ここにいるよ
ここだよ、ちいちゃん
ここにいるよ
いつでも一緒にいるからね
ちいちゃんは、外では強い子
絶対泣かない
でも、家では泣き虫
仕事からパパが帰ってくるとすぐに駆け寄り
ポロポロと大粒の涙
パパはいつでも心配そうに
「ただいま、ちいちゃん、どうしたの」
「あのね、昨日嫌な事言われて、もう学校行きたくない」
パパは、
どんなに夜遅く帰って来ても、ちいちゃんの、話を全部最後まで聞いてくれる
そして、いつも最後は、ちいちゃんに
「よくがんばったね、でも本当にもうダメだと思ったら、ちゃんとパパとママに言ってね。大人しか解決できないことだってある。そんな時こそ、パパとママの出番だからね、パパとママがしっかり守ってあげるから。」
ちいちゃんはその言葉で元気になる。
ある日、ちいちゃんが、本当にダメだと思う出来事が起こった。
それは、ちいちゃんの、仲良しの友だちのノートに、いじめっ子が、マジックで落書きをした。
ちいちゃんは腹が立ち、その子たちに注意したら、ちいちゃんのノートにも、落書きして、笑って謝らなかった。
ちいちゃんは、先生にそのことを、話したら、先生が注意して、その子たちは謝ったけど、全然悪いって思っていない。
今までは、言葉だったけど、悪ふざけにも限度がある。
人の気持ちがわからない子たちに、ちいちゃんは、腹が立って許せない気持ちになって、我慢が出来なかった。
ちいちゃんはパパにそのことを全部話した。
するとパパは、
「それは、ひどい。どんな理由があるにしても、大切な物に落書きするのは、許せることではないね。パパの出番なら、出ていくけど、どうする」
ちいちゃんは少し考えて
「いいよ、ダメなものはダメって言い続けて、もう少し、友だちと先生と頑張ってみる」
その夜、ちいちゃんの、パパとママは
ちいちゃんが、寝た後に、話し合った
話し合ったのは、
ちいちゃんが、頑張りすぎて、傷つき心が耐えられなくなるのではないかということだ。
子どもの世界に大人が入るのはそう容易くはない。
子どもの生きる力、心を強くする機会でもあるからだ。
だからこそ、入るタイミングは大事だ。
すぐに手を差し伸べるのはそう難しいことでもない。
大人が入ると、しばらくは何事もないだろう。
だけど、ちいちゃんが強く生きる力がそれでつくのか・・・
いつまでも手を差し伸べることができるわけでもない。
大きくなると、自分で立ち向かう力が必要。
パパとママは、その度に、ちいちゃんの強さを祈るしかなくて
パパとママは、その度に無力さを感じる。
パパもママも、実は、ちいちゃんが涙を流すたびに、心配ばかり
パパも、ママも、いつでもちいちゃんが、「助けて」と言えば乗り込んでいく気持でいっぱい。
できるなら、ずっとそばで守りたいのだ。
だけど、パパも、ママも、ちいちゃんが強く立ち向かう力を信じて我慢、我慢。
パパもママも、心の中で戦ってる。
毎晩、ちいちゃんに、パパとママはね、
ちいちゃんが眠ったあとに、
そっとね
こう言っているんだよ
「ちいちゃん、ここにいるよ、
いつでも一緒にいるよ
だから、頑張れ、
でも本当にダメな時は、パパやママに話してね。絶対守ってみせるから」
ちいちゃんはそれを、夢の中で聞いているのかな、
朝になると、いつもの元気なちいちゃんだ。
ちいちゃんはわかっているのだろうね。
パパとママは、ちいちゃんの、
一番強い、最強の見方だってこと。
でもね、
ほんとにダメな時は、助けてね
そう心で呟いて
「パパ、ママ、行ってきまーす」
おわり