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豊穣神のアポストロス  作者: 杏子菓子
4/5

冒険が楽しくなってきた

エグザウディオは朝日が昇るのと同時に宿屋を発った。

商隊で混雑している南門を抜け、快調に街道の歩みを進める。

しばらく歩くと穀倉地帯に突入したのか緑色一面の小麦畑になってきた。

東京で生まれて東京で育ったエグザウディオは、こういう大自然の風景を見たかったのだ。

風が吹くと草が揺れ、草原が波のようにうねるさまは圧巻である。


「すげーよ、マジすげー」


街道を歩きながら、たまに遭遇するスライムは完全に攻略法を得た。

”魔力による物理攻撃”をソウルストライクと名付け、その魔法をスライムの核に向けて発動させる。

衝撃を避けて核が端のほうに移動したところを、スライムに手を突っ込んで毟り取るという方法だ。

粘液が飛び散らないし、持ってきた桶の水で手を洗うだけで済む。

スライムの粘液すら突き抜けない魔法攻撃の威力に落胆するが”見た目が格好良い魔法”と”発動が早い魔法”なので愛用しようと決めた。

魔法の名称はネトゲで遊んでいたときの魔法にそっくりだからマネをさせてもらった。


疲れれば道端で休み、お腹が減れば串焼きを頬張りながら歩みを進め旅路は順調に進んでいく。

暇なときに少しずつ経典を読み進める努力もする。

陽が落ちる前には今日の予定の宿場町に到着することができた。

慣れない距離を歩いたので足のマメが破れて血が出ていたので湯を借りて丁寧に洗ってゆく。

せっかく異世界に来れたというのに破傷風で死んだら泣いても泣ききれない。


マメをふーふー乾かしてしていたら自分がヒールを使えるのを思い出す。

「そういえば俺ってヒーラーだよな」

エグザウディオは白い福音書を取り出して「ヒール」と「キュア」っぽい魔法を覚えることにした。

☆1個のを触れば・・・と魔法陣に手を当てると寒気と同時に魔法が体内に入ってくる。


「これでヒール使えるのかな」

「ヒール」と念じて患部に手を翳すと手が淡く発光している。

毎度思うことだが魔法が発動すると格好良い

スッと魔力が抜ける感覚におそわれてマメが直ってゆく。


「おおおおお、なんか反則すぎるな」

次いで「キュア」を覚えたが順番が逆だったと後悔する。

「普通はキュアをかけてからヒールじゃね?」

それでも一応キュアをかけて自己満足を完結する。


福音書にはレベルが上がると魔法が1つだけ覚えられると書いてある。

「ソウルストライク」「ヒール」「キュア」で限界らしかった。

「次に覚えるのはレベルが上がってからか」

若干の落胆を感じながらエグザウディオは夕飯に向かった。




日の出とともに出発して、景色を堪能し、経典を読み進めながら8日目を迎えバルドの街に到着した。

スライムを倒しながら歩いたのでレベルが1上がっている。

翌日の早朝にトカゲ車の乗り合い場所へ行ってみると20台ほどのトカゲ車が隊列を組んで出発準備をしていた。


「バルドまで行きたいんですけど」

一番偉そうな人に伝え料金を払ってトカゲ車に乗せてもらう。

幌のついた客車の中には3人しか乗っておらず快適なスペースを確保できる。

「出発!」という掛け声と共に非常にゆっくり進み始める。

客車に乗り合わせたのは、エグザウディオの他に女性が2名、男性が1名で全員が若い冒険者みたいである。

エグザウディオの前に座った女性冒険者はブラとホットパンツという軽装で体育座りをしているので、嫌でも胸や股間に目が向いてしまう。

「これぞ冒険者の醍醐味」と思ってこっそり凝視する、エグザウディオは煩悩の塊のような思考から抜けきれない。


女性の股間を堪能していると男性冒険者が話しかけてきた。

「にいちゃん、にいちゃん、メイスもっているところを見ると冒険者なんだろ?」

「エクスと言います、一応は僧侶の見習いなんです」

3日も同じトカゲ車に乗っていることになるので自己紹介をしておく。

そこに目の前の女性が割って入ってくる。

「やけに痩せてるから疑問に思ったけど僧侶だったのか」

「えっと・・・」

「私はヴェロニカでいいよ」

「ヴェロニカさんも同じくらいだと思うのですけど」

自分の腕をまくり”ヴェロニカさんもおなじくらいでしょ”とポーズをとる。

「女でスタイルが悪かったら生きていけないし、おっぱいだって大きいだろ」

そう言って”ほらほら”と胸を強調した格好で挑発してくる。


思わず声を詰まらせてしまうと「まだ擦れてなくて可愛いね~」と煽ってくる。

エグザウディオは”おっぱいは関係ないじゃんと”悪態をつきたかったが声に出すことができなかった。

同じトカゲ車に乗り合わせた4人はお互いに自己紹介をして冒険暦などを披露しあう。

エグザウディオは生まれて初めてのリア充っぽい会話に混じれたことで神様に心から感謝した。




トカゲ車の移動は順調だが陽が昇るに連れて暑さが半端じゃなくなってくる。

幌で直射日光は遮られているが体感温度で気温は40℃は超えているのではなかと思う。

法衣鞄から桶を取り出して水を飲んでいると他の3人の注目が一気に集まる。

「ヴェロニカさんも飲みますか」

「タダで貰っていいのかい?」

「水はたくさん持ってきたので構いませんよ」

そういうとおずおずと手を出してくる。

他の2人も飲みたそうなので順にコップを回して行く。


「わりーなエクス」

「水はもともと井戸の汲んだだけですしお金かかかってませんから」

ついでに熱々の串焼きも一本ずつ配ってあげた。

「オアシスに付いてからだと買わないと手に入らないんだから、水は大切にした方がいいぜ」

などと説教ともアドバイスとも取れるような感じで言ってくる。


日本で育ったエグザウディオには、自分だけ飲んだり食べたりするのは難しい相談だ。

ここで1桶くらい無くなってもあまり影響しないが、折角の忠告にうなずいておく。


「じゃあ、つぎからはヴェロニカさんがおっぱい見せてくれたら配りますね」

エグザウディオはみんなから笑いをとることができた、物凄い進歩である。


「そんでエクスはレベルどのくらいなん?」

唯一の男性同乗者のガデッツが聞いてくる。

流石にレベル2では問題がありそうなので適当に誤魔化しておく。


「カードを更新していなので正確なレベルは判らないのですが、それでもそんなに高くはないですよ」

「戦う算段とか付いているのか、あんま戦ったことないんだろ」

「僧侶見習いなので浄化で戦えないかと思っていたんですよー」

「浄化って、おま…エクスは浄化使えるのかよ!」

「使えると思います」

「浄化って高位の神官様だって使える人は滅多にいないぞ」

「まだ、使ったことがないので何とも言えないのですけど練習はしているのですよ」


酒場のおっちゃんは、マミーだか、ゾンビだか、ボーンだかがたくさん棲んでいると言っていた。

事前に知識を得といて良かったと思う。

”女性のエロエロ装備を見に来た”とか口が裂けても言えない。




エグザウディオは夜中にトイレに行きたくて目を覚ました。

客車から這い出して空を見上げると星空が綺麗である。

トイレを済まし、風で涼んでいると”浄化の魔法を試してみよう”と言う気になった。

服音書から魔法を取り入れ、近くに生えている草に浄化をかけてみる。

「浄化」と叫ぶよりも「エクソシズム」の方が格好良いので名称は心の中で決めておいた。


「エクソシズム!」


すると草の周りに魔法陣が出来てゆっくりと回りだした。

「おおおおおおっ、やっぱすげーな!」

生きている草が浄化される訳じゃないけど、狙ったところには発動できるので満足した。

魔法陣が動きを止めるまで見送って、ちょっと移動したら足がもつれて倒れてしまった。

頭もぼーっとしているような感覚である。

「やっべー、風邪引いたかな」

エグザウディオは少し座って休んだあと、早く寝て翌日に持ち越さないように祈りながら客車に戻った。

途中で「風邪はヒールで治るのだろうか」などと考えたが面倒なので明日にしようと眠りに付く。



翌日起きてみるとみんなが「起きたかエクソシズム」と言ってくる。

「おれ、エクスですけど!!!」

どうも昨日の魔法を叫んだところを全員が聞いていたみたいだった。

冒険者の常識では寝ているときに誰かが動けば絶対に目が覚めるとのこと。

いつまで経ってもエグザウディオが戻ってこないので注視していたら、突然「エクソシズム」と叫び出したので笑いを堪えるのに必死だったらしい。

「浄化魔法を練習していた」ということで直ぐに納得してくれたが、それが原因で「エクソ」と呼ばれることになってしまった。


「もう、絶対に水はあげませんからね」

ささやかな抵抗をしてみる

「えー、おっぱい見せてあげるからさー、機嫌直してよー」と煽ってくるのを止めてくれない。

「おっぱい見せてくれるなんて信じてませんし」

「あたしって信用ないのかなー」と言いながらブラを1センチくらい上にずらしてくる。

「え?」と思って凝視したら、そこにヴェロニカにかさんの微笑みもついて来た。

「エクソ騙されやすすぎだろ」

さんざん子供扱いされてしまったが楽しい、これこそリア充なんだ。




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