多分もう怖くない
「ねえ、聞いてる?まだ寝てないよね、息遣いが、そういってるよ。」
天蓋のついた大きなベッドに月明かりが差し込む。彼女に背中を向けて寝ている大きな背中、そこに張り付いた服の隙間から彼女の少し冷たいほんのちょっと冷たい手が入ってくる。
「私ね、あなたのこと大好きなのよ、知ってる?」布団に遮られた少しくぐもった彼女の声がせなかに響く。
彼女の細長い今まで散々みてきた。どれだけ使い込んでも汚れ一つ知らない。血の気配の少ないその指が背筋をなぞる。
「今までこんな気持ちになったことなんてなかったのよ。本当に。今まで走り続けたからかな、そんな気持ちなんか得るだけ自分の心のスペースの無駄だと思ってたの。」背中這い回っていたその線が山を回って少し腹筋が肉に隠れたお腹を触る。ゆっくりなぞるように。
「でもね少し疲れちゃったんだ。どれだけ走っても出口が見えなくて一番初めに一番近い誰かが灯してくれた光も届かないぐらい遠くまで走って走って…」
彼女は温もりを分け与えるように背中に抱きつく大きな背中は動かない「だからね..だから今日ぐらい休んでもいいよねでも今日休んだら明日もサボっちゃうかもしれないや。でもそれでもいいよねだってあなたは明日も一緒にいてくれるもんね。あなたは許してくれるよね。だから…」それからは嗚咽と暖炉の中の炎に音しかしない。




