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 カフェの扉は、木でてきている。


 大学のカフェなのにオシャレにできている、と僕はいつも思っていた。大学のカフェというと、何百人と入れるような作りを想定するが、ここのカフェは、駅前にあるようなカフェと同じで、50人程度しか入らない。


 色々な諸説はあるが、ここのカフェは、大学の卒業生が経営していて、大学時代にオシャレな場所で勉強がしたかったけど、する場所がなくて悔しい思いをしたから作ったという説が有力であった。


 そんな悔しさが、ここまで立派なカフェを作る気持ちに持って行かせるというのも、すごいことである。


 カフェは、大学の1階、それも敷地内の端っこにある。場所が遠いということもあってか、人はあまり来ないようであるが(採算は大丈夫なのだろうか)

 

 少し重い扉を押して、店内に入ると、心地の良いジャズが流れていた。そして、白いシャツに黒いエプロンをかけた男性店員が僕らに向かって喋りかけてきた。


「ようこそ」


 ここの、店員さんはいつもこのように挨拶をしてくる。


 普通、日本のカフェだと「いらっしゃいませ」と大抵言われると思う。しかし、このお店の店員さんは「ようこそ」というのである。不思議である。


 店内は、二つのスペースにわかれている。


 店を入ってすぐ左側と右側にある、大机に、椅子がたくさん置いてあるスペース。

 机の上には、PC等の充電ができるように、コンセントが配備されている。


 そのまま、まっすぐ行くとレジがあり、レジの右側をまっすぐ行くとテーブル席が10席、カウンター席が10席ほどある。


 このように、このカフェは勉強する人のために設けられている。図書館の自習室に、カフェが併設されたようなイメージである。


「奥の席、見てくるねー 」


 そう言って、志保は、店の奥に小走りで向かっていってしまった。僕は、レジの手前の自習をしている学生たちを見回した。


 ノートを必死にとっている人。電卓を叩いている人。ヘッドフォンをしながら、PCをカタカタと操作している人。タブレットを見ながらぼーっとしている人。昔の学生は、ノートを取る人が多かったのだろか。最近は、いろいな人が増えた。昔の大学生と違って、勉強の仕方も様々である。


「カウンターしか空いてなかったから、カウンター席を取っておいたよー 」


 志保は、持っていたカバンと、着ていたコートをカウンターに置いて戻ってきた。


「じゃあ、何か買おう! 」



 僕たちは、レジに向かい、注文をした。


 僕は、お腹が空いていたので、トーストとコーヒーのセット。ゆで卵がついて、300円と、学生には安い良心的な価格設定である。志保は、朝からパンケーキと紅茶のセット。だいぶカロリーがいっているような気がした。しかし、彼女いわく「このカロリーは、私は一日で消費するから大丈夫なのです」と言っていた。このポジティブさは僕に足りないものなのかもしれない。


「席までお持ちしますので、おすわりいただいてお待ちください」


 男性店員は、爽やかな笑顔と、静かなトーンで僕らに返事をした。


 僕らは、席に座って、注文した料理が出てくるのを待った。カウンターは、他のテーブルとの相性も考えられて、同じ色の木で作られていた。椅子は、気持ち程度の背もたれがついた黒色丸みを椅子。床に直接備え付けられていて、少しだけ回転する仕様になっていた。


 カウンターの目の前には、たくさんのコーヒー豆が透明な瓶に入って並んでいた。いつも思うのだが、この店頭に陳列されているコーヒー豆は、本当に使うものなのだろうか。カフェに限らず、居酒屋やバーのお酒もしかりである。店内のインテリアとしてかざられているのか、それとも飲料品として並んでいるのか。


「もしかして、目の前のコーヒー豆が使われるかどうかで悩んでた? 」


 志保が、唐突に僕に話しかけてきた。


「あ、あ、うん。よくわかったね」


 僕は、驚きを隠せず、少しむせてしまった。


「いや、だって、ずっと見てたから。それに、私も気になってたんだよね」


「先週行った居酒屋でも、トマトの缶詰の上にプレートを置いて、料理を出しているお店があってさ。トマトの缶詰の中には、トマトがまだ入っているんだよ。気になって賞味期限も確認したけど、賞味期限は過ぎてなくて、食べれる感じだった」 


「ふーん。そういうお店もあるんだね。最近は変わっていらっしゃるね」


 志保は、僕を見て数回頷いた。


 しばらくして、僕らの料理がカウンターのテーブルに置かれた。店員さんは「ごゆっくりどうぞ 」とつぶやいて、レジの方に歩いていった。

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