の図書館のデザインは、大学の宣伝に使われるほどオシャレな仕上がりになっている。まるで、ファンタジー映画のようなデザインの図書館である(というのが宣伝文句)。


 しかし、実際のところ利便性はあまり良く無い。


 PC用の電源等は完備されているものの、完備されている場所の数は少ないし、じゃあ自習をしようかと思っても、机の広さがイマイチな上に、椅子もイマイチなのである。


 蔵数は、それなりにありそうだが、誰が読むのかイマイチわからないような本(背表紙がなんとなくオシャレ)が散りばめられており、図書館としての機能もまたひとつイマイチなのである。


 この図書館は、設計した人物のエゴだけがつまった場所であり、決して知識など詰まってないのである。


 この図書館自体は、僕が入学した半年後くらいに完成したのだが、このおしゃれさにひかれて、勉強などろくにしなさそうな学生ばかりが集まってしまったともっぱらの評判だ。


 そんな前置きをしたが、図書館と僕に特段の共通点はない。いまあるとしたら、PCの作業ができる電源環境のある場所。それだけである。


 僕は、図書館の3階にある吹き抜けのど真ん中の席に座った。


 そして、カバンからPCと電源ケーブルを取り出し、電源ケーブルをPCにつなぎ、コンセントに挿した。


 電源ボタンを押すと、PCはいつも通りの起動音とともに立ち上がり、デスクトップ画面が表示された。



 しばらく、PCのキーボードをカタカタと打っていると、近くで女子大生二人組の話し声が聞こえてきた。僕は、その話の内容が気になってしまい、作業を中止した。


「ねぇ、聞いた。あの会計士の人の話」


「あ、聞いた聞いた。うちの卒業生らしいね」


「ねー驚いた。本当。大学側もなんか宣伝に使いそうだよね」


「ほんとだよ。絶対つかう。ルックスも良くて、話も上手くてさ」


「おまけに演技ができる」


「演技ってのがすごいよね。役者で会計士でしょ。世の中多彩な人もいるもんだよねぇ」



 その後、たわいもない話が続いたのち、女子学生は別れを告げて、解散をした。


 ルックスが良くて、役者で会計士。そんな人物がこの大学の卒業生にいるのか。


 大学時代、ほとんどパッとしなかったのに、いざ有名になると大学側が広告塔として使用するケースは、僕もよくテレビで見たことがある。スポーツ選手によくあるような気がする。この人口減少の日本の世の中で、純粋な大学の学力だけでは宣伝にならないということのなのだろう。まったくもって、世知辛い世の中である。


 その後、僕は一度途切れた集中力を回復することができず、食堂に行った。

 ランチを食べたあとは、少しお昼寝をし、3限、4限目の授業を受けて、サークルの部室に向かった。

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