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105人中2人しかいないダブルの白衣を、なぜかうちの息子が選んだ

作者: 森本有介
掲載日:2026/03/17

息子のちょっとした選択に、なぜか振り回される父の話です。

正しいはずの助言が、なぜか通じないことってありますよね。

 うちの息子は二十歳の大学一年生だ。もっとも一浪しているから、世間より少し遅いスタートになる。


 入学して二、三ヶ月が過ぎた頃だった。


 ある日、息子が言った。

「実習で使う白衣を、売店で購入するようにってメールが来た」


 ――いよいよ、それっぽくなってきたな。


 そう思った矢先、息子が続ける。

「ねえパパ、白衣ってシングルとダブル、どっちがいいと思う?」


 私は即答した。

「絶対シングル。シングルだよ。シングルだからね。ダブルじゃないからね」


 念を押すように、何度も言った。


 それなのに――。


 息子が買ってきたのは、なぜかダブルの白衣だった。


 (いまさら反抗期の復活か?)


「えっ、パパ絶対シングルって言ったよね。なんで?」

「えっ、『ダブルがカッコいい』って言ったやん?」


 息子は真顔でそう言った。


「いや、言ってない」

「いや、言った」

「いや、言ってない」


 しばらく、不毛な押し問答が続いた。


 数日後。


 実習から帰ってきた息子が、ぽつりと言う。

「パパ、ダブルの白衣着てたの、一年生百五人中、二人だった」


「うそ?」

「ホント」

「うそ?」

「ホント」


 私は言葉を失った。


 しばしの沈黙のあと、ようやく口を開く。

「……もういいよ。シングルも買いなさい」

「……でも……もったいない……」

「いいから。洗い替えにすればいい。それに、制服みたいなもんだろ」

「……でも……」


 結局、買わなかった。


 それから数ヶ月。


 息子は今も、百五人中二人のうちの一人として、ダブルの白衣を着続けている。


 そして私は――


 そんなこともすぐに忘れて、また余計な口出しをしてしまう。


 変わらないのは、息子だけじゃないらしい。

結局、どちらが正しかったのかは、今もよく分かりません。

ただひとつ、息子は息子のまま育っているようです。

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