105人中2人しかいないダブルの白衣を、なぜかうちの息子が選んだ
息子のちょっとした選択に、なぜか振り回される父の話です。
正しいはずの助言が、なぜか通じないことってありますよね。
うちの息子は二十歳の大学一年生だ。もっとも一浪しているから、世間より少し遅いスタートになる。
入学して二、三ヶ月が過ぎた頃だった。
ある日、息子が言った。
「実習で使う白衣を、売店で購入するようにってメールが来た」
――いよいよ、それっぽくなってきたな。
そう思った矢先、息子が続ける。
「ねえパパ、白衣ってシングルとダブル、どっちがいいと思う?」
私は即答した。
「絶対シングル。シングルだよ。シングルだからね。ダブルじゃないからね」
念を押すように、何度も言った。
それなのに――。
息子が買ってきたのは、なぜかダブルの白衣だった。
(いまさら反抗期の復活か?)
「えっ、パパ絶対シングルって言ったよね。なんで?」
「えっ、『ダブルがカッコいい』って言ったやん?」
息子は真顔でそう言った。
「いや、言ってない」
「いや、言った」
「いや、言ってない」
しばらく、不毛な押し問答が続いた。
数日後。
実習から帰ってきた息子が、ぽつりと言う。
「パパ、ダブルの白衣着てたの、一年生百五人中、二人だった」
「うそ?」
「ホント」
「うそ?」
「ホント」
私は言葉を失った。
しばしの沈黙のあと、ようやく口を開く。
「……もういいよ。シングルも買いなさい」
「……でも……もったいない……」
「いいから。洗い替えにすればいい。それに、制服みたいなもんだろ」
「……でも……」
結局、買わなかった。
それから数ヶ月。
息子は今も、百五人中二人のうちの一人として、ダブルの白衣を着続けている。
そして私は――
そんなこともすぐに忘れて、また余計な口出しをしてしまう。
変わらないのは、息子だけじゃないらしい。
結局、どちらが正しかったのかは、今もよく分かりません。
ただひとつ、息子は息子のまま育っているようです。




