其の参 そうだ、ダンジョンに行こう
この物語はファッションです。
流行には逆らわず、流されていくタイプの物語です。
「ご主人様って目標とかあるんですか?」
ヤツレイの低スペックさに嘆いていると、彼が突然訪ねてきた。
ていうかご主人様って僕のことか。
20歳も年上のおっさんからご主人様呼びとか気持ち悪い以外の何者でもないんだけど。
それにしても目標ねえ。
最初は魔法を使う、とかレベル999を目指す、とか考えていたんだけど、どうやら異世界人は魔法が使えないみたいだし、レベルの概念はないし。
となるとあれくらいかな。
「僕の目標、それは――――」
それは、そう。
男なら、人類なら、誰もが望んでやまない永遠の命題。
すなわち―――――
「新生児ハーレムを作ることだな。」
1歳未満の子供たちを何十人もそばにはべらせる。なんて魅力的な響きなんだ。
「うわ、うーわー。普通にドン引きですね。1歳未満とか気持ち悪ッ。」
ヤツレイにドン引かれた。
こんな風俗で破産したクズに。
ヤツレイをひとしきり殴った後、僕は現実と向かい合ってみた。
現代日本と違って奴隷制度とかあるし、新生児ハーレムは不可能ではないだろう。
しかし問題は資金である。
新生児は相場10万円からとか言われたし、ハーレムを作るには100万円くらいは欲しい。
それに新生児を連れて旅するわけにもいかないから、家を借りるか買うかしなければならない。
そうするとなんだかんだ1000万円は必要だよなー。
資金集めどうしよう。
そもそも今晩宿に泊まれるかすら怪しい金額なのに。
「どうやら資金に困っているようですね。もう殴らないと約束してくれるのでしたら、元商人の、この私がオススメの金策を教えてあげますよ。」
殴りたい。この笑顔。
「奴隷への命令権を行使する。教えろ。」
「約束はしてくれないんですね。まあ、金策というのは至極単純なものですよ。」
ヤツレイが続けたのは、なぜ気がつかなかったのかわからないほどの、テンプレな方法だった。
「ダンジョンに行きましょう。」
やっぱりダンジョンあるのか。
・ダンジョン
世界中に魔王が作り出した施設。中にある迷宮コアから魔物が生み出されており、世界中に散らばる魔物は全てダンジョン産である。そのため、迷宮コアを破壊し、ダンジョンを殺すことが推奨されている。
なお、ダンジョンは今も増え続けており、これを一つでも減らし、また、どこかのダンジョンに潜む魔王を倒すことが勇者の使命である。
出展 【異世界常識】
へー、この世界に魔王とか居たんだ。
というか勇者の使命とか初めて聞いたぞ。
いくら9995回目の召喚だからって、召喚師のおっさんは手を抜きすぎだろ。
まあ、ダンジョン行くのは仕事のらしいし、行くことに問題はないか。
というか超ワクワクするな。
やっぱり一生に一回くらいは行ってみたいよね!
「でもどこのダンジョンに行くんだ?」
「この町から歩いて行ける距離には二つあります。一つは悪鬼の迷宮と呼ばれるゴブリンの迷宮。そしてもう一つは――――」
「もう一つは?」
「もう一つは『ぴんくなシャボン倶楽部~お姉さんが教えてあげちゃうゾ~』です。」
「ただの風俗じゃねえか!」
ただお前が行きたい所じゃねえか。
もともとかけらも期待してなかったけど、もうこれマジで返品しようかな。
奴隷ってクーリングオフ対象商品なのかな。
「違いますよ。本当にこういう名前のダンジョンなんですよ。」
そう言ってヤツレイはその「ぴんくなシャボン倶楽部~お姉さんが教えてあげちゃうゾ~」の説明を始めた。
なんでも、サキュバスがメインの魔物として出てくるそうだ。しかもサキュバスの主食は人間の精力なので、別に殺しあう必要はなく、むしろお互いに気持ち良くなれる闘いらしい。夜のプロレス的な。
また、このダンジョンではサキュバス以外にもコインゴーストという魔物が出現するらしく、この魔物は金貨型の魔物で、死体がまんま金貨らしい。
そんで、そこのダンジョンのサキュバスは精力を食べて満腹になると、お礼としてそのコインゴーストの死体をくれるそうだ。
やることやって金もらえる風俗ってなんなんだよ。
「まあ、別に僕たちは行かないけどね。」
「えー!なんでですか!金もらえる風俗ですよ!もうこんな風俗、男なら行くしかないじゃないですか!」
風俗風俗うるさいな。
もうただお前が風俗行きたいだけじゃねーか。
「いやだってそういうところで出てくるお姉さんって大体18歳以上だろ。僕さ、1歳以上のババアとか興味ないんだよね。」
でもまあ1歳未満の子どもがいる風俗なんか見たことないけどな。
あっても多分消されるだろうけど。
僕がそう吐き捨てると、ヤツレイはおもむろに立ち上がり、虚空を見つめ始めた。
「サキュバスはただの風俗嬢とは違います。サキュバスは生まれながらの風俗嬢ッ。客を満足させることこそが彼女らの生き様ッ!そんな彼女らか答えられない客のニーズなどあるわけがないッ!」
ドドドドドド
「ま、まさかッ!」
ドドドドドド
「そう、サキュバスは客の望んだ姿で出てくるッ!つまり、生後5ヶ月の風俗嬢もいるということッ!しかもそれが合法ロリなのだッ!!」
ドジャーーン!
僕の体に衝撃が走った。
僕はロリコンである前に勇者なのだ。
「当然ダンジョンを行かずにスルーできるわけないだろう。」
「目が覚めましたかご主人様。案内しますよ。」
こうして彼らは最初のダンジョンへと旅立った。
彼らの冒険はぴんくなシャボン倶楽部(略から始まるのだッ!
[移動]街のベンチ→ぴんくなシャボン(略
「着きましたよ。ここがぴんくな(略です。」
へー。ここがぴ(略か。
見た目はただのでかい風俗店だな。
「ていうかこのダンジョン街の中にあるんだな。」
僕たちがいるのは大通りの裏にある路地だ。バリバリ街の中心である。
てっきりダンジョンってのはみんな街の外にあるものだと思ってた。
「そりゃそうですよ。ここは迷宮都市いや、迷宮王国なんですから。」
初耳なんですけど。
というかその中心になっているダンジョンってのは…
「はい、このぴ(略です。」
なんでも最初はぴ(略を囲うように街が出来上がっていったらしいが、あまりの盛況っぷりに今では王国になってしまったらしい。
すげーなリビドー。
すげーなフロイト。
というか僕たち勇者を召喚したのはそんな下半身で出来た国だったのか。
なんか、いろんなところからこのダンジョン目当ての観光客が来るらしく、収入が凄いので、国力自体は凄まじいらしい。
いい国なんだな。すけべに目をつぶれば。
早速中に入ろうとしたら入り口で兵士らしき人間に止められてしまった。
やっぱ迷宮としだし管理者とかいるのね。
「お兄さんたち年齢はいくつ?」
え、ダンジョン潜るのに年齢とか必要なの?
いや、まてよ。このダンジョンの特性的に考えると・・・
「25歳です。」
とりあえずしれっと盛ってみた。
これで成人の壁は越えられるが果たして・・・
「嘘は良くないよ。お兄さん。」
ソッコーでばれました。
やっぱり嘘発見器みたいなのがあったかー。
まあ管理してるの国だしね。
ちなみにこの国は20歳から成人で、このぴ(略に入れるのも20歳かららしい。
正直僕自身は最初から年齢的に無理だろうなーって思ってたのでそんなにダメージはない。
未練がないと言えばうそになるが、別にルールを破ってまでしたいわけじゃない。
これまで17年間我慢してきたんだ。3年なんてへっちゃらだ。
ところが隣のクズはそこまで潔くなかった。
ヤツレイはなんと兵士に向かって土下座をし始めたのだ。
「お願いします。お金なら払うんで、私だけでも入れて下さい。」
おい、金って僕のじゃねーか。
「だめだよ。君、奴隷でしょ。主人なしで奴隷だけでダンジョンに入るのは法律で禁止されてるんだよ。」
なんでもそれを許すと奴隷だけで組んだパーティーでダンジョンに挑み、奴隷たちを使い潰すローラー行為が可能になってしまうそうだ。
まあ、それも倫理的に問題なんじゃなくて、人の死体という食糧が魔物に力を与えてしまうから禁止されてるんだけど。
主人も一緒じゃさすがにそこまで無茶な作戦は取れないしな。
「くそう。私はどうやら契約する主を間違えたようだ。」
ヤツレイはそんな意味わからないことを言っていた。
なんでお前が自主的に選んだみたいな言い方してるんだよ。
お前の値段が5000円だったのは売れなかったからだからな。
[移動]ぴ(略 →悪鬼の迷宮
ヤツレイは騒ぎ続けていたが無視してこっちの迷宮に来た。
予想道理、こっちのダンジョンには管理している兵士などいなかった。というか人影もなかった。
見事に廃れているな。さすが初心者ダンジョン。
ちなみに日帰りで行けるダンジョンの名に恥じず、ここまでの移動には大した時間がかからなかった。
一応、ここまでの道中で保存食とか水とかランプとか買っておいたのだけど、絶対に足りないと思う。
予算5000円だもの。
つーかどうでもいいけど、僕のこの世界に来ての初めての食事は保存食になるのか。
[所持金]5000円→16円
そんな本当にどうでもいい事を考えながら、僕たちは悪鬼の迷宮へと突入した。
しかしまだこの時は、これから襲いかかる困難を僕たちは知らなかった。
というフリが本当にフリで終わってくれることを祈りながら、今度こそ僕たちは悪鬼の迷宮へと突入したのだった。
To Be Continued....
★☆次回予告☆★
どーもキミオです。
イヤーついに街から出られたよ。
作中では移動時間とか買い物シーンとかはカットされてたけど、実際にはそれなりにかかってたしな。
さて、次回はいよいよ僕たちの初戦闘。
皆が忘れかけていた僕の固有スキル「血脈の支配者」がついに覚醒する!
次回「悪鬼の迷宮① 覚醒‼血脈の支配者!」
皆も産婦人科の前でレッツ全裸待機!
まさか三話を書くのにこんなに疲れるとは。
改行とか会話文とかのバランスが難しいです。
日刊上位の先輩たちはすごいなあ